ディーマジェスティ(Dee Majesty)とは、2013年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。
世代3強をまとめてレコードタイムで打ち倒した2016年の皐月賞馬。
主な勝ち鞍
2016年:皐月賞(GI)、セントライト記念(GII)、共同通信杯(GIII)
概要
父ディープインパクト、母エルメスティアラ、母父*ブライアンズタイムという血統。
父は説明不要の無敗三冠馬&無敵のリーディングサイアー。
母は未出走で繁殖入り。
母父はナリタブライアンやマヤノトップガン、サニーブライアンなどを輩出し、*サンデーサイレンスや*トニービンとともに90年代の日本競馬を牽引した大種牡馬。
本馬の血統を語る上で最も話題に挙がるのは、母母*シンコウエルメスだろう。彼女は兄に1991年の英・愛ダービーとキングジョージを3連勝したジェネラス、妹にも2001年の愛1000ギニー・英オークスを連勝したイマジンがいる超良血馬。しかしデビュー戦を敗れたあと調教中に重度の骨折を負ってしまい、獣医からも予後不良として安楽死を勧められるほどだった。しかしこの良血馬をなんとか牧場に帰してあげたいと、藤沢和雄調教師が手術を決断、なんとか成功して命を繋いだ。そしてその孫世代から本馬とタワーオブロンドンという2頭のGI馬が出たことで知られる。
2013年3月24日、新ひだか町の服部牧場(主な生産馬にイシノサンデーなど)で誕生。オーナーはホエールキャプチャなどを所有した嶋田賢(医師)。主戦騎手はそのホエールキャプチャの現役後半の主戦を務めた蛯名正義で、2戦目から引退まで騎乗した。
馬名意味は「父名より+威厳」と登録されており、父ディープインパクトから「ディープ」ではなく「ディー」だけ貰ったということになる。「ディープマジェスティ」じゃ10文字だから仕方ないのか。
堂々とあれ
2歳~3歳2月
ともに蛯名正義の手綱で凱旋門賞2着になったエルコンドルパサーやナカヤマフェスタで知られる、美浦の二ノ宮敬宇厩舎に入厩。
デビューは2015年9月5日、札幌・芝1500mの新馬戦。このレースのみクリストフ・ルメールが騎乗、4.1倍の3番人気。最内枠から先頭集団を見るような位置で進め、直線で上がり最速で追いかけたが、逃げ粘ったキングライオンをハナ差かわしきれず2着。
続く9月26日の中山・芝1800mの未勝利戦からは蛯名正義が騎乗。1.6倍の断然の1番人気に支持されたが、スタートで出遅れる。後方から押し上げていき、直線では最内を突いて断然の上がり最速で追いかけたものの、またも逃げ馬マイネルファンを捕らえきれず2着。
3戦目は11月23日の東京・芝2000mの未勝利戦。2.6倍の1番人気に支持され、ここは外枠から中団で折り合いをつけて進み、直線残り300mで一気に外から抜け出すと、上がり33秒5の末脚で同じディープインパクト産駒の2番人気マウントロブソンの追撃をクビ差振り切り勝ち抜ける。
この好内容での勝利で、年末はホープフルステークス(GII)に登録したが、レース当日の早朝にフレグモーネを発症。あえなく出走取消となってしまった。
明けて3歳、気を取り直しての初戦は出世レースの共同通信杯(GIII)。ここはクラブ募集額1億円、2戦2勝のホープフルS勝ち馬ハートレーが断然の1番人気で、2番人気は3戦2勝の東スポ杯勝ち馬スマートオーディン。まだ1勝馬・重賞実績なしのディーマジェスティは22.6倍、10頭立ての6番人気だった。
稍重の馬場となったレース、中団後ろに構えたディーマジェスティ。4コーナーで蛯名騎手が鞭を入れるも反応は鈍い。しかし直線に入り、馬場に脚を取られた先行勢が崩れ始めると最内を突いて上がって行き、残り200mで馬場の真ん中に持ち出すと前を行くイモータルを力強く捕らえてかわし1着でゴール。重賞初制覇を飾った。
……しかしこのレース、1番人気ハートレーは9着、2番人気スマートオーディンは6着に撃沈したこともあって、道悪のせいか、それとも単に人気どころが過大評価だったか……という感じで、ディーマジェスティの勝利はそれほど高く評価されたわけではなかった。
2016年皐月賞
