ノースロップF-5(Northrop F-5)とは、ノースロップ社が開発、アメリカ軍を始め世界各国で運用された戦闘機である。
ここでは、F-5A/B フリーダムファイター、F-5E/F タイガーII、F-5G(F-20) タイガーシャーク、グラマンX-29、等も併せて説明する。
ジェット時代になり他のメーカーに大きく水をあけられた形となったノースロップ社(現:ノースロップ・グラマン)が自社開発で開発していたモデルが原型。
計画の発端は、ノースロップ社がノースアメリカン社でF-100の開発に関わったエドガー・シュミットをヘッドハンティングした事で開発の始まった、NATOや米空軍向けの大出力のエンジンを搭載する軽量戦闘機N-102ファングの開発が、エンジンのサイズに引きずられ予想以上に大型化し、結果として開発が頓挫した事が発端である。頓挫したN-102の仕切り直しとして始まったN-156は、簡素な構造でありながらそこそこの性能と、安全性の確保と機体寿命を延ばすため双発エンジンにし 1500m級の滑走路で運用可能と言うコンセプトで開発が進められたが、当時航空機の大型化と大戦時に建造した護衛空母の運用機数の減少に悩んでいたアメリカ海軍に売り込む、護衛空母で運用できる戦闘機としての採用も視野に入れていた。これが後にF-5、エンジンを変更したF-20、F-5の機体を大型化したP-530とその発展型であるP-600(YF-17)/P-610(単発型)、マクドネル・ダグラスが艦載機化したF/A-18とその発展型であるスーパーホーネットへと進化して行く形になった。
あまり知られていないが、T-2開発時に少数のT-38を採用し開発中のパイロット育成に使用する案や海自のヘリ空母構想とC-1派生案をことごとく潰したり、61式を重すぎるとして酷評した事でも知られる某防衛庁官僚(故人)がF-4やF-1の代わりにF-5A/Bの導入を主張するなど、日本に導入されていた可能性もあった。
ノースロップ社がN-156(F-5)の練習機型、N-156Tとして開発していた機体で、海軍が保有していた護衛空母の退役とキティーホーク級やエンタープライズといった戦後型の大型空母が就役したことにより艦上戦闘機として採用の可能性がなくなったことから、主翼の小型化とF-102で成果を挙げたエリアルールを設計に取り入れた。中低速域での安定性のよさが評価されたことでアメリカ空軍に練習機に採用されることになる。2000年代に入ってグラスコクピット化されたT-38Cもあり非常に長寿な飛行機ともいえるだろう。
ちなみに演習でF-22と模擬空戦を行い、(パイロットの錬度に差があり、かつ訓練状況がF-22にきわめて不利なケースで、かつF-22側にとっては運が悪かったケースという、かなりのレアケースではあるが)"撃墜"してしまったこともある。
ちなみにNASAも採用しており、こちらはT-38Nとして呼ばれている。宇宙飛行士等が乗る機体がこれ。
1950年代の冷戦当時、アメリカと友好関係を結んでいた発展途上国の航空兵力向けに、出来る限り安価で性能もそこそこ(つまり、限定的な空戦能力さえあればよい)の戦闘機が求められていたが、この用途に用いられていたF-84やF-86の中古機に続き、空軍では国防総省の意向を無視してF-104を当てる予定であったが、F-104はセンチュリーシリーズとしてはシンプル構造であったが第三世界に輸出するには整備性の問題があったことや、アイゼンハワー政権からケネディー政権に変わったことによって、海外供与専用戦闘機F-5A/B フリーダムファイターとして採用される。高い操縦性、シンプルで安価なエンジン2基。全天候飛行能力は無いものの整備も容易(なにしろレーダーすらついてない)ということもあって、第三世界を中心にあちこちの空軍が運用するに至った。
小さいながらも低い翼面荷重比による良好な旋回性と、小型・軽量なエンジンを逆手に取った高い比推力を武器に軽快な運動性を持つ。運用のし易さもあって導入された国は多岐に渡り、韓国、台湾、南ベトナム、タイ、エチオピア、ノルウェーなどなど。カナダなどではライセンス生産も行われた。
