京王バスとは、以下のような意味合いで使用されるバス事業者名である。
- 現在の「京王電鉄バスグループ」によるバス事業の通称(公式ホームページでも掲示)。
- かつて京王帝都電鉄が直営していたバス事業(バス路線)の通称。
- 1997年、京王電鉄の100%出資によって設立された事業者(初代京王バス)。後の京王バス東。
- 2020年、京王バス東・中央・南の地域子会社3社の合併により成立した事業者(現・京王バス)。
概要
1について(現況)
京王電鉄バスグループは「京王電鉄バス」「京王バス」の2事業者により構成される。京王電鉄バスは京王電鉄100%出資の子会社で、京王バスはその京王電鉄バス100%出資の子会社となる。もっとも公式ホームページでは両社を区別せず扱っている。
東京都(一部神奈川県)の京王線沿線を事業エリアとする一般路線バスや、リムジンバス・高速バス・貸切バス事業などを手掛ける。特に高速バスには高速道路黎明期から非常に積極的であり独自のネットワークを構築している。また先駆的な施策をする事で知られる。ついでに車体カラーもちょくちょく新しくする。
2について(直営の時代)
「京王バス」の通称は沿線のバス利用者などが慣習的に使用しており、特に京王に限った話ではない(東急バス、京成バス等)。まして戦後は「京王帝都電鉄」という長めの社名だったため、自然に定着していったと思われる。
1913(大正2)年、当時の京王電気軌道が期間限定ながら、鉄道を開業した時点における未成線の部分にバスを運行し、東京における路線バスの草分けとなった。以降は周辺事業者の買収・合併を進め、その規模を拡大、一時、京王電軌が傘下に収めた事業者は埼玉県や神奈川県にも及んだ。但し京王電軌が戦時統合により東急に合併されたため、戦後の東急からの独立後は都内3か所の営業所と4つの路線という規模まで縮小しての再出発となった。その後は他事業者の合併等はおこなわれず、単独で現在のような事業規模への再拡大を果たした。分社化を行う前の時点で、7営業所1支所3車庫という体制であった。
3について(分社化)
バス事業は長く直営(自動車事業部)であったが、社会情勢の変化などに対応する経営合理化の一環として、「分社化」を進めることとした。当初は営業所単位での段階的な分社化を志向し、まず1997年に「京王バス」(初代)を設立し調布営業所を移管した。続いて都区内の2営業所も順次移管されるが、その後方針転換し、2002年に「京王電鉄バス」を設立し、残る直営の営業所を一括して分社化した。以降は京王電鉄バスの出資による地域子会社の設立・移管が進められるようになり、同じ年に「南大沢京王バス」を設立し南大沢営業所を移管、翌2003年には「京王バス中央」を設立し府中営業所を移管するとともに、京王バス(初代)を「京王バス東」に、南大沢京王バスを「京王バス南」に改称した。2005年には「京王バス小金井」を設立し小金井支所を移管した。このような経緯によりバス事業は、京王電鉄バスと4つの地域子会社に再編され、「京王電鉄バスグループ」と称するようになった。
4について(再々編)
2005年以降は分社化はおこなわれず、京王電鉄バスから地域子会社へ路線等の委託・移管が進められたが、前述の通り地域子会社のうち3社は2020年に京王バス南を存続会社として合併し「京王バス」(現)に改称した。この合併により親会社の京王電鉄バスより子会社の京王バス(現)の方が事業規模が大きいという逆転現象が生じている。残った京王バス小金井も2022年に京王電鉄バスに吸収合併され、2社に集約された。
営業所
- 中野営業所(A)
- 所在:東京都中野区弥生町五丁目26-1/練馬ナンバー
- 所属:京王電鉄⇒京王バス東⇒京王バス/最寄バス停:中野車庫
