債務の罠 単語


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サイムノワナ

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債務の罠(さいむのわな)とは、融資開発途上国に対して、返済が困難になるような過剰な融資(貸付)を行い、その結果、借り手債務不履行デフォルト)に陥った際に、インフラの権益を奪ったり、政治的な力を強めたりする状況をす言葉である。

英語では「Debt-trap diplomacy(債務の罠外交)」と表現される。特に、21世紀以降に中華人民共和国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」に関連して、中国の融資手法を批判する文脈で使われることが多い。

「金を貸すから、君のでもっと立な港や道路を作らないか?」

一見すると魅力的なこの提案は、時として、借り手未来を縛る甘い罠となる。

概要

この言葉を世界的に広めたのは、インド地政学者であるブラマ・チェラニ氏とされ、2017年頃から使われ始めた。その後、米国ペンス前副大統領演説で用いたことなどから、際的に広く知られるようになった。

債務の罠の典的なプロセスは以下の通りである。

  1. 魅力的な提案: 融資中国が念頭に置かれる)が、開発途上国に対して港湾、空港鉄道といった大規模なインフラ整備プロジェクトを持ちかけ、巨額の資金を融資する。その際、「政府は不要」など、相手にとって非常に有利に見える条件を提示することがある。
  2. 過剰な貸付: プロジェクトの採算性や借り手の返済力を十分に考慮せず、返済が困難になるほどの金額を貸し付ける。契約内容が不透明な場合も多いと摘される。
  3. 返済困難: 借り手は、インフラからの収益が想定を下回ったり、建設費が膨れ上がったりして、巨額の債務の返済に行き詰まる。
  4. 権益の譲渡: 融資債務返済の見返りとして、建設したインフラ(港など)の運営権を長期間(99年間など)にわたって獲得したり、資採掘権を得たり、あるいは軍事基地の設置を認めさせたりする。
  5. 力の拡大: 結果として、融資は借り手に対して強い政治的・経済的・軍事的な力を持つに至る。

具体的な事例とその考察

スリランカ:ハンバントタ港(象徴的な事例)

「債務の罠」の最も徴的な事例として挙げられるのが、スリランカ南部ハンバントタ港である。

インドネシアとタイ:高速鉄道をめぐる攻防

東南アジア高速鉄道計画は、日本中国が受注を競い合った舞台であり、「債務の罠」をめぐる各の思惑が複雑に絡み合う事例として注される。

インドネシア:「債務の罠」に近づいたケース

首都ジャカルタバンドンを結ぶインドネシア高速鉄道は、当初、日本新幹線方式の導入が有力視されていた。しかし、2015年中国が土壇場で逆転受注を果たす。決め手となったのは、中国側が提示した「インドネシア政府の財政負担・債務は一切不要」という破格の条件だった。

国の借金を増やさずに巨大プロジェクトが実現できるという「甘い言葉」は、インドネシア政府にとって非常に魅力的だった。しかし、現実はその通りには進まなかった。

  • 建設費の高騰: 杜撰な計画や用地買収の遅れ、パンデミックで、建設費は当初の想定から2割以上も膨れ上がった。
  • 政府による的資金投入: 当初の約束は反故にされ、プロジェクトを頓挫させられないインドネシア政府は、結局、費を投入して建設費の不足分を補填せざるを得なくなった。
  • 採算性への疑問: 開業後も、高めの運賃設定などから利用者が想定通りに集まるかは不透明であり、鉄道事業の収益だけで中国からの巨額の融資を返済していくことには大きな疑問符がついている。

この一連の経緯は、魅力的な条件でプロジェクトを開始させ、問題が発生すると相手に財政負担を強いて経済的な導権を握るという、「債務の罠」の典的なパターンに酷似していると摘されている。

タイ:「金融の罠」を警戒し、別の依存関係へ

タイケースはさらに複雑な様相を呈する。タイも当初、首都バンコクと北部の観光都市チェンマイを結ぶ路線に日本新幹線導入を検討していた。しかし、この計画は事実凍結状態にある。

しかし、タイが金融的な自立を保った代償は小さくなかった。

結果としてタイは、直接的な「金融の」は回避したものの、中国地政学的な構想に組み込まれ、長期的な「技術の」とも言える依存関係を受け入れた、と見ることができる。

モザンビーク:日本の「質」と中国の「速さ」が交差した橋

アフリカ南東部のモザンビークは、日本中国インフラ支援哲学の違いが、に見える形で現れた徴的な場所である。

このの事例は、開発途上国が直面する選択肢を浮き彫りにする。日本支援は時間はかかるが、徴となり、長期的な経済効果を生む質の高いインフラ提供する。対する中国は、多少の質にはをつぶってでも、速かつ大量にインフラを整備し、民に成果を示すことができる。どちらがそのにとって本当に有益なのか、判断は非常に難しい。

「債務の罠」をめぐる議論

この「債務の罠」という見方には、様々な立場からの批判や反論も存在する。それぞれのは、この問題が単なる経済問題ではなく、地政学的な思惑が絡んだ複雑なものであることを示している。

アフリカの真の姿と中国の政治的狙い

中国が特にアフリカへの関与を深める背景には、経済的利益だけではない、高度な政治的計算が存在する。

「未開の大陸」ではないアフリカ

まず、「アフリカは発展していない」というイメージは、全に時代遅れの認識である。多くのが高い経済成長を遂げ、世界で最も若く豊富な人口を抱える「最後のフロンティア」「希望大陸として、その巨大な市場ポテンシャル世界の注が集まっている。日本を含む各アフリカとの関係強化を急ぐのは、この成長性を見込んでのことである。

国連をめぐる票集め

中国の最大の狙いの一つが、社会における力の確保である。
アフリカには54の国連加盟があり、これは国連総会における最大の地域票田(全体の4分の1以上)を占める。中国インフラ支援などを通じてアフリカに「恩」を売り、舞台で自に有利な状況を作り出している。

このように、中国にとってアフリカへの支援は、単なる経済活動ではなく、自の統治体制を正当化し、際秩序における発言力を高めるための重要な政治投資なのである。

日米欧韓の対抗戦略

中国の「一帯一路」構想に対し、日本や欧は明確な対抗策を打ち出している。一方、韓国はより複雑な立ち位置を取っている。

日本の「質の高いインフラ」

日本政府は、中国の融資手法を念頭に、「質の高いインフラ投資」の重要性を社会に訴えている。これは、法の支配や民主主義といった価値観を共有する々と連携し、正で持続可能な発展をである。

米国の「PGII(グローバル・インフラ投資パートナーシップ)」

米国G7パートナーと共に、中国への対抗策としてPGII導している。これは、バイデン政権が当初掲げた「B3W(より良い世界の再建)」構想を発展させたものである。

EUの「グローバル・ゲートウェイ」

欧州連合EU)も、独自の対抗構想としてグロバルゲートウェイ2021年に発表した。

韓国の「バランス外交」

地理的・経済的に中国との関係が非常に深い韓国は、欧とは異なる、より慎重なアプローチを取っている。

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