TDQ1とは、X68000用に制作されたドラゴンクエストのクローンゲームである。TDQシリーズの第1作。
初期名称の「DRAGON OUEST」(ドラゴンオエスト)やその略称「ドラオエ」で呼ばれることも多い。
概要
田圃(たんぼ)こと小松秀氏によって制作され、1991年のコミックマーケットで頒布された。「TNB製作所」名義で発表されているが、これは「スタッフロールで自分の名前ばかり出てくるのが寂しかった」という理由から団体らしき名前を付けたもので、実際には完全な個人製作となっている[1]。
本家ドラクエからシステムや音楽、モンスター・道具・呪文体系などを拝借しつつも、オリジナルのストーリーとキャラクターで「ドラクエらしさ」を再現した名作クローンゲームとして話題を呼び、当時の通信手段であるパソコン通信を介して広まっていった。コンプティークなどの雑誌で取り上げられたこともあったという。
思わぬ反響に困惑した小松氏はエニックス(現スクウェア・エニックス)に事情を伝えて沙汰を待ったが、特に咎められることもなかったため、後にフリーソフトとして配布されるようになった。またタイトルも「DRAGON OUEST」(ドラゴンオエスト)から「T-DRAGON QUEST」(TDQ)へと改題された。ただし2001年になって某権利者団体からクレームが付けられたため、公式サイトでのゲームファイル配布は終了している。
本家「4」の発売翌年に制作されているため、本家の「1」から「4」、すなわちファミコン版ドラクエで登場した要素が全て詰め込まれている。全体として見ると、シビアなゲームバランスや重厚長大型のダンジョン、ルイーダの酒場や馬車システムのない固定パーティー制、AIなしの戦闘など、本家「2」に近い印象を受ける作品に仕上がっている。
ゲームの特徴
システム面
発表当時の最新作である本家「4」におおむね準拠しているが、AI戦闘や馬車システムは導入されておらず、ルイーダの酒場やキャラメイキングシステムも存在しない。この点は本家「2」に近いと言える。ただし同時に連れ歩いて戦闘に出せる仲間の人数は主人公を含めて5人と本家より1人多い。
本作では本家で適用されていた味方に対する魔法の被ダメージ値一定カットの恩恵が廃止されている。代わりに味方も一定確率で攻撃魔法を無効化するようになったが、全体的に見ると魔法による被ダメージの期待値が高くなっており、このことが特に序盤の冒険を難しくする一因となっている。
フィールド画面で表示されるウィンドウに透過処理が施されているが、見辛いとの声もあったためか次回作では本家同様の黒背景に戻された。
オリジナル要素
ストーリーやキャラクターはもちろんのこと、アイテム・呪文・ザコモンスターなどにもオリジナル要素が盛り込まれている。以下に挙げるのはそのほんの一部である。
- ルラミトの雄石・雌石
- フィールドで使用できるアイテム。ダンジョン以外の場所で雌石を使うとその場所が記録され、雄石を使うことで記録した場所へ飛んでいく。その名の通り「ルーラ」と「リレミト」を足したような使い方が可能。
- デロハ
- 敵味方双方にかかっている補助呪文や状態異常を無効化する魔法。主人公とラスボスしか使えないため普段はあまり目にする機会はない。次回作でも登場するが名前が「デロハー」になっている。
- スライムモギ
- 緑色(ヨモギ色?)をしたやや大きめのスライム。本来は中盤に登場するモンスターなのだが、最初の村を出てフィールドを少し東に行くと出現テーブルの都合上いきなり出会えてしまう[2]。レベル1のパーティーに容赦なくイオをぶっ放してくる畜生ぶりは多くのプレイヤーに衝撃を与えたとか。
- そのインパクトからかTDQに登場するオリジナルモンスターの中でも特に知名度が高く、後にドラクエ・FF系クローンゲーム「ドラゴンファンタジー」でゲスト出演を果たしている。
旅の仲間たち
- 主人公
- 魔物に攫われた父親を探す旅に出た少年。プレイヤーの分身であり、本家の主人公たちと同様に「はい」「いいえ」以外のセリフはない。僧侶系呪文を覚える戦士というポジションは後に発売された本家「5」の主人公に近い。優秀な妹の影に隠れがちだが、アタッカーとしても回復要員としても水準以上の能力を持っている。
- TDQ2で描かれた数百年後の時代には「カロシス」の名で伝わる伝説の勇者となっており、プレイヤーは彼が遺した武具を求めて世界中を駆け巡ることになる。
- ミルル
- 主人公の双子の妹。最初から仲間になっている。ドット絵では分かりにくいがポニテっ娘。HP・ちから・すばやさに優れ、会心の一撃を連発する武闘家タイプ。本家「4」のアリーナを彷彿とさせる頼もしいアタッカーである。
- TDQ2の時代には「イミルフ」の名で伝わっており、彼女の名を冠したキラーピアスや彼女の子孫にあたる武闘家兄妹が登場する。
- ムルイ
- 主人公たちの父親が世話をしていたスライム。ステータス(特にHP)が低い上に一切の装備ができないため、しばしば棺桶型道具袋と化す[3]。あるアイテムを入手することで一部の武具を装備できるようになるが、それでも戦力としてはいささか頼りない。
- TDQ2ではスライムの国の国王として登場。成長(?)してキングスライムのような巨体になっている。残念ながら仲間にはならないが、彼が育てたスライムナイトの少女を預けてくれる。
- セシラン
- 主人公たちの母親。重い病で伏せっているが、「命の草」を与えると様態が回復して仲間に加わる。優秀な魔法使いだが病気が完全に治っていないため、4歩ごとにHPが1減ってしまうハンデを抱えている。後半で手に入る「奇跡の羽衣」を装備することで減少分を相殺可能。
- TDQ2の時代では故郷であるルフルの村の跡地が彼女の墓所となっており、副葬品として「奇跡の羽衣」が納められている。
- ゼルク
- イフットスの街に住む少女。とある事情から最初は廃人同然だが、イベントを進めていくと正気を取り戻して仲間になる。僧侶タイプでベホマラーやザオリクを覚えるのは彼女だけ、おまけにパラメーターが異常なほど伸びる頼もしいキャラなのだが、ラスダン突入直前にレベル1で加入するので育てるのは大変。またフラグの立て方が分からず仲間にしないままクリアしてしまうプレイヤーも多かったとか。
- その後は聖者となって聖地から世界を見守っていたようで、なんとTDQ2の時代でも健在。キーパーソンとして要所要所で主人公たちを導いてくれるほか、彼女の弟子にあたる少女を仲間に寄越してくれる。
- イケタ
- 勇者を名乗る謎の男。戦闘中に突然助太刀に入ったり、強制的にパーティーに加わったりする。能力は高いが指示を出すことはできず、また装備品の変更や道具の受け渡しもできないNPCキャラ。その正体は…?
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
関連リンク
- TNB製作所[TDQ]
- 公式サイト(Internet Archive)
- 「たんぼ(TNB)」のプロフィール [pixiv]
- 小松氏のpixivアカウント
- TDQ情報集積所
- シリーズの紹介・攻略サイト
- やる夫でドラゴンオエスト(まとめサイト)
- やる夫シリーズのAA長編(更新途絶)
脚注
- *TNB製作所[自己紹介]
(Internet Archive)
- *「東に行くと危険」という情報はあらかじめ村人から得られるため、情報収集をきちんとしていれば回避可能。
- *公式でもネタにされている。
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