シリアスな笑いとは、漫画『バクマン。』で提唱された表現である。
82ページ(第82話)で説明された笑いの形。「シリアスな場面なのに笑えてしまう場面」のことを指す。
劇中漫画『ラッコ11号』のワンシーン「友達だった人面ラッコがTVクルーに捕獲されて「すみれTV」の見せ物にされてるのを見て、局にトラックで突っ込み助けに行く場面」を例に挙げており、「思わず笑ってしまうが、本来は真剣にカッコいい場面」「(ラッコ11号の)作者は笑いを取りにいってるつもりはないはず」「少なくとも子供は笑わないし感動すらする」と説明している。
このシーンは同作者の前作『DEATH NOTE』page.23(第23話)の「テレビ出演者が次々と処刑されていくのを病院のベッドから見ていた夜神総一郎が、護送車でテレビ局に突っ込み処刑を止めようとするシーン」のパロディで、サスペンス漫画である『DEATH NOTE』にもシリアスな笑いを意図的に仕込んでいたことを間接的に説明しており、シリアスな笑いが漫画において重要なファクターであることを実績を以て証明している。
そして偶然かは不明だが、本話が掲載された週刊少年ジャンプの次の号の『HUNTER×HUNTER』は、ゴンさんが初登場したあの伝説の回となっており、深い絶望によってムキムキになったゴンを見て「これがシリアスな笑いか」と当時納得した読者もいた。
この言葉自体は『バクマン。』で初めて提唱されたが、その概念自体はもっと古くから気付かれており、ネタに活用された事例がいくつか存在している。
例えば、1980年代に放送された『スーパージョッキー』の1コーナーで「テレビ黎明期~発展期に数多く放映された特撮作品の迷場面を集めて放映し、それに対してビートたけしがツッコミを入れまくる」というコーナーがあったが、これもシリアスな笑いを応用した事例のひとつと言える。
『バクマン。』では、このシリアスな笑いを意図的に仕込むことでライバル作品との競争に勝とうとするが、計算づくでシリアスな笑いを成立させる事のハードルは高い。
シリアスな笑いとは「作品内で成立する笑い」ではなく「作品と読者・視聴者の間で成立する笑い」であり、シリアスな場面において読者・視聴者自身に笑いの要素を自ら発見させる必要がある。しかし、シリアスが強すぎては読者から笑い所をスルーされてしまうし、笑いが強すぎるとシリアスがスベってしまうリスクがある。特に後者は「最初は真面目に作っていたが、途中でシリアスな笑いがウケていることに気づいてしまい、作者自ら積極的に笑いを取りに行くようになった」作品においてよく見られ、読者・視聴者によっては「冷めた」と思われてしまう。このバランスを保たせるには、構成力と笑いのセンス両方が要求される。
ちなみに、上記の『DEATH NOTE』だけでなく、『テニスの王子様』『BLEACH』など、週刊少年ジャンプはシリアスな笑いを誘う作品が多い。だが、シリアスな笑いと感じるかどうかは読者によって異なるため、これらの作品は相応しくないとする声もある。
ネットでネタにされる等、多くの人がシリアスな笑いだと感じた作品を挙げる。
該当例:『魁!!男塾』『競女!!!!!!!!』『ムダヅモ無き改革』『忍者と極道』『ハイパーインフレーション』『金剛番長』など
世界観や設定・台詞回しなど、明らかにボケている要素がありながら、作中でその点を一切ツッコまないことで、ボケを無理やりシリアスとし、シリアスな笑いを生み出すケース。
「笑いを取りにいってるつもりはない」シリアスな笑いに対し、このケースは完全に笑いを取りにいこうとしているため、メタ的にはシリアスな笑いではないとは言えるが、シリアスな笑いを戦略的に仕込んだ非ギャグ作品との境界線は曖昧である。
なお、このケースにおける作品は、世界観・設定ではボケていてもキャラクターは全員本気・真剣であり、キャラの熱意・演出によっては、ボケを起因とした「謎の感動」を起こすことができる。この感動は、ある意味シリアスな笑いと対極に位置する感情といえる。
また、どれだけシュールだとしても作中のキャラクターだけはギャグとしてツッコめないという点において「人の死が絡む」ホラー・スプラッター作品もシリアスな笑いと相性が良く、『殺し屋1』『ミッドサマー』などシュールなホラー作品は多数存在する他、『死霊のはらわた』『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』など、ホラーと笑いを融合した「ホラーコメディ」というジャンルが存在する。
該当例:『ドカベン』『ガラスの仮面』『美味しんぼ』『NARUTO』『築地魚河岸三代目』『天空の城ラピュタ』など
MAD動画やコラ画像でイジられすぎてしまったことで、ミーム汚染的に笑えてしまうケース。普通に作品を楽しみたい人にとっては迷惑にもなりかねないので、自重が求められる。
また、『魔法少女まどか☆マギカ』『ひぐらしのなく頃に』『タコピーの原罪』『Another(小説)』など「シリアスが強すぎてファン同士で語りにくいために、ネタ化してシリアスをマイルドにした結果、シリアスな笑いになった」というパターンもある。
該当例:『チャージマン研!』『MUSASHI -GUN道-』『デスクリムゾン』『人造昆虫カブトボーグ V×V』『斬』『DYNAMIC CHORD』『革命機ヴァルヴレイヴ』『メタルマン(映画)』『LIGHT WING』『サムライ8 八丸伝』、アサイラム作品など
作画崩壊が著しい、展開がお粗末すぎるなど、ギャグでも何でもなくただただ稚拙なだけの内容が「いち作品としてのツッコミどころ」として笑えてしまったことで、シリアスな笑いとなったケース。
これが笑いとして成立するのは、ニーズやタイミングによるところも大きいが、単にシラケるのでなく思わず笑ってしまうのは、作品自体の惹き込む力が優れていたから…と考えられなくもない。
勿論、その作品を稚拙と感じるかどうかは人それぞれであり、純粋にその作品を楽しんでいる人もいるので、作品によっては節度を持って楽しむ必要がある。
掲示板
802 ななしのよっしん
2025/02/04(火) 22:12:37 ID: StlRxlFE0w
彼岸島は舞台設定やシナリオはシリアスだけど、セリフやコマ割りといった描写の段階でそのシリアスさが崩れてるパターンだから、これとはちょっと違う感じがする
803 ななしのよっしん
2025/05/19(月) 02:48:29 ID: 3nF8Iiamqj
最近の青峰やバスク・オムみたく放送当時は何も変哲もないシーンが後年になってネットミート化するのはまた別の概念か?
804 ななしのよっしん
2025/05/19(月) 03:17:19 ID: 3nF8Iiamqj
ミートじゃないネットミームだ
急上昇ワード改
最終更新:2025/07/10(木) 14:00
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