スズキ・キャリイとは、スズキで1961年から製造する軽トラック&1BOXバンである。1971年~2009年までの38年連続で、日本国内で販売されているトラック(軽・小型・普通)の車名別年間販売台数第1位であった(2010年以降はダイハツ・ハイゼットにその座を譲る)
概要
キャリイの名称の由来は、英語の「運ぶ」から来ている。初代モデルと二代目モデルはボンネットがあるモデルであったが、三代目~十代目ではキャブオーバーになった。現行の十一代目では当初セミキャブオーバー方式のみであったが、途中でキャブオーバーのモデルも再登場している。
1989年からは、マツダにもOEM供給をされている。名称はスクラムとなる。
基本的には、FR駆動である。また、バンは1982年からはキャリイの名称から、エブリイとなる。1991年登場の三代目エブリイのみエンジンが中心にあるミッドシップ方式を採用していた。
名称は、正式には”キャリイ”である。決して”キャリーやキャリィ”ではない。
初代・(1961年~1965年)
1961年にトラックのみが登場。名称も「スズライト・キャリイ」であった。バンモデルは1964年に登場している。
二代目・(1965年~1969年)
1965年にモデルチェンジ。初代モデルと同様、ボンネットタイプとなる。
三代目・(1966年~1969年)
1966年にモデルチェンジ。このモデルから車体がキャブオーバー方式となり、名称も「キャリイ」となる。二代目モデルと併売される。
四代目・(1969年~1972年)
1969年にモデルチェンジ。デザインはジウジアーロが手がけ、貨物車らしからぬ非常に個性的かつスタイリッシュなスタイルとなった。特にバンは初代フィアット・ムルティプラのような傾斜したリアウインドウが特徴的で、横から見るとどっちが前なのかと小一時間問い詰めたくなるような左右対称なデザインとなっていた。
しかしトラックはともかく、バンにおいて傾斜したリアウィンドウは積載性に大いに難ありであった。とはいえ、その貨物車らしからぬバンのデザインは来るワゴン車市場の拡大を見据えていたかのようであり、実際にキャンピングカー仕様の設定がされていた。また内装は木目調パネルがおごられるなど、かなり豪華なものであった。
この頃、新たに登場したジムニーと部品を共有する事が多くなった。
五代目・(1972年~1976年)
1972年にモデルチェンジ。エンジンが空冷式から水冷式となる。前衛的だったデザインも常識的なデザインに変更となった。この代よりバンはスライドドアを採用した。トラックはこのモデルから、以降のキャリイの伝統となる分離荷台が初採用となった。
1974年にマイナーチェンジ。現行の黄色ナンバーに対応するためのフロントグリルを変更する。
六代目・(1976年~1979年)
1976年にモデルチェンジ。ボディを先代よりも全長を少し伸ばし、排気量が360ccから550ccとなり、「キャリイ55」のサブネームが付くようになる。またエンジンもクラス唯一の3気筒エンジンを起用する。このモデルから本格的に電動式ウインドーウォッシャーを採用した。
七代目・(1976年~1979年)
1976年にモデルチェンジ。六代目モデルから、車幅を拡大し愛称も「キャリイWide」の愛称が付く。従来の車体をベースとした6代目も併売されていた。
この時期はハイゼットにおいてもワイドボディ車とナローボディ車を併売しており、大型化に対する保険の意味合いでラインナップに組みこんでいたと想像される。
八代目・(1979年~1985年)
1979年にモデルチェンジ。トミカのミニカーやアオシマでラーメンの屋台を架装したモデルが販売されていた関係で一部で「ラーメンキャリイ」のあだ名がある。7代目をモダンにしたデザインであるが、ドアノブがレバータイプから手前に引くタイプとなった。また、ホイールも従来の合わせホイールから一体ホイールに変更するなど、時代に合わせた変更を行っている。
1981年にマイナーチェンジ。同時にシリーズ初の4WD仕様が登場する。エンジンも2サイクル方式に加えて、4サイクル方式が追加となる。4サイクル車は形式がST40(4WDはST41)となっている。
1982年にマイナーチェンジ。顔つきが大きく変わった。この時から、バンはエブリイとして独立モデルとなる。インパネも黒に加えてベージュが設定され、送風パネルの配置が大きく変化した。
九代目・(1985年~1991年)
1985年にモデルチェンジ。2WD車&4WD車の上級グレードには、フロントディスクブレーキが標準装備となる。引き続き、2サイクル車もラインナップに名を連ねていたが、4WDの設定がないなどラインナップ的にはかなり縮小されていた。形式は2WD車はDA71T、4WD車はDB71T、2サイクルエンジン車はDA81Tであった。2サイクル車には前述した通り4WDが設定されてないのでDB81Tに相当する車はない。
