01式軽対戦車誘導弾とは、陸上自衛隊が運用する個人携行式対戦車ミサイルである。
防衛省内の型式番号はATM-5、略称はLMAT。隊内では「マルヒト」「軽MAT」と呼ばれている。
また、愛称は「ラット」としている。
あくまで推測であるが、英略称のLihgt-missile-Anti-Tankの頭文字を取ったのではないかと思われる。
そして、陸自のつける愛称にしてはとてもマトモである。
概要
陸上自衛隊では、普通科隊員用の携帯型対戦車兵器として「84mm無反動砲 カールグスタフM2」を採用していたが旧式化が進んだため、これに代わる新たな対戦車兵器として川崎重工と変態技術者達の黒幕防衛省技術研究本部によって開発された。開発にあたって低コスト化は大きな課題となり、後述する様々な工夫が試みられている。
誘導方式に赤外線画像誘導を採用しており、撃ちっぱなし能力を備え、戦車で最も装甲の薄い上面を狙うダイブモード(トップアタック)とと、そのまま真っ直ぐ目標に着弾する低伸弾道モード(ダイレクトヒット)を選択できる。また、タンデム型のHEAT弾頭なため爆発反応装甲を装備した目標に対しても効果がある。
個人携行型、撃ち放し機能、タンデム弾頭等、米軍が開発した対戦車ミサイルであるジャベリンと大体似たような機能を持っている。機能が似てるうえに採用時期がジャベリンより遅いのでパクリと言われることがあるが別にそんなことはなく、日本製兵器にたまにある「パッと見一緒だが中身は別物」というやつである。
(例:90式戦車、91式携帯地対空誘導弾、三菱F-2etc...)
なお、誘導に赤外線のみを利用する関係上、熱を発しない陣地など対しては攻撃ができないという欠点がある。(誘導システムや安全装置を切れば一応攻撃できるが、中の人いわくすごく面倒くさいらしい)
この欠点が祟ってか、平成24年度富士総合火力演習の射撃展示では何度か「ロックオンできずに発射出来ない」という事態が発生している。
ちなみに米軍のジャベリンが歩兵装備として破格の値段であるため訓練にシュミレーターを用いるのに対し、01式軽MATは練習用のロケット弾を使用している。
01式軽MATの特徴
ジャベリンとの違いも併せて記載する
- 撃ち放し能力
Fire&Forgetとも言われる、ロックオン→発射→あとはミサイルにお任せという機能。
エースコンバットでは当たり前の機能だが地上発射型の対戦車ミサイル(さら人が持てる大きさ)となるとなかなか難しいようで、2013年現在同じような性能を持つ対戦車ミサイルは01式、アメリカのジャベリン、イスラエルのSpike-MRのみ(さらに01式はこの中で最も軽い17.5kg)。これらのミサイルは赤外線画像誘導でこの能力を実現している。 総合火力演習では軽装甲機動車で進入→発射→命中を確認せずに離脱、と撃ち放し性をいかした展示を行なっている。
- 非冷却型赤外線画像誘導システムの搭載
赤外線センサーには冷却型と非冷却型に大別できる。ジャベリンは前者、01式は後者を採用しておりこれがジャベリンとの大きな違いになっている。
ミサイルと言うものは一部を除いて、発射する前に目標をロックオンしなければならない。
従来のミサイルにはロックオンするために赤外線センサーが搭載されているのだが、多くの赤外線センサーは、ミサイルを発射する前に自分自身の持つ熱による精度低下を防ぐため十分に冷却しなければならず、サイドワインダー等の赤外線誘導AAM、ジャベリンはロックオンする前に冷却時間が必要になる。ジャベリンはシーカーの冷却にBCU(Battery Coolant Unit)を使用して10秒、昼夜兼用の赤外線照準器はバッテリーを使用して2.5~3.5分かかる。さらにBCUは4分しか持たないためその時間以内に撃たなければならない(使い終わったら交換)。と、この様に結構面倒であった。(この冷却機能を再現した武器がFPSにでたら確実にネタ、ロマン武器扱いだろう。事実、リアル系FPSの代表であるOFP、ArmAですら再現されていない。)
そこで、01式MATはこの面倒な冷却時間を省略した非冷却型赤外線誘導システムを、携行型対戦車ミサイルとして世界で初めて採用。このシステムを採用した事で、射撃までの時間が短縮され、BCUの残り個数を気にせずにすみ、また後述の低コスト化、重量の軽減にも貢献することができた。
