プレイディアとは、1994年9月23日にバンダイから発売された学習応援機器、インタラクティブ映像機器、そして考えようによっては家庭用ゲーム機である。
家庭のテレビに接続して遊ぶ、いわゆる据置型ゲーム機のようなもの。
発売された1994年はセガサターン(1994年11月22日発売)やプレイステーション(1994年12月3日発売)など様々な据置型ゲーム機が発売された年である。それらの多くはソフト媒体としてCD-ROMを採用し、ゲームファン向けの高機能を売りとしていた。
だがこのプレイディアはそれらのゲーム機とは方向性が大きく異なり、ソフトがCD-ROMであることは共通であるものの、「ゲーム機」ではなく双方向的(インタラクティブ)に楽しめる「CD-ROMプレイヤー」、「映像機器」、低年齢の子ども向けの「学習応援機器」という方向性で売り出した。ソフトラインナップを見ても子どもに人気のキャラクターを使ったソフトが多く、さらになんらかの「学習」に関連付けさせたものが少なくない。また「図鑑」としてのソフトも多い。
価格も24800円(税抜き)と同時期のゲーム機と比べてかなり抑えられていた(セガサターンは44800円、プレイステーションは39800円)。かつ、後に11800円へとさらに価格が引き下げられた。「発売一周年記念プレイディアサンクスキャンペーン」でこの価格であるとアピールするコマーシャル映像が存在するらしく、1995年にこの価格になったものかと思われる。
一方、「ゲーム機ではない」という方向性であるため高性能な演算能力は必要とせず、同時期のゲーム機が32ビットの演算装置を備えていた時期に、プレイディアは8ビットのCPUを使用していた。なお、CPUとは別に、CD-ROMに収録された映像・音声のデコード専用LSIも搭載している。
ロゴは英語表記の「Playdia」が使用されていた。そのロゴの下には「Quick Interactive System」と表示されており、「CD-ROMに高速アクセスしてインタラクティブなコンテンツを楽しめるシステム」といったような意味であったかと思われる。
テレビとの接続は、黄・白・赤の3色の端子で接続する形式で、いわゆるRCA端子と呼ばれるもの。黄色がコンポジット映像信号で、白と赤がステレオ音声信号の左右だった。
日本国内でのみ流通しており、外国版は存在しないし、ソフトの外国語版なども存在しない。
本体の型番は「BA-001」。専用ACアダプターの型番が「BA-002」。コントローラーの型番が「BA-003」。開発時のコードネームは「BA-X」だったとのことで、型番はその開発コードの流れを汲んでいるようだ。
コントローラーが1つ同梱された。本体とはコードなどで繋がっていない無線式だが、本体に設けられた凹みに収納することはできる。本体に収納しても充電などができるわけではなく、純粋に「本体に嵌まるように置ける」だけである。裏から乾電池を出し入れする方式であり、単4乾電池2本で動く。
無線式と言ってもBluetoothのような電波ではなく家電のリモコンのように赤外線を用いる方式で、コントローラーの奥側にある発光部からの光を本体前面の受光部が受け止める方式だった。そのため、コントローラーをちゃんと本体に向けてプレイしないとボタン操作が反映されないことがあったという。
ボタンは、左手で持つ位置に上下左右の4方向のボタン、そして右手で持つ位置にAボタンとBボタンが横並びで付いていた(向かって左がA、右がB)。プレイディアは音楽CDの再生にも対応していたため、Bボタン以外は音楽再生をコントロールするためのボタンにもなっていた。
発売された1994年中に11タイトル、翌1995年に16タイトル、そして1996年に6タイトルが発売され、1997年以後はソフトが出なかった。すなわち市販ソフトは全33タイトルである。
他に非売品(販促用映像ソフトや、雑誌プレゼントのソフトなど)7タイトルもしくは8タイトル[1]が存在したという。
ソフトは例外的な経緯で販売された1本(後述)のみを除いて全てハードメーカーであるバンダイ自身からしか出ていないが、それでも3年間で合計33タイトルが発売されている。供給源がほぼ自社しかないことを鑑みればそれなりといっていい数かと思われる。そもそもサードパーティーの参入を当てにしていなかったと思われ、当時の他の「据置型ゲーム機」の戦略とは一線を画すものであった。
ソフトのパッケージには「Playdia」のロゴの他に、前述の「Quick Interactive System」を略した「Q.I.S」という別のロゴも入っていた。これはプレイディアが「Q.I.S規格の専用CD-ROMと音楽用CD-ROMを楽しめる」と謳う商品であったためか。ただしQ.I.S規格のCD-ROMを使える市販品は「プレイディア」のみのはずであり、わざわざ「Playdia」と「Q.I.S」のロゴを別々に付けた意味はあまりなかったと思われる。将来「プレイディアとは別の、Q.I.S規格に対応した互換機器」を出すような構想があったのだろうか?
