サザエさん時空とは、連載開始から何年たっても登場キャラクターが年をとらない世界のことであり、漫画作品などでよく見られるお約束のひとつである。
概要
テレビアニメ『サザエさん』は、1969年より放映しているのだが、アニメ内キャラクターは一切年をとらず、サザエさんは24歳のままであり、カツオは小学5年生のまま、波平は髪の毛一本が抜け落ちることもなく、イクラちゃんは「ハーイ」「バブー」だけしかしゃべらず(1985年、一時期言葉を話したが、不評のため黒歴史へと)、というように、年度の流れが一切無視されている。
ただし季節は移り変わるし、時事ネタもそのときのモノがきちんと盛り込まれる。
時代は移り変わりつつも登場するキャラクターは一切変化しない。この永遠のループが、「サザエさん」の名を用いて「サザエさん時空」と呼ぶ。
ちなみに『サザエさん』は連載当初からサザエさん時空だったわけではない。原作ではワカメは5歳から7歳に成長しているなど、当初はリアルタイムで年齢を重ねていた。
他作品で起きているサザエさん時空
その世界における時間の流れが永遠にループする空間は、他のアニメや漫画、シリーズものの小説など色々なもので見受けられる。
代表例としては『ドラえもん』や『キテレツ大百科』などの藤子作品はもとより、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『あさりちゃん』『うる星やつら』『美味しんぼ』『クレヨンしんちゃん』『ピーナッツ』『落第忍者乱太郎』など、小説では『十津川警部シリーズ』『三毛猫ホームズシリーズ』などがある。
特にギャグマンガなどではサザエさん時空の作品が多岐にわたる。
『だぶるじぇい』『日常』『侵略!イカ娘』『のんのんびより』『ゆるゆり』『みつどもえ』など、ギャグやコメディではキャラクターの年齢を連載を続けていくうちにいじってしまうと、ドラマ的な形にせざるを得なくなってくる上に、長い連載になってくると矛盾設定が発生してしまう可能性が高いため、サザエさん時空で物語を展開する以外に方法がなくなる場合がある。
一方、明確に年齢は重ねないものの登場人物同士が結婚したり、子どもが生まれたりする事は「サザエさん時空」でも起きることがあり、「時間は閉じているが歴史は蓄積される」ことから、“蓄積サザエさん時空”と呼ばれることもある(『美味しんぼ』『クレヨンしんちゃん』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』など)。例えば『こち亀』の場合は年代設定も徐々にスライドしており、連載初期は大原部長は元帝国陸軍軍人という設定だったのだが、後に当然年齢的に矛盾が生じてしまったので設定自体がフェードアウトしていった(部長周りは孫が生まれたりと歴史の蓄積が多い)。
なお、作品によっては媒体によってサザエさん時空である場合とそうではない場合がある。例えば、『ラブライブ!』は雑誌での連載企画やCDに収録されているPVなどでは明らかにサザエさん時空である。これは舞台が高校であり、サザエさん時空にしないとメンバーの一部(3年生)が「卒業」してしまい、企画が成り立たなくなるため。しかし、漫画版はゆっくりではあるが時が進んでいる(後述の「時間ゆっくり」系に該当)ほか、テレビアニメ版は3年生の「卒業」までが描かれている。
ただし「サザエさん時空」自体がすでに矛盾しており、そのこと自体を疑問視しメタ的なネタにすることがある。
「サザエさん時空」をネタにしたもの
『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』『さよなら絶望先生』では毎年生徒が留年したことになっている。
また、『かってに改蔵』ではメインキャラが齢を取らない中、当初主人公の後輩だったサブキャラだけが年々進級し、終盤では主人公達の先輩になってしまうというギャグも存在している。
そして『さよなら絶望先生』『かってに改蔵』共に、最終盤の衝撃的などんでん返しにおいて、物語がサザエさん時空だった事に対する理由付けもされるという展開が用意されていた。
『ハイスクール!奇面組』では連載開始当初、奇面組らは中3、唯、千絵は中2でスタートし、年齢もリアルタイムで重ねていたが、互いに高3となった1984年よりサザエさん時空に突入した。これ以降は作者が春になるたびにタイムマシンに乗って一年前に戻り、「最後の一年を補完する」形でループしている。編集部の意向で無理矢理続けされられたとのことで、一回目こそ作者も「まだやっていない行事が沢山有る」と乗り気であったが、作者もタイムマシンもどんどんボロボロになり連載終了を伝えられた時には泣いて喜ぶという生々しい楽屋オチが描かれた。
『魔法陣グルグル』では、「何者か」によって主人公たちがループにハマってしまい、何の変化も起きない島から出られなくなる、という事件が発生した。これも「サザエさん時空」に閉じ込められた、と捉えることができるだろう。
「時間ゆっくり」系サザエさん時空
