この記事で扱うトラックとは、貨物自動車(Truck)のことです
以降は特筆しない限り、テレビゲームを前提に記述していく。またGTAのようにトラック「も」運転できるゲームは除外し、トラックや貨物輸送を主たる題材にしたゲームについて扱っていく物とする。
概要
トラックの運転や運送を題材にしたゲームのこと。一般的にはトラックゲームと言う独立したジャンルがあるわけではなく、レースゲームやドライブゲーム、ドライビングシミュレーター、或いは経営シミュレーションなどのカテゴリの中で扱われることが多い。
その歴史は意外に古く、遅くとも1980年代には既に存在しており、今日でも世界の各メーカーから新作が発表されている。一年間に販売されるゲームの数を考えればごく一部の存在に過ぎないが、それでも世界中に一定のファンがいるジャンルと言えるだろう。
トラックゲームの構成要素
トラックを題材としたゲームを一つのジャンルと見なしたとすると、それを構成する要素は幾つかある。全てのトラックゲームが全てを取り入れているわけではなく、各作品のコンセプトに応じて取捨選択が行われている。
トラックゲーム前史 - 大衆文化におけるトラック
トラックのゲームが登場する以前から、トラックやトラック運転手は大衆文化の中で取り上げられてきた。大きな体躯に沢山の荷物を積み、遠く離れた町から町へ、田舎から田舎へ走るトラックの姿は、楽曲や映画で取り上げられてきた。大衆文化の一翼を担うゲームもまた、そういったものの影響が見受けられる。
ここではトラックゲーム前史として、トラックを題材にした大衆文化やコンテンツについて軽く述べていく。
海外: 音楽と映画と
トラックやトラック運転手を題材にした音楽や映画は海外に数多ある。その興りの最初がいつだったかは定かではないが、音楽については1966年に「Roll ,Truck, Roll」が公開され、映像作品ではアメリカNBCテレビのドラマ「Movin' On」が1974年と1976年に放送されている。恐らくはそれ以前からも作品はあったであろう。
特筆すべきは楽曲を原作とし映画化もされた「Convoy」である。楽曲は1975年にC.W.マッコールによるものが発表され、それを基にした映画版は1978年に公開された。CB無線での運転手同士のやりとりと、隊列を組んで北米大陸を横断するトラック何台もの大型トレーラーが連なって走る様を描いた歌と、それを映像化した映画版。どちらも人気作となり、歌の方は多くの歌手にカバーされつつ今でも歌われている。
ヨーロッパでもトラックは楽曲の題材となっており、アイルランドではアメリカから伝わったカントリーソングを基にしたアイリッシュカントリーが盛ん[1]。そしてアイルランドのカントリー歌手は、トラックや運転手を題材にした曲が数多く歌っているのである。
日本: 映画「トラック野郎」とデコトラブーム
トラック野郎の記事も参照
国内の作品にとっては少なからず影響を受けた、むしろこの映画が無かったら国内ではトラックゲームは作られなかったのではないか、というほど影響が大きいのが映画「トラック野郎」である。
映画の内容は、菅原文太演じる「一番星」 こと星桃次郎と、愛川欽也演じる「やもめのジョナサン」こと松下金造の二人のトラック運転手が、それぞれ派手にカスタマイズされたトラック(デコトラ)を転がし日本全国を旅する娯楽活劇である。1975年に一作目が公開されると人気作品になり、1980年までに計10作品が製作された。これによってデコトラブームなるものが起き、満艦飾のトラックは大人のみならず子供達の間でも人気となる。
この映画が国内のゲームに多かれ少なかれ影響を与え、作品にもよるがキャラクターが桃次郎ぽかったり、どう見てもトラック野郎のゲーム化としか思えないようなものもある。もちろんゲームのみならず、それ以外の分野でも映画の影響はある。例えば プラモ界の狂犬 こと青島文化教材社(アオシマ)が、デコトラ系のプラモを今でも生産しているのはトラック野郎がきっかけなのである。ちなみに「デコトラ」という言葉はアオシマの登録商標になっている。
このように、サブカル方面とトラック文化を融合させる多大な影響を与えたのがトラック野郎なのである。
ボードゲーム
