銀河英雄伝説の戦闘 | |
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第十一次イゼルローン要塞攻防戦 | |
基本情報 | |
時期 : 宇宙暦801年/新帝国暦3年 2月12日4時35分~2月14日21時40分 |
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地点 : イゼルローン回廊・イゼルローン要塞周辺宙域 | |
結果 : イゼルローン共和政府軍の勝利 | |
詳細情報 | |
交戦勢力 | |
イゼルローン共和政府軍 | ローエングラム朝銀河帝国軍 |
指揮官 | |
革命軍司令官 ユリアン・ミンツ中尉 ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将 ワルター・フォン・シェーンコップ中将 |
ヴァーゲンザイル大将 (帝国本土側指揮) アウグスト・ザムエル・ワーレン上級大将 (旧同盟領側指揮) |
戦力 | |
イゼルローン共和政府軍 (6600隻) メルカッツ分艦隊 (数千隻程度) 総数10000隻未満 イゼルローン要塞守備隊 |
ヴァーゲンザイル艦隊 (8500隻) ワーレン艦隊 (15600隻) |
損害 | |
僅少 | ヴァーゲンザイル艦隊多数 ワーレン艦隊の半壊 推定戦死者40万人 |
新帝国暦時代 |
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前の戦闘 | 次の事件 |
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第二次ランテマリオ会戦 (ロイエンタール元帥叛逆事件) |
ハイネセン動乱 |
第十一次イゼルローン要塞攻防戦とは、「銀河英雄伝説」の戦闘の一つである。
概要
宇宙暦801年/新帝国暦3年2月、イゼルローン共和政府軍がイゼルローン回廊を帝国本土側に進出したことを端緒とし、イゼルローン回廊および要塞周辺宙域を舞台にローエングラム朝銀河帝国軍との間に発生した戦闘。
規模としては些細なものであったが、イゼルローン共和政府軍の勝利は若き司令官ユリアン・ミンツ中尉の名を高からしめ、また旧同盟領になお多く残る民主共和政治の支持者を勇気づけるなど、銀河全域に大きな政治的効果をもたらした。
経緯
ヤン・ウェンリーの死後、イゼルローン要塞にわずかに残った民主共和主義者たちはイゼルローン共和政府を樹立。銀河帝国にはほとんど無視されるような形で小さな政府機構を維持していた。
しかし、宇宙暦801年に入り旧同盟領における経済混乱に伴って反帝国的な風潮が高まる(ハイネセン動乱)と、帝国軍はイゼルローンをその間接的原因と目し、対イゼルローン主戦論が唱えられ始める。一方で抑圧される民主共和主義者側も英雄ヤン・ウェンリーを継ぐイゼルローン共和政府に期待を寄せ、しばしば救援を求めていた。
加えて、前年のロイエンタール元帥叛逆事件において、イゼルローンが帝国軍メックリンガー艦隊の回廊通過を容認したことで、支持者である旧同盟市民の中にはイゼルローンへの猜疑が育ちつつあった。これらの情報を受け、司令官ユリアン・ミンツ中尉は帝国軍と一戦交え勝利することを決意。「巨象が薄氷を踏むよう」と評されたイゼルローン軍初の軍事行動が開始された。
戦闘
緒戦
行動を開始したイゼルローン軍は帝国軍の意表をついて帝国本土側へ向けて進撃し、2月7日には旧同盟領側に布陣していたアウグスト・ザムエル・ワーレン上級大将に急報がもたらされる。翌8日には、ワーレン上級大将率いる15600隻の艦隊がイゼルローン回廊へと進撃を開始した。
数日後、イゼルローン軍6600隻は回廊の帝国側出入口付近に達し、同方面の警備に当たっていたヴァーゲンザイル艦隊8500隻と対峙する。2月12日4時20分、間に2.9光秒、87万kmの距離を取って両軍は停止し、その15分後、両軍の開戦指令によって戦闘が開始された。
戦闘は一時間以上にわたって一進一退を繰り返したが、両軍の発艦させた戦闘艇部隊のドッグファイトは全く異なる様相を呈した。オリビエ・ポプラン中佐の指揮するイゼルローン軍のスパルタニアン隊は出撃240機のうち喪失わずか16機、対する帝国軍ワルキューレ隊の損失は104機に上り、キルレシオ6.5倍に達する圧倒的勝利を飾った。
