窒素(ちっそ、Nitrogen)とは、タンパク質の部分となる「アミノ酸」など、すべての生物にとって必須元素のひとつである。無色透明の気体。
概要
- 原子番号は、7、元素記号は、“N”、分類は、非金属。
- ギリシャ語の「硝石(nitro)」と「~を生じるもの(gen)」に由来する。
- 日本語の窒素は、ドイツ語の「窒息させる(sticken)」と「物質(stoff)」を組み合わせたStickstoffの直訳である。
- 発見:1772年、空気中で炭化水素を燃焼させ、生成する二酸化炭素を除いたときに残る気体として単体分離。
- 利用例:血や筋肉の成分となるタンパク質、体内の化学反応を促進する酵素、冷却剤(液体窒素)、アンモニアや硝酸生産の原料、狭心症の薬(NO)、肥料の原料など。
地球の空気中の約78%を占める気体で、生物は窒素を酸素とともに吸い込んで、二酸化炭素とともに吐き出している。しかしながらまったく吸収されず、また生物の体になんら影響を及ぼさない。空気中の窒素は基本的に窒素分子(N2)の形で存在しており、この窒素分子は自然界ではほとんど他の物質と反応を示さない。とにかく安定した物質なのである。名前こそ「窒息」が語源であるが、実際のところ窒素は窒息に大して関わっていない(もちろん窒素だけ吸い込んでいたら窒息するが)。
アミノ酸など有機物の主原料となっている元素ではあるが、ほとんどの生物は空気中の窒素そのものを取り込むことができず、窒素原子を含んだ化合物・イオンの形で取り込んでいる。代表的な窒素化合物イオンに、アンモニウムイオン(NH4+)、硝酸イオン(NO3-)などがある。アミノ酸もこれらのイオンなどが合成されたものである。地中の窒素化合物イオンは微生物がアミノ酸を分解して生成しており、それを植物が吸い上げて、草食動物、肉食動物と窒素化合物(たんぱく質)が巡り、その排泄物や死骸として再び地中に窒素化合物が還元されていくのである。
窒素化合物は火薬の原料としても重要である。有名な爆発物にニトログリセリンという物質があるが、この「ニトロ」とはずばり窒素(正確には硝酸)のこと。戦国時代の逸話に「便所まわりの土から火薬を精製した」というものがあるが、これは糞尿から染みだしたアンモニアから窒素化合物を取りだしていたのである。
また窒素は肥料の3大要素(窒素、リン、カリウム)の一翼を担う。かつて窒素をふんだんに含む人や家畜の糞尿が「金肥」=金を出して買う肥料と呼ばれたほど、農耕にとっては大切なものであり、ペルーで採掘される「グアノ」という糞化石(良質の肥料となる)を巡って外交問題、戦争に至ったこともあった。おせち料理の「たつくり」はイワシが肥料として活用されていたことに由来する。
20世紀初頭に開発されたハーバー・ボッシュ法によるアンモニアの工業的生産が可能となると、窒素を活用した化学肥料の生産が可能となった。化学肥料は糞尿などに比べて効果が高く、軽いためウン賃が安く済むなど多くのメリットがあり、農作物の生産効率が改善、世界の人口は爆発的に増加した。
またハーバー・ボッシュ法は弾薬、火薬の生産をも向上させたため、その後の戦争は激化した。空気中の窒素を利用できるようになったことは、人類の歴史において大きな転換点の一つといえる。
前述の通り、自然界ではあまり反応を起こさない窒素だが、高温環境下では酸素などと結合することがある。窒素酸化合物は「NOx(ノックス)」と呼ばれ、主に自動車などの排気ガスに含まれている。これらは硝酸などと同じく酸性を示し、酸性雨の原因になるとして問題視されている。また紫外線を受けると空気中の炭化水素と反応し、目や喉を刺激する光化学オキシダントの原因になる。
窒素どうしが二重結合で繋がったアゾ基(R−N=N−R')をもつ化合物は色を呈する物が多く、顔料や着色料などに多く用いられる。アゾ基をもつ抗リウマチ薬「サラゾスルファピリジン(抗炎症薬のメサラジンとスルファピリジンがアゾ基で繋がっているのでこの名前)」は、汗や尿、コンタクトレンズが着色することがある。
ニコニコ動画的には、窒素そのものをどうこうするような動画はさすがにないが、液体窒素を冷却材として使った動画がよく見られる。
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