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ボーダーラインとは、
- 英語で、国境線や際どいことを意味する単語。Borderline。
- なんらかの境界線の意味。
- 2.から、入試の合格判定の境界を意味するものとして使われる単語。
- セガのアクションゲーム。
- 刑事ドラマ「相棒」Season9の第8話の題名。⇒当記事で解説する。
- 津田美波と三上枝織が、理沙+ミドリ Starring 津田美波+三上枝織として歌う楽曲。『携帯彼氏+』の主題歌。
- 同人音楽サークル「Alieson」の楽曲。
- ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による2015年の映画。原題:Sicario
5.について
概要
2010年12月15日に放送された、相棒 Season9の第8話の題名である。脚本は「相棒シリーズ X DAY」の脚本を担当した櫻井武晴氏で監督は同じく「X DAY」を監督した橋本一氏が担当。
相棒は度々時事問題を取り入れた話があるが、これも雇用問題などを取り入れた話となっており、放送後、ネット上で大きな反響を呼んだ。
あらすじ
年の瀬の押し迫る12月半ばの都内で、ビルから転落したと見られる男性の遺体が発見された。
男性の名は柴田。年齢は36歳。手には刃物による攻撃を防ぐ時につく防御創が残っていたことから、被害者はビルの屋上で何者かに刃物で襲われ、揉み合っているうちに転落したと見られた。
柴田は金もなく、期限切れ間近の保険証と、大中小3つの鍵を持っていただけだった。
捜査一課が傷害致死事件の疑いで捜査を始める中、数の子・牛肉・ワカメ・リンゴ・小麦粉・乳脂肪分という胃に残された支離滅裂な内容物から事件に興味を抱いた杉下右京も、神戸尊と共に捜査を開始する。
事件の全貌
以下ネタバレ
柴田が以前住んでいたアパートの管理人によると、1月に寮付きの仕事が決まったからとアパートを出た柴田。そこから死ぬまでに11ヶ月の空白があった。
柴田の兄は、柴田が兄に借金を頼み込んでいたが、兄は親と自分の家族の面倒を見なければならないことから、借金を断っていた。以降は、連絡を取っていなかったという。
3つの鍵の内、大きい鍵がレンタルコンテナのものと判明する。
柴田はコンテナを借りていたが、中で寝泊まりしていたため、契約を解除されていた。
寮付きの仕事が決まっていたはずなのに、なぜ寝泊まりする必要があったのか?
3つの鍵の内、小さい鍵が私書箱のものであることが判明し、柴田がハローワークに通っていたことが分かる。ハローワークの担当職員は柴田から生活相談を受けたと証言する。その際には柴田は元気だったらしい。
その後、真ん中の鍵がハローワークのロッカーのものと判明。
そこには柴田が医療事務の資格を取得した際に勉強したノートや未届けの婚姻届、プリペイド式携帯が残されていた。
ノートには医療費の不正受給の具体例が記されていた。
婚姻届をもとに婚約者を訪ねると、結婚を前提に交際していたのに別れていたことが分かった。
原因は正社員の話がフイになり、柴田の生活が不安定になったことに婚約者が難色を示したため。
3月に婚約者は柴田に「あなたは価値が無いと判断された」と別れを切り出していた。
その後、柴田が大学を出たときは就職氷河期で正社員の職が得られなかったこと、派遣社員としてイベント企画会社で働いていたものの不況を理由に解雇されていたこと、その会社の社長に紹介されて建設作業請負の会社に住み込みで再就職したこと、その土建会社も雇い止め(雇用契約の更新拒否。実質的に解雇)に遭っていたこと、医療事務の資格を取得したものの実務経験がないことから就職試験に失敗していたこと、などが新たに分かった。
特命係はイベント会社社長に話を聞き、作業請負の土建会社を紹介してもらいそこを訪れる。
すると柴田は仕事がないことを理由に雇い止めにあっていたものの、会社自体は先々まで仕事を受注しており、明らかに不自然であった。
さらに伊丹らの捜査で、会社は技術者を現場に派遣しない偽装請負(違法派遣)をしていたことが判明する。
警察が責任者を追及して分かったことは、その会社の正体は他の派遣会社の派遣切りの請負であり、派遣元はそこを紹介することで雇い止めしたい社員を体よくクビ切りしていた、という実態だった。
更に、この会社には事前に説明していたような社員寮はなく、それに文句を言うものは雇用契約をせず、一定の期間雇い終えると勝手にクビにしていた。まあ最初からまともに仕事をさせるつもりのない会社であり、柴田が雇われていたのも1ヶ月程度、2月までであった。これが3月の婚約解消の引き金になったのである。
こうして柴田が4月には生活保護の申請を行おうとしていたことが分かる。
以前の担当職員が言った「生活相談を受けた」というのは嘘だったのだ。
柴田は医療事務資格をもとに就職斡旋を願っていたが、実務経験がネックで面接まで至らず。
生活保護費圧縮のために水際作戦を展開していた行政の方針に基づき、担当職員は柴田を上手く誘導し門前払いにしていた。受理すらされなかったのだ。