- 低コスト、低コスト
相当大事なことのようで50年史では二回どころではなく何回も触れられている。
というのも大量に配備することが最初から計画されており、それが実現できる価格に抑える必要があるためである。これができたのは非冷却型赤外線センサー(一般的に冷却型より安い)の採用、民生品の採用、大量調達(当初はキャニスタを毎年2000発を予定)等のためで、2004年までに毎年交互に170、240セットとハイペースで調達されており、この頃は1セット約2700万円と非常にお買い得だった。
(もっとも、これでもジャベリンよりは高いのではあるが)
ところが2005年からいきなり36セットに激減。おそらくミサイル防衛のしわ寄せだと思われるが同時に価格も約7500万円に値上がりしてしまった。2010年まで似たようなペースは続き、合計1073セット調達された。
ただし、どうも高いのは発射機のようでミサイル本体は150万円位らしい。(未確認情報)
- サイドスラスター式の採用&少ない後方爆風
同じような携帯型対戦車ミサイルであるジャベリンと違い、ミサイルの尻からではなくミサイルの側面からロケット噴射を行うサイドスラスター式を採用している。これにより推進剤の焼け残りが射手にかかるリスクの低下、素早いロケット点火が可能になることにより発射時の加速をそのまま飛行に利用できる、噴射口の後ろに動翼があるためトップアタックモード時に素早く上昇機動を取れる、などといった利点がある。
また、発射時に発生する後方爆風が少ないため車両の上や掩体のような場所でも問題なく発射できる。
- 比較的軽い
ジャベリンの重量は約22.3kgであるのに対し、軽MATは約17.5kgとかなりの軽量である。
じゃあミサイルの性能が落ちているんじゃないの?と思われがちだが、ミサイルそのものの重量はそれぞれ約11.8kgと約11.4kgとあまり変わらないのでご安心を。
- 低い発射時の不発率
これに関しては日本製ミサイル全般に言えることではある。ジャベリンの場合、意外に発射時にロケットに点火しない確率が高く(致命的なレベルではない)、探せば不発だった動画も見つかる。しかし日本の場合ミサイルに対する基準が非常に高いため、不発率が低いと言われている。まぁこれはジャベリンに問題があるというより日本側の要求が高いといった方が正しい。
01式軽MATの配備と運用
以上の様に多くの優れた点を持った01式軽MATは計画通り全国の普通科部隊に配備されることとなった。
しかし、戦車相手には高性能なミサイルではあったがそれ以外の目標には使い勝手が悪く、その上なんだかんだ言っても高価なミサイルであるため、戦車から歩兵まで多様な弾種でお手軽に幅広く使用できた84mm無反動砲の役割を完全に代替することは出来ず、平成23年度から調達が中止され、平成24年度には84mm無反動砲の軽量版であるカールグスタフM3が新たに「多用途ガン」として採用されることとなった。現在の名称は84mm無反動砲(B)である。
(そもそも無反動砲を対戦車ミサイルで代替しようとした事自体が間違いな気がしないでもないが・・・)
01式軽MATは、各普通科中隊の小銃小隊に所属する小銃分隊内のATM(対戦車ミサイル)手が携行する。
同様の携行式対戦車ミサイルであるジャベリンを、米軍では発射機を携行する射手と予備弾を携行する弾薬手の二人で運用している。対して陸上自衛隊では01式軽MATを発射機と予備弾を合わせた約35kgを全て一人で運用しなくてはならない。中の人曰く、01式軽MATに背嚢、さらに防弾チョッキ2型まで着込んだフル装備で実施する真夏の演習はまさに地獄だと言う。
今後の普通科対戦車誘導弾部隊の配置は、中距離多目的誘導弾を普通科連隊直轄の対戦車中隊へ。01式軽対戦車誘導弾は普通科中隊直轄の対戦車分隊へ集中配備。戦車や装甲車など車両以外に対する火力支援は、84mm無反動砲や個人携帯対戦車弾、06式小銃てき弾などで対処すると言われる。
(落ち着くところに落ち着いたといえばいいのか、01式の理想が高すぎたというのか…)
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- 1
- 0pt


