そうめん(素麺)とは、小麦粉を原料とした麺の一つである。
概要
近代から西日本を中心に生産が盛んであったが全国各地で様々なそうめんが作られてきた。
しかし一口にそうめんと言っても、ほっそいもの、ぶっといもの、機械で作るもの、製造に油を使用するもの、卵や抹茶などを加えて練るものなど非常にバリエーション豊かである。
他の麺類と比べて専門店(素麺屋なるもの)が極端に少なく、外食ではめったにお目にかかれないものと思われがちだが、しばしば食堂や蕎麦屋などのメニューにひっそりと影を潜めている。が、近年では飲んだ後のシメとして「外そうめん専門店」が隠れた人気となり都内各所に続々とオープンしている。
夏に食されることが多い。特に、お母さんがメニューを考えるのが面倒くさくなったときに高確率でそうめんが供されるが、そのまま出しただけではビタミンBが欠けて夏バテになりやすいので、豚肉や野菜など他の具で補うと良い。ただ、油を使って伸ばしているため、意外とカロリーが高い。
かけそばのようにあったかいつゆをかけて食べるものを「にゅうめん(煮麺)」と呼んで区別することが多い。また、炒めものにしても美味しく、チャンプルー、焼きそうめんも定番である。
冷や麦との違い
日本農林規格(JAS)の規定により、そうめんは直径1.3mm未満、冷や麦は直径1.3mm以上~1.7mm未満、手延べそうめんおよび手延べ冷や麦は直径1.7mm未満とされている。
こまけぇこたぁいいんだよ!!
製法
そうめんは日本農林規格(JAS)により「干しめん」と「手延べ干しめん」のうち規定の直径を満たしたものがそれぞれ「そうめん」「手延べそうめん」と表示する事が出来る。
手延べそうめん
日本農林規格(JAS)の規定では、手延べの定義として「小麦粉に食塩水を加えて練り合せた後、食用植物油又はでん粉を塗付してよりをかけながら順次引き延ばしてめんとし、乾燥したものであって、小引き工程から門干し工程までの間において、めん線を引き延ばす行為のすべてを手作業により行っていること」と定められている。
小引き工程は、麺生地を棒に干してうにょ~んと伸ばしていく工程を指す。
門干し工程は、伸ばした生地を箸やら棒でビヨンビヨンさせた後に天日干し・乾燥室で干す工程を指す。
よって、手延べであっても生地を捏ねたり引き伸ばす等の前工程は機械を使用できる。
しかしながら小引き工程以降は手延べそうめんの品質を決定付けるものであり、品質を維持する観点から厳密に定められている。
(手延べ以外の)そうめん
機械で圧延、裁断を行った後に製めんし乾燥したものであって製法そのものの定めは無い。手延べでも一部工程を機械で行うのもあり、近年では機械で行う小引き工程も技術改良により手延べに近い食感を生み出すと謳う商品もあるが千差万別である。
主なブランド
三輪そうめん
奈良県桜井市で作られる手延べ素麺、日本における素麺の祖とされ、かつてはそうめんといえば三輪で相場価格が決まったというほどの伝統的ブランド産地。関西でのお中元に贈答される率第一位(三輪そうめんのつもりで贈る率も1位)かつて高度経済成長期における供給不足で島原など他県で製造委託した素麺も三輪そうめんと名乗っていたが、産地の明示化義務、トレーサビリティがしっかりした今はちゃんと裏側に産地が書いている。たとえば「三輪そうめん山本」の◯◯という商品は島原産など、三輪に本社を持つ会社の商品というだけで三輪そうめんとは別物なので注意(伸ばす油が違い、三輪そうめんは高価な綿実油を使う。なお現在は社名を「三輪山本」に変更している)ちなみに三輪という地名は国内最古の神社ともいわれる大神(おおみわ)神社から来ている。
