『パシフィック・リーグ』(PACIFIC LEAGUE)とは、日本のプロ野球リーグのひとつである。
パリーグ、パ・リーグの呼称でお馴染み。
概要
正式名称は日本プロ野球組織パシフィック・リーグ運営部。
1949年に新球団の加盟を巡っての対立から、加盟賛成派の阪急(現在のオリックス)、南海(現在の福岡ソフトバンク)、東急(現在の北海道日本ハム)、大映の4球団に、新加盟の毎日(現在の千葉ロッテ)、西鉄(現在の埼玉西武)、近鉄が加わった7球団で、それまでの1リーグ制から分裂する形で「太平洋野球連盟」が発足。
翌1950年からパリーグの歴史は始まった。
黎明期には世間の注目を浴びたが、メディアのセ偏重(巨人偏重)、毎日オリオンズからの毎日新聞社の撤退もあって人気は伸び悩む。さらに1969年、暴力団との癒着・八百長の横行が明るみに出た「黒い霧事件」が色々と致命傷となって各球団とも体力が落ち、1970年代から1980年代にかけては球団譲渡が相次いだ。そのため現在のパの球団は、2005年に新規参入した東北楽天を除いて、全球団とも球団譲渡や合併、保護地域の移転を経験している。ネットもCS放送も無く、地上波といえばテレビもラジオも巨人戦という頃はパ・リーグの試合を追いかけるには直接球場に行くか、深夜にフジテレビで放送される「プロ野球ニュース」を見るか、翌日スポーツ新聞で試合結果をチェックするしか術はなかった。
1980年代~1990年代のお客の不入りもよくネタにされ、テレビ番組「プロ野球珍プレー好プレー」での川崎球場の様子は伝説であった。誰もいない客席でいちゃつくカップルや、誰もいない座席で横になって寝ているオッサン、スタンド内で野球をしている客、スタンドの傾斜を利用して流しそうめんを楽しむ客、ホームランを打った時に客席に投げ入れるぬいぐるみを全部獲得する子供、ホームランボールを取ろうと誰もいない外野スタンドを走り回る子供、外野スタンドで麻雀を打っている客、炭を起こして焼肉を始める客、川崎球場の隣にある川崎競輪のレースを見て競輪選手に声援を送る客などが映し出されるのがお約束となっていた。
この当時、川崎や後楽園は明らかにガラガラなのに観衆5000人などと報道されたが、これは年間シートの座席を座っていなくても数に無理矢理入れているためであった。当時の選手でも「ベンチから指で指しながら数えきれる程度の客」というくらい少なかった。
1973年オフには前年東映から球団を買い取った日拓ホームがあまりの客の不入りを嘆き、ロッテとの球団合併→1リーグ統一を模索したが、日本ハムが球団を買い取る事でパ・リーグ消滅の危機は免れた。
さらに2004年には近鉄とオリックスの合併を機に1リーグ制への球界再編の流れが生じたが、選手会の奮闘とファンの後押しによって無事パ・リーグは存続。それ以降、各球団とも地域密着やファンサービスに非常に力を入れるようになった。2005年からの楽天参入により、札幌、仙台、埼玉、千葉、大阪、福岡と全国各地に球団が分散する形となった。
現在では、MLBで活躍するダルビッシュ有(元日本ハム)や田中将大(元楽天)をはじめ、数多くのスター選手がパ・リーグに生まれた上、札幌と仙台に球団が出来た事により、これまで巨人帝国となっていた北海道・東北で巨人ファン離れが起こり、セ・リーグと比べても遜色のない人気を誇るまでになっている。
セ・リーグとの大きな違いは、DH(指名打者)制を導入していることである(1975年導入)。交流戦や日本シリーズでは、パ・リーグの球団の主催試合でDH制が用いられる。2011年までは予告先発があることも大きな違いだったが、2012年からセ・リーグも予告先発を導入することになった。DH制、予告先発制、さらには1973年にスタートしたプレーオフ制度と全てはファン獲得に向けての苦肉の策から始まったものであった。
かつては1950~1960年代の南海ホークスと西鉄ライオンズ、60~70年代の阪急ブレーブス、1980~1990年代の西武ライオンズのように圧倒的な強さでリーグを牽引する球団(と常時Bクラスのお荷物球団)が存在したが、現在は各球団とも戦力が拮抗しており、優勝争いをした球団が翌年最下位争い、その逆も常に起こる混沌とした群雄割拠のリーグとなっている(とはいえ基本的には日本ハム・西武・ソフトバンクが安定して強く、ロッテ・楽天・オリックスがそこに割り込めるかという構図ではある)。
人気球団を擁するセリーグと、それに対抗意識を燃やすパリーグ。オールスターゲームではパリーグが勝ち越しているのもあってか、古くは「人気のセ、実力のパ」と呼ばれた。