担当職員は「不景気が悪い、自分は上からの命令に従っただけだ」と開き直る。
プリペイド携帯の履歴から、柴田が古物商の資格を持っていることが判明。
しかも、古物商として現在営業中だという。
調べたところ、名義貸しの事実が明らかになり、柴田の名義を騙っていた男は盗品を扱っていた為に逮捕される。
男によれば、資格保持者は誰でもよく、たまたま金の無さそうな柴田を利用したとのこと。
柴田は盗難品を売る男の誘いに乗り、古物商の名義貸しを10万円で引き受けてネットカフェで寝食をしていた。
以後、日雇い労働と就職活動の傍ら、報酬10万円でたびたび名義貸しを行っていた。
名義貸しはそれだけでなく、携帯電話や偽装結婚、借金の保証人など、ありとあらゆることに対し行っていた。
そうして名義貸しを続け幾ばくかの金を得たものの、やがて法的に綺麗だった柴田の名も汚れてしまい、個人の名義貸しの限界まで至った柴田は「お前の名前に価値は無い」と切り捨てられ、名義貸しもすることができなくなる。
彼はさらに追い詰められた。
就職先も見つからず、生活保護も受けられず、名義貸しすらできなくなった柴田は、スーパーの試食など無料で飲食できる場所を転々としていた。これが例の雑多な胃の内容物の正体であり、ただ来る日も来る日も「食べる為だけに歩く毎日」であった。
彼は携帯にあるメモを残していた。それは、どの店を何日に訪れたかを記録したもの。
店員に顔を覚えられて目を付けられないための防御策だった。追い出されない様、身だしなみにも気を遣う。
だが、彼を覚えていた店員がいた。店頭でドーナツの試食を行っていた菓子店の女性である。
男性が試食をするのは珍しい上に、身なりはいいのに一度も買って行ってくれないから覚えていたのだ。
彼の事情を知らない彼女はちょっとした意地悪をしてしまう。その日試食に訪れた柴田にこう言ったのだ。
「いつもどうも。あの、こちら、新作です。どうぞ。 ・・・・・・気に入ったら、買って下さいね?」
もちろん柴田には、ドーナツを買う金などない。彼はドーナツを根こそぎ奪い取り、無言で走り去ったという。
走り去ったその先で柴田が見たのは、自分が以前住んでいたアパートに入居者が入っている場面だったろうと、杉下右京は推測する。
就職のためには住所が必要であり、柴田は旧住所から私書箱に郵便物を転送することで、なんとか現住所があるように見せかけていた。
しかしアパートに人が入ってしまうと、旧住所を使うことはできなくなる。そうなると日雇いすらも難しい。
それはこんな社会でも懸命に生きようとする柴田が、縋り付く最後の拠り所を失くした瞬間だった。
柴田は医療事務の勉強で得た知識を使い、最後の行動に出た。
本物の防御創と、偽装した防御創の見分け方。不正請求に備える為に必要な知識である。
彼はこの知識を使い、件のビルの屋上で本物そっくりの防御創を自分の掌や腕に刻む。
それを示すように、現場付近で見つかったナイフには柴田の指紋と血痕が付着しており、指紋から自分に向けてナイフを向けていたのは明らかだった。
柴田は「他殺」だった。
傷つき疲れ果てた柴田は「自分を殺したのは『社会そのもの』だ」ということを告発して、命を絶ったのだった。
ネットでの反響
放送直後からブログやTwitterなどで、ボーダーラインに対する反響が寄せられた。
その内容の殆どは、柴田に自分自身を重ね、柴田に明日の自分を見て、身につまされる思いをしたというもの。
「負け組ざまぁwwwwwww」などというアホなコメントは、記事主が知る限りではない。
それだけ人々の生活や日本の経済情勢が逼迫していることの証左であろう。
もちろん、脚本が優れていたというのも理由に挙げられる。
この話で起きた一連の出来事はすべてフィクションであるが、そこで取り上げられた雇い止め、偽装請負、水際作戦、名義貸しなどは実際に起きていることである。
また、一旦ホームレスになってしまえば、そこからの復帰は絶望的に困難になるという社会の現実もある。
これらを緻密に組み合わせ、現代の日本で普通の暮らしをしたかっただけの一人の人間が、道を踏み外し、追い詰められ、価値と尊厳を踏み躙られ、やがて死に至るまでを見事に描いている。
故に人々は身につまされたのだと思われる。
最後に
関連項目
相棒 | ||
登場人物 | 特命係 | 杉下右京 - 亀山薫 - 神戸尊 - 甲斐享 |
その他 | 米沢守 - 角田六郎 - 伊丹憲一 - 内村完爾 - 大河内春樹 - 小野田公顕 | |
本編 | 殺しのカクテル - ピルイーター - ボーダーライン - 右京の目 | |
映画 | 相棒 -劇場版Ⅱ- | |
関係者 | 役者 | 水谷豊 - 寺脇康文 - 及川光博 - 成宮寛貴 六角精児 - 山西惇 - 川原和久 - 片桐竜次 - 神保悟志 - 岸部一徳 - 石坂浩二 - 生瀬勝久 |
脚本 | 太田愛 | |
音楽 | 池頼広 | |
制作 | テレビ朝日 - 東映 - 小学館 | |
関連項目 | 刑事ドラマ - テレビドラマ - テレビ番組の一覧 - 官房長シリーズ |
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