ブカヨ・サカ(Bukayo Ayoyinka Temidayo Saka, 2001年9月5日 - )とは、イングランド出身のサッカー選手である。イギリス(イングランド)とナイジェリアの国籍を持っている。
イングランド・プレミアリーグのアーセナルFC所属。サッカーイングランド代表。
ポジションはFW(右WG)。178cm65kg。利き足は左足。
概要
イギリスのロンドン・イーリング区グリーンフォード主審。ナイジェリア系イングランド人。世界でもトップクラスの右ウイングと評されており、若くしてアーセナルの攻撃の核として活躍。7歳の頃からアーセナルの下部組織で育った生え抜きであり、将来のクラブのシンボルとなることを期待されている逸材。
アフリカ人特有の身体能力の高さとアーセナルのアカデミーで培った技術の高さを併せ持つハイブリッドなウインガーであり、テクニックを駆使したドリブル突破は世界最高レベルにあると言われている。
イングランド代表としても各年代別の代表に呼ばれていたエリートであり、2020年に19歳でフル代表にデビュー。EURO2020ではイングランドの準優勝に貢献したものの、決勝でPKを失敗してしまう。初のワールドカップとなった2022 FIFAワールドカップではすでに代表の主力となっており、クラブ同様代表でも期待されている。
経歴
生い立ち
両親は経済移民としてナイジェリアからイギリスのロンドンへと移り、ロンドンで2人兄弟の次男として誕生。少年時代は学業が優秀で、イングランドの中等教育修了一般資格(GCSE)を高成績で取得している。
幼少期はワトフォードFCの下部組織でプレーしていたが、7歳となった2008年にアーセナルFCの下部組織に入団。アカデミー在籍時からすでに突出した才能を発揮しており、各年代別のイングランド代表にも選出。当時のコーチからは高い身体能力のみならず、パーソナリティの部分も評価されていた。
アーセナルの育成拠点の1つであるヘイル・エンドのアカデミーで多くを過ごし、数々の選手を輩出した成功事例から外れることなく彼も大きな期待を受けていた。15歳であった2017年8月12日、フラムU-18を相手にアーセナルU-18でのデビューを飾ると、初年度ながらU18リーグにおいて14試合6得点5アシストを記録。リーグ戦とFAユースカップの両方でチェルシーU18に優勝をさらわれたが、充実したシーズンを過ごしている。
アーセナル
17歳となった2018年9月にアーセナルFCとプロ契約を交わし、アーセナルU-23に正式昇格することが決定。飛び級での昇格となったが、U-23チームでも左ウイングとして突出した才能を発揮。リーグ戦では20試合5得点8アシストを記録。これらの活躍から2018年11月29日のUEFAヨーロッパリーグのFCヴォルスクラ・ポルタヴァ戦にて後半23分からアーロン・ラムジーに代わってトップデビューを飾る。2019年1月1日のフラムFC戦では念願のプレミアリーグデビューも飾る。結局トップチームでの公式戦出場は4試合のみとなったが、UEFAヨーロッパリーグ決勝のチェルシー戦で途中出場するなど、様々な経験を経たシーズンとなった。ちなみにU-23リーグでは14ゴール12アシストを記録している。
2019-20シーズンは開幕からのトップチームのスカッド入りは逃すが、2019年9月19日、ELのアイントラハト・フランクフルト戦でトップチームでの初ゴールを決めるなど1ゴール2アシストの大活躍をする。この試合が大きな転機となり、ミケル・アルテタ監督からスタメンに抜擢されるようになる。10月21日のシェフィールド・ユナイテッド戦ではプレミアリーグでの初ゴールを記録する。年明けからは怪我人が続出したチーム事情もあって左SBで起用されるようになる。慣れないポジションであるがサカは適用して見せ、公式戦二桁アシストを記録するなど飛躍。FAカップでチームは優勝するが、決勝ではベンチ入りしたものの出場機会を与えられなかった。
背番号を7に変更した2020-21シーズンでは左サイドバック、トップ下、両サイドハーフと様々なポジションで起用されたが上手く適応し主力として活躍。2020年12月27日のプレミアリーグ第15節チェルシー戦ではチームの3点目を決め、勝利に貢献。このシーズンのアーセナルは極度の成績不振に陥り、リーグ戦では8位に終わってしまう。そんなチーム状態の中でサカは公式戦7ゴール7アシストと奮闘。サポーターの投票で選ぶ20-21シーズンのアーセナルのシーズン最優秀選手に51%の票を獲得し選出される。PFA年間最優秀若手選手賞の最終候補にも残っていた。
2021-22シーズンはチームのスカッドが充実するようになったことで最も得意なポジションである右ウイングで固定されるようになる。前線で起用されるようになったことでゴールに関与する機会も増え、2021年9月26日のプレミアリーグ第6節トッテナム・ホットスパーとのノース・ロンドンダービーではチームの3点目を決めて勝利に貢献。12月27日の第19節ノリッジ戦では自身のプロキャリア初となる1試合2ゴールをマーク。2022年3月19日のアストン・ヴィラ戦で決めたチームの決勝ゴールはアーセナルのプレミアリーグ通算2000得点目というメモリアルゴールとなる。このシーズンではリーグ戦のゴール数が初めて二桁を記録。得点とアシストの両方でチームトップを記録し、アーセナルのエースとしての地位を手にする。また、リーグ戦全試合に出場。さらには、ティエリ・アンリ以来史上4人目となるアーセナルのシーズン最優秀選手を2年連続で受賞。
