西浦勝一とは (ニシウラカツイチとは) [単語記事]

西浦勝一（にしうらかついち）とは、「世界の西浦」の異名を持つ元騎手・調教師である。

概要

生い立ち

1951年 2月7日、長崎県島原市で生まれる。小学生時代を長崎で過ごした後、中学時代に高知競馬で調教師を務めていた父と暮らすため、高知県高知市に移住。馬と触れ合える環境に居るうちに「馬のかわいらしさ」に気づき、騎手を志す。

進路を決めるにあたり父に騎手になりたいと打ち明けると、「騎手になるなら地方より中央のほうが良い」と勧められ、かねてから親交のあった阪神競馬所属の土門健司に弟子入りが決まる。中学卒業後、馬事公苑の騎手養成所に入所。

騎手デビュー～引退

3年間の修業期間を経て1969年 3月1日の京都第1競走 4歳未勝利戦でデビュー（11頭中11着）。4月13日阪神第5競走 5歳以上300万下にてミシマホープで初勝利を挙げた。
だが、1969年は26人もの新人騎手がデビューしており、彼らと乗鞍を奪い合う形で年間騎乗数は88回、勝利数はわずか2勝に留まる。翌1970年は騎乗数83回で3勝と、プロの壁の高さにぶち当たってしまう。

だが、弟子には優先的に騎乗機会を与える土門調教師の方針もあり、自厩舎の馬で騎乗を続ける傍ら、仕掛けのタイミングや騎乗論について厳しく叩き込まれた。この経験が実を結んだか、4年目の1972年には16勝を挙げる。

1975年からは平地競走に専念。同年にはプリムラクインでタマツバキ記念（春）を勝利し重賞を初制覇。1976年、デビュー8年目にして通算100勝を達成。1977年にはアイノクレスピンの主戦騎手を任され牝馬クラシック戦線に初参戦するなど成長を見せた。以降も毎年安定して20勝前後の勝利数で推移していく。

1980年、テルテンリュウで宝塚記念を勝利しグランプリ競走を初勝利。遂にビッグタイトルに手が届き、以降、有力馬への騎乗依頼も増えていった。

1981年、アグネステスコでエリザベス女王杯を制し、牝馬三冠競走を初勝利。

1983年、土門師の息子であり、自身にとっては弟弟子にあたる土門一美の管理するカツラギエースの主戦騎手を任されると、1984年の京阪杯と大阪杯を連勝。迎えた宝塚記念ではスズカコバンを下して優勝した。
秋は毎日王冠を制して天皇杯（秋）に挑むも5着に敗退。次走に選択したジャパンカップでは距離不安の声もあり10番人気の穴馬扱いを受けるが、レースではスタートから逃げ、直線で一度他馬を引きつけた後タイミング良くスパートさせ、鮮やかな勝利を収める。ミスターシービー・シンボリルドルフという三冠馬2頭を抑え、ジャパンカップ創設4年目にして日本馬初優勝を果たした西浦は「世界の西浦」と呼ばれるようになる。

1985年、カツラギハイデンで阪神3歳ステークスを勝利するなど29勝を挙げた。

1988年にはヤエノムテキで皐月賞を勝利し、クラシック競走を初勝利。ヤエノムテキとのコンビでは皐月賞の他、京都新聞杯、鳴尾記念、産経大阪杯の重賞3勝も挙げている。

1989年には38歳にしてキャリアハイとなる49勝を挙げた。これ以降は肉体的な衰えもあり成績は緩やかに下降していくが、1995年には35勝を挙げている。

1992年からはフリー騎手に転向。

1996年、調教師試験に合格し、2月いっぱいで騎手としての現役を引退。

通算成績：6103戦、635勝、重賞26勝、GⅠ5勝。

調教師時代

騎手引退後、1年間技術調教師として過ごし、1997年 3月に厩舎開業。

管理馬の多くはオレンジ色に水色のストライプのメンコをしており、厩舎ユニフォームもこの色。水色は清く澄んだ色であり、赤は激しさがあるので控えめにオレンジを重ねているという^[1]。

