ウィンチェスターライフルとは、右代宮楼座の得物ウィンチェスター社のレバーアクションライフルの総称である。
西部開拓時代に使われた手動装填式のライフル。オリバー・ウィンチェスターによって興されたウィンチェスター社は元々開拓民の被服を作っている会社だったが、1857年に武器製造工場を買収、ライフル銃などの武器製造を開始する。レバーアクションライフルの代名詞となった「M1866(イエローボーイ)」「M1873」はこの頃の作品であり、軍での制式化こそされなかったものの、南北戦争では両軍で使用が確認されている。
レバーアクション方式とは、その名の通りグリップ下部にあるレバーを下方向へ開く事で排莢、戻す事で装填を行う機構である。当時の軍用小銃は弾丸と火薬を別々に込める前装式が残存し、後装式も単発の中折れ式が精精であった。そのため、多弾数の弾倉(マガジンチューブ)に装填された弾薬を手動で連射出来るレバーアクションライフルは、構造の複雑さを加味しても高いアドバンテージを持っていたという。
この方式はウィンチェスターのオリジナルではなく、ホーレス・スミスとダニエル・ウェッソン(後にS&W社を創設する二人)の設計したボルカニックライフルと、その発展改良型であるニューヘイヴンアームズ社のM1860ヘンリーライフルが存在しており、ウィンチェスターが最初に販売したM1866イエローボーイはその流れを汲んでおり、使用弾薬もリムファイア方式の.44ヘンリーだった。その後、.44-40ウィンチェスターというセンターファイア方式の弾薬と共に西部開拓時代の代表作といえるM1873が完成、その改良型であるM1876と共に着目されるようになる。
一方、構造的に複雑で汚れや砂塵に弱く、製造コストも高くなる傾向にあった。また、射撃姿勢の一つである伏射姿勢を取った場合、どうしても照準を合わせながらのレバーアクションが出来なかった。加えて、その構造上強力なライフル弾ではなく、.44-40ウィンチェスターや.38-40ウィンチェスターなどの低威力の拳銃弾しか使えなかった。こうした要因が軍に嫌われる結果となり、当時のアメリカ陸軍でウィンチェスターライフルが制式化される事はなかった。しかし、実際には両軍の兵士が自費購入したものが、相当数南北戦争時に使われている。
1880年ごろ、後の天才銃器設計技師ジョン・M・ブローニングが改良型レバーアクションを発明、これに着目したウィンチェスター社のセールスマンであるアンドリュー・アクァウスランドが当時の社長であるトーマス・G・ベネットに売り込んだところ、コネチカット州ハートフォードからユタ州まで大陸横断列車でカッ飛んで来るという熱烈ぶりで、その在庫と特許を8000ドルで取得した。これが後にM1885として商品化される。
この資本を元手に、ブローニングとその兄弟は「J.M.BROWNING & BRO」銃砲店を設立。経営が軌道に乗り始めると彼はM1873をベースとして新機構の採用や細部の見直しを行い、当時アメリカ陸軍で採用されていた.45-70ガバメントが発射可能なレバーアクションライフルを完成させる。1884年にウィンチェスターへ売り込まれたこのライフルはM1886の名称で販売され、ブローニングはその特許を50000ドルで売却、1886年から1932年までの間、実に16万挺が製造される運びとなり、ウィンチェスター社の絶頂期となった。なお、この辺りでブローニングはウィンチェスターと専属契約を結んでおり、ウィンチェスター社のために様々な銃器の設計に着手する。
彼はまず、未来からやって来たネコ型ロボットが片手で振り回していたM1887というショットガンを開発。強力なショットシェルと折り合いがつかなかったのか、作動不良を頻発するポンコツ興業的にはそこそこだったが、ブローニングはショットガン用にレバーアクションよりも優れた方式としてポンプアクションを選択し、これが後にトレンチガンと呼ばれるウィンチェスターM1897の原型、M1893となる。更にブローニングは既存の.44-40や.38-40だけでなく、20世紀に登場した.44マグナムや.357マグナム、.454カスールにも対応出来るほどの堅牢性を誇るM1892、後にアメリカ軍で採用される.30-06弾の原型となった.30-03を使うM1894、極めて短期間ながら帝政ロシアが購入した7.62×54mmラシアン仕様のM1895などを開発している。
しかし、堅牢で薬室の閉鎖性に優れ、構造的にも単純で製造コストが掛からず、何より強力なライフル弾を使用出来るモーゼル式ボルトアクションが主流になると、前述したデメリットによってあっという間に交代されてしまった。ウィンチェスター社としてはこれまた狩猟、狙撃用ライフルのベストセラーとなるM70ボルトアクションライフルを開発したりしているのだが、軍用ライフルとしてのレバーアクションは急速に廃れていった。ちなみに、ブローニングはウィンチェスターと関わったおかげで実績が出来、あちこちでベストセラーを生み出したりしている。
とはいえ、民間用としては現在もそこそこのシェアを誇っており、ウィンチェスター以外にもショットガンで有名なモスバーグ社や日本ではドマイナーなマーリン社がライセンス生産を行っている。これらはコルトSAAやスタームルガーブラックホークなどと同じく、アメリカ人のフロンティアスピリッツを刺激する「実用的なアンティーク」としての側面があり、これらはセットで運用される事が多いという。
