若き風
名を残してきた
年長者たちよ
若き力がいま
その地位を狙うそしてまた
次の世代も台頭し
新たな闘争が
巻き起こるのだ風は吹き続ける
それが世の理
シルクジャスティス(1994~2019)とは、日本の競走馬・種牡馬である。
エリモダンディーとの奇妙な友情が有名。
主な勝ち鞍
1997年:有馬記念(GI)、京都大賞典(GII)、京都4歳特別(GIII)
父は大種牡馬*ブライアンズタイム、母ユーワメルド。母父の*サティンゴは未出走だが、その母母父には1950年の凱旋門賞馬Tantiemeがいる。
この馬、父が*ブライアンズタイムということもあったのか、やたらボテッとして牛のようと言われるくらいなんか微妙な馬体をしていた。こういう訳わからん体の方が走るタイプと言われるブライアンズタイム産駒だが、そういうこと以前の馬であった。
とにかくこの馬、気性は最悪としか言いようがなく
ところで、同厩で同い年の*ブライアンズタイム産駒でエリモダンディーがいた。この馬、入厩当初は370キロほどしかなく「2歳の馬送って来ないでくださいよ」なんて冗談言われたほどであった。
しかしこの子、調教はまじめにこなすし俊敏でバネが利いたいい走りをする。人懐っこいため、ジャスティスに振り回される大久保厩舎の癒しとなっていた。そんなダンディーだが、名前とは裏腹にいじめられっ子気質で、意地の悪いやつに脅されてもビクビクするだけであった。
しかしそんなダンディーを助ける、素晴らしい義侠心を持った馬がいた。……シルクジャスティスである。唯我独尊自己中野郎と思ったら意外である。その名に冠した”正義”が表すかのごとく、ダンディーがいじめられるとモウヤメルンダッ!!と言わんばかりにそこに割り込んで怒る。ボテ腹で牛みたいなこの馬、喧嘩には強く、大体その怒りの大喝で追っ払っていた。
そうこうしている内にダンディーは彼をアニキと慕い、トコトコついていくようになったという。うーん、メニアック!
しかし厩舎関係者は「ダンディーに向ける優しさを俺らにも向けろ」「ダンディーの真面目さを見習え」と思ったとか。そりゃそうだ。
デビュー後、何も覚えるつもりもなく調教も真面目にしない彼は当然負け続けたが、匙を投げずに教え込んだ成果か、徐々にレース内容も良化し7戦目で未勝利を脱した。
そして強気に東上最終便毎日杯へ挑む。12番人気も当然の評価だったが最後方から鋭く追い込み3着に食い込む。実は才能があった?と世間に思わせた。皐月賞は断念したが、続くオープン特別は最後方からワープしたと形容された末脚で追い込み快勝。更に重賞の京都4歳特別も一番人気に応え最後方から捲り、ライバルをねじ伏せ重賞初勝利を挙げた。イージーゴア産駒でぴかぴかの良血外国産馬プレミアムサンダーを撃破しての勝利に、世間は瞠目した。これはダービーの有力馬だ! すごい! と騒ぎたてたのだ。……それまでも顧みられなかった皐月賞馬を全く顧みなくなるほどに。
そして迎えた日本ダービー。メジロブライト、ランニングゲイルに次ぐ3番人気に推された。弟分のエリモダンディーも皐月賞から出走しており、アニキとしては人気で上回り格好はついたと言えよう。
レースは皐月賞馬サニーブライアンが単騎で逃げる。鞍上の大西が「何が何でも逃げます! 絶対にだ!!!」と吹いて回ったため、サニーブライアンの力を評価しない空気に皆流され、他の逃げ馬も潰されたらたまらないということで誰もつつきに行かず、至って快適な単騎逃げである。
そして、ジャスティスを含め有力馬は追い込み脚質であった。一番人気のメジロブライトもジャスティスと似たもの同士。その二頭が牽制しあって後方。先行馬も追い込みの有力馬を無視できず、つつくリスクも犯したくない……サニーブライアンと大西がほくそ笑む展開である。計画通り。
そして皆がサニーブライアンと大西の策略に完全に嵌められたことに気づいたのは、直線に入って楽に後続を突き放す姿を見てからであった……シルクジャスティスは後方から猛烈に伸びたが2着まで。ダンディーも鋭く追い込み4着と善戦した。
夏を越して神戸新聞杯から始動したが8着。その次走に選んだ京都大賞典で古馬を撃破し菊花賞へ。
京都大賞典の内容・二冠馬不在ということから一番人気を背負うが、追い込み切れず5着。間隔の詰まったジャパンカップでも5着。確かによく伸びてる、でも勝ち切れない。神戸新聞杯後、共に調教メニューをこなすようになった弟分のダンディーは菊花賞後、京阪杯を制しついに重賞ウイナーとなった。だったら……俺も負けていられない……!