5時40分、イゼルローン軍は徐々に後退を開始。6時30分に至り、帝国軍はイゼルローン軍を追い完全に回廊への突入を果たす。このとき帝国軍はすでに秩序を崩しつつあったが、ヴァーゲンザイル大将は並行追撃によって“雷神のハンマー”を封じる形でイゼルローンに迫ることを企図していたため、あえて艦列を立て直そうとせず前進を続けた。
イゼルローン要塞周辺宙域での戦闘
イゼルローン軍は二日に渡る退却戦によって帝国軍を要塞へと誘引し、ヴァーゲンザイル艦隊に呼応して旧同盟領側から侵入したワーレン艦隊の動きとタイミングを合わせつつ、緻密かつ巧妙に”雷神のハンマー”の射程内へと引き込んだ。これに気付いたヴァーゲンザイル大将はすぐさま全力退却を指令。恐慌状態に陥ったヴァーゲンザイル艦隊は一挙に秩序を乱した。
イゼルローン軍はそれを放置し、ワーレン艦隊との戦闘に突入。包囲を試みた帝国軍に対し数において大きく劣るイゼルローン軍は早々に後退する。これを見たワーレン上級大将は、ヴァーゲンザイル艦隊の撤退を援護するため、“雷神のハンマー”のエネルギー充填の隙を衝いて一挙に射程内に侵入、要塞に肉薄すべく艦隊を猛進させた。
だが、ワーレン艦隊の先頭部隊が全速力で“雷神のハンマー”の死角に入りかけた瞬間、要塞至近に潜んでいたウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将指揮するイゼルローン軍小部隊が帝国軍側面九時方向から急襲し、ワーレン艦隊の進撃を阻止する。ワーレン上級大将はこの奇襲攻撃をよく防いだが、その位置はすでに”雷神のハンマー”の完全な射程内であり、ワーレン艦隊は全力をもって射程内から退却せざるを得なかった。
2月14日20時15分、要塞防御指揮官ワルター・フォン・シェーンコップ中将が“雷神のハンマー”の第一射発射を命令。さらに200秒後の第二射により、数千隻の帝国軍艦艇が消滅するに至る。ヴァーゲンザイル艦隊の戦場離脱を待ったワーレン上級大将は20時45分に撤退を下令し、21時40分には完全に撤退。戦闘はイゼルローン共和政府軍の勝利に終わった。
影響
この戦いはヤン・ウェンリーの死後初めての民主共和主義勢力の勝利であり、政治的にはイゼルローンが今なお民主共和政治の牙城として健在であることを示すものだった。帝国軍は報道管制を敷いて敗北を伏せたが、バグダッシュ中佐や独立商人ボリス・コーネフの宣伝工作もあり、2月下旬には旧同盟首都ハイネセンにまで情報が達し市民を歓喜させた。半壊したワーレン艦隊はその興奮と衝突することを避け、一時ガンダルヴァ星系に駐留している。
いっぽう銀河帝国側は未だ混乱する旧同盟領への対処が急務となり、また帝国軍としては力量さだかでなかったイゼルローン軍司令官ユリアン・ミンツ中尉の指揮能力を初めて認識することとなった。しかし軍の最高幹部が懸念を抱いたのは、むしろ帝国軍内部の体制に対してであった。帝国軍首脳としては、善戦したワーレン上級大将に対し帝国本土側を預かるヴァーゲンザイル大将の指揮は劣ったものと判断せざるを得ず、上級大将以上の艦隊司令官の能力に大将以下の能力との格差の問題が存在することを再認識させられる結果となった。
帝国によるイゼルローンへの実際の対処としては、皇帝ラインハルトが戦闘4日後の2月18日にハイネセンへの親征を表明。これは翌日の皇帝発熱により延期されたが、2月25日、軍務尚書パウル・フォン・オーベルシュタイン元帥が皇帝の全権代理としてハイネセン赴任と秩序回復を命じられ、翌26日にはナイトハルト・ミュラー、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト両上級大将が実戦指揮官として補佐につくよう人事が発令された。この人事は結果としてハイネセンにさらなる動乱を呼び、銀河の趨勢は5月末のシヴァ星域の会戦へと雪崩れ込むこととなる。
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関連項目
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