2005年より始まった交流戦では、2009年を除いてパ・リーグが勝ち越している。特に2010年の交流戦では1位から6位までをパ・リーグが独占するなど圧勝し、「パ・リーグ強し」を野球ファンに強く印象づけた。日本シリーズでも2010年代はパ・リーグの9勝1敗と、ここ10年ほどは実際に実力でセ・リーグを圧倒している。
2007年、パ・リーグでは6球団の共同出資によりパシフィックリーグマーケティング社を設立。ファンサービス企画の球団同士のシェアや、映像配信などを一手に担っている。各球団のホームページデザインも細かい違いこそあれど全て統一されているのも特徴。
プレーオフ制度
現在クライマックスシリーズとして行われているプレーオフ制度も、元はパ・リーグが人気獲得のために始めたものである。
第1期プレーオフ(1973~1982)
前半65試合を前期。後半65試合を後期とし、各期の優勝チームがレギュラーシーズン終了後に5試合3勝制でプレーオフを行い、勝ったチームがその年のリーグ優勝となる。前期後期とも同一球団が優勝の場合はそのままリーグ優勝となる。
そのため例年6月末に前期優勝の胴上げやらビールかけが行われていた。前期に優勝すれば後期はぶっちぎりの最下位でもプレーオフに出場できる事。前期後期の累計成績が1位のチームがプレーオフに出られない可能性がある事などが問題視され、この制度は1982年に終了した。
第2期プレーオフ(1983~1985)
1983年より130試合1シーズン制とし、レギュラーシーズン1位チームと2位チームのゲーム差が5ゲーム以内となった場合、プレーオフが実施となる。
5ゲーム差の場合、1位と2位の直接対決5試合含めた135試合で2位チームが逆転する可能性があると開催となる。わかりやすく言うと、1位と2位が2ゲーム差の場合、プレーオフで2位チームが5試合中3勝できれば2位チームの逆転優勝。できなければ1位チームがそのまま優勝というもの。大変わかりにくい。
しかし3年間とも1位と2位が10ゲーム以上開いてしまったため、完全な企画倒れに終わった。1986年から廃止され、セ・リーグ同様勝率1位チームがリーグ優勝という形となり、2003年まで続く。
第3期プレーオフ(2004~2006)
レギュラーシーズン上位3チームによるステップラダー方式のトーナメント戦。
2位チームと3位チームが2位チームのホームで3試合2勝制の1stステージを戦う。1stステージの勝者が1位のホームで5試合3勝制の2ndステージを戦う。レギュラーシーズン5ゲーム差以上の場合は1位チームに1勝のアドバンテージが付き4戦となる。2ndステージ勝者がそのままリーグ優勝となる。秋の風物詩で2年続けてアレな事になったホークスのいちゃもん要望により、2006年はルール改正された。
2006年は1stステージはそのままだが、2ndステージは1位チームに無条件で1勝のアドバンテージがつき全4戦。3勝したほうがリーグ優勝となる。まぁ結局秋の風物詩には勝てなかったが。
当初は批判が多かったこの制度だが、消化試合の大幅減少。シーズン終盤の1位争い、3位争いの熾烈な戦いが盛り上がりを見せ、当然プレーオフ本戦も異様な盛り上がりを見せた。1位チーム、2位チームのプレーオフ開催による収益は全て球団のものとなるため、上位チームには想定外の臨時収入にもなった。これにセ・リーグも便乗してリニューアルされる事になる。
第4期プレーオフ(2007~)
詳しくはクライマックスシリーズの項目を参照。
インターネットでは
色々と球団同士因縁が深いセに比べ、パ・リーグの各球団ファンは敵同士でも比較的仲が良い。オールスターゲームや日本シリーズでは、特定の掲示板において、パリーグチームのファンが一丸となってセリーグを倒そうと盛り上がる。連盟歌である「白いボールのファンタジー」の大合唱も有名。
また近年はインターネットで中継動画配信(有料)が行われるようになり、パ・リーグ球団が共同で出資したパシフィックリーグマーケティング株式会社(通称PLM)による動画配信サイト「パ・リーグTV」がとくに有名。地元地上波かBS・CSでなければ見られなかった試合中継が気軽に見られるようになっている。
かつてはニコニコ動画では東北楽天ゴールデンイーグルスがホームゲームの中継をニコニコ生放送で無料配信していた。福岡ソフトバンクホークス、オリックス・バファローズも同様に一時無料配信を行っていたが、楽天以外の5球団は試合終了後のディレイ放送を行っていた(現在はパリーグの球団は全て撤退済、2019年現在はセ・リーグの横浜DeNAベイスターズのホームゲーム生中継のみである)。
現在のパリーグ加盟球団
球団の歴史・変遷など詳しい事は、各球団のニコニコ大百科記事をご覧ください。