そう思ったかはわからないが、迎えた有馬記念で力強い末脚を繰り出し、先に抜けだしたマーベラスサンデーを飲み込みついにGIを先頭で駆け抜けた。あのきかん坊が、ついにGIまで届いたのである。しかもマーベラスサンデーとエアグルーヴを下しての勝利。陣営の嬉しさもひとしおであっただろう。
特に彼に惚れ込み、一番強い馬と言い続けていた鞍上の藤田伸二は大喜びであった。
ようやく開花した逸材は、来年以降も輝く……皆がそう思っていた。しかし……
年が明けて5歳、休みなく初戦を京都記念に設定して調教を開始するが、エリモダンディーが日経新春杯を快勝した後骨折で長期離脱となってしまう。当時の大久保厩舎にジャスティスについていけるパートナーは他におらず、調整が難しくなってしまった。それだけなら良かったのだが…
エリモダンディーが、ストレスから腸捻転を起こし亡くなってしまった。ジャスティスが気づかぬ内に無二の親友は消えてしまった。
それが影響したかはわからないがここからは泥沼の連敗を続けてしまう。似たもの同士のメジロブライトの前に連敗し天皇賞馬の称号を持って行かれ、宝塚記念ではかつて同じようにきかん坊で鳴らしたサイレンススズカの完成された逃げの前に屈す。
そして秋、ダンディーがいなくなることにより調教も軽くなり、更に悪いことに完全にかつてのサボりぐせが蘇り、体重も徐々に絞れなくなっていく。
4歳馬の逃げに幻惑され、スズカが散り、怪鳥が世界へ飛翔する一歩を記し、怪物が再び怪物として雄々しく立つ瞬間をただただ敗者として見届けるのみであった。
グランプリホースとしては屈辱以外の何者でもない。しかし彼のすっかり萎えてしまった闘志に火はつかない。
6歳の春、藁にもすがる思いで併せ馬を敢行し一時的に猛々しい、GIを勝った時の彼が蘇った気配を見せたのだが……今度は大久保厩舎ならではの使い詰めで悲鳴を上げ始めていた脚が折れた。運が向かない時って言うのは往々にしてこんなものである……。
7歳になり休養から復帰したがもう全盛期の力はなく大惨敗し引退となった。同じレースで菊花賞馬マチカネフクキタルも惨敗している。ああ諸行無常。ちなみにこのレースで2つ目の重賞を取ったメイショウドトウは、次走以降王者テイエムオペラオーと激戦を繰り広げた。
引退後は種牡馬となったが種牡馬としても振るわず、2010年をもって種牡馬を引退し功労馬となった。種牡馬引退後、産駒のバシケーンが中山大障害を勝利したのは追い込み馬だった彼への皮肉めいた何かなのだろうか。
きかん坊が友との出会いで成功し始めるが、友を失い、悲しみに流され自棄になってしまい全てを失った…そんなお涙ちょうだいなシナリオが簡単に想像できるほどに、ドラマ性のある馬であった。
メンコかぶった姿がパンツ被った変態みたいだとか言われたりした辺りも人間的?である。
彼の血を引くきかん坊がもう見られる望みが薄いのは残念なことだが、彼の鮮烈で、どこか人間的な馬生はきっとこれからも語り継がれることであろう。
北海道・新ひだか町の畠山牧場で暮らしていたシルクジャスティスであったが、2019年6月3日に25歳でこの世を去った。主戦騎手であった藤田伸二はTwitterで彼の死に言及した悲痛なツイートをしている。
*ブライアンズタイム Brian's Time 1985 黒鹿毛 |
Roberto 1969 鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
Nothirdchance | |||
Ranavaio | Nashua | ||
Rarelea | |||
Kelley's Day 1977 鹿毛 |
Graustark | Ribot | |
Flower Bowl | |||
Golden Trail | Hasty Road | ||
Sunny Vale | |||
ユーワメルド 1983 鹿毛 FNo.4-m |
*サティンゴ 1970 黒鹿毛 |
Petingo | Petition |
Alcazar | |||
Saquebute | Klairon | ||
Synaldo | |||
ピーチガール 1976 鹿毛 |
*セダン | Prince Bio | |
Staffa | |||
メリーブラット | *テスコボーイ | ||
コンチネンタル | |||
競走馬の4代血統表 |
掲示板
13 ななしのよっしん
2021/11/18(木) 19:47:16 ID: TLUhMCJqMJ
ジャスティスのお母さんは「ユーワメルド」です
プレミアムの人修正お願いします
14 ななしのよっしん
2023/02/12(日) 01:14:49 ID: x7K2ffhZOg
友を失い悲しみに暮れてってここだと想像してるけど
個人的には悲しみに暮れるっていうよりは唯一カッコつけたい弟分が居なくなってカッコつける必要が無くなったから元に戻った
きっとそれだけのことだったんじゃないかなって……
15 ななしのよっしん
2024/09/25(水) 23:21:26 ID: t7KpQdJpLK
世間ではオカルト認定されてる中島理論だとシルクジャスティスが天皇賞春から凡走開始したのは阪神大賞典でメジロブライトとのマッチレースで強烈に負けたと印象付けられてしまったかららしい。ただのステップレースだから気にしなくていいということは馬は分からんからな。
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最終更新:2024/12/12(木) 02:00
最終更新:2024/12/12(木) 01:00
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