厳格化が功を奏し、2016年には農林水産省の地理的表示(GIマーク)保護制度の認証を受けている。
気になる方は三輪素麺工業協同組合加盟業者が製造する「鳥居印」「鳥居帯」が張られた商品を選ぼう。
揖保乃糸
兵庫県手延素麺協同組合に加盟する業者が製造する手延べ素麺。スーパーや夏のお歳暮のカタログなどでよく見かけるそうめん。シェアはトップクラスだが、かつては灘とかと比較して格下の産地だった。だが、灘が都市化で廃絶、職人が播州に渡り一大産地となった。約400軒の組合加盟業者が抱える熟練の職人により全量を手作業で生地を引き延ばす手延べ製法で製造している。厳正な品質管理の元で、原材料・製造時期・製造元などで7等級に分けて販売されている。また、関西以外に盛んに売り込みを図ったため、揖保乃糸の方がブランド力が高いエリアも少なくない。
2024年8月に三輪素麺に続き農林水産省の地理的表示(GIマーク)保護制度の認証を受けている。
- 上級(赤帯) … スーパー・贈答品で販売される一般品
- 特級(黒帯) … 組合基準で選抜された職人により寒期(12月~3月)に製造されたもの
- 縒つむぎ(紫帯) … 国産小麦のみで作られたもの
- 播州小麦(緑帯) … 兵庫県産播州小麦のみで作られたもの
- 熟成麺(金帯) … 厚生労働省認定製麺技能士により製造され、1年間熟成したもの。
- 太つくり(紫檀帯)… 北海道産小麦のみを使用し、1.5mmの太さで作られたもの
- 三神(三神黒帯) … ブランド最高等級、厳選小麦と組合基準で選抜されたごく限られた製造業者により厳寒期(12月下旬~2月)に製造されたもの、通常は贈答品用としてスーパーに並ぶ事はない。と言ってもネット通販なら750g入り3,240円で購入できる。
播州素麺
揖保乃糸と同じ播州地域で作られる素麺、播州の糸、揖保の白糸とか揖保の瀧などがあるが一番の特徴は機械製麺で作られている事。そして同じ業者が手延べ素麺も作り兵庫県手延素麺協同組合にも加盟していてぶっちゃけ手延べ素麺の方は「揖保乃糸」で出荷しているため事実上の機械製麺ブランドと化している。一応かな~り少ないながら「播州手延べ素麺」も売られている。
島の光
小豆島手延素麺協同組合に加盟する業者が製造する手延べ素麺。小豆島で作られているブランド品で、小豆島で作られる胡麻油で伸ばすのが特徴。その胡麻油は国内シェア第1位のかどや製油が作る純正胡麻油で土庄町に工場がある。関西では定番で、三大そうめん産地と名乗っていた。
御陵糸
淡路手延素麺協同組合に加盟する業者が製造する手延べ素麺。淡路島で作られているブランド品で、三輪素麺の製法を忠実に受け継ぎ綿実油で延ばして作られる極細麺が特徴。本家の三輪素麺と揖保乃糸の二大勢力に狭まれ知名度こそ劣るが味は決して劣らない一級品である。なぜか富山県でよく消費されている。
島原手延そうめん
長崎県南島原市で生産される手延べ素麺で、江戸時代に三輪の職人が製法を伝えた(違いは綿実油を使うか否かぐらい)。かつては三輪そうめんの7割を供給していた知られざる産地で、三輪がブランドとして使っていたぐらいなので品質も良い。近年はその反省から島原としてのブランド品も育てている一方、手延べでありながらも西友やドン・キホーテのPBで売られたりもしていてお値段お手頃な庶民の味方。手延べではない機械製麺の「島原そうめん」もダイソーやコスモスで買えたりする。
神埼そうめん
