はやく、はやく。君の前には誰もいない。
ハギノカムイオーとは、1979年生まれの日本の元競走馬・種牡馬である。鹿毛の牡馬。
昭和の一大血統である「華麗なる一族」の主流に生まれた「黄金の馬」。鹿毛だけど。
主な勝ち鞍
1982年:スプリングステークス、神戸新聞杯、京都新聞杯
1983年:スワンステークス、宝塚記念、高松宮杯
父は日高の救いの神こと大種牡馬テスコボーイ、母は度重なる不運にも負けず名牝と呼ばれたイットー、母の父はヴェンチアという血統。
ピカピカの血統と馬体で引く手あまたであったが、テスコボーイ産駒はセリに出されるのが決まりであったためセリに出された。
このセリでの最高落札額は5000万円であったが、この馬は半端な馬じゃない。お台がなんといきなり8000万円。いきなり新記録確定である。
半姉のハギノトップレディが新馬戦を当時の日本レコードで逃げ切ったこともあり、どんどん競り上がり、1億8500万円で落札された。当時としてはもう目が飛び出すどころじゃないレベルだが、現代のセレクトセールでも1億8500万はなかなか出ない。
エアグルーヴ産駒やトゥザヴィクトリー産駒で3億や6億が出ているとはいえ、例年でも上位に食い込む金額である。
2011年のセレクトセールではエアグルーヴの2010が3.7億、マイケイティーズの2010が2.7億で落札されたが、もし仮にカムイオーを入れるとそれに次ぐ三番目の落札金額となるのである。ハンパねぇ。
ちなみに半姉と同じくハギノ冠号の日隈氏が「この馬でダービーを取りたい」となんとしてもで競り勝ち落札したのだが、途中まで競っていた中村畜産も落札金額の半額を支払い共有となった。すでに種牡馬入り後を睨んでの動きである。
そんな彼は、成長過程を一般マスコミが報じるほどの注目の中、亀裂骨折をやったりしたのもあってじっくりと育成され、年明けにデビュー。凄まじいスピードでグングン突き放し7馬身ぶっちぎって勝利。もうあんまり時間が残されていなかった皐月賞を目指し一路東上。
その次走の条件戦桜草特別も逃げて圧勝。ちなみに桜草特別は10Rであった。準メインに旧4歳の特別戦?と思うかもしれないがサクラバクシンオーが勝った桜草特別も10Rなので、たまにそういう編成になることはあるらしい。それが曲解されてカムイオーのために番組が変わったと言われるのかもしれない。筆者もうっかり信じてしまったくらいである。
ちなみにカムイオーの日のメインレースは格付けなし時代の中山記念(オープン)というなかなか豪華な日、方やバクシンオーが勝った日はメインレースが900万下(現2勝クラス)というさもしい日であった。
閑話休題、順調に圧倒的スピードで連勝を飾ったカムイオーは皐月賞へのステップレース、1964年からフジテレビ賞であるスプリングステークスに向かった。ここでは同型の逃げ馬とされたサルノキングも出走しており、実績が上のサルノキングが一番人気に推され、カムイオーは二番人気であった。
とはいえ、東西の垣根が非常に高く、東高西低と言われた当時にあって新馬勝って関西からやってきてとりあえず条件戦勝った程度の馬が二番人気というのは画期的とも言えた。
レースはカムイオーがハナを切るとスピードのまま楽々逃げ切り勝利。同型とされたサルノキングは20馬身以上後方ポツンから無茶苦茶な勢いで捲るがレース中の骨折の影響もありばったり止まって4着、さらにこの骨折が原因で引退となった。
あんまりな競馬だったので鞍上の田原は散々に非難されたし、サルノキングの馬主は中村畜産社長の中村和夫、つまりカムイオーの共有馬主であったため、カムイオーを勝たせるために八百長したんじゃないかという疑惑が浮上してしまった。
関西所属であったサルノキングは関西にいた頃は追い込み馬だったのだが、クラシックを見据えて早めに東上し出走した東京4歳ステークス(現共同通信杯)と弥生賞では引っかかりながら先行して押し切るという無茶な競馬で連勝していたため、当時は関西のレースまでつぶさにチェックできる媒体がほぼなく、そのせいで関東の競馬ファンはみんな先行馬と誤解していたこと、前述の通り引っかかりながら突っ走っていたためクラシックで乱ペースに巻き込まれた時に潰れてしまうという懸念から追い込みへの再矯正を図ったのだが、派手好きの田原が末脚を過信しすぎて無駄に後方にいたということが重なった不幸な偶然が原因で発生した冤罪である…
ということで一応の説明が付いているが、怪しい雑誌である作家がカムイオー陣営に取材に行ったらオーナーの命令でサルノキングは下げさせると聞いたという証言があるなど暗い側面はまだある。
しかし鞍上が田原成貴という反骨心しかない男だったことから、競馬サークル内では「ありえないよ、そんなの」というのが主流の意見であった。
筆者としてもこの人にわざと負けろなんていうのは無茶だと思うが、みなさんはどうだろうか。
さて、その後のカムイオーだが皐月賞へ。もちろん一番人気であり、ファンも陣営も皐月賞は取るだろうしダービーだって夢じゃないだろうと思っていた。
しかしサルノキング事件があったせいなのか、あるいは皐月賞を前にしてハイセイコーでもあるまいに応援歌なんぞが出たせいか(これはマジ)、性格の悪い奴ある男に目をつけられてしまった。