コンピューターゲーム以前のトラックゲームとしてはボードゲームがある。ボードゲーム情報サイトのBGGによれば、1976年に「Breaker 19: The CB Trucker Game」、1978年に「18 Wheeler」、1980年に「DAF Transport Game」が発表されている。
トラックゲーム史 1980年代~1999年
この時代は2D時代から3Dグラフィック初期にあたる。ゲーム専用機にせよパソコンにせよ、家庭に入ってきたコンピュータが勢いよく発達していた時代。デジタル世界に生まれたトラックゲームは、大きな変化を遂げつつ進化していく。
Trucking U.S.A. (コモドール64 1983年)
ドイツは昔からドイツ!- ドイツ発のトラックシミュレーション
コモドール64で発売されたトラックシミュレーションゲーム。コピーライト表示によればVRILという会社が権利を保有している。ゲームで使用されている言語がドイツ語であることから、多分VRILはドイツの会社であろう。内容はアメリカを舞台にしたトラック運行シミュレーションであり、この点から言えば18 Wheels of Steel(18WoS)やAmerican Truck Simulatorの先行作品になる。シミュレーションゲーム大国であるドイツは、40年前からドイツであったのだ。ドイツの会社なのになぜアメリカかと思うかもしれないが、18WoSやATSを開発したSCS Softwareもチェコの会社なので、特に不思議に思う事は無い。アメリカはトレーラートラックの聖地だから仕方ないね。
ゲーム画面を見ると最初に積荷を選び、積載量などの設定を行っている…ように見える。上記の動画でゲーム画面に表示されるドイツ語を、グーグル翻訳に打ち込んで英訳したものに基づくが、これでだいたいあってるはず。積載量設定画面で 20000kgまで合法 と出ているので約44000lbs積めるということ。連邦橋梁荷重規制の連結総重量80000lbsと差し引きすると、このトラック+トレーラーの自重(Curb weight)は36000lbsである。トレーラーがアメリカで一般的なバン型2軸で14000lbsと仮定すると、トラックが22000lbs。長距離輸送用トラックで、当時の少し豪華なスリーパーをつけるとこの程度の重量にはなりそうなので、積載量の数字は結構リアルだろう。
運行を開始すると運転席画面になる。ハンドルの横にMACKと書いてあるから、これはMACKのトラックである。1978年に公開された映画「コンボイ」で、主人公の"ラバーダック"ことマーティン・ペンウォルドがMACK RS700に乗っていたので、これの影響かもしれない。俺はラバーダックだ、誰がなんと言おうとラバーダックなんだ。
このゲームでは今日のゲームのような「運転」はできない。ハンドル操作はなく、速度は数字の入力で制御し、途中で表示される選択肢で行動を実行していく。動画では運行開始後、速度を80MPHにして走っていると瞬く間にパトカーがやってきて速度超過で検挙された。やはりドイツだ法に厳しい。カリフォルニア州の大型車の制限速度は最高で55MPH。25MPH超過で罰金$90です[2]。時間経過の概念もあり、走っているうちに左上にある曜日が経過し、また画面が暗転し夜にもなる。
運転こそできないものの、運行シミュレーションとしては当時の技術水準でよく考えられたものと言えるだろう。
Time Trucker (コモドール64 1985年)
指定時間に発荷主を回れ! - なんかかわいい (*´ω`*)
見おろしマップの中でトラックを動かし、荷主を回って貨物を集めるゲーム。海外の解説記事によれば教育ソフトだったようだ。
マップはラリーXのような迷路になっており、マップ各所に発荷主が点在している。貨物はいちご、レモン、すいか、ぶどう、さくらんぼ、洋梨の6品目。集荷はいつでも行えるわけではなく、荷主が指定した時間に訪れなければならない。それ以外の時間に訪れても門が閉められていて集荷できないのだ。
音楽もキャラクターも可愛いが、運送業界の世知辛い部分がよく表現されている。
頑張れトラックボーイ・ペイロード (MSX 1985年)
動画 |
1985年にMSXで発売されたもので、恐らくはトラックゲームの中でも初期の作品に位置するものでろう。内容は、トラック運転手となった主人公が日本各地に荷物を配達してお金を稼ぎ、100万(円ではないらしい)を貯めて会社設立を目指すというもの。
