メタバース(Metaverse)とは、コンピューターネットワーク上に作られたチャットサービスのひとつのことである。元々はパソコン通信の2Dチャットサービスを3D化、インターネット上でサービスをしたもの。
かつては仮想世界(ユーザーを含めたSecondLife関係者界隈)、3Dインターネット(SecondLife研究関係者界隈)、ソーシャルVR(VRChat界隈を紹介するメディア)と呼ばれていた。
概要
「メタバース」は「超(メタ)」と「宇宙(ユニバース)」を組み合わせた造語で、もともとはSF作家ニール・スチーヴンスが1992年に発表した小説「スノウ・クラッシュ」に登場する仮想世界の名称だったが、今はインターネット上に構築される3Dチャットサービスを指す言葉として使われている。
ユーザーはアバターを操作してCGで作られた仮想世界の中で様々なことを行う。アバターの行動は各国の法律および利用規約の範囲内であれば自由である。ゲームではないのでサービス提供者が提供するシナリオや設定等に左右されない部分が利点で、チャットから創作まで思うがままに楽しむことができる。
前史
この時代のサービスはメタバースとは呼ばないが参考までに紹介する。代表的なサービスはルーカスフィルムゲームズ(のちのルーカスアーツ)が開発した「Habitat」。日本においては富士通が権利を購入し日本語化した「富士通Habitat」である。1998年富士通Habitatシリーズのユーザー数は4万人に近づいたが以後減少していく。
第一世代
代表的なサービスは米LindenResearch(リンデンリサーチ)社の開発スタジオLindenLab(リンデンラボ)が運営する「SecondLife(セカンドライフ、旧名称LindenWorld(リンデン・ワールド)、2003年公式公開)」。しかし、Web2.0サービス(ユーザーが情報発信者となり、コンテンツをWebサーバーに蓄積する形態のWebサービス。ブログや動画共有サイトが代表例)としては使い勝手にやや難があり、あまり普及しなかった。また2010年以降、インターネット端末の急速なモバイル化(スマートフォン)もありモバイル端末で楽しみにくいこれらのサービスは勢いを失い、2020年に会社ごと身売り。
世界初のセルルックアニメーションメタバースは我がニコニコ運営のドワンゴが2008年10月15日に正式リリースした「ai sp@ce」かもしれない。ニコニコすげぇかも。そのこころざしは第ニ世代の「ホロアース」へつながる。
第二世代
通信サービスはインターネット、グラフィックは3D、VRがキーワード
2011年、再びSF小説「ゲームウォーズ」(2018年「レディ・プレイヤー1」として映画化)が発表され、気づいたら第二世代に突入する。
2014年、ヘッドマウントディスプレイに対応したVRChatが登場、徐々に人気が出始める。2019年12月からの新型コロナウイルス感染症の行動制限対策としても挙げられた。2021年に巨大SNSを運営するFacebook社が社名を「Meta Platforms(通称Meta)」に変更してメタバースの実現に注力する姿勢を示すなど、再びメタバースに対する注目が集まった。2024年1月にはVRChatの同時アクセス数が10万を突破、先代SecondLifeの2倍に達した。
しかし2022年11月登場のChatGPTに代表される生成AI(生成人工知能)に注目が移り失速している。
主なサービス
第一世代
- SecondLife(旧・LindenWorld) - LindenResearch社LindenLab(アメリカ)2003年~
- OpenSimulator(通称OpenSim)- SecondLifeをモデルとして有志により作成されたオープンソースプロジェクト( OpenSimulator公式Wiki
)2007年~ - meet-me - 株式会社ココア (日本) 2008年~2018/1/31
- PlayStation®Home - ソニー (日本) 2008/12~2015/4
- ai sp@ce(アイスペース) - ドワンゴ (日本) 2008/10~2011/6。おそらく世界初のセルルックアニメーションメタバース
- BlueMars - Avatar Reality(アメリカ)初めて(?)商業ゲームエンジンで構築 2009年~
第二世代