- 渋谷駅・新宿駅~中野駅など中野区や杉並区などの路線を所管。
- 永福町営業所(D)
- 所在:東京都杉並区永福二丁目60-19/杉並ナンバー(以前は練馬ナンバー)
- 所属:京王電鉄⇒京王バス東⇒京王バス/最寄バス停:永福町
- 新宿駅~永福町間など杉並区や世田谷区の路線を所管。かつてはCNG車が配属され、運行のための施設も整備されていた。京王井の頭線の旧永福町検車区移転後、その敷地を活用して拡張されたが、井の頭線の新車搬入や除籍車搬出に都合の良い立地であるため、引き続いて電車搬入搬出に協力しており、駐泊するバスを移動するなどして対処している。
- 永福町営業所世田谷車庫(-)
- 所在:東京都世田谷区上北沢五丁目9-1/杉並ナンバー(以前は世田谷ナンバー)
- 高速バス・貸切バスのみを所管。2019年に営業所から車庫へ組織改編された。
- 調布営業所(L)
- 所在:東京都調布市国領町六丁目6/多摩ナンバー
- 所属:京王電鉄⇒京王バス東⇒京王バス/最寄バス停:調布車庫
- 調布駅に発着する調布市などの路線を所管。元は府中営業所の支所で、最も早く分社化された。
- 府中営業所(B)
- 所在:東京都府中市晴見町二丁目22/多摩ナンバー
- 所属:京王電鉄⇒京王電鉄バス⇒京王バス中央⇒京王バス/最寄バス停:府中営業所
- 府中駅などに発着する府中市・小金井市などの路線を所管。同営業所の敷地には京王電鉄バス・京王バスの本社が併設されている。小金井を始め、調布・桜ヶ丘などの営業所もここから支所として分かれた。
- 小金井営業所(京王バス府中営業所小金井支所)(G)
- 所在:東京都小金井市本町五丁目3-31/多摩ナンバー
- 所属:京王電鉄⇒京王電鉄バス⇒京王バス小金井⇒京王電鉄バス/最寄バス停:本町五丁目
- 武蔵小金井駅に発着する小金井市や小平市の路線を所管。
- 桜ヶ丘営業所(京王電鉄バス/京王バス)(S)
- 所在:東京都日野市落川898/八王子ナンバー
- 所属:京王電鉄⇒京王電鉄バス…京王バス中央⇒京王バス/最寄バス停:桜ヶ丘車庫
- 多摩市西部・日野市などの路線を所管。府中営業所の支所→営業所→多摩営業所の車庫→再度営業所として独立…と複雑な歴史を持つ。
- 多摩営業所(J)
- 所在:東京都多摩市南野一丁目1-1/多摩ナンバー
- 所属:京王電鉄⇒京王電鉄バス⇒京王バス南⇒京王バス/最寄バス停:京王多摩車庫
- 若葉台駅~多摩センター駅に発着する多摩市・稲城市などの路線を所管。同営業所の敷地には京王電鉄バスグループ全体の整備拠点が併設されている。
- 八王子営業所(C)
- 所在:東京都八王子市長沼町1304-3/八王子ナンバー
- 所属:京王電鉄⇒京王電鉄バス/最寄バス停:八王子車庫
- 八王子市南部・日野市などの路線を所管。同じ名称のまま2度移転を行っており、現所在地は3代目。
- 南大沢営業所(M)
- 所在:東京都八王子市南大沢五丁目26-1/八王子ナンバー
- 所属:京王電鉄⇒京王電鉄バス⇒京王バス南⇒京王バス/最寄バス停:だいり谷戸公園
- 八王子市南東部・相模原市などの路線を所管。元は八王子営業所の支所として設置された。
- 高尾営業所(T)
- 所在:東京都八王子市寺田町374-1/八王子ナンバー
- 所属:京王電鉄⇒京王電鉄バス⇒京王バス南⇒京王バス/最寄バス停:寺田東
- 八王子市南西部の路線を所管。八王子営業所の車庫→南大沢営業所の支所として移管→営業所として独立という歴史を持つ。…地元民も「ここ高尾じゃないじゃん!」って思うよ…。
一般路線
都内の区部から多摩西部まで東西に広い事業エリアを持つため、エリアによって乗降・運賃支払い方法が異なる。全線でPASMO、Suicaでの運賃支払いに対応している(バス共通カードの取り扱いは2010年7月末をもって終了)。
