ルシエルブルー(Le Ciel Bleu)とは、日本の元競走馬・現乗馬である。
競走名タマゴカケゴハン(Tamago Kake Gohan)。通常、元競走馬の記事は競走名で記事名が作成されるが、本馬は現オーナーの改名理由を尊重して、乗用名で記事を作り、「タマゴカケゴハン(競走馬)」はリダイレクトとする。
ネット上で珍名馬がもてはやされる中、その傾向に一石を投じた馬。
カクヨムにノンフィクションが掲載されている希有な馬でもある(関連リンク参照)。
父ビワシンセイキ・母ホクトジョーオー(母父シンボリルドルフ)
母父は言わずと知れた七冠馬。母は船橋で4勝を挙げており、本馬が1番仔である。
父は2003年のかきつばた記念・とちぎマロニエカップとダートグレード競走を2勝している馬だが、後者は後に競馬場ごと廃止されている。日本でしばらく種牡馬をしたあと韓国に輸出され、そちらでは韓国G1馬を輩出するなどそれなりの活躍を見せ、その地で2016年に亡くなった。
初代オーナーは現在加藤ステーブルを経営する加藤信之。今は「サン」を冠名に比較的まともな名前をつけているが、当初は「ハルワアケボノ」だの「ジョニーノデンゴン」だのと怪しげな名前をつけていた。
命名の理由は、「初代オーナーが卵かけご飯専門店を始めようとしたから」との由だが、3代目オーナーわたなべのコラムに又聞きとして書いてあることであり、真偽のほどは定かではない。ただし事実として、その卵かけご飯屋は結局作られなかった。
記録には残っていないが、デビュー戦は右前球節炎で出走取消となっている。
2009年、3歳新馬(中山ダート1800m)であらためてデビューしているが、16頭立て14着と大敗。続く3歳未勝利も同条件だったが、12頭立て11着とブービー。
この2戦の結果、およびこのあと左前屈腱炎を発症したことで、登録抹消。以後は乗馬としてセカンドキャリアを歩むことになる。
乗馬としてタマゴカケゴハンを引き取ったこの2代目オーナーがどういう人物かは定かではなく、3代目オーナーのコラムから推測するしかない。
このオーナーはタマゴカケゴハンに乗馬としてかなり期待しており、そのため強く調教をかけ過ぎたのだという。故障が多くて競走馬を引退したにもかかわらずこのようなことをされたため、1ヶ月もしないうちに足を怪我してしまう。引き取り手を探していたところ、ちょうど自己所有馬を探していた3代目オーナーに引き取られることになる。
なお、2代目オーナー時も名前は「タマゴカケゴハン」のままで、オーナーは彼の名前を適当に省略して呼んでいたらしい。
現在彼を所有する3代目オーナーにして、彼を改名した本人。
カクヨムでのペンネームは「わたなべ りえ」、YouTubeチャンネル・ソフト競馬の馬主名義は「麻森りん」。以降は「わたなべ りえ」に統一する。
彼女は馬術経験者であるが、10年続けているのにあまりにも上達しないため…というよりあまりにも落馬が多いため嫌気が差し、乗馬を辞めていたことがある。なんせ、本馬のことを書いたコラムの序章が「馬なんかもういやだ!」
である。
しかし、競走馬としても乗馬としても故障が多かったタマゴカケゴハンにとっては、あまり強い調教をかけられずにすむ、つまり言っては何だが「それほど上手ではない」乗り手にほどほどに乗られ、末永く愛されることが彼の幸せにつながるかも知れない、という思いもあって購入したようである。
ただし、厳密には、しばらくの間名目上のオーナーは所属していた乗馬クラブであり、預託料を払うことによって自馬として扱える、リース契約のような状態であったようだ。
ニコニコ大百科にある他の珍名馬の記事、特に掲示板を見ても分かるとおり、珍名馬は注目を集めやすく、たとえ引退しても行方を心配したり、フォスターホース制度があるなら寄付金が集まりやすい傾向にある。わたなべのインストラクターも、注目を集めやすいということで「そのままでいい」と言い、彼女もいい名前が思いつかずそのまま「たまご」などと呼んでいた。しかし、困ったことが起こった。
タマゴカケゴハンは美しい栗毛を持つ馬であり、初めて彼を見る人はそれを褒める。しかし、名前を聞くと笑われてしまうのである。馬は自分の名前が「マズイマズイウマイ」だろうと「ジーカップダイスキ」だろうと気にしないが、ある程度人間の感情を読むことはできると言われている。そのときのタマゴカケゴハンの表情を見たわたなべは改名を決意。
「ルシエルブルー(Le Ciel Bleu/フランス語で『青空』の意)」と名付けた。
彼に出会った日の青空を忘れないように、という理由、そしてエディット・ピアフ『愛の賛歌』の歌い出しからの命名[1]だという。
コラムや動画では、略して「シェル」とも呼んでいる。
