エクソシスト 単語


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エクソシスト

4.4千文字の記事

エクソシスト(exorcist)とは、

  1. 英語キリスト教、特にカトリックにおいて「悪魔祓いの祈祷師(祓魔師/ふつまし)」を意味する単語。
  2. 1973年開されたアメリカホラー映画

この記事では両方について記述する。

1.の概要

悪霊(悪魔にとりつかれた人から悪魔を追い出す儀式クソシスム)を執り行う者を意味する。
その語ギリシャ語の「εξορκισμός (exorkismós) 」に由来し、「厳かに問いかけること」とされる。これが転じて「高位の霊的権威の力を借り、悪しきものを追い出す儀式」を意味するようになった。
カトリック教会儀式(準秘跡)であり、『ローマ・ミサ典礼書』に則った教会法に沿って行われる。

旧約聖書においては『サムエル記』でイスラエルサウルが悪霊に操られてダビデを殺そうとしたが、ダビデは琴をもって悪霊を祓ったとされる。
また『トビト記』では悪魔アスモデウスによって伴侶を次々と亡くして絶望する寡婦サラの祈りに対し、天使ラファエルを遣わして追放したという。

新約聖書においては『マルコによる福音書』に記述がある。
イエス・キリストガリラヤの東ゲラサ(ガダラ)において悪霊に憑依された男に出会い、悪霊に対して退散を命じた。悪霊は「らはレギオン、大勢であるから」と名乗りイエスの許しを得ると二千匹ほどのの群れに憑依し、ことごとくに飛び込み溺死したという。
ルカによる福音書』『マタイによる福音書』にも短縮されて記述されており、これらの記述に基づいて教会からの権と職務を受けているとされる。 

精神疾患悪魔憑きとして捉えられがちな事もあり、エクソシスムについては、過去にいくつかの悲惨な事件が起きている。
古くを紐解けば、1634年のフランスにおいて起きた「ルーダン悪魔憑き(Loudun possessions)」が有名。
フランス西部地方都市ルーダンにおいて、女子院で集団ヒステリーが発生した。開形式の悪魔祓いにおいて修道女達は裸になって暴れ狂い、悪魔に取りつかれていると告解したばかりか、その原因が同地の主任祭であったユルバングランディエであると告発したのである。
悪魔と取り交わした契約書を決定的な拠としてグランディエは拷問の末に火刑となったが、その背景には様々な政治的思惑があったという説もあり、その後も集団ヒステリーは暫く続いたという。
この事件を題材とした小説は多く、そのうち映画化された作品に『尼僧ヨアンナ』(1961年)『体の悪魔』(1971年)がある。

現代にを向ければ、1976年ドイツで発生したアンネリーゼミシェル事件が挙げられる。
長年精神疾患で治療を受けていたアンネリーゼに対し、カトリック教会教区から正式な依頼を受けた祭が悪魔祓いを実行したが、その最中に彼女栄養失調脱水によって死亡してしまう。死亡時のアンネリーゼの体重は僅か30kgで、儀式で跪き続けた脚は骨折を起こしていた。
州当局はアンネリーゼの両祭を過失致死傷罪で起訴して裁判となり、世間のを集めた。当時の儀式の様子は写真や録音が遺されており、結果として執行猶予つきの有罪判決が下る事となった。
この事件を元にした映画エミリーローズ』が2005年製作開され、被告となった祭の弁護を担当する弁護士視点から物語が展開する。

なお、現代のカトリックでは、悪魔憑きの症状に対する充分な検が行われた上で、厳格な儀式と知識を学んだ祭が、教区教の特別な認可を受け、医師を帯同した医学支援を前提として行うものとされる。
また洗礼式に際して信仰宣言の前に「神の子自由生きる為、罪を退けますか」「罪に支配されることがないよう悪を退けますか」「神に反するすべてのものを退けますか」という3つの問いを全て肯定する事でエクソシスムが行われている。

ローマ教皇庁の職者省により、2014年認可を与えられた「際エクソシスト協会」がある。
1990年にこの組織を設立した6人の職者は何れも高名なエクソシストであり、そのうちの一人ブリエーレ・アモル悪魔学研究と悪魔祓いに生涯をげた人物である。
彼が執筆した回顧録に基づく映画ヴァチカンのエクソシスト』が2023年開され、ラッセルクロウアモル神父を演じて話題となった。

創作におけるエクソシスト

前述の映画小説とは裏に、『D.Gray-man』や『青の祓魔師』などのファンタジー系作品では、圧倒的な力をもって悪魔を退散(物理)させるエクソシストがほとんどである。
海外ではDCコミックの『ヘルブレイザー』が有名で、こちらも悪魔を退散(物理)させる破りな私立探偵兼エクソシスト、ジョンコンスタンティン主人公2005年に『コンスタンティン』と題して映画化され、キアヌ・リーブジョンを演じた。