また、学習応援系のソフトのパッケージには「iQKids」というシリーズロゴが入っていた。
バンダイ以外から出た例外の1本というのは『テレビシリーズ 家なき子 〜すずの選択〜』というソフトで、これはバップから発売されている。テレビドラマ『家なき子』のソフトであり、同ドラマの主演が安達祐実だったことからその関連で特別に発売されたものかと思われる。ただし「バーコードのJANコードを読み取るとこのソフトもバンダイ流通であった」といった情報もあるが。このソフトはマッキントッシュやWindowsといったパソコン用にも発売された。
概要で述べたようにほとんどのゲームは幼い子どもむけだが、1995年から1996年にかけては「プレイディアV エレメントボイスシリーズ」と銘打って、当時人気のあった声優の映像を収録したソフトも5人分(かないみか、深見梨加、久川綾、白鳥由里、國府田マリ子)、5作品が販売された。子ども向け一辺倒だった方向からアニメファンにも訴求の幅を広げようとしたものかと思われ、アニメ雑誌などでも取り扱われたようだ。
基本的にはどのソフトも知名度は低いが、『ドラゴンボールZ 真サイヤ人絶滅計画 -地球編-』およびその続編の『ドラゴンボールZ 真サイヤ人絶滅計画 -宇宙編-』の2本は、ドラゴンボールシリーズの熱心なファンの中ではある程度の知名度があるようだ。このソフトでしか見られなかった「オリジナル展開かつテレビアニメ同様の映像」が収録されているためか。
また、雑誌『Vジャンプ』の懸賞でのみ供給されたソフト『ゴー!ゴー!アックマン・プラネット』は、ソフト自体の知名度はさほどでもないものの『ドラゴンボール』と同じ鳥山明作品であるためか割と需要があるようで、かつ一般販売されていないことから供給が乏しいよう。ホビー関連の中古ショップとして有名な「駿河屋」では中古品の価格が23万8千円、買取価格が8万円となっている(2024年8月現在)。レアソフトであるため、2024年8月現在時点ではネット上にプレイ動画が1本しか存在していないようだ(YouTubeとニコニコ動画に同じ動画が1本だけ投稿されている状態。本記事「関連動画」参照)。
複数のバリエーション、型番がある「プレイステーション」や「セガサターン」と違い、市販された「プレイディア」には型番「BA-001」の1種類しか存在しないようだ。
本体の箱には、メディア機器的なシンプルなデザインのタイプと、「対象年齢3才以上」「あそんで学ぼう!!」「ボクにもできた!!」「大好きなキャラクターが先生だから楽しく知力アップ!」などと書かれたにぎやかなデザインでいかにも玩具然としたタイプの2種類が存在していたようだが、箱が違うと本体に違いがあるといった情報はない。
ただし、市販されていないプロトタイプやプレゼント専用品など少数のバリエーションが存在する。
また、後述する「みちゃ王」に内蔵されていたプレイディアも、考えようによっては本体バリエーションだと言えなくもない。
前述のように、「BA-X」と言う開発コードだった。開発中の時点で配布されたパンフレットには本体上部に付いているロゴが「Playdia Quick Interactive System」ではなく「BA-X BANDAI HOME ENTERTAINMENT INTERACTIVE SYSTEM」となっているだけで、他はプレイディアとほぼ同じ外見[2]の本体「BA-X」が写真で掲載されている。少なくとも内部向けにはこの販売前プロトタイプ「BA-X」が存在したようだ。
ちなみにこのパンフレットには、BA-X「カラオケアダプター」という「本体に接続することでBA-Xがカラオケに変身!」するという周辺機器も写真付きで掲載されている。この「カラオケアダプター」は結局発売されることは無かったようだ。
漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』の定期増刊号(特別編集増刊号)である『少年ジャンプ Winter Special』の1995年1月15日号では、読者アンケートはがきの懸賞プレゼントとして「DRAGON BALL プレイディア +真サイヤ人絶滅計画―地球編―」が1名にプレゼントされた。
その告知写真においてはプレイディア本体と『ドラゴンボールZ 真サイヤ人絶滅計画 -地球編-』のソフトが並べて掲載されているのだが、このプレイディア本体の写真はよく見ると本来「Playdia Quick Interactive System」のロゴが入っているはずの箇所に「DRAGON BALL」「Winter Special」「 WEEKLY JUMP」「AKIRA TORIYAMA」という文字とともに『ドラゴンボール』のキャラクター「ゴテンクス」が描かれている[3]。つまり特別仕様の本体になっていたようだ。
もしこの懸賞でしか提供されなかったものであれば世界に1台しかない激レア品ということになるが、情報が少ないために「この懸賞でしか提供されなかったのかどうか」も含めて詳細が不明である。