1986年にマイナーチェンジ。5速マニュアルやエアコンが設定となり、また初代以来続いてきた2サイクルエンジンもここで終焉となった。4WDには極悪路での走破性を高めた副変速機のEL(エクストラ・ロー)の設定も行われた。
1987年のマイナーチェンジでは、スーパーチャージャー装着車が登場。
1989年にマイナーチェンジ。フロント部分を大幅に変更をし、4WD仕様は全グレードにフロントディスクブレーキが標準装備となり、同時にマツダにもOEM供給を開始する。形式もDA41T/DB41Tとなる。
1990年にマイナーチェンジ。排気量を550ccから660ccとなり、スーパーチャージャー車は廃止となる。再度形式が変更となりDA51T/DB51Tとなる。このモデルは翌年にモデルチェンジとなる為、D●41T共々割合に希少なモデルである。
十代目・(1991年~1999年)
1991年にモデルチェンジ。規格変更によるボディ拡大により、キャビンが広くなる。タイヤは全グレード12インチ化がされる。
1993年にマイナーチェンジ。フロントディスクブレーキが全グレードに標準装備化となる。
1995年にマイナーチェンジが行われ、この際にホイールのPCDが従来の114.3mmから100mmに変更、それに合わせてホイールのデザインが変更となった。
これまでエブリィとコンポーネンツを共通していたが、このモデルではエブリィはMR方式を採用した為、顔つきや一部の内装以外ではまるっきり共通部品がないという状況であった。
十一代目・(1999年~2013年)
1999年1月にモデルチェンジ。このモデルチェンジにより、ボディ方式をセミキャブ方式に変更となる。同年11月にマイナーチェンジ。荷台の長さが競合他車に比べ短く不評だったため、キャビンを短縮して荷台を延長。そのため居住性が若干損なわれる。同時に、排ガス規制により、キャブレター仕様が廃止され、全グレード電子制御のEPI化がされる。
2002年に大ビックマイナーチェンジを行う。キャビン部分が、バンのエブリイと共通のものだったが、キャリイ独自のキャビンとなる。軽トラックでは唯一となる分離荷台を採用したことで衝撃を低減し、補修による交換も容易になった。また、この代よりフロントバンパーには塗装はがれの心配がない白色樹脂を使用している。 このシリーズは後に「KC」シリーズと言われる。なお、このマイナーチェンジで8代目から使用されてきたテールランプがリニューアルされた。
2005年に農家をメインターゲットにした、フルキャブ・ショートホイールベースを採用し、旋回等の取り回し性に優れた「FC」シリーズを追加。同時に「FC」シリーズにヘッドライトレベライザーを追加される。
2012年に衝突安全保安基準を達成をするためヘッドレストを大型化をする。
十二代目(2013年~)
2013年8月に14年ぶりにフルモデルチェンジ。形式をフルキャブオーバー方式のみとなる。エンジンも新開発となりパワーアップ化がされる。またボディの防錆性能もアップされる。
2013年9月に従来通り、マツダ版のスクラムトラックがモデルチェンジとなる。
2013年12月に日産自動車へOEM供給を開始。名称は「NT100クリッパー」
2014年4月に三菱自動車へOEM供給を開始。名称は「ミニキャブトラック」。これで四兄弟車種となった。
2014年8月に一部グレードにオートクラッチシステムを追加。5速MTをベースにしたもので、燃費の向上と高速走行時での騒音が低減するようになった。また軽トラックでは珍しいマニュアルモード付きとなっている。また、これに合わせて塗装の追加が行われ、「ノクターンブルーパール」と言うジムニーにも採用されている青系の塗装が追加になった。
当初のイメージキャラクターには、俳優・菅原文太とタレント・はるな愛を起用。農家の親子という設定となっている。
2018年、キャブの居住空間を拡大したモデル「スーパーキャリイ」が登場した。名称自体は海外仕様ではかねてより使用されているのだが、それとは別個のものとなっている。ハイゼットジャンボと直接かち合うモデルとなっている。
カスタマイズの対象として
ニコニコ動画を始めとした動画サイトにおいてはキャリイをベースとしたドリ車の動画があげられている。
旧来より、デコトラ風のカスタマイズがされる事が多かったキャリイであるがここに来てドリフト車としてのベースとなるケースが増えている。主にベースとなっているのはホイールベースの長い先代のセミキャブが多い。後輪駆動の自動車が非常に少なくなった今日、安価な後輪駆動車として着目されている。とはいえ、軽トラックという一見ドリフトとは結び付かない車の組み合わせという意外性が一番大きいと思われる。アフターパーツもここにきて徐々に増えており、ターボやLSDという本格的な装備が見受けられる。
