バリバリ伝説とは、しげの秀一によるバイクレースの漫画作品。1983年~1991年まで週刊少年マガジンに連載された。
1987年にはOVAでアニメ化されている。
概要
当時のバイク乗りおよび、バイクに興味があった層に多大な影響を与えた作品である。
最大の漫画としての魅力は、臨場感が凄かったことである。読んでいると「ああ、バイクってこうやって乗れば良いのか」と体感出来ちゃうくらい凄かったのである。刺激を受けた若きバイク乗りは、読んだあとノリノリで峠に出掛けてすっころぶのは最早当たり前と言っても過言ではなかった。この辺りは後にドリフトブームを巻き起こした頭文字Dに通じるところがある。
当時の小中学生だった読者は、チャリで膝擦りハングオン決めようとして酷い目にあった事が一度はあるはずである、多分。そして、高校生だった読者は主人公たちの駆る750CCバイクに憧れ、実際に乗りたがり、関連するバイク雑誌などをむさぼるように読んだはずである、多分。
主人公の巨摩郡が高校生の峠の走り屋から、WGP500(現在のMotoGP)にてホンダのワークスライダー、通称ガン・ボーイになるまでを描いた物語。レース編に突入してからは、レースの準備から予選、本戦までの流れが丁寧に描かれていた。それによって、それまで知っているのはマニアだけだった実際のバイクレースの世界を一般に良く分かるように紹介してくれた功績は大きい。
この作品を読んでバイクレースに興味を持ち、また、実際にレーサーになった人もかなり多いらしい。そして、鈴鹿8時間耐久などの実際のレースイベントの人気向上にも影響があった。
前述のように壮大なストーリーであるにも関わらず、マガジンコミックスで全38巻でしかない(イニDは48巻で完結)。密度は非常に濃い。未読の方はぜひ時間を作って一気に読むことをおすすめする。
ちなみに、OVAの出来は「なぜか漫画よりもスピード感が無い」と評されていることでお察しください。と言ってもこれは一面的見方にすぎないので、お察しください。可能なら観た上で判断を。
しげの先生はこの作品の印税でAE86を購入し、それがイニDのネタ元になったそうである。
主な登場人物
第1部:峠の走り屋編[1]
- 巨摩郡(こま ぐん)(CV:田中秀幸)
- 主人公。物語開始時点では高校2年生。身長187cmの長身。鋭いツリ目とアホ毛のような寝癖がいくつもついた髪型が特徴。
- 父親が国際的にビジネスマンとして成功しており、世界を飛び回っている関係で高校生ながら一人暮らしである。
- 峠道で愛車のホンダCB750Fを飛ばす走り屋だったが、秀吉との出会いで本格的な走りの勝負に目覚め、美由紀の誘いによってレースの世界にも身を投じていくことになる。秀吉、美由紀、比呂とともに鈴鹿8時間耐久ロードレースの前座である鈴鹿4時間耐久ロードレースに出場。劇的な勝利を収める。そして秀吉の身の上に起こった不幸をきっかけに、本格的にレースに打ち込むことになる。
- 全日本ロードレース選手権の250ccクラスに参戦し、ルーキーながらチャンピオンを獲得。翌年にはついにWGP(現在のMotoGPにあたる)の最大排気量クラスであるGP500クラスに参戦することになる。そこでの活躍で、やがてライバルを始めとするGP関係者やファンからは「ガン・ボーイ」(「グン」のローマ字表記「GUN」が英語では「ガン」と読めるため)のアダ名で呼ばれるようになる。
- 伊藤歩椎(いとう あい)(CV:荻野目洋子)
- ヒロイン。ショートカットが愛らしい少女。郡の1年後輩で、最初は映画の影響で、郡がオートバイを乗り回す姿がカッコいいと絡んでくるウザカワ系の女の子だったが、やがて郡のレース活動を手伝うようになり、彼から告白される形で交際することになる。WGP編に入ってからは婚約者として常に郡に寄り添って世界を回ることになる。
- 一ノ瀬美由紀(いちのせ みゆき)(CV:戸田恵子)
- 郡の同級生。仲間たちからは「みい」の愛称で呼ばれる。ボーイッシュかつ気丈でクールな少女だが、実は父は大企業の経営者で、自ら「イチノセレーシング」というチームのオーナーを務めるほどであり、生粋のレース系お嬢様である。峠道で見かけた郡の才能に惚れ込み、彼をレースの世界へいざなってゆく。当初は郡へ異性としても惚れているフシがあったが、歩椎の存在もあって身を引き、比呂と結ばれることになる。