余談話だが、導入各国から上がった「この機体は使えるのか?」という問い合わせがあり、さすがに売りつける機体とはいえアメリカ本国が使わないのはどうよ?と思ったアメリカ軍によって、アレコレと改造を施された上でベトナム戦争に投入されることになる。
この一連の作戦計画名が「スコシタイガー(sukoshi Tiger)作戦」で、アメリカとしては「小さい虎」としたかったのかLittle(小さい)の表現を日本語の「少し」からもってきたようだ。もっとも空戦に使われることはなくもっぱら地上爆撃に使用されたらしい。ただここでも機体の操縦性と整備も容易なことから稼働率も高くまずまずの評価を得た。この作戦に使用されたF-5Aは特別仕様(爆撃コンピューターや空中給油装置の搭載、追加装甲の採用など)であったため非公式にF-5Cとも呼ばれている。
F-5系列の特色は後のF-16、F-18、はてはソ連のMig-29、Su-27など尾翼付デルタ翼機の運動性を著しく向上させる主翼機体根元にある小さなストレーキ状の翼、LERX(前縁基部延長)だった。この小さな部分があることでデルタ翼形状の航空機がもつ欠点であった高迎角の安定向上、旋回性能の向上、離着陸能力の向上と信じられない能力向上をもたらした。
効果のほどではエリアルールに匹敵するような偉大な成果なのではあるがメジャーではない模様。
元々このLERX、主翼に入らなかった電装部品のパーツを逃がすためにしょうがなくつけた部分だったのだが開発陣が思いもよらない高性能を示したのであわてて調査。LERXのもたらす効果を確認したという嘘のようなホントの話があるそうで…。
1960年代に入ると旧ソ連が東側諸国・友好国向けにMiG-21を輸出することになる。軽量で運動性も高く、レーダーも装備しているMiG-21相手ではF-5A/Bではキツイということもあり、対MiG-21としてF-5をベースとしたF-5E/Fを開発する。簡素なものながらも空対空レーダーを装備、合わせて主翼を大型化しエンジンを強化、F-5A/Bゆずりの高い運動性と稼働率の高さからF-5A/Bを運用していた各国が引き続きF-5E/Fを運用することになる。一部の外国には空対地レーダーの装備やAGM-65マベリック空対地ミサイルの運用能力が有償オプションで用意されていた。
アメリカ空軍/海軍でも運動性の高さと機体サイズの小ささから仮想MiG-21として、仮想敵機(アグレッサー)亜機体として導入された。
空軍ではレッドフラッグ部隊、海軍では"トップガン"(海軍戦闘機兵器学校)などで運用されることになる。また、各種の戦闘機を扱った映画では格好の敵役で、映画「トップガン」のMiG-28役他、主人公に敵対する相手戦闘機といえばF-5E/Fが代表的だったりする。
1980年代、ノースロップ社でF-5をさらに改良しようとする計画がもちあがった。
ノースロップ社の考えとしては、アメリカ空軍で採用されたF-16は高性能すぎて、それまでF-5の運用を行っていた国には輸出されないだろうという思惑があり(途上国向けの輸出プランもあったがエンジンをダウングレードしたモンキーモデル)、輸出向け戦闘機として開発されることになる。アメリカ国内法の問題で、あくまでF-5系列のバリエーションの一環としてF-5Gのコードが割り当てられることになる(のちに改めて機体コードとしてF-20が割り当てられることになった)。
ノースロップ社で当時開発中だったYF-17(現在のF/A-18ホーネットの原型)で搭載するF404ターボファンエンジンを一基搭載し、高性能電子機器も搭載。なおかつF-5系列ゆずりの運動性は、人類初の音速突破を果たしたチャック・イェーガーが惚れ込むほどで、F-16よりも総合的に優れた機体であったといわれている。