なお、海外ではもっとフリーダムな改造が出来るので、トンデモなマシンが多く存在する。有名なのはオーストラリアでキャリイバンにロータリーエンジンを積んだものである。オーストラリアではロータリー人気が高いのだが、あろうことかそのロータリーエンジンをキャリイバンに載せてしまったものだから、エグゾーストパイプが真っ赤っかになったり、挙動がおかしかったりと色々とカオスな状況になっている。また関連動画にもあるがキャリイ、正確に言えばイギリスのGM系メーカーのベッドフォード・ラスカルにカワサキのZX1000のエンジン、駆動系をそっくり移植した軽トラック、その名も「RAKASAKI(RAscal+KAwaSAKI)」なる車も存在している。
翻って、数は多くないがオフロードに適したハイリフト仕様も存在する。アメリカへの個人輸入では農場で使用する為にハイリフトに改造するケースがあるが、日本においてもいくつか見られる。しかしPCDが100mmであり、これは通常の乗用車のものと同じなので、オフロードに適したホイールは絶望的である。それを差し引いても、ジムニーよりもさらに軽い車重やデフロック機構など、装備が本格的であり、敢えてこれでオフロードを攻めるツワモノがいる。そして中にはジムニーの足回りをそのまま移植すると言うジムニーボーイも真っ青な改造をやらかす変態剛の者もいる。
海外仕様キャリイ
アジアを中心にキャリイは現地生産をされており、最初にも書かれている通り、隠れた世界戦略車となっている。日本と同じように「キャリイ」と言う名称の地域もあるが、ヨーロッパを中心に「スーパーキャリイ」と命名される事が多い(前述したキャブ拡大のものとは別物)
インドやパキスタンでは8代目の通称「ラーメンキャリイ」の車体を利用したモデルが現在でも生産をされている。顔つきこそ角目になったり、PCDが現行の100mmと大分印象は異なるがその車体は紛れもなく8代目のものである。特にインド製のものは「マルチ・オムニ」の名称でLPG車や救急車モデルが設定されるなど、まだまだ第一線である。
韓国においてはGMコリアが大宇自動車時代より9代目キャリイを「ダマス」、もしくは「ラボ」の名称で販売している。GM時代の提携から生まれた車両であるが、LPGエンジンが主力に来ているのが特徴である。現行のものは顔つきがだいぶ異なっている。
インドネシアにおいては名称こそ「キャリイ」であるが、排気量が1.5リッターに変化してるなど独自の進化を遂げている。現行モデルは三菱自動車との共同開発であり、三菱側では「三菱・コルトT120」の名称で販売されている。また、一回り大きいセミキャブ方式のモデルが存在し、こちらはメガキャリイと言う名称となっている。
ベトナムでは最近、巨額の費用を投じて工場が新設されたが、生産しているのは9代目キャリイである。そのデザインは660ccに変わるか変わらないかぐらいに生産されていた後期モデルであるが、エンジンが1リッターのものとなっている。道路事情を鑑みて、車高があげられており、またタイヤもリブラグタイヤが採用されている。名称はスーパーキャリイである。
ヨーロッパにおいてはスーパーキャリイの名称で排気量アップしたものが販売されたほか、イギリスにおいてはGM系のベッドフォード社よりラスカルの名称で販売されていた。ちなみにフォードと名乗ってはいるが、ヘンリー・フォードのフォードモータースと関係もなければ、あらいぐまラスカルとも関係はない。なお、ベッドフォード社はその後、ブランドが廃止となった後にヴォクゾール・ラスカルと名称が変更となった。
GMとの提携していた時代では北米以外の現地ブランドへのOEMも頻繁に行われおり、オーストラリアにおけるホールデン・スカリー、エクアドルにおけるシボレー・スーパーキャリイなどがあり、中国車や韓国車が主流になる以前におけるGMグループの国外向け小型トラック・バンの一端を担っていた。
キャブオーバーモデル
後述するメガキャリイがセミキャブなのに対して、こちらは従来からのキャブオーバーとなっている。
多くの地域ではキャリイを名乗るが、ベトナムではスーパーキャリイプロを名乗る。セミキャブモデルのモデルチェンジ版として、アジア地域でこのモデルが広がりを見せている。
なお、全幅が1.765mmとかなりの幅であり、これをそのまま日本へ導入すれば1ナンバーとなってしまう。
メガキャリイ
日本風に平たく言えば、キャリイの普通貨物車仕様とも言えるモデルであり、大きさも一回り大きい。元々は東南アジアやオセアニア、南米地域向けに設定されていたワゴンのAPVをベースとしている。なので、名称こそキャリイと名乗っているが、日本のものとは全く別物である。
大まかな大きさはトヨタ・タウンエース/ライトエースと一緒であり、特にインドネシアでは直接カチあっている。セミキャブ方式でエンジンは1.6リッターとなっている。大きさについては4ナンバーサイズに収まってはいるが、今のところ日本に導入される予定はない。
なお、多くの地域でスペース効率を重視したキャブオーバーモデルへの置き換えが進んでいる、
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