1997年 3月1日、中京6R 4歳以上500万下をサンセットムーンで勝利し調教師として初勝利を記録。同年5月にはネーハイジャパンが京都大障害（春）を制し、重賞初勝利を挙げる。

2000年にはテイエムオーシャンが阪神3歳牝馬ステークスを勝利し、GⅠ初勝利を挙げると、翌年の牝馬三冠競走では桜花賞と秋華賞を勝利。テイエムオーシャンはその後も活躍し、重賞5勝、うちGⅠ3勝を挙げ厩舎の看板馬として活躍した。

2006年にはカワカミプリンセスが優駿牝馬・秋華賞を勝利。優駿牝馬を制したことにより、史上8人目の牝馬三冠制覇達成調教師となった。

2013年にはホッコータルマエがかしわ記念を制しダート GⅠ級競走を初制覇。その後もGⅠ級競走で活躍を見せ続け、GⅠ級競走10勝と日本競馬界の歴史に名を刻む名馬を育て上げた。

2021年 2月28日をもって調教師を引退。

通算成績：5548戦、480勝、重賞37勝、うちGⅠ級15勝

騎乗スタイル

カツラギエースでの活躍の印象が強く、逃げ・先行が得意と思われがちだが、本来得意としている騎乗スタイルは差し・追い込みである。ビッグレースで強さを見せる勝負強さも持ち味としていた。

若手時代はスパートのタイミングを間違えることも多く勝ち星が伸び悩んだが、土門師から仕掛けのタイミングを教え込まれ、後方から追い込む騎乗スタイルを身につけている。

カツラギエースで勝利したジャパンカップについては「見てる人もまさかと思ったでしょう。乗ってるぼく自身が「勝った！」っていう喜びじゃなくて、『勝ってしまった』という感じでしたから。」と雑誌のインタビューで振り返っている。ちなみに、このレースは後にタップダンスシチー騎乗でジャパンカップを勝利する佐藤哲三が騎手を志すきっかけになったレースでもあったりする。

主な騎乗馬・管理馬

※ニコニコ大百科に記事のある競走馬を記載。（　）内は勝ち鞍。

騎乗馬

カツラギエース（1984年：宝塚記念、ジャパンカップ、サンケイ大阪杯、毎日王冠、京阪杯）
ヤエノムテキ（1988年：皐月賞、京都新聞杯、鳴尾記念、産経大阪杯）

管理馬

テイエムオーシャン（2000年：阪神3歳牝馬ステークス　 2001年：チューリップ賞、桜花賞、秋華賞　 2002年：札幌記念）
カワカミプリンセス（2006年：優駿牝馬、秋華賞）
ホッコータルマエ（2012年：レパードステークス　 2013年：佐賀記念、名古屋大賞典、アンタレスステークス、かしわ記念、帝王賞、JBCクラシック、東京大賞典　 2014年：川崎記念、チャンピオンズカップ、東京大賞典　 2015年：川崎記念、帝王賞　 2016年：川崎記念）
クロコスミア（2017年：府中牝馬ステークス）

中央競馬の三冠達成調教師
クラシック三冠	牡馬三冠	★田中和一郎 \| 尾形藤吉 \| 藤本冨良 \| ★武田文吾 \| ★松山康久 \| ★野平祐二 \| 布施正 \| ★大久保正陽 \| ★池江泰郎 \| 角居勝彦 \| 長浜博之 \| ★池江泰寿 \| 友道康夫 \| ★矢作芳人 \|
牝馬三冠	尾形藤吉
変則三冠	尾形藤吉
中央競馬牝馬三冠	稲葉幸夫 \| ★奥平真治 \| 松田由太郎 \| 鶴留明雄 \| 松田博資 \| 伊藤雄二 \| ★松本省一 \| 西浦勝一 \| 松田国英 \| ★★国枝栄 \| ★石坂正 \| ★杉山晴紀 \| ★中内田充正
古馬三冠	春古馬	達成者無し
秋古馬	岩元市三 \| 藤沢和雄
★は同一馬による達成者。変則三冠、古馬三冠は同一年達成者のみ。
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