ダリルバルデとは、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に登場するモビルスーツ(MS)である。
概要
ダリルバルデ | |
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開発・製造 | ジェターク・ヘビー・マシ―ナリー |
型式番号 | MD-0064 |
頭頂高 | 18.7m |
重量 | 72.8t |
固定武装 | 頭部ビーム・バルカン 膝部ペレットマイン 脚部シャクルクロウ |
搭載ドローン | イーシュヴァラ (グスサー・イーシュヴァラ) アンビカー (ダヤ・アンビカー) |
オプション武装 | 分割式ビーム・ジャベリン 複合武器「コンポジットアームズ」 |
パイロット | グエル・ジェターク |
ジェターク・ヘビー・マシ―ナリーが開発・製造した、第5世代実証用モビルスーツ。型式番号はMD-0064。パイロットはグエル・ジェターク。赤色の機体で、ジェターク製MS特有のバイザーアイと円状のアンテナを後部に備え付けた頭部が特徴。
機体制御と火器運用を補助する「意思拡張AI」を搭載しており、それの実証機という側面が大きい。ただし、初登場時点では「ベータ版」状態であり、パイロットを半ば無視して機体を動かしてしまう困ったちゃんだった。
本機の最大の特徴は、意思拡張AIによって制御される多彩なドローン兵器を搭載していること。なんと腕自体がドローン兵器であり、予備として搭載されたドローンと換装することができるのだ。敵の攻撃を受け止めるシールドもドローンであり、変則的な戦いを実現できる。
第2話ラストで標的機のディランザをダルマにする初登場を飾り、第3話ではグエルとスレッタ・マーキュリーの再決闘として、ガンビットを持つガンダム・エアリアルと激突する。父ヴィム・ジェタークの生き写しの様に、自分の制御を無視するAIにキレたグエルは端末を破壊し、自分だけの力でエアリアルに肉薄する。その後は修理とグエルへの懲罰のため、アスティカシア学園から引き上げられてしまった。
以来長らく出番がなかったが、第17話で微改修とAIの最適化を施されて再登場。およそ3か月の過酷な彷徨から帰還したグエルが再び搭乗し、新たな戦場に赴くことになる。
武装
本体固定武装
- ビーム・バルカン
頭部搭載機関砲。取り付け場所こそ違うが、ディランザの胸部バルカンと同規格である。 - ペレットマイン
両膝に備えられた4門×2の発射口から投射されるマイクロ機雷。白刃戦での絡め手・煙幕弾かわり・ビーム弾への簡易バリアとして使用される。 - シャクルクロウ
両脚のカギ爪。有線接続で射出することが可能で、敵機を掴んで振り回したり引き寄せたりする。
ドローン兵装
- イーシュヴァラ・タイプA / タイプB
ダリルバルデの両前腕部は、それ自体が本体から分離して飛行できる攻撃ドローンになっている。前腕部を構成するマニピュレータ(手指)付のドローンが「タイプA」、背中に2機が接続されているビーム・ガン/ビーム・サーベル兼用のドローンが「タイプB」。
タイプAに武装を持たせたまま飛ばして敵の意表を突いたり、タイプAが破壊されたらタイプBを新しい腕として戦闘続行したり、4つとも切り離してオールレンジ攻撃を行ったりと、活用法は様々。 - アンビカー
通常時は両肩部に接続されるシールドドローン。緑色のシェルユニットが真ん中に設置されている。もちろん2枚とも切り離して全周を防御したり、いざという時は質量武器として敵にぶつけたりできる。
オプション武装
- ビーム・ジャベリン
長柄の格闘兵器。両側からビーム刃を形成する。ビーム・アンカー(ビーム刃が大きい錨型)とビーム・クナイ(アンカーの反対側)の二刀流武器として分割可能。イーシュヴァラ・タイプAで握ったまま射出→回収することも出来る。
ビーム発振部の出力が高いのか、作中では降水環境で減衰した敵のビーム・サーベルを一方的に押し切るシーンもあった。 - コンポジットアームズ
改修後に追加された複合武装。短銃身ビーム・ライフルに折りたたんだ格闘兵器を連結している。
劇中の活躍
ダリルバルデを端的に評するなら「名勝負製造機」である。
『水星の魔女』という作品自体がキャラクターの人間関係描写に重きを置き、ロボットバトルの回数は少なくする代わりに可能な限り密度を濃くしている作風ということもあるのだが、そのギミックを駆使した飽きさせない戦闘描写はさすがのサンライズ作品。グエル・ジェターク少年のキャラ描写も相まって、ガンプラも大好評であった。
本項ではそんなダリルバルデと、グエルの活躍を振り返る。
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以降、本編の詳細なネタバレを記述しています。 |
第3話 vsガンダム・エアリアル
これは俺の戦いだ……! 俺の、俺だけの!!