- 前乗り後降り運賃先払い(均一運賃)
- 中野・永福町の全路線、調布の大半の路線で採用。
- 前乗り後降り運賃先払い(申告制)
- 乗車時に下車停留所を告げ、所定の運賃を払う。かつては府中や多摩でも採用していたが、現在は調布の一部のみ。
- 後乗り前降り運賃後払い(整理券式)
- 長く八王子のみ採用の方式であったが、平成に入って調布以外の多摩エリア全域で採用されるようになった。
高速路線
主に中央道を中心に首都圏と山梨・静岡・長野・岐阜・愛知などの地域を結ぶ。首都圏の事業者としてはJRバス関東に比肩する積極的な姿勢であり、中央道を使った高速バス路線連合の「CHANCE」というアライアンスの幹事を努めるなど、協力会社と共に独自のネットワークを構築している。競合相手は中央本線の「あずさ」・「かいじ」など。
主に日中の運行がメインだが、夜行の運行も行われている。かつては西日本鉄道と「はかた号」を共同運行していたが、現在は撤退している。
高速路線への積極性が見受けられるものとして、後述するワンロマ車がある。元々はこうした高速バスの予備車を兼ねた車両として登場したものである。
車両
メーカー
一般路線車はいすゞ・日野・三菱ふそう、高速路線車・貸切車は日野・三菱ふそうが導入されている。かつては車両の共同開発を行った経緯から日産ディーゼルが多かったが、現在は日野の割合が高い(管内に日野の本社があるせいか?)。逆にいすゞは一時導入が途切れていたが、少しずつ再導入が行われている。トヨタは燃料電池バス「SORA」や、ミニミニバスとして使用されるハイエースが在籍する。
車両の大きな特徴としてフォグランプがない事が挙げられる。また一時期は公営事業者以外では導入の見られなかった機械式AT車を積極的に導入していた。
カラー
一般路線車では、京王電鉄バス所属車がアイボリーを基調とした京王CIカラー、京王バス所属車はホワイトとブルーの独自カラーを採用している。但し転属により電鉄バスカラーの車両が京王バスにもいるし、逆に京王バスカラーの車両が少数ながら京王電鉄バスに存在する。
過去2度にわたって一般路線車のカラーを変更しており、隣り合う小田急バスや関東バスとは対照的である。近年のリバイバルブームで過去のカラーを纏う車両が登場したほか、京王ライナーカラーやワンロマ車独自カラーを纏う車両もあるなど、バリエーションが妙に豊富である。
高速路線車・貸切車・一部特定車では、京王グループ共通のホワイトを基調としたカラーを纏っている。
変り種
ワンロマ車
路線バスの車体に、内装を高速バス並にグレードアップし、ハイバックシートを装備したバスの事である。ワンマン・ロマンスシートの略で、実際に社内用語として存在する。
前述の通り、高速バスに積極的であり繁忙期には在籍車両では賄いきれない事もあったので、通常期には路線バスとして使用、土日のように路線バスの運行が少なくなる際には高速バスとして使用できるようにした車両である。
路線バスで使用する場合は通常のバスと比べても豪華であるので乗り得であるが、相反する路線環境で使用するので実際は路線バスで使用した場合は吊革がなかったり、車内の立ち席空間が少ないので流動に難があったり、高速バスで使用する場合は路線バスの足回りがベースなので専用車と比べても見劣りがしていた。例えば、アメニティを見ると床下トランクを設置できなかったり、中扉がある為にその部分に座席が設置出来ないなどがあった。また、如何に路線バスの高出力エンジンと言っても、専用車が20000cc/400PS近い出力に対して、ワンロマ車は13000cc/300PSと動力性能は劣っていた。御存じの方もいるかもしれないが、中央道は談合坂付近を始めとして、全体的にアップダウンが激しく、パワーが求められる。
