Blenderとは、モデリングからレンダリング、アニメーション、映像のノンリニア編集やエフェクト適用までの一連の作業を行う事が出来る、統合型3DCG作成ソフトの1つである。
概要
Blender(ブレンダー)はオープンソースで開発されている3次元コンピュータグラフィックスソフトウェアのひとつで、無償で利用することができる。
ゴムボールなどのやわらかい物体の表現(softbody)、布のシミュレーション、ボーンによる多関節表現や時系列順にポーズを記憶させ、任意のカーブでアニメーション動作をさせるシーケンス機能(キャラクターアニメーションなど)、アニメのような輪郭とベタ塗りで表現するトゥーンレンダリング、物理性質に準じた光線の追跡を行い写実的な光の表現を可能とするCyclesレンダラ、粘土をこねるようにして有機的な形状を容易に作成することのできるスカルプトなどなど、商用の3DCGソフトウェアにもひけをとらない充実した機能を持つソフトウェアである。
またマルチプラットフォームを前提に設計されているソフトウェアのため、Windows(32/64bit)、Linux(32/64bit)、MacOSX、UNIX(Solaris, IRIX)版まで用意されているのも大きな特徴である。
操作性
独特の操作方法であり初心者に向かない…というのはずっと昔の誤った評価であり、現在では正確ではない。アップデートにより操作方法は一貫しており、ソフトウェアとしての完成度を高めている。
操作法は特殊だが極めて理にかなっており、慣れれば他の商業・無償ソフトを凌駕する作業効率で操作出来る。
操作方法を簡単に説明するなら、マウスの
に完全に分担する事で誤クリックの可能性を排除し、高速でモデリングする事を前提としている。
更に基本操作の殆どをキーボードショートカット前提にしており(「G」は移動、「R」は回転、「S」は拡大縮小等)、左手を常にキーボードに乗せ、マウスによる画面回転、キーボードショートカットによる画面切り替えと連携して、画面を高速回転させながら、あらゆる角度から整合性を保ってモデリングする事を可能にしている。
画面構成も完全カスタマイズ可能であり、操作画面を自由に分割、結合でき、その分割画面の全てを3Dビュー、テクスチャUVビュー、プロパティビュー等に自由に切り替える事が出来るため、自分にとって最も使いやすい画面構成にする事が出来る。
座標の数値などを直接打ち込む方法や左右対称モデリング等も得意とするため、かっちりしたモデルも組みやすく、pythonスクリプトも使えるため、ゲーム用の3Dモデルエクスポータを自作して自作ゲーム開発に利用する事にも向いている。
またバージョン2.5以降は急速にバージョンアップが進んでおり、機能がどんどん追加され、商業ソフトに引けをとらない性能になってきている。
なぜ初心者向けでないと言われていたか
その理由は、ひとえに「無償だったから」である。Blenderは使いづらいという感想は、多くがLightwave3DやMaya等の他の商業ハイエンド統合3Dソフトを使った事がない人々からのものである。
Blenderに限らず統合3Dソフトは何らかのチュートリアルや講座を見なくては全く理解が出来ない代物であり、2Dイラストツールと違って「使っていれば理解できる」ものではない。その点Blenderは無償である為、日本語チュートリアルが非常に多く、本も買わずにwebだけで簡単に勉強できるから、他のハイエンド3Dソフトより学習が楽である(「Blender 入門」等で検索)。
しかし無償である為に全くチュートリアルも見ずに使おうとする者が後を絶たず、そういう人々が「使いづらい」と断定したものと思われる。
他のハイエンド3Dソフトは何10万円もするため、入門書を買って死ぬほど勉強する人以外は買わないから、そういった苦情は出ないのだろう。
歴史
Blenderは元々オランダのNot a Number(NaN)社が販売していた商用ソフトだった。Blenderは高機能で使いやすく非商用目的であれば無償で使用できたためアマチュアCG制作者の間で人気があった。ところがNaN社は2002年に破産する。これによりBlenderが失われるのがもったいないと考えた元NaN社のプログラマとオープンソース開発者たちは債権者からソースコードを買い取ってBlenderをオープンソースソフトウェアにしようとBlender財団を設立して世界中から寄付を募った。
半年後、目標だった10万ユーロの積み立てを達成。BlenderのソースコードはGPLにより公開された。が、ここからが苦難の道の始まりであった。
Blenderはオープンソースソフトを名乗る以上、Windows以外の複数のプラットホームで動作させないと格好がつかない。そこでMac OS X、linux、FreeBSDなどのUNIX系OSへの移植作業が開始された。ところがここで問題が発生した。Blenderのソースコードのコメントはすべてオランダ語で書かれていたのだ!