2.の概要

1973年アメリカ合衆国ホラー映画
この作品によって、エクソシストという存在が世に広く知られるようになった。

原作者のブラティは、1949年メリーランド州マウントレーニアで起きた悪魔憑き騒動を新聞記事で知り、教会関係者からの緘口情報が少ない中で小説を執筆。これがベストセラーとなり、映画化を受けて脚本も担当した。
ちなみに当該の事件では少年悪魔憑依されたが、映画では少女に書き換えられ、また映画本編のような超常現象は実際には起きなかったという。

開に際しては「悪魔映画を作った」とキリスト教原理義者から攻撃を食らい、映画の宣伝も兼ねてフリードキン監督が撮中に起きた事故を大に語った事で、そこそこな騒動が起きた。
確かに撮所が火事になったり、スタッフの身内に不幸が起きたりといった事はあったが、メリン神父を演じたマックス・フォン・シドーは「撮は長期間だったし、関係者は大勢いた。そりゃ事故不幸も起きるさ」とコメントを残している。
当時としては過恐怖描写で、映画館の観客の中には失神する者も少なくなかった。同年のアメリカ業収入1位記録し、第46回アカデミー賞にも複数部門でノミネート。そのうち脚色賞と音響賞を受賞しているほか、同年のゴールデングローブ賞でも四冠を獲得している。

テーマ曲の『チューブラー・ベルズ(Tubular Bells』は、音楽を担当したマイクオールフィールドの作品。ちなみにチューブラー・ベルズとは管状の鐘を音程に沿って並べた打楽器の事で、日本では『NHKのど自慢』で使われているアレとして知られている。
別にこの映画の為に作られた曲ではないのだが、神秘的なきも相俟ってじんわりとした恐怖を連想させがち。2012年ロンドンオリンピックの開会式において「ゆりかごから墓場まで」と表現されるイギリス福祉サービスモチーフとしたパフォーマンスの冒頭で流れ、ぎょっとした人は結構いたりする。

あらすじ

イラク北部の古代遺跡が、全ての始まりとなる。
調に参加するメリン神父は、古生物学者カトリックの神学者という2つの顔を持っていた。そんな彼は、ともともつかぬ異形石像を発見して顔色を変える。それは古代の悪霊ズズったものであり、メリン過去に浅からぬ因縁を持っていたのだ。戦慄しながらも、彼は近い内にこの悪魔と再び対峙する事を予感する。

女優クリス・マクニールは、映画の為にワシントン近郊のジョージタウンを借りる事となった。多忙なスケジュールの中、リーガとの暮らしが僅かな癒しとなっている。
リーガンは内向的な性格の少女だった。は協議離婚中で、その女優業で忙しい。寂しい気持ちを堪えてに贈り物をする優しい気質の少女は、しかし屋根裏でく異様な物音に悩まされる──それが異変の始まりだった。

ジョージタウンに住むカラス神父は精神科医でもあり、望めば認知症を患う老に楽をさせられる立場にあった。しかし教会の援助によって一流の大学で学んだ恩義と、信仰から清貧の誓いに縛られている身ではそれもわず、引けを感じる日々を送っていた。

マクニールでは各界の名士を招いて、やかなパーティーが開かれていた。寝ていたリーガンが起きて会場に下りてくると、客の一人であった宇宙飛行士に「あなたは宇宙で死ぬわ」と告げて失禁し、会場をけさせてしまう。寂しさから来る異常行動と考えて悩むクリスだったが、数日後、リーガンが悲鳴を上げる中で寝室に入った彼女は、もいないのにしく揺れるベッドを見てを疑う。
意思に反した異常な挙動を見せるリーガンだったが、最先端の医療施設でも原因は解らない。遂にはカウンセリングを担当する医師暴力を振るうと、リーガンは野太いで「触るんじゃねえ!このメスのものだ!」とえ、恐ろしい形相に一変した……

スタッフ

続編・リブート

1977年の『エクソシスト2』は『1』から4年後、16歳になったリーガンを再び主人公としているが、ホラーというよりはSFの趣が強く、これに不満を感じたブラティが正当な続編として『エクソシスト3』を1990年製作。こちらは連続殺人事件を描くサイコスリラーとなっており、『1』で起きた悪魔憑きとの因縁を描きつつ、『1』の登場人物が複数登場している。

2004年の『エクソシスト ビギニング』ではメリン神父過去が描かれるも、同年のゴールデンラズベリー賞最低監督賞と最低リメイク及び続編賞にノミネートされている。何というかお察しください。
2016年には『1』から40年後を描く続編『エクソシスト』がテレビドラマされた。しかし以前に開されたナンバリングタイトルをなかった事にしており、結局シーズン2で打ち切りとなってしまった。その一方で、Rotten Tomatoesなどのレビュー集積サイトでは概ね肯定的な評価が為されている。

2023年に『エクソシスト 信じる者(原題:The Exorcist: Believer)』が開。元々はリブートと称した全三部作の構想だったが、評価は低く行成績も振るわなかった。監督デヴィッドゴードングリーンは続編の製作前に降してしまい、企画は延期されるに至った。
その後立て直しの為に『ドクタースリープ』でメガホンを取ったマイク・フラナガンを監督に迎え、本作の続編ではない「根本を覆すアプローチ」をした新作映画として、2026年3月13日開されると発表された。

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