チームでも絶対的な主力となった2022-23シーズンは、2022年8月23日のボーンマス戦で20歳にしてプレミアリーグ100試合出場を達成。前半戦首位に立つなど快進撃を見せたアーセナルの中でサカも極上の輝きを発揮。特に2022年10月は10月9日のリヴァプールFC戦で2ゴールを決めるなど、自身初となる公式戦3試合連続ゴールを決める。2023年3月にはプレミア第7節延期分エヴァートン戦で1ゴール1アシスト、プレミア第28節クリスタル・パレス戦で2ゴール1アシストと大車輪の活躍を見せ、この月のリーグ月間最優秀選手賞を受賞。結局、チームは後半戦に失速したことで2位に終わりリーグ優勝は逃すが、7シーズンぶりのUEFAチャンピオンズリーグ出場権を獲得。自身もリーグ戦14ゴール11アシストと自己ベストを大幅に更新する二桁得点二桁アシストを達成。2023年のPFA年間最優秀若手選手賞を受賞し、2022-23シーズンPFA年間ベストイレブンにも選出。さらには2年連続でイングランド男子年間最優秀選手賞も受賞。世界的なプレイヤーの仲間入りをしたシーズンとなった。5月23日には、アーセナルと長期の契約延長したことが公式発表される。
2023-24シーズンは開幕戦のノッティンガム・フォレスト戦でゴールを決め、幸先の良いスタートを切る。2023年8月26日、第3節のフラム戦でプレミアリーグ83試合連続出場となり、ポール・マーソンが持っていた82試合連続出場を更新し、アーセナルにおける新記録を樹立。10月6日のマンチェスター・シティ戦を負傷で欠場し、2021年5月から続いていたリーグ戦の連続試合出場記録は87試合で途絶える。12月5日のルートン・タウン戦では21歳にしてアーセナルでの公式戦出場試合記録が200試合に到達。2024年2月11日のウェストハム戦では2ゴールを決め、アーセナルでの公式戦50得点に到達。この月のプレミアリーグでは全試合でゴールを決め、4試合6得点2アシストというハイパフォーマンスを披露。最終節まで優勝争いを演じたチームの中でキャリアハイの16ゴールを決めている。
UEFAチャンピオンズリーグでは9月20日のPSVアイントホーフェン戦でCL初ゴールを決める。グループステージでは3ゴール4アシストの活躍でアーセナルをグループ首位での通過に導く。
2024-25シーズンはプレミアリーグ開幕戦のウルバーハンプトン戦で1ゴール1アシストの活躍で勝利に貢献すると、開幕からリーグ戦5試合連続でアシストを記録する好調なスタートを切る。2024年10月5日の第7節サウサンプトン戦では1ゴール2アシストとチームの全ゴールに絡む大活躍を披露。10月28日、第9節リヴァプールFC戦でゴールを決めると、ティエリ・アンリの記録を抜く23歳52日でのクラブ最年少でのプレミアリーグ通算50ゴール到達を果たす。
イングランド代表
アンダー世代代表
イングランド生まれだが両親はナイジェリア出身である。2019年12月時点ではイングランド代表とナイジェリア代表のどちらを選択するかまだ決めていないと語っている。とはいえ、ユース年代から世代別のイングランド代表でプレーしている。
15歳のときにU-16イングランド代表に選出。2018年に自国開催となったUEFA U-17欧州選手権に出場するU-17イングランド代表のメンバーに入り、主力として5試合全てに出場し、3位入賞に貢献。
1歳年上の神童フィル・フォーデンと共にこの頃からイングランドの将来を担う逸材として期待を寄せられていた。2018年10月からは飛び級でU-19イングランド代表に選出。2019年3月20日にはUEFA U-19欧州選手権予選のチェコ戦では2ゴールを決めている。
フル代表
2020年10月1日、19歳にしてイングランドA代表に初招集。10月8日のウェールズとの親善試合でフル代表デビューを飾る。
2021年6月にはEURO2020に出場するイングランド代表メンバーに選出される。大会直前のオーストリアとのテストマッチでは代表初ゴールを記録。6月22日のグループステージ第3戦でスタメンに起用され大会初出場を果たすと、大きなインパクトを残しMOMに選出される。この活躍によりラウンド16のドイツ戦と準決勝のデンマーク戦でもスタメンに抜擢される。決勝のイタリア戦では後半25分から出場。しかし、PK戦では5人目のキッカーとして登場するもジャンルイジ・ドンナルンマにストップされてしまう。このPK失敗によってイングランドは敗れ、あと一歩でタイトルを逃す。
その後、PKを外した3人の若手選手が黒人系であったこともありSNSで人種差別を含む誹謗中傷が相次ぎ世界的に大問題となり、ウィリアム王子やジョンソン首相などの要人までが登場する事態となった。
