レ・ミゼラブル(Les Miserables)とは、フランスの作家ヴィクトル・ユーゴーによる長編大河小説である。
これを原作としたミュージカル作品は、『オペラ座の怪人』などに並ぶミュージカル史上最大の名作として知られる。
また、小説を原作とした映画、ミュージカル版を原作とした映画がそれぞれ製作されている。
概要
1862年に執筆された。日本では、1902年に、黒岩涙香によって「ああ無情」の邦題で翻訳され出版された。
原題は、「哀れな人々」の意。
1本のパンを盗んだ罪で19年間投獄されていた男、ジャン・ヴァルジャンが、釈放後改心して善人として生きることを目指し、やがてその生涯を終えるまでの波乱に満ちた姿を、彼を取り巻くさまざまな人々の生き様を交えつつ描く。
フランス復古王政時代(第2復古王政、七月王政)が舞台となっており、不安定な社会情勢の下、貧しい暮らしを強いられる娼婦や、革命を目指し挫折する若者達など、原題の通り、悲惨な運命を辿る人の姿が多く描かれる。
当時の社会情勢や、人々の暮らしぶりを細かく書き込んでいるため、その内容は長大。
冒頭、ヴァルジャンが改心する際のいわゆる「銀の燭台」のエピソードは、この部分だけ抜き出して小学生向けの教科書に載ったり、児童向け絵本になったりしている。
また、コゼットを中心人物として描写を絞り込み、一人の少女が汚い宿の小間使いから幸せを掴むまでを描いた『レ・ミゼラブル 少女コゼット』が、世界名作劇場シリーズとして製作された。
ちなみにユーゴーは『レ・ミゼラブル』発売直後に海外旅行に出かけていたのだが、どうしても出版社に売れ行きが気になり手紙を送った。その文面こそが「?」であり、返信である「!」(絶好調の意)と合わせて世界最短の手紙としてギネス記録に認定されている。
ミュージカル
1980年にフランス・パリでミュージカル化されると、これ改訂を加えて現在よく知られる内容になったものが、1985年にロンドン・ウェストエンドで初演された。
このミュージカル版は、瞬く間に大人気を集め、海外に輸出された。
1987年には、ブロードウェイで上演され非常に高い評価を得た。その年のトニー章で8部門を独占した。
上演は2003年まで続けられ、実に6680回に及ぶ、歴代4位のロングラン公演となった(上位は『オペラ座の怪人』、『キャッツ』、『シカゴ』再演版)。
2006年から2008年にかけて再演されており、公演数は合計で7000回を超えている。
日本では、東宝によって帝国劇場にて1987年に初演され、以後現在に至るまで実に2000回以上に渡って、全国で上演されている。非英語圏では初の公演であった。
映画
1925年にフランスで、1935年にアメリカで、1957年にフランス・イタリア合作で、1995年にフランスで、1998年にアメリカで映画化されている。
日本では、登場人物を日本人に置き換えて、無声映画の時代から何度も映画化されている。
確認できる限り一番古いのは1910年の作品で、以後、1925年、1929年、1931年、1938年にそれぞれ製作されている。戦前だけでも5度、7作品に渡って映画化されているのである。
1950年には、早川雪州主演で、前後2篇の構成で映画化されている。戦後はこれが唯一の映画化作品である。
2012年には、ミュージカル版を原作としたミュージカル映画が製作された。
あらすじ
姪のために1本のパンを盗んだ罪で、実に19年の間投獄されていた男、ジャン・ヴァルジャンは、ようやく釈放された。
しかし、外に出てからも、彼には罪人の汚名が付きまとい、決して自由には生きられなかった。
極度の人間不信に陥っていたヴァルジャンは、思い余って、ある日、自分を助けてくれた神父の下から銀の食器を盗む。だが神父は、彼の過ちを許した。ヴァルジャンは彼に諭され改心すると、善人として生きることを決意する。
数年後、仮釈放の身のまま逃亡した彼は、身分を偽って出世を果たし、工場経営者と市長の職についていた。そこで彼は、娼婦として苦しい生活を送る女性ファンティーヌと出会う。無念のうちに衰弱し亡くなった彼女の頼みを受け、ヴァルジャンは彼女の一人娘コゼットを引き取る。深い執念でもって彼を付けねらう警部・ジャヴェールの追跡を逃れ、ヴァルジャンとコゼットは再び逃亡する。
そして1833年、ヴァルジャンは、美しく成長したコゼットと共にパリで暮らしていた。
ブルジョワ偏重の七月王政の下、庶民層の暮らしは厳しくなる一方で、パリでは、学生達を中心に再び革命への動きが起こっていた。そんな中でコゼットは、秘密結社「ABC」の一員として活動する青年マリウスと恋に落ちるが、とうとう学生達の蜂起が迫る。
娘同然に愛するコゼットの身を案じるヴァルジャン、彼を捕まえ革命を打倒することに執念を燃やすジャヴェール、無謀な革命へと挑むマリウスとその仲間達、危険だと知っていて彼に惹かれるコゼット、さまざまな思惑が交差する中で、彼らは「六月暴動」の日を迎える。
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民衆の歌(“Do you hear the people sing?”)
ミュージカル版には数多くの名曲があるが、その中でもおそらく最も有名な、この作品を代表する曲。
革命へと向かう学生達が、人々の怒りを歌い上げる。
エピローグでも、歌詞を変えて再び歌われる。
こちらは、上演10周年を記念したコンサートのアンコール。
世界17カ国からジャン・ヴァルジャン役俳優が集まり、それぞれの言葉で「民衆の歌」を披露する。
日本からは、鹿賀丈史が参加している。
夢やぶれて(“I dreamed a dream”)
中盤、ファンティーヌが自らの過去と境遇を嘆く歌。
『Britain's Got Talent』にて、冴えない48歳の女性スーザン・ボイルがこれを披露し、審査員と観客の度肝を抜いた。
ミュージカル映画
2012年のミュージカル映画の予告。「夢やぶれて(I dreamed a dream)」や「民衆の歌(Do you hear the people sing?)」などがBGMになっている。
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小説
何人もの翻訳者によって訳されており、それぞれ、内容はかなり毛色が違う。
これは豊島与志雄によるもので、1987年に出版されて以来、何度も改訳が行われている。
他には、佐藤朔などによるものが有名で、2012年の映画公開に当たっては石川湧による日本語版が新たに発売された。
これらのように、若年層向けに訳されたものもある。
映画
ドラマCD
関連項目
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