このゲームで特筆すべきは、後のトラックゲームにおいて重要な構成要素となるドライブ、運行、経営、カイスタマイズの要素を既に備えていること。プレイヤーは各地のマップ内を走り、荷主の所で貨物を受注しトレーラーを連結。トランスミッションで前後進を切替え、アクセル、ブレーキ、ハンドルでトレーラーを制御し運転する。荷物には配達期限があり、それを破らないように配達しなければならない。マップ内には一般車両が交通法規に則って走っており、事故を起こさないようにしなければならない。法規は自分にも課せられているので、破ると警察に捕まり罰金と行政処分を食らう。トラックの燃料を消費するのでガス欠にならないように補給し、稼いだお金でトラックをチューナップすれば重い荷でも速度の低下は抑えられ、運転して疲れたら疲労を回復しなければならない・・・といった具合。
また、今にして思えば(というか多分当時も)かなりトンデモない要素も含まれている。プレイヤーキャラは運転していくうちに疲労していくのだが、これを回復する手段として「酒」「眠気覚まし」がある。本来はトラックをどこかに止めて回復させるのだが、これらを使うことで簡単に回復することができ、特に眠気覚ましは一発で疲労がポンっと飛ぶと言う。
引き受ける仕事も過積載や、極端に指定時刻が近い物などひどいものがある。これらの仕事を引き受けると、必然的にプレイヤーは道交法違反で運ぶしかない。まぁ実際にそう言う仕事があるかないかで言えばあるのだが、ゲームでそれを再現したことで、世知辛いリアルさが醸し出される。しかも確実に100万貯めるためには、どうしてもこういう仕事を引き受けつつ、酒とヒロポンで眠気を覚ましながら走るしかないと言うのが・・・。
後発の作品と比べても色んな意味で特異ではあるものの、先述の通りトラックゲームの構成要素をふんだんに盛り込んだと言う点で、このジャンルのパイオニアと言って良いだろう。
参考資料
Crosscountry USA (Apple II 1985年)
Crosscountryシリーズの記事も参照
- Crosscountry USA for the Apple II [Part 01/02] - youtube
- Crosscountry (video game series) (英語版wikipedia)
Apple IIで発売されたトラック運行シミュレーションゲーム。本作は学校教育において、生徒が主に地理を学ぶ目的で開発された教育ソフトであり、一般販売はされなかった。顧客は州や自治体など教育行政当局や学校の運営母体で、ソフトは学校に納品された。対象学年は1年生~9年生(小1~中3)。どのように使用されたかは詳細は不明だが、学校のコンピュータールームで生徒が遊んだと思われる。
これ以降はシリーズ化が行われた。1986年にはカナダを舞台にした「Crosscountry Canada」が発売され、カナダの学校で使用された。1987年にカリフォルニアを舞台にした「~ California」とテキサスを舞台にした「~ Texas」が、1992にノースダコタが舞台の「~ North dakota」が発売された。ノースダコタに関しては同州当局からの要請に基づいて開発したもので、州内地理の教育に使用されたという。1995年には唯一の一般消費者向け商品である「~ USA Home Edition」がMS-DOSで発売されており、グラフィックやサウンドの改善の他、シリーズ初のGUIを採用している。2002年にはナンバリングの続編として「USA 2」「Canada 2」がwindowsで発売された。
17年に渡って展開された長寿シリーズで、しかも学校教育を目的としたゲームソフトという出色の作品である。
ゲームシステムはUGI以前は、所謂コマンド入力式アドベンチャーであった。初期のPolice Questのようなものを思い浮かべるとわかりやすいだろう。一例をあげると…
- get in (out) truck : トラックに乗る(降りる)
- start engine : トラックのエンジンをかける
- turn on (off) light : ライトを点ける(消す)
- use radio : ラジオを聞く
- look around : あたりを見る(探す)
- map : 地図を表示