2021年からのカタールW杯予選では3ゴールを決め、アーセナルでの好調さもあってガレス・サウスゲート監督の信頼を掴むようになり、右ウイングのファーストチョイスになる。
2022年11月にはカタールで開催された2022 FIFAワールドカップに出場。大会では、控え組中心となったグループリーグ第3戦以外の4試合でスタメン出場を果たし主力として活躍。初戦のイラン戦ではワールドカップ初ゴールを含む2ゴールの活躍によって6-2の大勝に貢献する。ラウンド16のセネガル戦ではフォーデンのクロスをボレーで合わせ、大会3ゴール目を決める。準々決勝のフランス戦では敗れたものの、PKを獲得し同点ゴールを演出。上々のワールドカップデビューとなった。
ワールドカップ後も右ウイングのファーストチョイスは変わらず、2023年6月19日の北マケドニア戦ではプロになって初となるハットトリックを達成する。EURO2024予選では7試合4ゴールと活躍し、イングランドの本大会出場に貢献。
2024年6月にドイツで開催されたEURO2024では試合途中から左サイドバックで起用されたこともあったが、右サイドのレギュラーとして全試合にスタメンで出場。開幕戦のセルビア戦では右からのクロスでジュード・ベリンガムの決勝ゴールをアシスト。準々決勝のスイス戦では個人技から同点ゴールを決め、PK戦では3人目のキッカーとして成功させ、前回決勝での悪夢を払拭。チームとしての連動性の乏しかったイングランドにおいて、決勝トーナメントに入ってからは右サイドからの個人での突破が貴重な攻め手となり、イングランドの準優勝に貢献した。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2018-19 | アーセナル | プレミアリーグ | 1 | 0 | |
2019-20 | アーセナル | プレミアリーグ | 26 | 1 | |
2020-21 | アーセナル | プレミアリーグ | 32 | 5 | |
2021-22 | アーセナル | プレミアリーグ | 38 | 11 | |
2022-23 | アーセナル | プレミアリーグ | 38 | 14 | |
2023-24 | アーセナル | プレミアリーグ | 35 | 16 | |
2024-25 | アーセナル | プレミアリーグ |
個人タイトル
プレースタイル
両サイドのウイング、トップ下、左サイドバックをこなせるユーティリティプレイヤーだが、もっとも得意なポジションは右ウイングであり、最近では右ウイングで固定されている。
クリスティアーノ・ロナウドが自身に強く影響を与えていると語るように、ロナウドのプレースタイルからインスピレーションを得ているという。ドリブルを好む彼のスタイルは、ギリギリまでディフェンスを引き寄せて躱すもの。スピードも特筆すべきものがあるが、彼の最大の武器は異次元ともいえる高い足元技術である。
サカのドリブルは相手を抜くだけではなく引き付けながら味方をフリーにさせてしっかりパスコースを準備している。スペースのない局面であってもしっかりキープできるためボールロストは少ない。味方の時間とスペースを確保するサカの個人技はチームの展開戦術になっている。質の高い連携を駆使するアルテタ・アーセナルにおいて単体で優位性を作れるサカの能力は欠かせないものとなっている。
右の大外に張った位置からの相手DFとのアイソレーションも得意としており、縦にも中にも仕掛けられることから1対1で止めるのはかなり難しい。
キックの精度も高く、正確なクロスやカットインして切れ込んでからのコントロールシュートも得意。自らドリブルで持ち運びもでき、周囲とのパス交換で攻撃の組み立てにも参加することができたりとプレーの選択肢が多く、自分はもちろん、チームメイトや戦術に柔軟性をもたらす。イングランドのウインガーでは珍しいプレーインテリジェンスの高い選手である。
攻守の切り替えの意識も高く、チームがボールを失うとすぐにプレスバックに向かい、前線の守備者としての貢献度も高い。ただし、肉弾戦はあまり得意としておらず、ヘディング勝負での勝率も悪い。
人物・エピソード
「ブカヨ」はナイジェリア人の祖母が付けた名前で、ヨルバ語で「神が人生に喜びを加えてくれる」という意味を持っている。
敬虔なクリスチャンとして知られ、毎晩寝る前に聖書を読んでいる。
NBAの大ファンであり、ゴールパフォーマンスとしてバスケのシュートのポーズを披露したこともある。バスケの腕前も相当のものらしく、学生時代の教師はバスケの選手になると思っていたほど。現地でNBAを観戦した際は、同じナイジェリアにルーツを持つアーロン・ネスミスとユニフォームを交換している。
アメリカのニュース雑誌タイムの2022年10/24・10/31号にて次世代のリーダーとして特集され表紙を飾った。
関連動画
関連項目
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