アドマイヤグルーヴとは、2000年産の日本の元競走馬、繁殖牝馬である。
偉大な母を追いかけ続け、エリザベス女王杯連覇という母とは違う栄光を手にした名血。
主な勝ち鞍
2003年:エリザベス女王杯(GI)、ローズステークス(GII)
2004年:エリザベス女王杯(GI)、マーメイドステークス(GIII)
2005年:阪神牝馬ステークス(GII)
父は当時すでに伝説的種牡馬だったサンデーサイレンス、母は牝馬ながら天皇賞(秋)を制し年度代表馬にもなった女帝エアグルーヴ、母父は凱旋門賞馬にして日本の種牡馬平成三強の1頭トニービン。そんじょそこらの良血なぞ足元にも及ばないウルトラ良血馬である。アドマイヤグルーヴはエアグルーヴの初仔であった。
デビュー前から大きな期待を掛けられていたアドマイヤグルーヴ。セレクトセールでは史上最高額の2億3000万円という衝撃の価格で近藤利一氏に落札されたのである。
デビューは2歳11月。新馬戦は軽く勝利。阪神ジュベナイルフィリーズは抽選で除外されたので出世レースのエリカ賞に向かい、牡馬を相手にここも勝利。圧倒的人気に応える。
明けて3歳、陣営は何故か皐月賞トライアルの若葉ステークスに出走させる。マイルは短いし、荒れた中山で行われるフラワーカップは使いたくないということでこういうローテになったらしいが、桜花賞とは何の関係もないので、勝たないと賞金的桜花賞は無理、という状況に自ら追い込まれてしまう。どうにかハナ差勝ったからよかったが、負けたらどうなっていたのだろう。皐月賞に出たのかもしれないが、相手がネオユニヴァースでは果たしてどうだったか…。
ともあれ桜花賞である。マイルは初挑戦だったが、無敗馬だし良血だし、まあ勝てるでしょ。
ということで、過去3戦ほどの支持率ではないが1番人気に推される。しかし出遅れて最後方からの競馬になり、直線猛然と追い込むが完璧に立ち回ったスティルインラブに届かず3着に敗れてしまう。
・・・まあ、アドグルにマイルは短かったよ。次は母も祖母も勝ったオークスだ。スティルインラブはマイラーっぽいし、まあ次は勝てるさ。
ということで、オークスでは桜花賞馬スティルインラブを差し置いて圧倒的1番人気に推される。しかしまたも出遅れたあげく道中もポジションを下げてしまう。スローペースなのに残り400で最後方。そんなの勝てたらバケモノだよバカヤロー。上がり最速の脚は使ったが、全く勝負にならず7着に惨敗。勝ったのはまたもスティルインラブ。母娘三代オークス制覇の夢は脆くもはじけ飛んでしまった。
秋初戦、ローズステークスではついに1番人気もスティルインラブにさらわれてしまう。しかしこのレースでは持ち前の強烈な末脚が決まり快勝。スティルインラブはなんかいまいち伸びず5着に敗れる。
よっしゃアドグルついに本格化や!母親も本格化したのは古馬になってからやし、もう負ける気せえへん!
ということで、秋華賞では二冠牝馬スティルインラブを差し置いて1番人気に推される。今度はゲートを五分に出ると、スティルインラブをマークしつつ中団で足を溜める絶好のポジション。3,4コーナー中間で動いた相手に合わせるように外から進出する。直線では武豊が猛然と追うが、スティルインラブも全く同じ脚で伸びる。追えども追えども追いつけない。1馬身ほどの差が永遠に詰まらない圧倒的な差のように見えた。結局3/4馬身差でスティルインラブが勝利し牝馬三冠を達成。アドマイヤグルーヴは春クラシックよりは善戦したが、結局3歳タイトルは取れずに終わってしまう。
続くエリザベス女王杯では再びスティルインラブに1番人気を奪われるが、さほど離れない2番人気に支持される。今度はスティルインラブからやや離れた後方に位置取ると、これが1000m57.5秒の超ハイペースに嵌まる。直線に入ると外目から末脚を繰り出し、一気にスティルインラブを捉える。しかしスティルインラブも内から馬体を併せ、食い下がって譲らない。2頭のマッチレースのような状態のままゴール板を通過。ハナ差だけ、アドマイヤが出ていた。アドマイヤグルーヴは4度目にしてついにGIでライバルを下し、母娘3代GI制覇を成し遂げたのである。
明けて4歳、牡馬相手に大阪杯、金鯱賞と惨敗。目標の宝塚記念を自重し、マーメイドステークスに向かう。まあ、牝馬限定GIIIだし、他馬とは全くレベルが違うし。確かにヘヴンリーロマンスはいたけど、この頃は条件戦を出たばっかりの有象無象の1頭に過ぎなかったし。というわけで、ここは直線で軽く抜き去り3馬身差の圧勝を見せる。