総合型
- VRChat - 2014年1月16日~
- cluster - クラスター株式会社(日本)2017年5月31日~
- NeosVR - Solirax(チェコ)。2018年5月4日~情報量が少なすぎてその後の詳細はっきりしない。ただ運営会社が仮想通貨事業に転換した、出身者が新しいメタバースResoniteを立ち上げたと情報あり
- DMM Connect Chat - DMM(日本) 2021年1月26日~2022年8月31日
- Horizon Worlds - Meta(米国)が展開するメタバース。2021年12月よりアメリカとカナダで先行してサービスを開始、その後イギリス、フランス、スペインでもサービスを開始している。
テーマ特化型
- DOOR - (教育・文化振興)NTTコノキュー(日本) 2020年11月開設。2025年3月31終了。
- Gran Whale - (旅行体験)ANA NEO 2025年2月28日終了
- ホロアース - (VTuber広報)大手VTuber事務所でおなじみのIT企業カバー株式会社(日本)。2022年11月ベータ版が公開され、2025年4月24日に正式リリースされた。セルルックアニメーションメタバース。
歴史
赤太字はサービス、青太字は分野を支える技術、緑太字は分野を支えるサービス、オレンジ文字は社会の動き
前史
- 1970年代末、米国でパソコン通信が始まる
- 1979年、米国で初の大規模パソコン通信「CompuServe」サービス開始
- 1980年、ゲームエンジンの制作会社社内制作共有がはじまる
- 1982年、日本にて第二次通信回線開放
- 1985年、日本にて第三次通信回線開放
- 1985年、アスキー、本格的パソコン通信サービス「ASCII-NET」サービス開始
- 1986年、NEC、パソコン通信サービス「PC-VAN」サービス開始
- 1986年、米ルーカスフィルムゲームス(のちのルーカスアーツ)、2DCGを使ったパソコン通信チャットサービス「Habitat(ハビタット)」開始
- 1987年、ニフティ、パソコン通信サービス「Nifty-Serve」サービス開始
- 1988年、インターネットを用いたテキストチャットIRC(Internet Relay Chat)登場
- 1989年2月28日、富士通が「FM TOWNS」を発売
- 1990年、富士通、「Habitat」を日本語化し国内でサービス開始。富士通Habitat
- 1994年、富士通Habitatシリーズのユーザー数が1万人になる
- 1996年、富士通Habitatシリーズのユーザー数が1万5000人になる
- 1998年頃、富士通Habitatシリーズのユーザー数が4万人に近づく。以後減少
- 1990年代、富士通にてヘッドマウントディスプレイの開発が行われていた
- 1990年代、ゲームエンジンの制作会社外公開が始まる
第一世代
前夜
- 1992年、SF小説「スノウ・クラッシュ」が発表される
- 1992年、2D/3DグラフィックスAPI「OpenGL(旧・IRIS GL)」オープン化
- 1994年頃、フィリップ・ローズデールがインターネットを使った仮想世界を考案
- 1995年、米Microsoft、Windows95と2D/3DグラフィックスAPI「DirectX」をリリース
- 1995年8月、NTT、テレホーダイのサービス開始(23時から翌朝8時まで)。通信料が軽減される
- 1998年5月、商業ゲームエンジン「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」初版リリース
- 1999年12月、(グラフィック)Nvidia GeForce256発売
- 2000年5月、NTT、フレッツISDN(インターネットへの常時接続)スタート
- 2000年12月、NTT、フレッツADSL(回線の高速化)スタート
- 2001年8月、NTT、フレッツ光(光回線)スタート
- 2002年、商業ゲームエンジン「CryENGINE(クライエンジン)」初版リリース
幕開け
- 2003年6月、SecondLifeが正式オープン
- 2005年6月、商用ゲームエンジン「Unity(ユニティ)」初版リリース
- 2006年、米国経済誌にドイツ国籍の中国人の活動が取り上げられ、SecondLifeブームが起きる