で、莫大な利益を得たウィンチェスター社だが、ウィンチェスター社の話で欠かせないのがアメリカのカリフォルニア州サンノゼにある有名な『ウィンチェスター・ミステリー・ハウス』である。
この話に出てくるのが未亡人のサラ・ウィンチェスターである。1866年に娘のサラを、1881年には夫のウィリアム・ワート・ウィンチェスターを亡くし、悲しみにくれていたところを友人が霊媒師を紹介した。そして、その霊媒師がサラに告げた鑑定結果は次のようなものであった。
「ウィンチェスター家が代々製造してきた銃が多くの人々の命を奪ってきたため、一家にかけられた呪いが存在する。」
「銃のせいで幾千という人々が死に、彼らの魂がいま復讐の機会を求めているのだ。」
「アメリカ西部へ行き着いたその場所へ、あなた自身とその恐ろしい銃で亡くなった人たちの霊のために家を建てなさい。家の建設を止めてはなりません。あなたがもし建て続ければ、あなたは生き長らえるでしょう。もし止めれば、あなたは死んでしまうでしょう。」
サラは霊媒師が言っ たとおりの事を実際に実行した。工事は彼女が死亡する1922年まで続けられたという。詳しいことはウィキペディアへ。ちなみに、現在この屋敷は観光地となっており、13日の金曜日やハロウィンの時には肝試しツアーなどもあるとか。
「うみねこのなく頃に」というか楼座無双というか何というかで有名な右代宮楼座以外も使っているけどが使用するのは、通称ランダルカスタムというカスタム品。西部劇映画の傑作と名高い「拳銃無宿」でスティーブ・マックイーン演じる賞金稼ぎジョッシュ・ランダルが使用していたためにこう呼ばれる。他にも、日本でソウドオフと呼ばれるショットガンの改造品がスラングでホグスレッグ(hog's leg:豚の後脚)と呼ばれるため、メアーズレッグ(mare's laig:雌馬の後脚)と呼ばれていたという。
バレルとマガジンチューブを切り詰め、ストックもぶった切った半分拳銃のような代物で、装弾数が少なくなった代わりに携行性が増しているものの、基本的にはロマン武器である。時代考証を考えればM1873が妥当なのだが、当時の西部劇映画界ではその辺りがかなりいい加減で、舞台となる時代にはまだ存在しない筈のM1892をベースにしているという。拳銃無宿でも手動式なのを良い事に炸薬量を四分の一まで減らした弾薬を使用し、それでも撮影時には警察の立会いが必要だったという。
最大の特徴は排莢装填に使うレバーの、特に中指、薬指、小指を入れる部分(ループレバー)が大型化しており、これを使ったスピンコック、スピンローディングと呼ばれるアクションが行える事だろう。通常のレバーアクションは左手で銃のハンドガードを持ち、右手でループレバーを上げ下げするだけのものだが、スピンコックはガンスピンの要領で銃を一回転させる事で、両手を使わずに排莢装填を行うというものである。
見た目のアクションが派手なため、特にマックイーンが好んで使用しており、彼の出演した映画ではフルサイズのウィンチェスターライフルにも同様のループレバーが取り付けられている事があった。前述した未来の……要するにアーノルド・シュワルツェネッガー演じたT-800が使用していたM1887も、ショットガンではあるがストックを切り詰めてソウドオフにし、ループレバーも大型化したランダルカスタムの継嗣に連なるプロップガンといえる。ランダルカスタムも拳銃無宿がヒットしたため、日本では今もモデルガンやエアソフトガンが作られている。そちらではM1892ではなくM1873をベースにした、「時代考証的には正しい」モデルも存在している。
うみねこのなく頃にで登場したランダルカスタムは、右代宮金蔵が西部劇を好き過ぎて持ち込んだものであるとの説明がされている。何故かベースはM1894で、「金蔵の趣味で45ロングコルトを使用出来るように改造してある」との事……この文章だと「本来はライフル弾を使用するM1894をわざわざ45LCに適合させた」とも取れるが、M1894には45LCを使用するモデルがあるので、それを改造したという事だろう。多分。言うまでもなく銃刀法違反であり、「拳銃弾が使用出来る」「全長を極端に切り詰めている」「そもそも登録していない」とブラックどころの騒ぎではない。しかも作中ではかなり重要なアイテムであり、犠牲者多数。金蔵マジ自重。
掲示板
25 ななしのよっしん
2022/05/04(水) 04:02:49 ID: LqNaelJQxH
人殺しまくったという事で屋敷が幽霊にたかられてるみたいだけどボルトアクションが出るまでの短い期間しか活躍してないウィンチェスターライフルよりブローニングの作った銃の方がより多くより長く活躍してるのにそこには祟らないのな
26 ななしのよっしん
2023/01/15(日) 16:46:43 ID: WNI0sd/OA1
>>25 殺害されたのはネイティブ・アメリカンが多いだろうし、先住民族の呪い的な感じなのかも
27 ななしのよっしん
2023/04/10(月) 06:37:20 ID: mv8UUZssCI
身勝手な連中は生きてる間だって「有名な奴」「ちょうどそこにいた奴」「殴り返してこない奴」をリンチにしようとするわけだし、死んだ後でも似たようなものなんでしょ。
死人なんてほぼ正気じゃないだろうし。
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最終更新:2024/12/03(火) 06:00
最終更新:2024/12/03(火) 06:00
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