とはいえ、競走名「タマゴカケゴハン」も適宜使い分けており、カクヨムのコラム・YouTube動画・ソフト競馬では「タマゴカケゴハン」の名をどこかに使っている。コラムから推測するに、彼の行方を心配しているファンへの配慮も含まれると思われる。
ただし、コラムの中に、とある障害馬術競技で「あれ、タマゴカケゴハンだ!!!」と観客席から声がした途端障害の手前でピタッと止まり落馬失権という記述があり、ルシエルブルー自身が、競走馬・2代目オーナー時代の思い出がある「タマゴカケゴハン」の名を許しているかどうかは定かではない[2]。ただし、わたなべ本人も記述しているようにこれはわたなべがシェルの言動を見て感じたことでありであり(そして自分も落馬しているということを考えれば)、バイアスが入っている可能性は否定できず、本当のところは馬に訊いてみなければ分からない。
コラムを見る限り、主に馬場馬術、たまに障害馬術をやっているようである(しかし、障害は怖いから避けているとも書かれている)。
成績については詳しい記述がないので割愛。少なくとも2018年4月2日時点でブルーリボン(優勝馬につけられるリボン)を2つ持っているとのこと。
どんな馬(など)でも、(怪我しないなら)騎手の技術すら問わず参戦できる「競馬ごっこ」、ソフト競馬にも何度か参戦している。
なお、出走の際は馬柱が制作される(寄付金代わりに購入することも出来る)。
このとき、本物の馬柱と同じく真ん中に大きく馬名を書くのだが、ソフト競馬ではそこに乗用名を書くか競走名を書くかを選択できる。選択しなかった方は、小さく(競・◯◯)もしくは(現・◯◯)と書かれる。
タマゴカケゴハンは、現在のところ毎回競走名を真ん中に表記している。理由は不明だが、本競技が引退馬支援を大きな目的にしていることを考えれば、「引退馬・タマゴカケゴハン」を探している人のために競走名を優先するのは理にかなっていると言えるかもしれない。
2021.08.14 第1回ケーキ屋記念 4着
2021.10.27 第2回軟専門賞 6着・ソフトターンドアウト賞
2021.12.29 第5回愛馬記念 5着 ファン投票17位 SPP上位10頭
タマゴカケゴハンの初代オーナー・加藤ステーブルはネットラジオを持っているのだが、彼の初出走の際、元所有馬の彼がソフト競馬に出走する旨がリスナーのお便りで読まれた。その縁か、同ステーブルのエース・2年先輩のサンツェッペリン(主な勝ち鞍:2007年京成杯)も第2回スマイルチャンピオンシップに出走することになった。
そのため、タイミングが合えば元同オーナー同士の対決があり得る。
なお、タマゴカケゴハン自身は、わたなべの所有となった後で競走馬時代のオーナー(すなわち加藤信之)に偶然遭遇し、横っ飛びして怖がるというエピソードがある[3]が心配であるが、本競技は「走っている様子をビデオで撮影して、主催者が合成・タイム計測をする」という形式のレースなので、タマゴカケゴハンが加藤ステーブルに行ったり、そこの関係者と顔を合わせる心配はほぼない。
通称「あーこ」。父キングヘイロー。冠名で分かるとおり元ローレルレーシング所有である。
ホーストラストから移動し、わたなべの友人との共同所有となった乗馬。
彼もルシエルブルーと同じ牧場に預託されている。
ソフト競馬に出走しており、第1回ケーキ屋記念で対戦した(ローレルアウェイク1着、タマゴカケゴハン4着)。
ルシエルブルーと共同でYouTubeチャンネルを開設。収益は彼らの預託料の一部となっている。
2022年3月30日より、カクヨムで彼をテーマとした連載
が開始された。
ニコニコ大百科に「珍名馬」の記事が隆盛したり、テレビや新聞で盛り上がるなど、2020年代は珍名馬がブームである。タマゴカケゴハンは、そういったものがブームになる前の珍名馬であった(珍名が名物になる馬主は何人かいたが)。
命名権はオーナーにあり、ジャパン・スタッド・ブックが認めさえすればどんな名前をつけようが自由である。変な名前をつければそれだけで注目を浴びる。「スモモモモモモモモ」のように、ほとんど名前だけで11戦0勝の馬がぬいぐるみが作られるほど人気になった例もある。
しかし、名前を呼ばれるのは馬であり、笑われるのも馬である。それで馬が嫌な気持ちになったならば、それは動物虐待と変わらない。
このことを、3代目オーナーのわたなべは、人間のいわゆる「キラキラネーム」を引き合いに出してか、こう記している。
皆、この名前を忘れないだろう、覚えてくれるに違いない。
……が。タマゴカケゴハンは、馬房の中で、目を丸くして、その反応を見ていた。
その表情は、どこか不安げにも見えた。どうしてこの人たち、ボクちんを見て笑うんだろう?