そう、関東の闘将・加賀武見と彼が駆るゲイルスポートである。「お坊ちゃまに世間の厳しさ教えてやるよ」と公言し、本来は短距離に適正があり、1180mまでの馬と揶揄されたスピードだけなら負けていないゲイルスポートを駆り、徹底的に競り合うという玉砕戦法をとったのである。
始終競り合われては如何にカムイオーが素晴らしいスピードがあろうと体力が持たない。三角で一杯になりゲイルスポート共々沈没し16着に敗れてしまう。
ダービーへ向けて立て直しを図るべくNHK杯で心機一転を図ったのだが、またゲイルスポートがいた。お前何なんだよ…
もちろん終始嫌がらせのごとく絡まれ沈没。ダービーを断念させられた。ちなみにゲイルスポートはこの後本来の短距離戦に戻ったが、だいたい残り20mでヘバッてしまい大した実績も残せず引退した。ゲイルスポートにとってもこれは良かったんだか悪かったんだかよくわからない。
秋は菊花賞戦線に向かい、神戸新聞杯ではダービー馬バンブーアトラスを完封し逃げ切り、京都新聞杯では新境地となる二番手からの抜け出しで勝利。
たくましくなったなと思ったが菊花賞では超絶ハイペースを自ら作って大逃げを打つが沈没、15着に敗れる。
ああ、やっぱりダメだったよ…この後は休養に入った。
休養から明けたカムイオーは宝塚記念を大目標に、当時春のマイル重賞であったスワンステークスから始動。
ここを難なく逃げ切ると宝塚記念でも圧倒的なスピードのまま逃げ切り5馬身差圧勝。ついにGI級レースを獲得したのであった。
この勝利で獲得賞金は1億9000万となり、落札金額を越えた。高額落札馬が落札金額以上に稼ぐことはけっこう稀である。
まあ、諸々の費用を含めればまだペイできたわけもないが、高額での種牡馬入り確定でまず損することはなくなったのである。偉いぞカムイオー。
そしてその次走である高松宮杯でも勝利し、母イットーとの親子制覇・姉ハギノトップレディとの姉弟制覇を達成したのであった。
だが、彼の快進撃もここまで。復帰戦のオープンすら8頭中7着に惨敗、ジャパンカップと有馬記念ではツインターボよろしくガーッと行ってグワーッと逃げ潰れて二連続最下位負けとなり引退。春までの輝きは一体何だったのであろうか…
種牡馬としては強気な種付け料設定に全く実績が伴わなかった上、種牡馬として引き取った中村和夫氏が恣意的に牝馬を選んだとされるような仕打ちをしたらしく日高のいい牝馬が敬遠し始め寄り付かなくなったこともあり失敗。
地方で数頭の重賞勝利馬と、小倉の1000mコースレコード保持者ハギノピリカが代表的という寂しい結果になってしまった。
母の父としてはテイエムオオアラシとシンカイウンらを輩出し、自身の種牡馬成績よりはいい結果を出した。
種牡馬引退した後は、悠々自適の功労馬生活を送り、長きに渡り観光客に愛想を振りまく生活を送った。現役時代は速すぎてすぐ燃え尽きていた馬とは思えない矍鑠とした長寿っぷり。
…だったのだが、2013年4月10日に余生を送っていた本桐牧場で亡くなった。享年34歳。
GI級を勝ったサラブレッドとしてはかなりの長寿であり、幸せだったかはわからないが天寿を全うしたと言えるだろう。
| *テスコボーイ Tesco Boy 1963 黒鹿毛 |
Princely Gift 1951 鹿毛 |
Nasrullah | Nearco |
| Mumtaz Begum | |||
| Blue Gem | Blue Peter | ||
| Sparkle | |||
| Suncourt 1952 黒鹿毛 |
Hyperion | Gainsborough | |
| Selene | |||
| Inquisition | Dastur | ||
| Jury | |||
| イツトー 1971 黒鹿毛 FNo.7-e |
*ヴェンチア 1957 黒鹿毛 |
Relic | War Relic |
| Bridal Colors | |||
| Rose o'Lynn | Pherozshah | ||
| Rocklyn | |||
| ミスマルミチ 1965 鹿毛 |
*ネヴァービート | Never Say Die | |
| Bride Elect | |||
| キユーピツト | Nearula | ||
| *マイリー |
クロス:Nasrullah 3×5×5(18.75%)、Pharos=Fairway 5×5(9.38%)
掲示板
7 名無し
2021/06/11(金) 16:22:57 ID: UpbE4i6lE4
現役当時、TVで特集組まれてたのをきっかけにこの馬知ったんよねえ・・・
8 ななしのよっしん
2021/11/06(土) 16:30:52 ID: Wv8mfWJT8o
14戦して8勝、負けたレースは全て着外
約2億円弱で落札されてそれを凌ぐ賞金を稼ぎ出したハギノカムイオー
立派な名馬じゃないですか
9 ななしのよっしん
2024/01/15(月) 23:51:30 ID: 7G7j0zHVmD
皐月賞時のアナウンサー「後の方から4、5頭目でゴール番前を、寂しく入線であります!」
ちょっと笑ってしまった
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/20(土) 20:00
最終更新:2025/12/20(土) 20:00
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