- オリックス・バファローズ(創設時の球団名:阪急軍(1936)/保護地域:大阪府)
- 福岡ソフトバンクホークス(創設時の球団名:南海軍(1938)/保護地域:福岡県)
- 北海道日本ハムファイターズ(創設時の球団名:セネタース(1946)/保護地域:北海道)
- 千葉ロッテマリーンズ(創設時の球団名:毎日オリオンズ(1950)/保護地域:千葉県)
- 埼玉西武ライオンズ(創設時の球団名:西鉄クリッパーズ(1950)/保護地域:埼玉県)
- 東北楽天ゴールデンイーグルス(創設時の球団名:同名(2005)/保護地域:宮城県)
過去にパ・リーグに加盟していた球団
- 近鉄パールス→近鉄バファローズ→大阪近鉄バファローズ (2004年にオリックス・ブルーウェーブと合併)
- 大映スターズ→大映ユニオンズ (1957年に毎日オリオンズと合併)
- 高橋ユニオンズ(トンボ・ユニオンズ) (1956年に大映スターズと合併)
2005年(楽天加盟)以降の順位変遷
年度/順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 |
---|---|---|---|---|---|---|
2005年 | ロッテ(※) | ソフトバンク | 西武 | オリックス | 日本ハム | 楽天 |
2006年 | 日本ハム | 西武 | ソフトバンク | ロッテ | オリックス | 楽天 |
2007年 | 日本ハム | ロッテ | ソフトバンク | 楽天 | 西武 | オリックス |
2008年 | 西武 | オリックス | 日本ハム | ロッテ | 楽天 | ソフトバンク |
2009年 | 日本ハム | 楽天 | ソフトバンク | 西武 | ロッテ | オリックス |
2010年 | ソフトバンク | 西武 | ロッテ | 日本ハム | オリックス | 楽天 |
2011年 | ソフトバンク | 日本ハム | 西武 | オリックス | 楽天 | ロッテ |
2012年 | 日本ハム | 西武 | ソフトバンク | 楽天 | ロッテ | オリックス |
2013年 | 楽天 | 西武 | ロッテ | ソフトバンク | オリックス | 日本ハム |
2014年 | ソフトバンク | オリックス | 日本ハム | ロッテ | 西武 | 楽天 |
2015年 | ソフトバンク | 日本ハム | ロッテ | 西武 | オリックス | 楽天 |
2016年 | 日本ハム | ソフトバンク | ロッテ | 西武 | 楽天 | オリックス |
2017年 | ソフトバンク | 西武 | 楽天 | オリックス | 日本ハム | ロッテ |
2018年 | 西武 | ソフトバンク | 日本ハム | オリックス | ロッテ | 楽天 |
2019年 | 西武 | ソフトバンク | 楽天 | ロッテ | 日本ハム | オリックス |
2020年 | ソフトバンク | ロッテ | 西武 | 楽天 | 日本ハム | オリックス |
2021年 | オリックス | ロッテ | 楽天 | ソフトバンク | 日本ハム | 西武 |
赤太字は日本一。太字はプレーオフ、クライマックスシリーズ優勝で日本シリーズ出場。
※ - 2005年ロッテはプレーオフによる1位(レギュラーシーズンは2位)。
なお、2005年以降、レギュラーシーズン2位の球団は翌年Bクラスに沈むというジンクスがあったが、2011年に前年2位の西武が一時は最下位に沈みながらも巻き返して最終戦で3位に滑り込み、このジンクスを打ち破った。
- 2005年ロッテ→2006年4位
- 2006年西武→2007年5位
- 2007年ロッテ→2008年4位
- 2008年オリックス→2009年6位
- 2009年楽天→2010年6位
- 2010年西武→2011年3位
関連動画
関連商品
関連項目
親記事
子記事
- 大阪近鉄バファローズ
- オリックス・バファローズ
- オリックス・ブルーウェーブ
- 埼玉西武ライオンズ
- 高橋ユニオンズ
- 千葉ロッテマリーンズ
- 東北楽天ゴールデンイーグルス
- 南海ホークス
- 西鉄ライオンズ
- 阪急ブレーブス
- 福岡ソフトバンクホークス
- 北海道日本ハムファイターズ
▶もっと見る
兄弟記事
- 育成選手
- イースタン・リーグ
- ウエスタン・リーグ
- クライマックスシリーズ
- セ・パ交流戦
- セントラル・リーグ
- 日本シリーズ
- 日本プロ野球名球会
- フリーエージェント(日本プロ野球)
- プロ野球オールスターゲーム
- プロ野球ドラフト会議
- プロ野球2014
- プロ野球2023
- プロ野球2024
▶もっと見る
- 8
- 0pt