その顔を見て、私は名前を改めることにした。
この馬は、人の都合でおかしな名前をつけられて、常に人間に笑われて過ごしてきた。
親に珍名をつけられて、恥ずかしい思いをしているのは、人間だけじゃないんだ、と思った。
もちろん、珍名そのものが悪いわけではない。前述の「スモモモモモモモモ」はその名前だけで世界のアイドルホースとなり、1勝しただけで大喜びされ、今も大井のダートを走り続けている[4]。
珍名馬主の筆頭格・小田切有一氏は、「馬は競馬場に出たらファンの馬、だからファンに喜んでもらえる名前にする」としている。
息子の、これまた珍名馬主として有名な小田切光氏も、インタビューでこう答えている。
「その名前によって誰かを傷つけたりせず、ファンはもちろん、実況アナウンサーや記者なども巻き込んで、みんなで楽しく盛り上がること」。
(中略)
「競馬というとどうしてもギャンブルというイメージがつきもの。でもそのなかには、年間デビューする7000頭以上の馬1頭1頭に、生産者から厩務員、調教師等多くの人が関わり、いろいろなドラマがあって、それを掘り下げていくと実に面白いんです。そういうところにも注目して、応援してもらえたらと思います。僕はすごい血統の馬を持っているわけではないので、強い馬でファンを獲得するのではなく、名前も含めて、人間味のあるドラマを見せることで、ファン層を広げていけたらと思っています」
大事なのは、ファンが笑うことによって馬も喜べること。人間に嘲笑されるのとはわけが違う。
わたなべも、他の珍名馬や珍名馬主を直接批判する文章は書いていない。「タマゴカケゴハン」を改名した理由も、「名前が変だから」は直接的な理由ではなく(そこでは最後まで迷っていた)、「人間に嘲笑されたから」変更したのである。
最初は「変な名前の馬がいるぞ!」と面白がっている人間たちも、レースを見ていく内にその結果に一喜一憂し、そのドラマに感動する。Potooooooooのの大種牡馬としての実績、得意技は逃げ切り勝ちの「オマワリサン」、粘る「モチ」、エガオヲミセテの非業の死へ、同じ厩舎に預けられたゲンキヲダシテと弟オレハマッテルゼの捧げた高松宮記念、ピカピカ(競走馬)と西田雄一郎との雷光特別制覇、アサマノイタズラの鬼の差し切り、アカイトリノムスメの飛翔、アカイイトの逆襲、そしてオレデイイノカに始まりオヌシナニモノで終わった2021年11月7日の珍名馬祭り。珍名馬マニアは、名前を面白がるだけでなく、もう二度と見られない珍名とのマリアージュが見たいのである。
「タマゴカケゴハン」と名付けた初代オーナーは、彼にどんなドラマを託してその名前をつけたのか。3代目オーナーが名付けた「出会った頃の青い空」に負けないぐらい、卵かけご飯への想いがあったことを願う。
実は、タマゴカケゴハンはとある名馬に命を救われていたかも知れない。
その馬の名は、ディープインパクト。
天下の三冠馬が、競走馬としては2戦0勝で終わった馬の命を救ったって何だ?と思うかも知れないが、3代目オーナー・わたなべが乗馬を再開するきっかけとなったのが、ディープの菊花賞だったのだ。
それがなぜか…はコラムを読んでいただくとして
。
いずれにせよ、そのタイミングでわたなべは乗馬を再開し、乗馬クラブで馬を借りるよりも所有した方が安上がりと言うことで[5]、ちょうどそのタイミングで手放された本馬を選んだ。人間に笑われたあの名前も変えてもらえた。
競走馬として2戦で故障し、乗馬として1年未満で故障した馬。引き取り手がつくかどうかは絶望的であり、つかない場合の末路は、馬にかかわる者なら誰でも知っている。
10年も「初心者」を続け、故障させるような強い調教をかけられずに済む乗り手がオーナーとしてたまたま現れたことによって、タマゴカケゴハン改めルシエルブルーは今日まで生きながらえることが出来た…と考えると、人間だけでなく馬も万事塞翁が馬といえよう。
ディープインパクトはそんなことを知るよしもないが、彼も既に「青空」の上に行ってしまった。たまには「青空」の名に改名した、自分が命を救ったかもしれない馬もそこから見守ってあげて欲しい。それは彼の隠れた「八冠目」なのかもしれないのだから。
5:11頃にタマゴカケゴハンのソフト競馬の内容が出る
同じく9:49でソフト競馬愛馬記念ファン投票の内容掲示板
2 ななしのよっしん
2022/10/06(木) 20:49:26 ID: Bk0iPqevN2
まさか記事があるとは思わなんだ。
個人的に珍名の是非とかはどうでも良くて(スモモモモモモが名前聞いて悲しんだらどうすんの?って事もあるし)、有名馬でなくても馬は魅力的、ということを認識させてくれたお馬さんだわ
食いしん坊のシェルとオレ様キャラなのに案外ビビリなあーこ、どちらも個性的でかわいいぜ
3 ななしのよっしん
2023/12/04(月) 15:14:22 ID: E4DdKBV/6j
2021年産まれで2023年に大井競馬場でデビューしている、2代目のタマゴカケゴハン(父モーニン)がいたりする。
4 ななしのよっしん
2025/04/20(日) 23:12:16 ID: CrkHviOJFh
すごく熱のある記事だ
愛を感じる
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最終更新:2025/12/12(金) 07:00
最終更新:2025/12/12(金) 07:00
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