この「グエル・ジェターク」が負けてたまるかよ!!
「大人の事情」によって、スレッタ・マーキュリーとの再決闘を迫られたグエル少年。愛機ディランザが整備中ということもあり、グエルの父ヴィム・ジェタークは新鋭機ダリルバルデと社の現役エンジニアチームを用意した上に、姑息な策まで企てていた。
エアリアルの武装とスレッタの狙いを把握したグエルは、本体とガンビットの連携攻撃を警戒して回避を重視しようとするが、ベータ版の意思拡張AIはシールドでの防御→突撃を優先。ビーム・ジャベリンを腕ごと射出する誘導ロケットパンチでエアリアルを動かし、アンカーとクナイのタイプA二刀流+タイプB+アンビカーを完全展開した格闘戦を仕掛ける。背後に回られてもアンビカーで防御し、タイプBとタイプAの連続突撃で反撃の隙を与えない見事な戦いぶりを披露するが、当のグエルはコクピット内で何もさせてもらえず、力無く項垂れるしかなかった。
更にヴィムの横やりで廃熱散水が始まり、ビーム兵器が減退することで格闘戦主体のダリルバルデ優位な環境になる。ジャベリンを再結合してエアリアルのビーム・サーベルを押し切り、右腕をライフルごと切断。だがスレッタも粘り、サーベルでタイプAが両断されるが、すかさず残った基部をエアリアルのアンテナ目がけて射出し、仕切り直す。
そうこうしているうちに散水が停止され、エスカッシャンの逆襲が始まる。AIはペレットマインでビーム弾を防ぐが、あからさまな陽動に引っ掛かって足を止め、集中砲火でアンビカーを粉砕される。
タイプBを新たな腕部として接続する最中、とうとうグエルは父と弟に抗議し、AI端末を鉄拳粉砕。エアリアルの突撃を直付けサーベル二刀流で防ぎ、怒りの逆突撃に移行した。巴投げで放り投げられるやシャクルクロウを射出→エアリアルを振り回して大地にぶつけようとする流れるようなムーヴ。体勢を立て直して飛び掛かるエアリアルのサーベルを左腕で防ぎ、右腕でカウンターを狙うが、サーベルを離したエアリアルに右腕を掴まれ、そのまま体当たりでアンテナを折られてしまった。
負けはしたものの、そのギミックをフル活用した戦いぶりは視聴者のハートを鷲摑みにした。数週間後のガンプラ発売時には多くの店舗で即完売が相次いだそうな。
第17話 vsガンダム・エアリアル改修型
「グエル。出来る限りの最適化はしたが、あのAI、どうする?」
「かまわない。使ってくれ」
「いいのか?」
「プライドだけじゃ、スレッタ・マーキュリーには勝てないさ」
会社、弟、そしてダリルバルデ。これ以上「父と自分を繋ぐもの」を失わないため、グエル青年はジェターク社に帰ってきた。ミオリネ・レンブランはそんなグエルに、ジェターク社支援の条件として、スレッタとの決闘で勝利しろという取引を持ち掛ける。
ダリルバルデは武装を一新しAIも最適化されたが、当のグエルは実戦のトラウマに苛われ、操縦桿を握ろうとするだけで吐き気を催すほど。一方エアリアルは右背部スラスターが欠落中だが、スレッタの士気は過去最高調。機体とパイロット、それぞれに問題を抱えた状態で、最後の決闘が始まった。
グエルは右のダヤ・アンビカーを囮にして距離を詰め、コンポジットアームズからビーム・カタナを抜刀するが、そのまま動きを止めてしまう。ビーム・ライフルで追撃を試みるが手が動かない。やっと発砲したビーム・ショットガンは明後日の方向に飛んでいく。グエルの不調を察したスレッタはエスカッシャンを展開し、左ダヤ・アンビカーの基部と両方のタイプAを瞬く間に破壊。ペレットマインの悪あがきも空しく、サーベルを抜刀したエアリアルが迫る。