というもの。移動はマップで現在地と道路が伸びている方向を確認し、行きたい方向のコマンドを入力する。北へ向かう時は N 、南東へ向かう時は SE という具合。移動に伴い燃料を消費するので、街ではスタンドを探して給油する。また主人公である運転手は空腹になる仕様なので、街でレストランを探して食事をしなければならない。お腹がすいていると仮眠も取れないのだ。結構細かい。当然の事だが、学校で子供の教育に使用されるソフトであるから、酒を飲んだり疲労がポンッ!はない。
アメリカントラック (PC-66、MSX他 1985年)
動画 |
アメリカントラック (PC-6601版) - EGGのダウンロード販売
日本テレネット(かつて存在した東京のゲームメーカー。京都の通信事業者は無関係)から発売されたトラックアクションゲーム。プレイヤーであるトラックドライバーはNASAから極秘文書の運ぶ任務を請け負った。行く手には様々な妨害があるが、プレイヤーが駆る18輪は頑強な装甲で守られあらゆる車を弾き飛ばし、おまけに200km/hで走行できる。このビーストの力を使い、極秘文書を無事に届けるのだ!。
…という内容の作品。上記のプレイ動画を見て貰えればわかるがロードファイターのような画面であり、プレイヤー車両がコルベットではなく大型トレーラーになったようなもの。車が右や左に動くと、トレーラーのドット絵が斜めにずれて連結車体の屈曲を再現するなど、地味に工夫されている。
爆走デコトラ伝説 (PS 1998年)
動画 |
言わずと知れた、国内トラックゲームの有名どころ。トラック野郎の世界観を正しくゲーム化したものである。トラック運転手となった主人公は伝説のトラッカーを目指し、各地のライバルと高速道路でワッパ勝負を繰り広げて行く。その他に類を見ない作風が人気となり、シリーズ化されていった。またデコトラ伝説も含めて、これ以降に登場するトラックゲームは、携帯機用やブラウザゲームを除いて3Dグラフィック化して行く。
このゲームは「ストーリー」「ワッパ勝負」「トラックのカスタマイズ」に力点が置かれている。ストーリーに関しては、どう見ても大御所俳優としか思えないライバルキャラが多数登場し、彼らとの対決を通じて展開して行く。ワッパ対決は、要は先にゴールした方が勝ちと言うことなのだが、トラック野郎の世界なので妨害行為も何でもあり。一般車を拡声器で怒鳴り散らしてライバルの前に移動させることも。トラックのカスタマイズとは、もちろん愛車を格好良いデコトラにしていくこと。
運転はゲーム性を重視してかなり簡略化されている。車線変更システムと呼ばれるものがそれで、トラックはハンドル操作をしなくても車線に沿って走り続ける。そして隣の車線に移動する時に、十字キー左右を二回押すことで車線変更をするのである。これによりアクセル、ブレーキ、車線変更だけで走ることができる。確かにリアルではないが、これは素人でもワッパ勝負を楽しむ為に取られたものであり、このゲームの個性と言えるだろう。
BGMとして多数の演歌が収録されており、北岡ひろしなど実力派が起用されている。演歌はオリジナル曲が多く、それらを手がけたのは志倉千代丸。「花恋唄」「心変わり」は今でも評判が高く、後の作品でも新録されたものが使われた。
昨今はすっかり新作が途絶えてしまったが、復活して欲しいトラックゲームの一つである。
Hard Truck (PC 1998年)
爆走トラック ロシア発世界行き! - これぞ地球規模のワッパ勝負!
HARD TRUCK: Road to Victory (1998) - youtube
トラックシミュレーターシリーズの記事も参照
ロシアのSoFTLab-NSKが開発し、アメリカのValu Softが供給したトラックゲーム。ライバルとワッパ勝負をしながら荷物を運ぶという内容である。使用するトラックは全て実名なのだが、ちゃんとメーカーのライセンスを受けたかと言うと甚だ疑問。
トラックゲーム史 2000年代
3Dグラフィックが一般化し、グラフィックはよりリアルで高精細に、そして演算処理が向上したことで複雑なシミュレートも可能になった時代である。
トラックゲームも3Dが中心になり、またかつてトラックボーイ・ペイロードが試みたトラックの運行シミュレーションが増えていく。
エイティーン・ホイーラー (AC・DC・PS2など 2000年)
唸るファンキーヘビーハウラー - 日本人よ、これがアメリカだ!