『名探偵コナン』はサザエさん時空のようでありながら、実際にはそれほど時間が経っていない。連載開始から2009年現在まで、まだ半年しか過ぎていない事になっている。作者があえてそのようにしているらしいが、明らかに春夏秋冬が何周もループしており、そのままサザエさん時空にしてしまってもいいような気がする。
サザエさん時空方式をとらずに成長させていくのが世間一般のマンガだが、必ずしも現実の時間の流れに沿うわけではないのが大多数である。
『キャプテン翼』や『スラムダンク』などは1試合に連載を何週間や何ヶ月もかける(ページ数が多くなる)し、『がんばれ元気』はしっかり成人している。『ひだまりスケッチ』や『けいおん!』や『らき☆すた』も現実の流れとは違いながらも進級・卒業を果たしており、『アカギ ~闇に降り立った天才~』に至っては「中」一枚切るのに三ヶ月かかっている。
サザエさん時空に近いが、季節が巡るのが極端に遅いだけで、実際には時間が非常にゆっくりと進んでいる。前述の『キャプテン翼』などもそうだが、『ハヤテのごとく!』や『家庭教師ヒットマンREBORN!』などもある。
『ドカベン』も山田ら明訓メンバーの中2から高3までの5年間を15年かけて執筆している。さらに1994年の『プロ野球編』で連載再開にあたり、全メンバーの年齢や生年、設定を改めるという手法を使った。プロ野球編以降はリアルタイムで進行しているが、ペナントレースの1試合に半年以上使う事もザラであり、いろいろと歪みが起こっている。
通常の漫画作品には、サザエさん時空が存在せず、サザエさん時空の漫画の方が圧倒的に少ない。サザエさん時空だと思っていたら最終回で「○年後」と時間を表示させてしまう作品が多いためである。人気作品では『魔法先生ネギま!』がその例に当たる。
「サザエさん時空」ではなかった作品
だがそんな中でも、現実の時間に沿うように漫画内の時間も同じ流れにしていた代表例が『あずまんが大王』であろう。1999年2月の連載開始から約3年間、登場人物たちの高校入学・進級まで現実に沿うように連載させ、人気絶頂の中2002年5月には登場人物たちの卒業を描き、一切引き伸ばし等をせず見事に完結させた。これは前述の通り人気作品の延命が度々図られてしまう中、作者の意向通りに連載を終了できた、極めて希有な例である。また同じ学園モノでは、『あずきちゃん』の漫画版も同じく小学5年生~中学3年生までの5年間をリアルタイムに連載した。
『サザエさん』の原作が元々新聞で連載されていた事から、他に新聞で連載されている『ののちゃん』や『コボちゃん』等、この方式を取っている漫画も多い。そんな中、『コボちゃん』は主人公のコボちゃんの母親が妊娠、出産を迎えるというイベントが発生し、それに伴いコボちゃんも小学生に成長するなど、連載27年目にしてサザエさん時空から抜け出すという快挙(?)を達成した。
『涼宮ハルヒの憂鬱』の夏休みを何回も繰り返す短編ストーリー「エンドレスエイト」はサザエさん時空のパターンを踏襲しているが、登場人物のほとんどがループごとに記憶をリセットされてしまうため、サザエさん時空とは呼べないとする意見もある。これはむしろ、サザエさん時空を物語の主題にし、どうやってそこから抜け出すかを描いたものといえるだろう。
『ももえサイズ』では1年の留年をした後、卒業をしたと思われたが学校が終身制になったため高校3年生→高校4年生→高校5年生…と進学することになった。進学のタイミングは1年に1回、3月から4月の間に行われており、後輩の入学というイベントもあるため現実の時間と流れが同じであり、サザエさん時空ではないが、容姿は変わらないためよくサザエさん時空と間違われる。そのため登場人物の名前にかけて「ももえサン時空」と呼ばれる。なお2度掲載誌が変わっており、2度目の移籍では高校生から小学生への大胆な設定変更を行っている。しかし見た目は若返ったが年齢はそのまま引き継がれたため、21歳の小学6年生が誕生した。
途中でサザエさん時空ではなくなった作品
- ピューと吹く!ジャガー
連載中の10年間はサザエさん時空だったが、最後の最後でサザエさん時空が崩壊した。 - 斉木楠雄のΨ難
連載開始した2012年から高校2年生をループしている。190χで、サザエさん時空の理由が判明する。斉木が日本最大の火山の噴火を止める事が出来ず、毎年年度末に地球全体を復元能力で1年前の状態に戻しているため、登場人物達の年齢や身長などはそのままであり、斉木達も高校2年生のままである。最終的に火山を食い止め3年生に進学する。
途中でサザエさん時空になった作品
- 生徒会役員共
最初の1年は1年生達は2年生に、2年生達は3年生に進級したのだが、その後ずっとサザエさん時空になっている。 - 幕張サボテンキャンパス
連載開始時点で主要キャラクターたちは大学1年生だったが、大学3年生に進級したところからサザエさん時空に突入。何度か3年生を繰り返したが、その後(留年した1名を除き)無事4年生に進級して再び時が進むようになった。サザエさん化と時空離脱の両方が発生している作品。
関連項目
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