大学入学共通テストとは、日本の大学入試センターが1月中旬に行う、国公立大学・私立大学等への入学条件となる学力テストのことである。
通称「共通テスト」。さらに縮めた略称は「共テ」が一般的[1]。1989年までの「大学共通第1次学力試験」(共通一次試験)、2020年までの「大学入試センター試験」の後継となるテストである。
国公立大学や高度な専門学校等では一次試験として共通テストの点数を採用したり、共通テストの受験を出願条件に含めていることが多いため、国公立の大学へ入学する為には共通テストを受けることが必須といってもよいだろう。このような仕組みであるため、共通テストの成績だけでは国公立大学への入学の合否が決まらないことが多く、最終的に合否がわかるのは二次試験のあとの3月ごろとなる。
私立大学においては、共通テストの成績のみで合否を判定する入試形式があり、これを使えば一般入試を受験せずに合格することもできる。ただし、合格最低点は一般入試に比べると高い傾向があるので、合格するのは一般入試よりも難しいことが多い。また、慶應義塾大学や上智大学、学習院大学など共通テストの成績を利用できない大学もあるので、受験したい大学の入試形式を確認しておこう。
このほか、一部の短期大学でも共通テストの成績が利用可能なところがある。
再試験・追試験はセンター試験と同様に1週間後に実施される。ただし、2021年~2024年は特殊な状況であったため2週間後の実施となった(後述)。
英語のリスニングは2006年以降のセンター試験と同様に専用のICプレイヤーを使う。ICプレイヤーは試験終了後に回収される。
結果は新聞や大学入試センター・予備校のサイトに掲載されるので、受験生は各自で自己採点をして点数を予測することができる。進学する生徒が多い高校の場合は、試験終了後の月曜日が学校での自己採点の日として当てられていることも多い。
センター試験はマークシート方式で、知識を問う問題がほとんどだった。文部科学省は、こうした「知識偏重主義」を脱却し、『学力の3要素』(1. 知識・技能、2. 思考力・判断力・表現力、 3. 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)を育成・評価することが重要であるとし、「高等学校教育」と「大学教育」、そして両者を接続する「大学入学者選抜」を一体的に改革すべきであるとした。
そこで2013年に提案されたのが共通テスト(当初の名称は「大学入学希望者学力評価テスト」)であり、以下の方針が示された。
しかし方針再検討の結果、複数回実施とレベル別実施は高校授業への影響や試験会場確保の都合などから2016年に見送りが決定。また、記述式問題は自己採点との不一致率の高さなどが、英語への民間試験の導入は異なる種類の試験を同列に扱えるかなどがネックになり、2019年に導入が見送られた。CBT方式の導入は一旦先送りされた後、2021年に導入見送りが決定している。
そのため、今のところは「センター試験の名前が共通テストに変わっただけ」と言っても過言ではなく、共通テストを開始した目的である「高等学校教育の質の向上」に寄与するかどうかは全くの未知数である。
センター試験と同様、すべての問題をマークシートで解答する。問われる知識自体は高校の教科書レベルまでのものが多く、この点も以前行われていたセンター試験とそれほど変わっていない。しかし、センター試験と比べて日常会話・場面や資料を扱った出題が増え、問題の文章・図表の量が非常に多くなった。何を問うているのか、読解力が重要となる試験になっている。
2021年の問題を下に例示する。
数学ⅠA 第2問 [1]
陸上競技の短距離100m走では、100mを走るのにかかる時間(以下、タイムと呼ぶ)は、1歩あたりの進む距離(以下、ストライドと呼ぶ)と1秒あたりの歩数(以下、ピッチと呼ぶ)に関係がある。ストライドとピッチはそれぞれ以下の式で表される。
ストライド(m/歩)=100(m)/100mを走るのにかかった歩数(歩)
ピッチ(歩/秒)=100mを走るのにかかった歩数(歩)/タイム(秒)
ただし、100mを走るのにかかった歩数は、最後の1歩がゴールラインをまたぐこともあるので、小数で表される。以下、単位は必要のない限り省略する。