こうして中途半端になってしまった結果、ワンロマ車は次第に小規模の短距離貸切や契約輸送に回され、続行に使われる車両は貸切車が多くなった。とはいえ、小規模・短距離貸切で使用されるケースが少なからず存在し、また深夜急行バスの用途が多くなったので、あちこちで形を変えながらもワンロマ車は存在する。
他事業者にも波及し、東急バスや神奈川中央交通などに貸切兼用としてのワンロマ車の導入が行われている。
チョロQ
日産ディーゼルRN系のことで、中型車をベースとして、長さをマイクロバス並みの7mとしたバスである。「チョロQ」の愛称はその見た目の印象から自然発生したもの。
小型バス自体は既に存在していたが、車椅子リフトに限定されてしまうなどバリアフリー関係の対応に難ありな車両が多かった。そこで日産ディーゼルに提案を行い、スロープ板を取り付けられる小型のワンステップバスとして開発され、約4年間で100両を導入した。共同開発の恩恵で独自の前頭マスクが用意されたほど。
やはり他事業者にも波及し、他メーカーでも同規格の車両が開発・発売された…が、その後は需要が減少し、各メーカーとも後継車両の開発には至らなかった。
特筆すべき点
一バス事業者ながら、上記車両のようなアイデアをメーカーに持ちかけたり、様々な施策を実施したりとその積極的な姿勢も特徴である。
モットクパス
金額式の定期券であり、路線を限定せず一定の金額で設定すれば高速バスなどの特殊なバス以外の京王電鉄バスであれば乗車が可能な定期券である。IC定期券のみの設定でいくつかの会社ではこれに似たような全線定期券は存在したが、値段が固定されている先払い方式がほとんどであった。
京王電鉄バスは地域によっては先払いと後払いがあり、全線定期券となるとかなりお高い値段となるが、ある程度値段を設定しておけば利用者も出費を少なくする事が出来る。また、ICの利点を生かしたものとして設定した値段以上の路線を利用する場合はチャージ分から差額のみを生産する事が出来る。また紙式の定期券と違い、記名式PASMO/My Suicaの場合は無くしても再発行も出来るなどのメリットがある。
クリスマスバス
クリスマスに合わせて、バス車両や乗務員がクリスマス一色となるイベントである。
元々はある営業所で小規模におこなわれていたものが全営業所に広がった。バスは公共の車両である以上、特定の風俗に偏るのは色々と難しい所があるが、それでもこうした活動を通して着実にユーザーを増やしている。
マスコットキャラ
近年のゆるキャラブームもあり、京王電鉄バスグループのオリジナルマスコットキャラが登場した。停車ブザーや車内放送の音から「ピンポン」と「パンポン」の名称となった。
「ピンポン」は京王電鉄バスの、「パンポン」は京王バスのカラーを纏ったキャラクターである。
撮影協力
京王グループの例にもれず、ドラマ撮影に対しても積極的である。ホームページにも撮影関係の専用ページが存在する。
営業区域内に日活や石原プロと言った映画やドラマの撮影所がある調布市があるからかもしれないが、特に石原プロの「大都会シリーズ」や「西部警察」では度々登場している。無論、架空のバス会社(城西交通など)としての登場であるが、「大都会シリーズ」では緑を基調とした大昔の塗装で、実際に「京王帝都バス(劇中での名称ママ)」の名前で登場している。
関連動画
関連リンク
関連項目
- バス
- バス事業者の一覧
- 京王電鉄
- 西東京バス ※京王グループのバス事業者。一般路線車のカラーは初代の京王バスカラーを継承。
- 中央高速バス ※京王が事実上の取りまとめ役。
- 新宿高速バスターミナル ※京王が運営。バスタ新宿に移り廃止。
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