佐賀県東部に位置する神埼市で作られる素麺。機械製麺の発祥地。けっこう大手のOEMも多いが、機械製麺といっても大量生産ではなく、家内制手工業のような職人の手による銘柄も多かったりする。引き伸ばしに油を使わずスッキリした味わいが特徴、更に麺に腰があってのびにくいのでにゅうめんにも向いており、無塩製法で作ったにゅうめん専用そうめんも多く作られている。なお、少ないながら伝統製法を継承した手延べ素麺も作られている。
半田そうめん
徳島県徳島県美馬郡つるぎ町で製造される素麺。半田手延べそうめん協同組合加盟業者が製造する手延べ素麺とそれ以外の機械製麺が混在する。その特徴は1.6mmの太い麺である。もはやひやむぎとの区別がつかないほど太い。が、その歴史が認められ、日本農林規格(JAS)の規定で手延べそうめんが1.7mm未満と定められるようになった(機械製麺は適用されず品質表示は”干しめん”となる)
南関そうめん
熊本県玉名郡南関町で作られる手延べ素麺。捏ねや引き伸ばしを含む全工程を手作業で行う日本でも数少ない貴重な素麺である。素麺そのものも特徴があり、3mもの長さの麺をそのまま束ねながら乾燥させたものでその見た目からも芸術品と言え、北原白秋が「白糸のやふ」と絶賛。茹でる際には真ん中からバキっと折るというイタリア人激怒の行為を行わなければならないが素麺だから問題ないよね?
大矢知そうめん
三重県四日市市。古くは素麺産地として名を馳せたが、全国的には、むしろそうめんよりひやむぎで有名な産地となっている。金魚印というブランドが知られるが、理由あって数社が使っている。鈴鹿山脈からの乾燥した風と質のよい水が高品質の素麺、ひやむぎ作りに適しているらしい。
ちなみに、ここのひやむぎは素麺と同じ製法、つまり油を使って伸ばすので喉越しが良い。ひやむぎはパサパサしてるから…って敬遠していた人も是非試してみてはいかがだろうか。
鴨方そうめん
岡山県。乾麺の一大産地。かつて「八ちゃん」ブランドでにゅうめんが美味かった横山製麺所があったのもここ。廉価品から大手のOEM、更にはうどん、そば、中華麺まで何でもあり。
和泉そうめん
愛知県安城で作られる手延べ素麺。小引き工程を経て一度乾燥させた麺を再加湿させる「半生もどし」を特徴とする。再加湿によりグルテンが活性化し独特のコシが生まれる。生麺ではないので日持ちこそするが通常の素麺よりは短くなる(賞味期限30日・脱酸素材封入で半年)。他の産地が冬に仕込むのに対し、ここは湿った風を利用するので初夏に仕込む。
大門素麺
富山県砺波市で作られる手延べ素麺。大門と言えばレミントンM31とレイバンを思い出す人も多いだろうが読みは「おおかどそうめん」である。大門素麺は2m近い長い麺を丸めて乾燥させた独特の形状で量も1束350g超えと茹でる量を間違えると悲惨である。通常は二等分にして茹でる。
稲庭素麺
秋田県湯沢市稲庭町(旧稲川町)で作られる手延べ素麺。稲庭といえばうどんだろ?とお思いだろうが、戦後になって素麺も作り始めている。他産地が油を使って伸ばすのに対し、産地の技術で油を使わない素麺を作れないだろうか(油抜きに時間がかかる)という思いから開発された。前述のように油を使わないため、ヘルシー志向、そして小麦の香りが強めである。
五色そうめん
愛媛県東温市で作られる手延べ素麺。寛永年間より伊予松山地域に素麵の製法が伝わり、徳川幕府や朝廷にも献上されるようになった。特に五色そうめん株式会社が製造する「五色そうめん」はその名の通り密柑・梅肉・抹茶などの天然素材を独自の製法で練りこんで作られた色鮮やかな素麺が特徴で、近松門左衛門や正岡子規も食している。また、伊予松山地域には五色そうめん以外にも手延べ素麵を作る製麺業者が複数あり、宇和島名物の鯛そうめんにも用いられている。
関連動画
関連静画
関連項目
- 4
- 0pt