例えば、タイムが10.81で、そのときの歩数が48.5であったとき、ストライドは100/48.5より約2.06、ピッチは48.5/10.81より約4.49である。
なお、小数の形で解答する場合は、解答上の注意にあるように、指定された桁数の一つ下の桁を四捨五入して答えよ。また、必要に応じて、指定された桁まで⓪にマークせよ。
(1)ストライドをx、ピッチをzとおく。ピッチは1秒あたりの歩数、ストライドは1歩あたりの進む距離なので、1秒あたりの進む距離すなわち平均速度は、xとzを用いて[ア](m/秒)と表される。
と表されるので、[ア]が最大になるときにタイムが最もよくなる。ただし、タイムがよくなるとは、タイムの値が小さくなることである。
[ア]の解答群
⓪ x+z ① z-x ② xz
③ (x+z)/2 ④ (z-x)/2 ⑤ xz/2
(以下略)
世界史B 第3問 C
世界史の授業で、イギリス人作家ジョージ=オーウェル(1903年~1950年)の小説『1984年』を紹介し、討論をした。配付された資料と、生徒からの質問票とを次に示す。
作品の概要
世界大戦中に実用化された核兵器は、再び核戦争を引き起こすこととなり、その結果、世界は「オセアニア」、「ユーラシア」及び「イースタシア」の3大国に再編された。「オセアニア」では、社会が国家によって統制され、双方向のテレビ装置や隠しマイクによって、市民は常に監視されている。
ⓓ「オセアニア」の真理省に勤める主人公は、歴史記録を改ざんする仕事をしていた。文書や記録が改ざんされた結果、過去の歴史や「オセアニア」成立の過程についての自分の記憶と、公式の歴史とが一致しないことを、主人公は意識しながらも、何が正しい歴史であるのか分からない状態だった。
主人公は古い新聞記事や禁書とされた著述を読むことによって、「オセアニア」の体制に疑問を抱くようになり、同じ考えを持つ同志とつながりを持つようになった。ところが、主人公は密告によって逮捕され、愛情省で拷問を受けることになる。その結果、主人公は信念を打ち砕かれ、「オセアニア」を支配する「党」の思想を心から愛するようになる。
作家の経歴
オーウェルは、1937年、トロツキーの影響を受けた組織の一員としてスペイン内戦に従軍した。この組織は、ソ連からの援助を受けた共産党と対立し、弾圧された。作者晩年の作品である『1984年』には、オーウェル自身の生きた時代についての政治的アイロニー(皮肉)や歴史観が反映されている。
柿田さん質問票:社会主義のために戦った作者が、抑圧体制に対する批判を込めた作品を書いたのですね。その背景は何でしょうか。
栗林さん質問票:真理省が担当していたような歴史資料の改ざん(下線部ⓓ)は、実際に行われたことがあるのでしょうか。
問7 上の柿田さん質問票に対する答えとして最も適当なものを、次の①~④のうちから1つ選べ。
① ソ連で、スターリンによる粛清が行われた。
② 中華人民共和国で、文化大革命が起こった。
③ 資本主義陣営の中に、「開発独裁」の国が出現した。
④ 朝鮮民主主義人民共和国で、最高指導者の地位が世襲された。
2020年2~3月ごろから日本で感染拡大が続いている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行(コロナ禍)に伴い、初年度から2023年までは感染予防対策を講じた上で実施された。
受験生には1~2週間ほど前から体温を記録した「健康観察記録」の持参が義務付けられ、マスクの着用が規則として定められた。フェイスシールドやマウスシールドは使用できない。なお、やむを得ずマスクを着用できない事情がある場合は、医師の診断書を添えて出願時に申し出ることで別室での受験が可能とされた(試験当日の申し出は不可。リスニングでイヤホンを使用できない場合の特別措置と同様)。
また感染者や濃厚接触者は数日間の隔離が求められることから、追試験については本試験の1週間後ではなく2週間後に実施される。感染の疑いがある者は本試験の受験を控え、追試験を受験するよう呼びかけられている。
なお、2021年の本試験は第1日程(1月16・17日)と第2日程(1月30・31日)の2回に分けられ、それぞれの2週間後に追試験・再試験が設定された。
