南極点のピアピア動画とは野尻抱介の短編SF小説。第40回星雲賞日本短編部門受賞作品。
2012年2月23日 文庫が発売。市場参照。
S-Fマガジン2008年4〜5月号に掲載。初音ミクとニコニコ動画にはまった著者が、今から10年後のニコニコ動画とVOCALOIDを想定し、ある意外な天文学的現象がネット文化に関わっていく様を描いた作品。
日本の次期月探査計画に関わっていた大学院生の蓮見省一。だがクロムウェル・サドラー彗星が月に衝突し、計画は無期延期となってしまった。以来彼は愚痴っぽくなってしまい、しまいには同棲していた恋人の奈美にまで逃げられてしまう。彼女への愛を歌った曲をVOCALOID“小隅レイ”に歌わせた動画をピアピア動画にうpする省一。
ある日省一は親友であり、ピアピア技術部員の川瀬郁夫らのいるピアピア工場を訪れる。そこにあったのはいくつかの工作機械と小隅レイを模した“R・小隅レイ”というロボット。彼らはここでブートストラップの実験をしているという。簡単な工作機械がより複雑な工作機械を造り出し、工場自体が自身を拡張する。そして最終的には工場自体が自己増殖するという壮大な計画であった。
やがて、彗星の衝突により月から放出されたガスや塵が3ヶ月後の地球に降着円盤と双極ジェットを形成する事が判明する。このジェットを利用すれば弾道飛行のみで奈美を宇宙まで連れて行く事が出来る。ピアピア工場ならば宇宙船くらい作る事が可能かもしれない。省一が郁夫に相談すると、郁夫は既にXプライズがジェットを利用した有人宇宙飛行プロジェクトを募集している事を告げる。かくしてピアピア技術部が総力を結集して省一と奈美を宇宙に送り出すための“宇宙男プロジェクト”は開始された!
物語は片田舎のコンビニ「ハミングマート(ハミマ)」でのアルバイト店員上田美穂とピアピア技術部出身の起業家桑野隆の出会いから始まる。以前からハミマ入店チャイムとそのシステムに興味を持っていた桑野はシステムを書き換えてチャイムから小隅レイの発売前の新曲が流れるようにした。全国規模で行われたこのプロモーションキャンペーンにより発売された新曲は大ヒットとなった。
そんなある日、美穂と桑野はハミマに備え付けの真空殺虫器から真空と強烈な紫外線照射に耐え、とてつもなく強靭な糸を出す突然変異の蜘蛛を発見する。この発見によりピアピア技術部と美穂自身の中からある野心がわき上がる。
海上自衛隊の潜水艦を用いた鯨観察プロジェクトを却下されたJAMSTECの中野は飲み友達の産総研の後藤から小隅レイを用いて鯨とのコミュニケーションをとるという代替案を提示される。早速中野は提案に従いプロジェクトのウェブサイトを作り、ピアピア動画にPR動画をうpした。すると動画を見たボカロマニアは計画に熱狂。海自と通産省内部のファンも巻き込んでプロジェクトは瞬く間に本決まりに。こうして海自から提供された退役潜水艦かざしおを用いた鯨観察プロジェクトは開始されたのだが…
かざしおが海底で遭遇し後藤のPCにあった小隅レイのデータをもとに(初音ミクそっくりの姿で)実体化した星間文明からの探査体あーやきゅあ。「彼女」の目的は自らを大量に複製して人類社会にとけ込み、得たものを星間文明に報告することであった。だがその存在を知った日本政府や中国があーやきゅあを危険な存在として隔離しようとする動きを見せたため、かざしおは海自や中国原潜の追跡をかわして密かに日本に上陸。後藤と中野はピアピア動画を運営する株式会社ピアンゴとハミングマートの協力を得てあーやきゅあの大量増殖作戦を敢行する。
これはもちろん亞北ネルのもじり。
名前の由来は日本初のSF同人誌「宇宙塵」の主宰者、柴野拓美のペンネーム「小隅黎」であろうと思われる。
オープンソース・ソフトウェアと同じ形態で設計された電子機器。基板パターンや回路図を公開し、誰でも生産・改造を可能にしたものと、論理回路をHDL(ハードウェア記述言語)のソースコードの形で公開し、利用者がコンパイルしFPGAに書き込む事で利用できるものがある。前者で日本で入手可能なものにワンボードマイコンArduinoがある。