「ゲーム機ではない」という方向性だったわけだが、とはいえCD-ROMをソフトとする新型ゲーム機が次々に出ている時期に出た「テレビにつないで、ソフトがCD-ROMで、コントローラーで遊ぶ」ハードであるプレイディアは、消費者からはゲーム機として見られてしまいがちであった。
そしてゲーム機として見られてしまうと「高性能な他のゲーム機と比べて見劣りする存在」であったためか、販売数は余り振るわなかった[4]という。
だが、その振るわなかったという販売成績が、「具体的にどの程度だったのか」については根拠のある情報は乏しいようだ。
「Wikipediaの「プレイディア」の記事
とか「家庭用ゲーム機の販売台数一覧
」の記事には「12万台」と書いてある。それが正しいんじゃないの?」と思うかもしれない。
だが、このどちらの記事でも、プレイディアの売上台数についての記述は2021年2月11日に書かれたゲーム関連ウェブメディアの記事
を出典としている。そしてその記事には確かに「国内の本体売上は12万台」と書いてあるのだが……この記事は特に関係者に取材などせずにライターが書いたもののようであるし、また記事中の「国内の本体売上は12万台」という記述には何の出典も示されていないのだ。
かつ、このウェブメディア記事が書かれた時点のWikipediaの「プレイディア」の記事
には、何の出典もなしに「売上台数」として「12万台」と書いてあったし、同じく当時の「家庭用ゲーム機の販売台数一覧」のWIkipedia記事
にはプレイディアの売上台数についての情報は載っていなかった。
つまり、上記のウェブメディアの記事における「国内の本体売上は12万台」という記述は、当時のWikipediaの「プレイディア」の記事に書いてあった出典不明な数字を見て書いたものだったという可能性があるのだ。結局のところ「12万台とする出典が不明」ということになってしまうのである。
この記事を読んだ方で、「プレイディアの売上台数について、上記のウェブメディア記事やWikipedia記事以外の信頼できる根拠を持っている」という方がいらっしゃれば、このニコニコ大百科の記事もしくはWikipediaの記事にそれを追記して頂きたい。
バンダイの関連企業であるバンプレストが1996年にリリースした、ゲームセンターなどに置かれた「小さな映画館 みちゃ王」というアーケード筐体があった。
これは「双眼鏡のような覗き口が付いていて、100円玉を投入口に入れてから4つあるボタンの一つを押すと、ボタンに対応した2分~3分程度の短い映像を見ることができる」というもの。
ポストを読み込み中です
https://twitter.com/pekindaq/status/849196249890799617
この「みちゃ王」の中身は、改造されたプレイディアであった。プレイディアのソフト供給が1996年に途絶えて市場としての寿命が終了したことから、余った在庫のプレイディアを流用するものとしてこの筐体を開発したものと思われる。
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https://twitter.com/pekindaq/status/849192688117178368
筐体のオーナーには、「戦隊シリーズ」(『ビーファイターカブト』と『激走戦隊カーレンジャー』)と「セーラームーンスーパーズ」(『美少女戦士セーラームーンSuperS 』)の2種類のディスクが供給された。それぞれのディスクに4種類のショートムービーが収録されているわけである。
これら「みちゃ王」用のディスクは無改造のプレイディアでも再生することができるという情報もある。「みちゃ王」の分解画像などを見ると「プレイディア本体の赤外線受光部の前に、コードで筐体操作部と繋がった赤外線ランプらしきものが置いてある」だけのように見えるので、コントローラーから「みちゃ王の筐体が出すのと同じ赤外線信号」を出すことができたため4種の映像も再生できた、ということだろうか。
(公式サイト。消滅済みのため1997年時点でのアーカイブへのリンク。大企業が全国販売した商品の公式サイトの割にはかなり質素だが、1997年頃当時は大企業でもウェブサイトはなおざりにしていた時代だったようだ)
(なぜか充実している、プレイディアに特化した英語Wiki。プレイディアは日本でしか発売されていないはずなのだがどうやら海外にコレクター/マニアが居るようで、プレイディア関連の貴重品を入手した事をSNSなどで表明するとコンタクトを取ってくることがあるらしい)
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最終更新:2025/12/10(水) 21:00
最終更新:2025/12/10(水) 20:00
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