概要
ナチス・ドイツは優れた科学・化学技術を持つ反面、(主にSSのせいで)ファンタジーやオカルト方面との親和性も高く、また残虐行為や虐殺、凄惨な人体実験を数多く行っていた史実、元首アドルフ・ヒトラーをはじめハインリッヒ・ヒムラーやヨーゼフ・メンゲレなどの「濃い」人物が多く在籍していた事もあり、第二次大戦後早くから数多くの創作媒体で敵や悪役を彩るガジェットとして幅広く使用されてきた。
更に南極進出説[1]や、ナチスUFO開発説[2]、そしてヒムラーSS長官のキリストの聖杯捜索命令など、後世になればなるほど創作題材にうってつけなフォークロアが続々出てきて、この流れをさらに加速させる。
例を上げれば史実の残虐行為の数々に基づいたスプラッタホラー(例:『ゴースト/血のシャワー』)や、ナチスのオカルト遺物蒐集伝説を発展させたファンタジー・伝奇物(例:『インディ・ジョーンズ』シリーズや『HELLSING』)、進んだ科学力と歪んだ優生学思想を誇大化させたSF(例:『終戦のローレライ』『アイアン・スカイ』)など、ナチスが創作業界にもたらした影響は少なくないのだ。
その結果、「とりあえず全部ナチスの科学かオカルトのせいにすりゃなんとかなる」「ナチスフォークロアのどれかに乗っかっときゃいい」的な作品が、特にストーリー構成の人材が限られるB級映画、C級映画(時にZ級映画)と呼ばれる作品を中心に散見されることとなった。
当然のように題材への(正の方向でも負の方向でも)リスペクトや理解も無いまま作られた作品が良い作品になるわけもなく、そこに描かれたナチスやヒトラーは、オリジナルの悪役でも十分通じる、本家とは程遠い薄っぺらい集団に成り下がってしまう。
「ナチスはフリー素材」は、そんなナチスをネット上のフリー素材か何かのようにリスペクト無く扱ったZ級映画の一つ、『ナチス・イン・センター・オブ・ジ・アース』を紹介する動画の中で出た言葉であった。
なお、英国のチャーチルはヒトラーのことを猿呼ばわりしたことがあったが、実は戦前からナチスをフリー素材化する傾向は存在していたようだ。
勿論ナチスを敵役としながら、十分に魅力的な悪役として描く作品も数多く存在する。
いくら稀代の悪として語られる国家であっても、そこに少なからずリスペクトが無い限り、魅力的な悪役として描くことは難しいのである。
そしてそれは、歴史上のほぼすべての国家や組織を題材にした場合に通じるのだ。
ナチス関連のシンボルについて
上記の様にナチスをフリー素材として扱う流れはインターネット上などに存在したが、ナチス関連団体等のシンボル(ハーケンクロイツや矢十字)は、ドイツをはじめとする国(オーストリア、ハンガリー、ポーランド、チェコ、フランス、ブラジル、イスラエル、ウクライナ、ロシア等)では使用が禁じられており、決議によって違法となっている。特に歴史に深く名を刻まれてしまったドイツでは、ナチス関連団体等のシンボルを使用しただけでも最高懲役3年の刑、または罰金に処される。日本にしてみればマニアックな法律かもしれないが、残虐な行為をしたとされる団体をフリー素材として考え、使用することが危険な行為かもしれないことを考えてから使っていただきたい。
関連動画
左がこの言葉の初出である映画レビュー動画。右が映画そのものの予告編。
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関連項目
脚注
- *密かに生存していたヒトラー以下ナチス残党が南極へ集結し、「第四帝国」を建設しているという俗説
- *通称「ハウニヴ」。後世の創作であるとされるドイツ空軍のオカルト動力試作機。映画『アイアン・スカイ』にも出てくる。
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