第1日程の追試験・再試験と第2日程の本試験は同日に行われ、同じ問題が用いられた。また、第2日程の特例追試験(2月13・14日)は受験者1名が対象となり、センター試験時代に作成された緊急対応用の問題(情報漏洩などに備えて準備されているもの)が用いられた。
2021年には、鼻を出した状態でマスクをしていた受験生が再三にわたり注意を受けたが、指示を聞くことが無かったために失格ののち、午後10時までトイレの個室に閉じこもって退去しなかったため警察に逮捕されるという事件もおこった。
このほか、各会場では密にならないよう座席の距離をとる、アルコール消毒液を設置する、濃厚接触者となった受験生のために別室を用意する、医師・看護師を待機させるなどの対策をとった。
これらの対策は2023年をもって終了。2024年からは健康観察記録の持参が不要になった。本試験から追試験までの間隔は2024年まで2週間のまま残され、2025年からセンター試験時代と同じ1週間に戻された。
科目は2015年以降のセンター試験と同様であるが、数学①の試験時間が10分間延長された。英語は「筆記」を「リーディング」に改称の上で200点満点から100点満点に変更、リスニングは50点満点から100点満点に変更となった(英語以外の外国語は「筆記」の名称、200点満点のまま変更されず、引き続き英語リーディングと同時刻に実施)。
なお科目名の一重鉤括弧「 」は学習指導要領上で単一の科目から出題されること、二重鉤括弧『 』は2つ以上の科目に跨って出題されることを指す。
教科 | 選択可能科目 | 時間 | 配点 | |
---|---|---|---|---|
1日目(1月13~19日の土曜日) | ||||
地理歴史 ・公民 |
「世界史A」「世界史B」「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」 「現代社会」「倫理」「政治・経済」『倫理、政治・経済』 (1~2科目選択、同一名称を含む科目同士の選択は不可) |
60分 120分 |
100点 200点 |
|
国語 | 『国語』 | 80分 | 200点 | |
外国語 | リーディング | 『英語』 | 80分 | 100点 |
筆記 | 『ドイツ語』『フランス語』『中国語』『韓国語』 | 200点 | ||
リスニング | 『英語』(リーディングで英語を選択した受験生のみ) | 30分 | 100点 | |
2日目(1月14~20日の日曜日) | ||||
理科① | 「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」 (1科目50点満点、2科目選択。1科目のみの選択は不可) |
60分 | 100点 | |
数学① | 「数学I」『数学I・数学A』 | 70分 | 100点 | |
数学② | 「数学II」『数学II・数学B』『簿記・会計』『情報関係基礎』 | 60分 | 100点 | |
理科② | 「物理」「化学」「生物」「地学」 (1~2科目選択。理科①受験者は2科目選択不可) |
60分 120分 |
100点 200点 |
2022年の学習指導要領改定に伴い、2025年から試験内容が変更された。新たに必修化される「情報I」が試験科目に追加される。国立大学では情報が原則必須となり、合計の受験科目は5教科7科目から6教科8科目に増加する。
また、国語と数学②の試験時間が10分間ずつ延長される。
数学②では『数学II・数学B』の出題範囲に「数学C」が追加され、数学Bを含まない「数学II」が廃止、『簿記・会計』『情報関係基礎』も廃止される。
数学①のマークシートからは選択肢記号の「±」が廃止、数学②では「a」「b」「c」「d」が廃止され、どちらも「-」と「0」~「9」の11種類からマークすることとなる。
理科の2グループは(情報の試験時間を捻出するためか)再び統合され、基礎を付した科目(従来の理科①)は「4分野から2分野を選択し、試験時間60分の中で2分野を解答」の枠組みを保ったまま、出題科目としては1科目扱いとなった。