ウイリアム・ギブスンの短編集「クローム襲撃」に収録されている作品。60年代の建築の撮影を頼まれたカメラマンが、次第にその頃の未来像の幻影を見るという話。たとえば1970年の大阪万博で描かれたようなバラ色の未来感を夢想するような事。
トランジスタ技術。電子技術系ニコニコ技術部員の必読雑誌。新人技術者からベテラン向けまでの様々な記事を掲載しているが、最大のコンテンツは全体の半分を超える広告にある。基板制作の会社はもちろんだが、秋月電子や若松通商のような一般向け電子部品小売店の通販広告なども掲載しているため、電子工作初心者も購入する事をお勧めする。
これらは宇宙では比較的ありふれた現象である。主に生まれたばかりの恒星(ハービッグ・ハロー天体と呼ばれる。この場合、降着円盤はやがて惑星に進化する)や、銀河系やクエーサーの中心にあるような大質量ブラックホールでよく見られる。我々の天の川銀河にもあるらしい。
独創的な航空機のデザインで有名な企業でバート・ルータンはその社長兼主任設計者。社名は航空機の素材となる複合材料からとられた。初の無着陸無給油世界一周をなしとげた“ボイジャー”やアンサリ・Xプライズを受賞した初の純民間宇宙船“スペースシップ・ワン”などが有名。ただし現在ルータンは航空機設計から退く事を表明しており、実用民間宇宙船“スペースシップ・トゥー”が彼の最後の“作品”となるようだ。
ピアピア動画にあって現在のニコニコ動画に無いもの。いわゆる“振り込めない詐欺”がなくなるためぜひとも実現してもらいたいシステムであるが、現在電子マネーをリアルマネーに戻すことは困難なので実現は難航が予測される。(ニコニ広告で似た事は出来るが…)
さまざまな未踏分野の達成者に送られるアメリカ・Xプライズ財団の懸賞。最初の純民間宇宙船に贈られたアンサリ・Xプライズの他、現在進行中のものとしては量産を前提とした超低燃費自動車を競うプログレッシブ・オートモーティブ・Xプライズや、民間による無人月面探査車を競うGoogle・ルナ・Xプライズなどがある。
NPO法人「北海道宇宙科学技術創成センター (HASTIC)」が中心となり、北海道の大学、民間企業が共同で開発中の小型ハイブリッドロケット。従来の小型ロケットよりも打ち上げ単価を1/10以下にする事を目標にしている。従来のハイブリッドロケットの固体燃料と酸化剤がうまく混ざらず、推力が弱くなってしまう弱点を克服し、固体ロケット並みの推力を実現している。作中では開発は既に終了し、設計がオープンソース・ハードウェアとして公開されている事になっているが、現実には2010年現在開発は難航している。
作中のようにiPhoneのプロテクトを外して、任意のプログラムをインストールする事を俗に“Jailbreak(脱獄)”という。
イラン生まれのアメリカの若き女性実業家。彼女がXプライズ財団に資金を提供した事から純民間宇宙船を競うXプライズはアンサリ・Xプライズとなった。宇宙観光に投資するだけでは飽き足らず、2006年には自らロシアのソユーズに乗って国際宇宙ステーションに滞在し、世界初の女性宇宙観光者となった。
これはニコニコではもうおなじみ、あの会社ですね。
ジェイムズ・P・ホーガンの小説「ガニメデの優しい巨人」に登場する。異星人ガニメアンのスーパーコンピュータ。地球人とはメンタリティから全く異なるガニメアンとのコミュニケーションを代行するため地球の言語や文化を高速かつ貪欲に学習していたが、「闘争」という概念を持たないガニメアンの作ったゾラックには地球人の戦争の歴史だけはどうしても理解できなかった。
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最終更新:2024/04/30(火) 22:00
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