キョウエイギア(Kyoei Gere)とは、2013年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牡馬。
ゴールドドリームとケイティブレイブ、後の世代ダート代表2頭を下して青森産馬として12年ぶりのGⅠ級勝利を挙げた、ディープスカイの代表産駒の1頭。
主な勝ち鞍
2016年:ジャパンダートダービー(JpnⅠ)
概要
父ディープスカイ、母ローレルアンジュ、母父*パラダイスクリークという血統。
父は2008年のNHKマイルカップと東京優駿を制した変則二冠馬。種牡馬としては急逝した父アグネスタキオンの後継として期待され、4年目までは100頭を超える牝馬を集めたが、初年度産駒の2歳戦の結果が散々で5年目から種付け数がガタ落ち。3年目の2013年産から2頭の世代ダートGⅠ級勝ち馬が出たことでちょっとだけ持ち直したが人気を取り戻すには至らず、2021年で種牡馬を引退した。キョウエイギアは最も種付け数が多かった(188頭)前述の3年目の産駒である。
母は中央で6歳まで条件戦を走り、船橋に移籍した7歳時に的場文男を鞍上に交流GⅡエンプレス杯を勝った青森産馬。キョウエイギアは第4仔。
母父はアメリカでGⅠを4勝し、1994年のジャパンカップで2着に入った馬。日本で種牡馬入りし、カネツフルーヴやテイエムプリキュアを輩出した。
同父の同期に全日本2歳優駿を勝ったサウンドスカイがいる。
2013年2月16日、母と同じ青森県三戸郡階上町のワールドファームで誕生した、いわゆる青森産馬である(生産者は場長の村上幹夫名義)。
オーナーは「共栄興産」という東京の不動産会社の代表・田中晴夫。企業名由来の「キョウエイ」冠名を用いている。「キョウエイ」冠といえばキョウエイマーチなどの松岡正雄が有名だが、冠名が被っているだけで無関係らしい。
馬名意味は「冠名+人名より」。歯車の「Gear」ではなく、「Gere」である。同じスペルである俳優のリチャード・ギアが由来だろう。
プリティー・UMAN
2歳~3歳春
栗東・矢作芳人厩舎に入厩し、2015年9月21日、阪神ダート1800mの新馬戦で中谷雄太騎手を鞍上にデビュー。9頭立てで8.9倍の6番人気で後方から内を追い込んで3着。
中1週で向かった同条件の未勝利戦で、今度は前目の位置から押し上げていくと、後方から追い込んできた1番人気のラニを5馬身ぶっちぎる圧勝で勝ち上がる。
この勝利で門別の北海道2歳優駿(JpnⅢ)に向かい、前走同様に前目から外を捲るように上がって行ったが、直線でフラフラしてしまい、追い比べに競り負けて4着に敗れる。
自己条件に戻ったが、1400mに短縮した中京の寒椿賞(500万下)は先行した2頭に届かず3着。ちなみにここでこの後何度も顔を合わせるケイティブレイブ(5着)と初顔合わせ。
中谷から川田将雅に乗り替わって阪神1800に戻した樅の木賞(500万下)でも直線で置いていかれて5着(ここでも一緒だったケイティブレイブは3着)。
明けて3歳、池添謙一が騎乗した平場の中山1800の500万下も後の重賞馬マイネルバサラにクビ差届かず2着と勝ちれない。
中谷雄太が戻った2月の小倉1700・くすのき賞(500万下)で先行策から押し切り、ようやく2勝目を挙げた。ちなみにこのレースには平地時代のメイショウダッサイ(11着)がいたりする。
というわけでジャパンダートダービーを目指し、中央の3歳ダートオープン戦線へ。伏竜S(OP)では前目から早めに押し上げて行く得意のパターンに持ち込んだが直線伸びず5着(ケイティブレイブ3着)。
青竜S(OP)でも同様に早めに押し上げて直線残り400mで先頭に踊り出たが、後ろから2頭に差されて3着と賞金を積めない。
このままではJDDに出られないので、なんと連闘で京都の鳳雛S(OP)へ。松若風馬に乗り替わったキョウエイギアは、枠なりに内の好位で進めると、直線で抜け出してからは松若騎手曰く「手応えよりもしぶとく伸びてくれました」という粘り腰の脚を見せてマイネルバサラの追撃を振り切り勝利。連闘策が実ってJDD出走への賞金を手にした。
2016年ジャパンダートダービー
というわけで迎えたジャパンダートダービー(JpnⅠ)。1番人気はここまで5戦4勝、ユニコーンSを勝ってきたゴールドアリュール産駒、川田将雅騎乗のゴールドドリーム(2.3倍)。2番人気は伏竜Sを勝ちユニコーンS2着のミルコ・デムーロ鞍上ストロングバローズ(2.3倍)。3番人気はゴールドドリームを兵庫CSで7馬身ちぎって逃げ切ってきた武豊騎乗のケイティブレイブ(4.8倍)。当時から「骨っぽいメンバー」と言われていたが、後にダートGⅠ級5勝と3勝を挙げる世代の代表2頭が1番人気と3番人気にいるという、後から振り返っても豪華なJDDであった。