共同通信杯の勝利で賞金も足りたので、トライアルは使わず皐月賞(GI)へ直行したディーマジェスティ。この年の牡馬クラシックは「3強対決」として非常に盛り上がっていた。
1番人気は無傷の3連勝できさらぎ賞を圧勝してきたサトノ軍団の悲願を背負う2億円ホース・サトノダイヤモンド(2.7倍)。2番人気は父キングカメハメハ・母シーザリオの超良血2歳王者・リオンディーズ(2.8倍)。そして3番人気は弥生賞でそのリオンディーズを破り、これまた無傷の3連勝で乗りこんできたマカヒキ(3.7倍)。
そんな中でディーマジェスティは単勝30.9倍の8番人気。かつて未勝利戦で破ったマウントロブソン(スプリングS勝ち、6番人気)にも人気で負けていた。まあ、実際前走は道悪だし上記3強とも戦っていないし、この時点でディーマジェスティを高く評価するのは難しかっただろう。
しかし、このレースでディーマジェスティは「3強対決」を楽しみにしていた競馬ファンをあっと言わせる。
晴れの良馬場発表ではあったが、当日も雨が降ったり止んだりでやや渋り気味の馬場。おまけにこの日の千葉は強風が吹いており、向こう正面では強い向かい風が吹きつけて騎手がペースを把握しづらいという、難しいコンディションでの開催となった皐月賞。リスペクトアースがハイペースで逃げ、リオンディーズが2番手でそれを追う展開。大外8枠18番のディーマジェスティはスタートで外に膨れて出遅れたが致命的なロスにはならず、ハイペースに付き合うことなく後方待機の展開となる。
3コーナーで早くも先行勢が崩れだしてリオンディーズが抜け出し、直線で押し切りを図るリオンディーズに4番人気エアスピネル、さらにサトノダイヤモンドが迫る。だが苦しくなったリオンディーズが残り200m手前で鞭に反応して外にヨレ、エアスピネルとサトノダイヤモンドの進路を妨害してしまう(これでリオンディーズは4位入線から5着に降着)。
それを横目に、ここぞとばかりに残り100m、外から全く違う脚色で一気に前を呑み込んだ馬がいた。
ピンクの帽子、8枠18番ディーマジェスティ!
沈み込むようなパワフルな走りであっという間にリオンディーズらを置き去りにすると、最後方から猛烈に追い上げてきたマカヒキを寄せ付けず、1と1/4馬身差をつけてゴール板に飛び込んだ。
タイムは1:57.9。ラブリーデイのコースレコードまで0.1秒の堂々たるレースレコードである(翌年にアルアインに更新されたけど)。人気馬が撃沈した共同通信杯とは違い、2着マカヒキ、3着サトノダイヤモンド、4着エアスピネル(繰り上げ)、5着リオンディーズ(降着)で掲示板残り4頭は1~4番人気が占めただけに、はっきりとその強さを見せつけるような勝利だった。
「4強対決」、そして……
続く日本ダービー(GI)では、「3強対決」は「4強対決」に変わっていた。ディーマジェスティは3強を上回り、僅差ながら単勝3.5倍の1番人気に支持されたのである。また蛯名騎手にとっては、2年前に1番人気イスラボニータで2着、4年前にもフェノーメノで2着。年齢的にもほぼラストチャンスと言ってよく、なんとしてもダービージョッキーの称号を掴み取りたいレースだった。
レースでは中団に構えたマカヒキとサトノダイヤモンドを見るような位置で進めたが、レースは直線での瞬発力勝負になり、こうなるとズブいところのあるディーマジェスティは分が悪い。直線で外に持ち出したが先にマカヒキとサトノダイヤモンドに抜け出され、ようやくエンジンがかかったときは時すでに遅し。2頭の8cm差の激闘から半馬身遅れて3着に敗れた。
二ノ宮厩舎&蛯名騎手のタッグということもあり、このダービーを勝っていれば凱旋門賞挑戦という話もあった(実際予備登録もしていた)のだが、結局は実現しなかった。
というわけで秋はセントライト記念(GII)から始動。スタートで不利を受け後方からになったが、ねじ伏せるように捲っていくと直線を力強く押し切り着差以上に強い勝利。単勝1.4倍の圧倒的な支持に応え、皐月賞馬として堂々たる貫禄を見せる。