動画 |
セガがアーケード向けに開発し、後に家庭用機に異色されたもの。トラックゲームとしては数少ない、アーケードで遊べるものだった。筐体は大きなハンドルがついており、普通のハンコンとは違いトラックらしい運転操作ができた。とは言え、昨今のトラックのハンドルは大型車でもそこまで大きくはないが・・・。尚、これで使用されたのと同型の筐体は後に「東京バス案内」のアーケード版でも使用された。
内容はワッパ勝負モノ。アメリカの公道を舞台にしているのが特徴。プレイヤーは予め用意された三人のキャラクターとキャラ固定のトラックを選び、積荷を選んで運んでいく。途中でライバルが邪魔してくるので潰してやろう。
ボーナスステージではトラックの車庫入れを体験する。プレイヤーが運転しているのはトレーラーなので、バックで車庫入れする時はハンドル操作が前進と逆になり、またトラクターとトレーラーの角度があまり大きくならないように注意しなければならない。決してリアルな操作感を重視したゲームではないものの、この点では割りとリアルである。
トラック狂走曲 (AC・PS2 2000年)
動画 |
エイティーン・ホイーラーと同時期に稼動を始めたアーケードゲームで、後にPS2に移植された。こちらはトラック野郎なワッパ勝負モノ(とも違うのか?)で、制限時間内にゴールを目指していく。ところどころにショートカットコースがあり、そこをランナバウトのように走っていくことも可能。
Hard Truck:18 Wheels of Steel (PC 2002年)
動画 |
※動画は5作目の「~Haulin'」のもの |
トラックシミュレーターシリーズの記事も参照
先述のHard Truckの流れを汲む作品だが、開発がチェコのSCS Softwareに変わった。供給は引き続きValu Soft。ワッパ勝負の要素を完全に排し、トラックの運転と運送会社のシミュレーションに特化したものである。舞台となるのはカリフォルニア州で、プレイヤーはここで荷物を運ぶ仕事を引き受けながら金を稼ぎ、トラックを高性能のモノに買い替え、運転手を雇ってトラックを増やし、お金を稼いで行く。
このゲームが後発のゲームに与えた影響は計り知れない。それまでは日本でも海外でも、トラックゲームと言えばワッパ勝負モノが結構あった。だが海外ではこれ以降はワッパ勝負モノが廃れて行き、シミュレーター・シミュレーション要素の強い作品が増えていくことになる。
運転以外のシミュレーション要素としては、ドライバーの疲労と休憩(酒とヒロポンはない)、危険物取扱資格、雇用した運転手の労務管理や配車、台貫での過積載チェックなどがある。過積載チェックがある、ということはこのゲームでは過積載ができたのだ。もちろん、それで台貫に入ると過積載で罰金を食らうので、プレイヤーは逃げることもできる。逃げるとパトカーが追いかけてくるが、高性能なトラックだと逃げ切ることも可能。今考えると、中々とんでもないことをしていたものである。
開発のSCS Softwareという名前を見て気付いた人もいるだろうが、このゲームはEuro Truck Simulator 2の源流に当たるゲームなのだ。じゃあなんで過積載なんて無法行為を入れていたかというと、実はこの頃はまだ自動車メーカーのライセンス購入が無く、単なるそっくりなスタイリングのトラックが出ていただけ。だからそういう無茶な仕様も可能だったのではないかと推測する。
この作品の人気がでたことで、以降は舞台を北米全体へと広げながら後継作品がどんどん作られていく。そうしてシリーズを重ね、やがてEuro Truck Simulator 2へと繋がるのだ。実に偉大な作品なのである。
Big Rigs:Over the Road Racing (PC 2003年)
動画 |
Big Rigsの記事も参照
もうすっかりお馴染み、クソゲーと言う言葉すら勿体無い3Dオブジェクトが動くプログラムことBig Rigs。しかも何が凄いって、名作と言われる18 Wheels of Steelの1年後に出てこれなのである。まぁその10年前でも許される内容ではないが。
本来の内容としてはワッパ勝負モノで、恐らくは初代Hard Truckのようなものを作りたかったのだろう・・・と思われる。しかしプレイヤーのトラックはセミトラクターでもトレーラーが連結されてないし、というか音も無いしタスクもなんだかよう分からんし当たり判定もないし、もうなんやねん。
こいつのせいでトラックゲームというジャンルが廃れてもおかしくなかった。だがゲームメディアのレビューが適切に酷評したことで被害が抑えられたこと、他に良作があったことなどがあり、最悪の事態は回避された。世界は僕らが思うより優しいらしい。