秋は京都大賞典から始動し4着。それでも強気に天皇賞(秋)に挑むと、前の2頭にはやや離されたが3着に健闘する。中1週で臨んだエリザベス女王杯。今度は当年の秋華賞馬スイープトウショウに1番人気を譲る。しかし本番では、前年の再現かのようなレースぶりで完勝。エリザベス女王杯史上2頭目の連覇を達成する。なお、ライバルだったスティルインラブも前年と同じようなレースをしたのだが彼女は直線撃沈し9着に惨敗。なんというか、嬉しい反面物悲しいレースだった。
初戦の大阪杯はまたも敗戦。何故か天皇賞(春)に挑戦するがやっぱり惨敗。金鯱賞の敗戦を挟み、宝塚記念に挑むが前年エリザベス女王杯で破ったスイープトウショウの歴史的勝利の添え物にもならない8着。実は大阪杯も金鯱賞も前年より着順は上げているのだが、不完全燃焼で春を終える。
秋、ついに武豊が降りてしまうと、天皇賞(秋)ではデビュー以来最悪の17着。3連覇をかけて臨んだエリザベス女王杯も前から離された3着。この頃にはクラシックを戦っていたころのような切れ味が明らかに失われていた。ここに及んで、陣営は引退を決定する。
引退レースとなった阪神牝馬ステークス(当時は年末、芝1600m開催)。武豊が鞍上に舞い戻ったこのレースでは、当年の桜花賞馬ラインクラフトに次ぐ2番人気に推される。思い返せばこの馬、大きなところを勝つときはいつも2番人気だったような…。
果たしてこのレースも、外目から早めに前につけると、直線早々に逃げたラインクラフトを抜き去り、追ってきたマイネサマンサとレクレドールを封じ込め勝利。自らの花道を飾り、そのまま引退式を挙げターフを去った。馬主の近藤利一氏はこの勝利に感動して泣きはらし、アドマイヤベガのダービー制覇より嬉しいと語ったという。
通算21戦8勝。2着はわずか1回。賞金も勝ち星も母エアグルーヴには及ばなかったが、それは母が果たせなかったエリザベス女王杯を連覇したという、彼女の勲章の輝きを鈍らせるものではない。力自体はものすごいのに、どうにもムラのある馬だった。なんでも乗り味自体は母に似ているが「その日によって全然テンションが違ったりした」らしく、武豊が「一番乗りにくかった思い出の馬」として名前を挙げている。まあゲートでフェラーリやらかしたルーラーシップやゲートでああなったポルトフィーノら弟妹のことを思うと、この血統はそういう血統なのかもしれない。
ちなみにアドマイヤグルーヴは古馬になってからは牡馬相手にほとんど良績を残せなかったが、武豊曰く「牡馬相手だと萎縮して力が出せなかった」のだという。何から何まで母とは正反対だなぁ…。
繁殖牝馬となったアドマイヤグルーヴには当然大きな期待がかけられた。しかし、二番仔のアドマイヤセプターがまあまあな成績を残したものの、なんかいまいち産駒がパッとしない。胸部出血のため2012年10月、母に先んじて12歳の若さで世を去った。しかし最後に残された息子のドゥラメンテが皐月賞を圧勝し、母子4代GI制覇を天国の母たちに捧げている。
しかしこのドゥラメンテも皐月賞でどえらい大斜行をやってのけるほどの気性の荒さを持ち合わせている…。はてさてこの気性の悪さ、いったい誰から遺伝したのやら。
*サンデーサイレンス Sunday Silence 1986 青鹿毛 |
Halo 1969 黒鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
Nothirdchance | |||
Cosmah | Cosmic Bomb | ||
Almahmoud | |||
Wishing Well 1975 鹿毛 |
Understanding | Promised Land | |
Pretty Ways | |||
Mountain Flower | Montparnasse | ||
Edelweiss | |||
エアグルーヴ 1993 鹿毛 FNo.8-f |
*トニービン 1983 鹿毛 |
*カンパラ | Kalamoun |
State Pension | |||
Severn Bridge | Hornbeam | ||
Priddy Fair | |||
ダイナカール 1989 鹿毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | |
Lady Victoria | |||
シャダイフェザー | *ガーサント | ||
*パロクサイド | |||
競走馬の4代血統表 |
残された産駒は少ないが、すべて中央で勝ち上がっている。これは結構凄いことである。
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最終更新:2024/05/07(火) 08:00
最終更新:2024/05/07(火) 08:00
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