グエルのトラウマを払ったのは、弟と仲間の叫びだった。意思拡張AIのサポートを受けたダリルバルデはグスサー・イーシュヴァラ2機でサーベルを受け、残った2機で反撃に移る。たまらずエアリアルが離れたところに左シャクルクロウを撃ち込み、ケーブルを巻き取って急接近キック。エアリアルがサーベルを取り落した隙に、右腕にグスサーを装着してアンテナを斬ろうとするが、左腕を犠牲にして回避される。しかしこれによって、エアリアルは残る左肩のサーベルを抜刀できなくなった。
エアリアルはパーメット・スコア6を発現し、浮遊するグスサー2機をオーバーライド。グスサーとエスカッシャンでダリルバルデを釘付けにし、ガンビットライフルでアンテナ確殺を狙うスレッタだが、エアリアルが突如パワーダウンしてしまう。グエルはその隙を逃さず、右腕と左脚だけが残ったダリルバルデを必死に操り、エアリアルのアンテナを切り裂いた。
「水星女」を下し、歓喜するジェターク寮生。だが、勝利のきっかけがミオリネの仕替けた罠によるものだと悟ったグエルは、どこか悲しげな表情でエアリアルを見つめるのだった――
第20話 vsミカエリス&ハインドリー
何もわかっていないんだな……
奪うだけじゃ、手に入らない!!
陰謀を企むシャディク・ゼネリを捕えるため、ダリルバルデで発進するグエル。迫ってくるシャディクのミカエリスに威嚇射撃を放つが、シャディクはわざと被弾し、先制攻撃されたという大義名分を作り出してしまった。もっとも、完全にグエルを敵に回したシャディク本人も冷や汗をかいていたが
ミカエリスの実戦出力キャノンをダヤ・アンビカーとペレットマインで防ぎ、ジャベリンブレイザーの突撃も躱して、ビーム・カタナとグスサーで仕掛けるダリルバルデ。だがシャディクはグスサー突撃を両腕で悉く払いのけ、ビームブレイザーとビームバルカンで逆襲する。ダリルバルデの右腕はブレイザーで掴まれ、引き千切られてしまった。
グスサーの奇襲斬撃も切り離したジャベリンでガードされ、ダリルバルデは左ダヤ・アンビカーでミカエリスを押しとどめ、右ダヤ・アンビカーで機体を防御する。グエルは左ダヤ・アンビカーを犠牲にして距離を取り、真っ向勝負を挑んだ。
グスサーの正面突撃は簡単に弾かれ、右ダヤ・アンビカーはジャベリンで粉砕。そのままブレイザーに胴体を鷲摑みにされたダリルバルデは、サビーナ・ファルディンのハインドリーに攻撃される。しかしサビーナ機が突撃に移行した瞬間、生きていたグスサーがサビーナ機の両腕を切断。遂にキレたシャディクはブレイザーキャノンをぶっ放し、ダリルバルデの胴体が泣き別れになってしまう。グエルは爆散寸前のコクピット内で最後まで意思拡張AIに指令を送り、死角からのグスサー突撃でミカエリスの四肢を切断したのだった。
グエルがコクピットから這い出た直後、ダリルバルデは遂に力尽き、爆散した。父が息子に与えたMSは、その最期の瞬間まで息子を支え続けたのである。
総括
以上、ダリルバルデとグエルの戦歴を振り返ってみると、100%完璧、もしくは相手と対等なコンディションで戦えたことが一度もないことがわかる。
第一戦はベータ版AI(機体の問題)、第二戦はグエルのメンタル(操縦者の問題)、第三戦は相手だけ実戦仕様(一方的に不利)……。パイロットの優秀さと機体の優秀さを交互に示す、俊逸なガンプラの販促作劇と言えるだろう。
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関連項目
- モビルスーツ / ガンダムシリーズのMS・MAの一覧
- 機動戦士ガンダム 水星の魔女
- グエル・ジェターク
- ディランザ - ジェターク社製の前世代機
- ガンダム・シュバルゼッテ - デザインに共通点が多いデザイナー同じだし
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