このように被害が少なかった(売れなかった)点は良かったのだが、逆に市場に出回る本数が少なく、また変に話題となって入手しようする人が増えたためか、amazonではプレミア価格が付いてる。amazon.jpを見ると、日本円で19,548円で取引されている(2014年12月6日現在)。大沢あかねが19歳の時(2004年)に出した写真集「サンキュ」の古本が、未だに1600円と言う比較的高値で取引されているのと同じことであろう。
爆走コンボイ伝説 男花道アメリカ浪漫 (PS2 2004年)
動画 |
スパイクが開発しカプコンから発売された、アメリカを舞台にしたトラックゲーム。スパイクはヒューマンから爆走デコトラ伝説を引き継いだ開発元なので、アメリカ版デコトラ伝説という風情の作品でもあった。
舞台となるのはアメリカの田舎にある家族経営の運送会社。プレイヤーは四人兄妹の一人を操作キャラとして選び、母ちゃんから次期経営者の地位を譲ってもらうべく、他の三人に負けないよう一定期間内にトラックで荷物を運んでお金を稼いでいく。途中で仕事の邪魔をしてくる警察やバイカーギャングを蹴散らしながら、積み荷を運んで大金を得ていくのだ。
これ以後のトラックゲーム作品は、トラックシミュレーターシリーズの成功もあってかシミュレーターが時代の中心となっていくが、本作はまだアクション要素が中心となっている。
フレイトタイクーン (PC 2007年)
動画 |
トラックの運転はせず、運送会社を経営するストラテジーゲーム。プレイヤーは運送会社の経営者となり、事業を拡張して売上と収益を増やしていく。
経営を行うにはトラックを購入してガレージに配置し、運転手を雇って各車に割り当て。またトラック整備士や事務員を雇い、会社組織を回していく。
18 WoSやETS2から運転要素を取り除き、運転手の雇用と管理の部分に特化した感じとでも言えば言いのだろうか。タイクーンと名のつくゲームは他にも色々でているが、運送会社を経営できるものはあまり多くないので、今日見のある人はこれをどうぞ。
Rig 'n' Roll (PC 2009年)
度重なる延着 - 気付いたら積荷 (ソフト)がそこにあった
動画 |
初代Hard Truckを開発したロシアのSoftLab-NSKが、再びトラックゲームに参入した作品。今度はワッパ勝負ではなくトラックシミュレーションとなり、舞台はカリフォルニア州とネバダ州。主人公はトラック運転手となり、荷物を運んで稼いで行く。
どうも最初はHard Truckを商標につけたかったようだが、権利関係で使えなかったらしく、副題のRig 'n' Rollが主題になって発売された。
このゲームの開発には実に9年が費やされている。逆算すると2000年ごろには開発が始まっているわけで、もしかしたら18 Wosよりも早い段階で同様の着想をしていたのかもしれない。しかし向こうが2002年には初代を発売し、以降も着々と新作を発売して行くのに対し、こちらは発売が2009年までずれ込んでしまった。途中、何度も発売延期のアナウンスがあったので、「開発中止かな」と思ったこともあった。それを考えれば、とりあえずちゃんと発売されて恩の字と言えるだろう。
グラフィックはそこそこ綺麗であり、内容に対する評判も決して悪くはない。ただ荷の到着が遅すぎた、それだけである。
グランドトラッカー・アニキ ~仕事と喧嘩と恋模様~ (DS 2009年)
DSで発売されたデコトラ系トラックゲームで、GTA:CTWのようなマップや画面が特徴。プレイヤーはトラック運転手となり、企業を再生すべく仕事を引き受けて荷を運んでいく。マップ移動中でのワッパ勝負もある。
この手のゲームにしては珍しく、プレイヤーキャラはトラックを降りることもある。また仕分けや洗車のミニゲームがある、喧嘩をする、女の子と恋愛があるなど、様々な要素からトラック野郎の世界を描こうとしている。
トラックゲーム史 2010年代
更に発達するグラフィック表現と、更に高くなる演算速度は、トラックゲームをより美しく高度にしていく。
Euro Truck Simulator 2 (PC 2012年)
動画 |
トラックシミュレーターシリーズ、Euro Truck Simulator 2の記事も参照
ニコニコで最も有名だと思われるトラックゲーム。SCS Softwareのトラックシミュレーターシリーズの一つで、2008年に発売されたEuro Truck Simulatorの続編。ヨーロッパを舞台に荷物を運び、資金を得て、トラックの購入やカスタムを行い、運転手を雇い、運送事業を営んでいく。