新たに戸崎圭太を鞍上に迎えたキョウエイギアは、この三強から離された14.2倍の4番人気。まあ実績的にもこの三強に勝ったことがあるわけでもないので仕方ない評価である。
しかし、その評価をキョウエイギアは見事に覆してみせる。
レースは兵庫CSと同様にケイティブレイブが逃げを打ち、後ろを5馬身ほど突き放して1000m61秒8の速めのペースで逃げる。ストロングバローズとダノンフェイスが2番手でそれを追い、キョウエイギアとゴールドドリームがその後ろにつけた。
3コーナー前で逃げるケイティブレイブと後続の差がぐっと詰まってきたが、コーナーで再びケイティブレイブが突き放して迎えた直線。逃げ切りを図るケイティブレイブを、後ろで内からダノンフェイス、ストロングバローズ、ゴールドドリーム、東京ダービー馬バルダッサーレ、そして大外キョウエイギアの5頭が横並びで追う。
残り300m、横並びの5頭が崩れた。ストロングバローズが失速して後退、そして他3頭をかわして抜け出したのは、大外キョウエイギア! 前で逃げ粘るケイティブレイブを残り200mで捕まえると並ぶ間もなく抜き去り、あとは突き放す一方。終わってみればゴールドドリームを歯牙にもかけず、ケイティブレイブを4馬身ちぎり捨てる圧勝でゴール板を駆け抜けた。
矢作師も「ここまで強い競馬をしてくれるなんて、びっくりしました。嬉しい驚きです!」と驚く完勝。戸崎騎手は大井競馬場出身、矢作師も父が大井の調教師、前述の通り母ローレルアンジュは地方時代船橋所属と南関東に縁のあるチームで勝ち取った大井のビッグタイトルであった。ちなみに田中オーナーはこの日が誕生日で、馬主生活35年目で初のGⅠ級勝利という最高の誕生日プレゼントとなった。
そして何より青森産馬としては、2004年の川崎記念を勝ったエスプリシーズ以来、実に12年ぶりのGⅠ級勝利。母ローレルアンジュと母仔で青森産馬による交流重賞制覇という快挙である。翌2017年の八戸の1歳馬セリでは11年ぶりに総売上が1億円を超えたそうで、青森の生産者には大きな励みとなる勝利となった。
その後
強力メンバーのJDDを勝ったことで当初予定していたレパードSをパスし、秋の交流GⅠ戦線に目を向けることになったキョウエイギア。暮れの東京大賞典を大目標に定め、矢作師は翌年の海外遠征も視野に入れていたのだが……。
古馬との初対決となったシリウスS(GⅢ)ではミルコ・デムーロを迎えたが、2番手から直線で沈んで8着。続くみやこS(GⅢ)ではミカエル・バルザローナを迎えるも、出遅れからあまり見せ場なく7着。
そしてレース後に右トモの遠位端骨折が発覚。全治6ヶ月とのことで休養に入ったのだが……。
その後、何度か復帰情報が出たものの、結局レースに復帰できないまま2年以上の時が過ぎ、2019年2月に競走馬登録抹消。現役引退となってしまった。
その間、JDDで下したゴールドドリームとケイティブレイブはダートGⅠ級を勝ちまくり、JDDの勝者と敗者で明暗はくっきりと分かれてしまった。JDDまでがかなりの使い詰めだっただけに、その後焦らず一旦ゆっくり休養を取っていればどうなっていただろう……というのは詮ない話ではあるが、JDDの勝ち方を見るともっと活躍できた馬だった気はする。
引退後は故郷のワールドファームで種牡馬として繋養され、4年間で10頭に種付けしたが受胎率がよろしくなく、生産は3頭きり。2023年限りで種牡馬を引退、その後は引退名馬繋養展示事業の対象となって引き続きワールドファームで功労馬として繋養されている。
血統表
ディープスカイ 2005 栗毛 |
アグネスタキオン 1998 栗毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
アグネスフローラ | *ロイヤルスキー | ||
アグネスレディー | |||
*アビ 1995 栗毛 |
Chief's Crown | Danzig | |
Six Crowns | |||
Carmelized | Key to the Mint | ||
Carmelize | |||
ローレルアンジュ 1999 鹿毛 FNo.A13 |
*パラダイスクリーク 1989 黒鹿毛 |
Irish River | Riverman |
Irish Star | |||
North Of Eden | Northfields | ||
*ツリーオブノレッジ | |||
*スマートダーリン 1982 鹿毛 |
Alydar | Raise a Native | |
Sweet Tooth | |||
Smartaire | Quibu | ||
Art Teacher |
クロス:Northern Dancer 5×5(6.25%)
関連動画
2016年JDDの動画が生主のニコ生の切り抜きしかないんですけど!
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