- 2008年10月15日、世界初(?)のセルルックアニメーションメタバース「ai Sp@ce」リリース
- 2009年、初めて(?)商業ゲームエンジンを利用して作られたメタバース、BlueMarsがオープン(CryENGINE 2)
- 2010年以降、サービスの閉鎖が相次き、ユーザーのSecondLifeへの合流が続く。前史のHabitatを引き継ぐJ-チャットも終了
第二世代
前夜
幕開け
- 2013年、初と思われるヘッドマウントディスプレイ対応AltspaceVR(現・マイクロソフト社運営)サービス開始
- 2014年1月14日、VRChatリリース
- 2014年、SecondLifeがVR機器対応計画「Oculus Rift Project Viewer」を開始。しかし2016年7月7日に技術上の困難さで断念
- 2016年、日本においてVR元年と言われる
- 2017年、セルルックアニメーションメタバースのclusterリリース
- 2018年5月、NeosVRがリリース
- 2018年8月 VRChatの3Dモデル等を販売する「バーチャルマーケット」開催、以降年2回の頻度で行われる。
- 2019年、第一世代のSecondLife月間アクティブユーザー数が20%減少していることが運営元よりアナウンスされる
- 2019年12月、新型コロナウイルス感染症流行開始
- 2019年12月、カバー株式会社がセルルックアニメーションメタバース「ホロアース」構想発表(構想本『HOLOEARTH CHRONICLES』をコミックマーケット97にて頒布)
- 2020年、Facebook社がVR向けSNSの「Facebook Horizon」を開発中と発表
- 2020年7月、SecondLifeの運営会社が身売り
- 2021年、Facebook社がMeta Platforms(メタ・プラットホームズ、通称Meta<メタ>)に社名変更。ソーシャルVRと紹介されていたものも含めて「メタバース」になる。
- 2022年、メタバース元年と呼ばれる。総務省がまとめた「情報通信白書」によると「世界のメタバース市場は、2022年に655億ドルだったものが2030年には9,365億ドルまで急拡大する」と見込まれた
- 2023年5月、(日本)新型コロナウイルス感染症流行が徐々に収まる、5類移行
- 2024年1月、VRChat、同時アクセス数10万の大台を達成
- 2025年4月24日、セルルックアニメーションメタバースのホロアースが正式リリース
構築に関連する技術
受賞歴
- 国際ゲーム開発者協会「パイオニア賞」 - Habitatの開発(Chip Morningstar<チップ・モーニングスター>、Randy Farmer<ランディー・ファーマー>)
- 全米テレビ芸術アカデミー「テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞」 - SecondLifeの開発(Philip Rosedale<フィリップ・ローズデール>)
ニコニコのサービスを絡めた活用例
マシニマ活用例
MMD
MMDのモーションをSecondLife、VRChatに移植し、撮影・編集することで本家MMDに近い動画を作成することができる。SecondLifeではカメラモーションの移植はできなかったが、VRChatでは移植に成功している。
→SLダンス動画を参照
マシニマ
マシニマ(Machinnima)とはゲームのグラフィックを利用して作られた映像作品のことである。
プレイ実況
教育
SecondLifeでは大学を中心として教育に活用しようとの動きがあった。
KADOKAWAグループの教育事業部門、角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校とS高等学校では、2021年より授業に第二世代メタバースを活用している。
メタバースで出会える様々な人達
文学
- スノウ・クラッシュ
- レディ・プレイヤー1 - 2018年公開の第二世代メタバースを舞台にしたSF作品。原作アーネスト・クライン(ゲームウォーズ、原題はReady Player One)、監督スティーブン・スピルバーグ
関連項目
親記事
子記事
兄弟記事
- 7
- 0pt