美しいグラフィックと広大なマップを持ち、18 WoSから始まった流れの現時点での集大成。運転のみならず運行管理、経営、カスタムなどの要素を備える。作中では実在するトラックメーカーが登場し、メルセデス・ベンツ、ボルボ、スカニア、MAN、DAF、IVECO、ルノーが実名で登場。登場車種も実車の新型発売に合わせて順次無料で追加されており、当初よりも車種が充実している。
MODには標準で対応。導入は簡単で、MODフォルダに.scs形式のファイルを入れ、プロフィールメニューでMODのチェックボックスにチェックを入れるだけ。MODでできることは新たな車両や積荷の追加、カスタムパーツの追加、マップの拡張、サウンドやテクスチャの変更、トラックのドライブコンピューターディスプレイの変更など多種多様。
ラジオストリーム機能を標準で備えており、ヨーロッパのラジオ局の放送をネット経由で聞くことができるほか、好みの曲をゲーム内の音楽プレイヤーでかけることも可能。
とことんドライブに拘った一作と言える。
Spintires (PC 2014年)
手に胼胝ができても、生活は楽にならないのです - イワンのばか
動画 |
Spintiresの記事も参照
イギリスのOovee社が、クラウドファウンディングで資金を集め開発したトラックシミュレーター。プレイヤーはロシアの僻地を舞台に、旧ソ連製のオフロードトラックを使って物資を運ぶ。
このゲームの特徴は泥濘路が再現されていること。通常、自動車を運転するゲームの路面は摩擦などのパラメーターはあるものの、例え悪路であってもタイヤが埋まるようにしてあるのは稀である。Spintiresはタイヤが埋まるような泥濘路があることで、全輪駆動やデフロックを使いこなしてそこを突破して行かないといけない。その点ではトラックゲームとしては勿論そうだが、ドライブゲーム全般を見ても突出した個性を持つといえる。
American Truck Simulator (PC 2016年)
動画 |
トラックシミュレーターシリーズ、American Truck Simulatorの記事も参照
SCS SoftwareがETS2で培った技術を用い、再びアメリカを舞台にした作品。新しい世代の技術を用いたことで、18WoSよりも美しいグラフィックになり、よりリアルな作品へと成長した。2014年発売予定という発表から2年近くまたされたが、まぁ良くあることだからしょうがない。
トラックゲーム史 2020年代
21世紀も最初の1/5が過ぎた。家庭用・PC問わずマシンスペックの向上と共に、トラックゲームも発展を続けている。
SnowRunner (PC、PS、Xbox 2020年)
動画 |
Spintiresの製作スタッフが元いた会社と袂を分かち製作した、事実上の後継作品となるもの。オフロードでの配送というコンセプトはそのままに、グラフィックの向上やシステム面での改良を施したもの。DLCが充実しており、Westrn Star 57Xという新しいトラックの他、ランドローバーなどオフロード4駆にも乗ることができる。
Alaskan Road Truckers (PC 2023年)
動画 |
広大な自然と過酷な環境、疎らな人口密度を持つアメリカ合衆国・アラスカ州を舞台にしたトラックシミュレーターゲーム。雪と氷で覆われた世界を舞台にするという点ではSpintiresやSnowRunnerに似ているが、本作はバイバル要素を取り入れているのが特徴であり、プレイヤーはトラックから降車しFPS視点で行動することができる。
FPS視点ではトラックの修理や整備、店での食料品などの買い物、屋外での作業を行っていく。空腹や体力のパラメータもあるので、サバイバル系ゾンビゲームからゾンビを抜いたようなものと言えば良いであろうか。また細かいことだが、トラクターのサプライラインとサービスラインのホース(ブレーキの空気をトレーラーに送るもの)を繋げるなどができるので、有名どころのトラックゲームよりも細部においてリアルなところがある。
アラスカのトラック運転手に密着した「アイスロード・トラッカー」というリアリティショーがあるが、あの世界をトラックの外の部分まで含めて体験できるのが本作だと言えるだろう。
関連項目
- ゲーム / ドライビングシミュレーター / シミュレーション
- ゲームジャンルの一覧
- トラック / トラクター / トレーラー(被けん引車)
脚注
- *カントリーソングの源流と言われるものの一つにケルトフォークがあるので、新大陸からヨーロッパに形を変えて戻ってきたと言えなくもない。
- *当時は分からないが現在の罰金はもっと高額で、1~9MPH超過で約$285、10MPHを超えると$500になるという。ソース。
- 3
- 0pt