他国から参加している開発者たちは慣れないオランダ語のコメントを一つずつ翻訳する作業から始めねばならなかったのだ。さらにソースコード自体もプログラミングの定石から逸脱したこんがらがりのスパゲッティプログラムだったため、その解析にかなりの時間を要した。
そんなこんなでNaN社破産から1年後、ようやく最初のマルチプラットホーム版Blenderであるバージョン2.26が完成。その後多数の開発者たちにより様々な機能が追加されて(そのため各機能の操作性が一貫しておらずBlenderを初心者から遠ざける原因となっているのだが…)現在に至っている。
…という評価はずっと昔のものであり、アップデートが進んだ今、商業ソフトよりはるかに多い無償の日本語チュートリアルを前提にすれば、他の統合3Dソフトより初心者に向かないとは決して言えない。
非営利方針
Blender開発元のBlender Foundation(BF)は、ソフトの使い方や技術者の講演の様子などを収めたムービーを2008年からYouTube上で公開していたのだが、2017年にblenderユーザーから動画が見れないと言う報告を受け、BFはYouTubeへ説明を求めた。
それに対してYouTubeからのメールでの返答は
「ムービーの広告を有効にする必要があるとの専門家からの情報を受け取りました。有効にすると、あなたのムービーはアメリカ国内で視聴可能になります」
BFのトン・ローセンダール氏は『非営利目的であり完全広告フリーの方針である』ことを伝えた上で『YouTubeの規約が変更されたのか』と問いただした。それに対し
「あなたの問題について、専門家と協議しているのでしばらく待ってほしい」
という回答。
それ以降、2018年6月12日までにBFに対しての回答が送られてこなかった為、
ローセンダール氏は再度、YouTube側に状況を尋ねるメールを送ると
「調査が続いているので待ってほしい」
との回答だった。
しかし、それから3日後の6月15日にBFのYouTubeチャンネルのムービーが世界中でブラックアウトされ、BFは実質的にYouTube上から締め出される事態に発展。
ローセンダール氏は事前説明なしにムービーを視聴不可にしたYouTubeの対応に対して、抗議するムービーをYouTube上にアップロード、その中で、BFのYouTubeチャンネルにあったムービーを別のサイトに移動させる事にしたと語っている。
関連動画
関連商品
関連項目
- 3D
- 3DCG
- Python - スクリプトの記述に用いられている。Windows以外はそもそもインストールしていないと動かない。
- MikuMikuDance
インポートが出来るツールやスクリプト、改造版があるため、連携して用いられることがある。
なお、MikuMikudanceの制作者の樋口優氏はBlenderの操作性に難があるため制作したという。 - タグ検索 blender
で
外部リンク
- 本家総本山:http://www.blender.org/
- 日本語情報サイト:http://blender.jp/
※ただし個人による非公式
- Get Blender!:http://www.blender.org/download/get-blender/
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https://dic.nicovideo.jp/t/a/blender




読み:ブレンダー
初版作成日: 08/10/10 15:07 ◆ 最終更新日: 18/07/03 19:33
編集内容についての説明/コメント: 非営利方針の項目を追加しました。
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