基礎なし科目と基礎あり科目はマークシート上でも区別され、基礎あり科目の回答番号は101番始まりとなる。
地理歴史・公民は科目名が込み入っているが、整理すると①「地理」「日本史」「世界史」「倫理」「政治・経済」、②「地/歴/公 各種基礎」の合計6科目になる。
②の『地理総合/歴史総合/公共』は理科の基礎あり科目と同様の扱いとなり、マークシート上の区別のため回答番号が101番始まりとなる。なお『倫理、政治・経済』は廃止、「倫理」と「政治・経済」の同時選択も不可能となり、この2科目を同時に受験する方法が全て絶たれてしまった。
従来は地理歴史科と公民科で問題冊子が分かれていたが、両教科を跨ぐ科目が出現したことにより分冊方法が変更され、上記の①と②の2冊構成となった。冊子の配布方法は従来通り(2冊をあらかじめビニール袋でパッケージ化し、配布後に受験生が開封する方式)のため、2013年から毎年受験生を悩ませている「ビニール難化」問題は今回も存置となった。
出題科目名は全て二重鍵括弧『』となり、新たにスラッシュ記号(/)が「複数の出題範囲を選択解答することを表す」記号として定義された。
試験監督向けマニュアルにて「/」を「スラッシュ」と読むことが指定されているらしく、「地理総合スラッシュ歴史総合スラッシュ公共」「物理基礎スラッシュ化学基礎スラッシュ生物基礎スラッシュ地学基礎」という長大な科目名が何度も読み上げられる羽目になった。
教科 | 選択可能科目 | 時間 | 配点 | |
---|---|---|---|---|
国語 | 『国語』 | 90分 | 200点 | |
地理歴史 ・公民 |
『地理総合、地理探究』『歴史総合、日本史探究』『歴史総合、世界史探究』 『公共、倫理』『公共、政治・経済』『地理総合/歴史総合/公共』 (1~2科目選択、『公共、倫理』『公共、政治・経済』は組み合わせ不可。 スラッシュ区切りの科目は解答する分野を2つ選択し、 同一名称を含む他の科目との組み合わせは不可) |
60分 120分 |
100点 200点 |
|
数学① | 『数学I、数学A』『数学I』 | 70分 | 100点 | |
数学② | 『数学II、数学B、数学C』 | 70分 | 100点 | |
理科 | 『物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎』 『物理』『化学』『生物』『地学』 (1~2科目選択。スラッシュ区切りの科目は解答する分野を2つ選択) |
60分 120分 |
100点 200点 |
|
外国語 | リーディング | 『英語』 | 80分 | 100点 |
筆記 | 『ドイツ語』『フランス語』『中国語』『韓国語』 | 200点 | ||
リスニング | 『英語』(リーディングで英語を選択した受験生のみ) | 30分 | 100点 | |
情報 | 『情報I』 | 60分 | 100点 |
掲示板
81 ななしのよっしん
2025/01/18(土) 02:33:44 ID: ywvJ3eVLpv
結局のところ馬鹿なマスコミとそれに煽られた馬鹿の舌禍の前に名前だけ変えて新しい試験にしましたよって体裁にしたという認識でいいんですよねこれ
三流未満の塾会社の日能研の円周率デマとかおててつないでゴール系のあれを真に受けた馬鹿が歪んだ正義心こじらせて試験変えろと喚いた運動の成果と
82 ななしのよっしん
2025/01/18(土) 12:58:37 ID: oOksK5EMHA
英語だけは明らかに変わったな
従来のは満点取っても英語の論文読むぐらいしか使えない代物だったからな
まあ科目いろいろあるけど、基本全部国語力と丸暗記だけで対応できる
83 ななしのよっしん
2025/01/23(木) 20:45:47 ID: Lbbi/Hfv+6
東大入試の話だが、AIの画像認識が向上して合格ラインまで解くことができたそうな。課題は英語と理科
これもあって、認知力を問うものではなく、思考と発想力を問うものが必要とされている
急上昇ワード改
最終更新:2025/03/28(金) 05:00
最終更新:2025/03/28(金) 05:00
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