- 沖田比呂(おきた ひろ)(CV:二又一成)
- 郡の親友。頭をリーゼントに決めたりするちょっとお調子者の少年。だが、バイクで速くなりたいという思いは郡たちに負けないほど貪欲で、努力家の一面も持つ。美由紀に片思いしていたが、鈴鹿4耐後に告白して結ばれる。実家は八百屋だが、自分のバイクショップを持つという夢に向けてこちらも努力中。
- 聖秀吉(ひじり ひでよし)(CV:中尾隆聖)
- 郡の最初のライバルとなる男。関西出身の小柄な少年で、自称「裏六甲のウンチーニ[2]」。愛車はスズキGSX750Sカタナ。峠道では常に郡の先を行き、自分を「ウサギ」郡を「カメ」に例えていた。これにより、郡はコーナーリングでハングオンするたびに「カメッ」と叫ぶのが口癖になっていた。
両親を事故で亡くして妹と支え合って生きており、「プロレーサーになって自ら家計を賄えるようになりたい」というハングリー精神を強く持つ。あらゆる要素が郡とは対照的であり、まさに生まれながらの「宿敵」と呼べる。
- 鈴鹿4耐では郡と組んで優勝を勝ち取り、有力な耐久レースチームからオファーを受け取る。これで国際B級ライセンスを取って鈴鹿8耐に出るという目標が現実的になり、峠の走り屋を卒業しようと、郡と一緒に「走り納め」に出かけるが…
二人一緒に峠を攻める最中、目の前で他のライダーが転倒。郡は動物的カンで危険を察知し、バイクを手放してコース外側にわざとコケる。だが、秀吉はよりイン側に避け、対向車と正面衝突してしまう。こうして、秀吉は常に郡の先を行ったまま、あの世へと旅立ってしまった。
- 聖知世(ひじり ともよ)(CV:平松晶子)
- 秀吉の妹。歩椎のクラスメイトである。両親を事故で亡くして兄弟で支え合って生きてきた。レースの世界で生きるために速くなろうと生き急いでいる兄を心配していた。
- その心配は秀吉の事故死によって現実となり、人知れず転校していく。そして、第2部で再登場し、秀吉が生前走った鈴鹿サーキットを訪れた。そして美由紀に本心では兄の走りに感動していたことを伝え、心の整理をつけて物語からも姿を消す。
- 市川(いちかわ)
- 「イチノセレーシング」の監督兼チーフメカニック。元中学校教師であり、若い郡たちを厳しくも温かい目線で導いていく。鈴鹿4耐ではあえてライバル同士である群と秀吉を組ませて成功させている。
- 太田信一(おおた しんいち)
- 「イチノセレーシング」の若いメカニック。郡とはWGPまで至る長い付き合いとなり、ともに世界を回ることになる。
第2部:全日本ロードレース編
- 星野アキラ(ほしの-)
- 郡の一つ年下のライダー。おとなしそうに見える童顔の少年だが、実はかなりの自信家である。当初は郡を「センパイ」と慕い、彼の走りを真似ているうちに才能が開花する。やがては郡を抑えて優勝するまでの実力を身に着けることになった。それによってヤマハのワークスマシンを与えられてトップライダーとなるとともに傲慢な本性が表面化。しかし、チャンピオンを決める全日本グランプリでカルロス・サンダーに打ちのめされ、彼を破ってチャンプとなった郡に畏敬の念を取り戻すことになる。
- 島崎浩一(しまざき こういち)
- 「イチノセレーシング」に助っ人として招かれたエンジニア。元WGPライダーだが、エンジン焼付きが原因の大クラッシュで負傷し、引退に追い込まれた。
2ストロークエンジンのピークパワーを高めることにかけては右に出るものはないが、あまりにもピーキーなエンジンを作るため、これまで使いこなせるライダーがいなかった。しかし、郡との出会いで彼に合わせた究極のチューン「シマザキ・スペシャル」を施し、レースでの活躍を支えることになる。
- WGP編でも、郡がワークスマシンを与えられるまでは彼のプライベーター仕様のマシン「チーム・シマザキ」のチューニングを担当した。
- カルロス・サンダー
- ロスマンズ・ホンダのワークスライダー。アメリカ人。WGP参戦一年目にして250ccクラスのチャンピオンを獲得し、500ccにステップアップしてきた。全日本ロードレース選手権最終戦の全日本グランプリにスポット参戦。WGPライダーのレベルの高さを見せつけるが、郡に敗れることになる。