二冠を目指した菊花賞(GI)では、リオンディーズは屈腱炎、マカヒキが凱旋門賞に向かったため、サトノダイヤモンドとの2強対決となり3.2倍の2番人気。レースは中団後方でサトノダイヤモンドを見ながら進め、中盤に大きくペースが緩んだときも慌てずじっと構えると、4コーナー前からサトノダイヤモンドと馬体を併せるようにして捲っていく。しかし、蛯名騎手が鞭を振るっている一方で、サトノダイヤモンドは持ったまま。相手がギアを上げると一気に突き放され、それ以上追いすがることはできないまま、サトノ軍団の悲願達成の後ろで4着。
蛯名騎手は「敗因は距離じゃない」「今日は最初から進んでいなかった。なぜかな」と首を捻っていたが、結局この時点で彼の心は既に燃え尽きかかっていたのかもしれない。
続いて挑んだジャパンカップ(GI)は、終始後方のまま13着に撃沈。勢いに乗って有馬記念でキタサンブラックを破ったサトノダイヤモンドとは、残酷なほどに明暗が分かれた。
明けて4歳は天皇賞(春)を目標に日経賞(GII)から始動したが、追い込み切れずに6着まで。そして天皇賞(春)(GI)では8番人気まで評価を落とし、後方から捲っていこうとしたが見せ場はつくれないまま、キタサンブラックのレコード勝利の後ろで6着。
その後は立て直しのため休養に入ったが、元々あった爪の不安が顕在化。復帰を目指したものの叶わず、11月に現役引退となった。通算11戦4勝。
某競馬評論家が2016年のダービーを評して「史上稀にみるハイレベルなメンバー構成のダービー、という下馬評でしたが、皐月賞と同じく1~3着はディープインパクト産駒が占めました。この3頭は、他の2頭がいなければいずれも三冠馬になりうるハイレベルな競走馬で、それがたまたま同じ年に現れたということだと思います。」と自身のブログに記したように、春のクラシックの段階では評価の高い馬が評判通りの激闘を繰り広げた非常にハイレベルな世代と目されたものの、その後、古馬となってからはその面々が揃って苦しんだ2016年クラシック世代。
ディーマジェスティの競走生活をまとめれば、クラシックで燃え尽きてしまった、まさに世代を象徴するような馬だった……となってしまうのは致し方ないかもしれない。それでも皐月賞で3強&エアスピネルをまとめて薙ぎ払った豪脚と、3強を上回って1番人気に支持されたダービーでも決して皐月賞がフロックだったとは言わせない走りを見せて、この年のクラシックをさらに盛り上げたことは、もうちょっと評価されてもいいとは思う。
引退後
引退後はアロースタッドで種牡馬入り。産駒は2021年からデビューしている。既に飽和気味のディープ後継ではあるが、果たしてここから種牡馬として存在感を見せられるか。
ニコニコ的には、リアルダビスタ企画の繁殖牝馬・シュシュブリーズの僚馬ハルダヨリが産んだハルオーブの父である。
血統表
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ウインドインハーヘア 1991 鹿毛 |
Alzao | Lyphard | |
Lady Rebecca | |||
Burghclere | Busted | ||
Highclere | |||
エルメスティアラ 1998 鹿毛 FNo.4-n |
*ブライアンズタイム 1985 黒鹿毛 |
Roberto | Hail to Reason |
Bramalea | |||
Kelley's Day | Graustark | ||
Golden Trail | |||
*シンコウエルメス 1993 鹿毛 |
Sadler's Wells | Northern Dancer | |
Fairy Bridge | |||
Doff the Derby | Master Derby | ||
Margarethen |
クロス:Hail to Reason 4×4(12.50%)、Northern Dancer 5×4(9.38%)
関連動画
関連リンク
関連項目
- 競馬
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- 2016年クラシック世代
- リオンディーズ / マカヒキ / サトノダイヤモンド
- ディープインパクト / シンコウエルメス / タワーオブロンドン
- ホエールキャプチャ
- 蛯名正義
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