結果的にはF-16の輸出が認められ、それまでF-5を運用していた各国も実績のあるF-16のほうへ目が向いてしまったため、F-5G(F-20)は結果的に3機のみ作られただけで計画は終了する。アメリカの州空軍向けの売り込みもあったが、F-16Cの簡易型の新造、保有しているF-16Aの改造案と採用をめぐり競ったが、最終的にはF-16Aの改修案に落ち着いた。3機のうち2機を事故で喪失し、最後の1機は博物館送りとなってしまった。事故原因は、イェーガーが惚れ込んだ運動性の高さゆえにパイロットが対応できなかったためとも言われる。
ほとんど海外では知名度はないはずだが、なぜか日本では知っている人が多い(後述)。
X-29は厳密に言うとF-5系列ではないが、こちらで取り上げる。
Xプレーンの一環及び前進翼の技術検証機としてグラマンエアロスペース(現:ノースロップ・グラマン)が開発した機体。もともと制御が難しい(反面、高い機動力を発揮できる)前進翼をコンピューター制御するとどうなるか。という目的で開発が行われた。
開発費を軽減するために、すでに開発済みの機体部品を用いて作られており、機体の前半部分をF-5から、降着装置(主脚など)をF-16、エンジンはF-18からといったかたちでありあわせで作られている。
これまた厳密にいうとF-5系列ではないのだが、こちらも取り上げる。
イランが2006年に発表した戦闘機で「F/A-18に形は似ているが性能はF/A-18を上回る」という触れ込みの機体なのだが、どうみてもF-5Eの垂直尾翼を一枚から二枚にしたような機体形状で、「F-5Eのエンジンやアビオニクスを入れ替えただけなんじゃないだろうか」と疑惑をもたれている不思議な戦闘機。
このように、F-20も含むF-5シリーズは日本に導入された機体ではないが、国内では知名度が高い戦闘機シリーズだったりする。
理由の最たるものは、新谷かおるの「エリア88」が大きいだろう。
主人公のシン・カザマ(風間真)が物語序盤にF-5E タイガー2に乗り、中盤ではF-20タイガーシャークを乗機とする。終盤は試験機のはずのX-29を戦闘機化して乗り込み、宿敵との最終決戦には再びF-20を使用した。モブ・キャラの多くがF-5系列の機体に乗っているシーンが描かれていた。これは作者がF-16を嫌っていたこともあり、F-5シリーズの露出が高かったのがその理由でもある。
さらに「エリア88」に影響を受けた空戦ゲーム「エースコンバット」シリーズなどでも初期のプレイヤーが操作できる機体としてF-5である場合も多いことも理由の一つだろう。
無論この他にもF-5E/Fで記述したように映画「トップガン」をはじめ各種の戦闘機モノの映画で敵役としてスクリーンに映し出されたこともあり日本での戦闘機好きなら必ずなんらかの形で目にした機体ともいえる。
表紙の奥の機体(F-20)の垂直尾翼にはきっちりとユニコーンが描かれている。
新谷かおる氏のインタビューも掲載。
掲示板
61 ななしのよっしん
2022/01/18(火) 18:55:59 ID: 35f3ViY+pu
流石に韓国のF-5は運用停止しなきゃ駄目だろ。22年で12機落ちるってねえ
62 ななしのよっしん
2023/10/30(月) 12:13:28 ID: XCqHktc7UK
プレ垢の方に誤字修正をしていただくことは可能でしょうか。
記事初頭の部分において、「多きく水を開けられ〜」という記述があり、
正確には「大きく」だと思われますので、修正お願いします。
63 ななしのよっしん
2023/10/30(月) 12:23:25 ID: Q/B2vHg92Y
韓国のF-5はスクランブルの早さで北のソウル火の海要員を早め早めにぶっ潰すのがお仕事だからなあ。
KF-21にその美点が受け継がれているかどうか。
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最終更新:2024/04/20(土) 05:00
最終更新:2024/04/20(土) 05:00
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