- WGP編でも引き続き登場するが、ライバルの役目をアンダーソンに取られ、郡へのワークスマシン貸与の待遇にケチを付けて一度はプライベーター仕様に戻しての参戦を強いたりと、セコい悪役としての動きが目立つようになる。その後は郡のマシンを試乗して、「自分には乗りこなせない」と事実上の白旗を上げることになる。
第3部:WGP編
- ラルフ・アンダーソン
- ゼッケン44のヤマハワークスチーム、ラッキーストライク・チーム・ロバーツに所属するライダー。当初はスポット参戦扱いだったが、エースライダーのランディ・マモラを事故で巻き込んで負傷させてしまい、レギュラーライダーに昇格。まもなくヤマハ勢のエース格にのし上がり、WGP編での郡の最大のライバルとなる。
- 梅井松夫(うめい まつお)
- HRC(ホンダワークスチーム)総監督。前髪を切りそろえた髪型の中年男性。郡に対しては「ド新人」と憎まれ口を叩くが、誰よりもその才能を評価している。イギリスGPで郡にスペシャルチューンを施したワークスマシン「ガン・ボーイスペシャル」を与えるが、それが他のホンダ勢ライダーとの揉め事になり、一度はそのマシンを引っ込めざるを得なくなったときは郡に涙ながらに謝罪している。また、郡とアンダーソンの接触事故により郡への出場停止処分をしようとしたレース主催者にも激しく抗議するなど、熱い一面を見せる。歩椎のことをチームのマスコット的存在として気に入っており、彼女と郡の男女の仲が進展するのを止めようとしたことも。
- ワイン・ガードナー
- 実在の人物。ゼッケン2のロスマンズ・ホンダのワークスライダー。郡のデビュー当初はそのタイムを評価しつつも自分を脅かす存在ではないと断言していた。しかし、シーズンが進むとともにその認識を改めざるを得なくなっていく。HRCが郡にワークスマシンを与えたことにクレームをつけたカルロスの動きに賛同もしている。着実な走りを重ねていき、シーズン終盤まで郡とアンダーソンのチャンピオン争いに絡み続けることになる。
- ロン・ハスラム
- 実在の人物。ゼッケン9のエルフ・ホンダのライダー。深くマシンをバンクさせてのコーナーリングとロケットスタートを得意とする。当初から郡を気に入り、彼に様々な形でアドバイスやアシストを与えていく。また歩椎のことも気に入ったようで、パドックではしばしば郡のチームを訪れている。
- エディ・ローソン
- 実在の人物。ゼッケン1のマールボロ・ヤマハのワークスライダー。昨シーズンのチャンピオン。正確無比なマシンコントロールと着実なレース運びを身上とし、超人的な持久力をも兼ね備えている。台頭してきたアンダーソンの走りを「えもいわれぬ風格」がただようと評し、キング・ケニーの正当な後継者であることを見抜く。
- クリスチャン・サロン
- 実在の人物。ゼッケン6のゴロワーズ・ヤマハのライダー。リーンウィズ(バイクと自身の体を同角度に傾ける)のフォームといぶし銀のような渋い走りのフランス人。郡のエキサイティングかつ野性的な走りは好みではないが、そのスピードには純粋に舌を巻いている。
- ケニー・ロバーツ
- 実在の人物。「キング・ケニー」の異名を取る偉大なチャンピオンライダー。物語中ではラッキーストライク・ヤマハの監督として登場。ラルフ・アンダーソンを見出し、ヤマハワークスの一員として送り出すことになる。ライダーにとって最も重要なのは「スピリッツ(魂)」だとの持論のもと、郡の走りを高く評価している。だが、アンダーソンの実力にも絶対的な自信を持ち、彼に冷静かつ的確な指示を与えていく。
- 日本人カメラマンと日本人モータージャーナリスト
- 名前は設定されていない。カメラマンの方は長年WGPを追いかけてきたベテランであり、日本人ライダーがWGPでトップを争うシーンが来るのを待ちわびていた。一方でジャーナリストは2戦見ただけで帰国の予定だったが、郡の走りに魅了されてシーズンの決着まで見届けることになる。二人は常に一緒に登場し、レースの解説を繰り広げる。2021年現在のニコニコ大百科読者にわかりやすく言えば、ウマ娘の「どうした急に」のモブ二人組のような存在。
関連動画
関連静画
関連項目
脚注
- *編のタイトルは公式のものではなく、編集者が独自に付けたものである
- *フランコ・ウンチーニ、イタリア人の実在のライダー。ちょっと日本語的には変な名前だが、1982年にスズキでWGP500チャンピオンを取っているレジェンドライダーである