F-15Eとは、マクドネル・ダグラス社(現:ボーイング社)が開発した第4.5世代の戦闘爆撃機である。
1980年初めの米空軍は、F-111が老朽化していく一方、F-117はまだ第一線に顔を見せ始めたばかりという状況で、手もちの全天候対地攻撃機が不足していた。これを補う中継ぎ役の対地攻撃機としてF-15Eは計画された。[1]
F-15をベースに開発され、試作機の飛行は1986年末で、運用は1989年から行われている。愛称はストライクイーグル(Strike Eagle)で、米軍でもこの名称が使われている。
近接航空支援、航空阻止攻撃などに加え、元々制空戦闘機がベースだった事からF-15Cと共にCAP(Combat Air Patrol:戦闘空中哨戒)にも使用されており、多様な任務をこなすことが可能。
雑多な戦闘機を統一するために開発されたF-111は、戦闘爆撃機として設計されたが、対空戦闘能力は著しく低く、汎用性に欠けており、主な任務とされていた、敵側が航空優勢を確立している地域への阻止攻撃を行なう際は、友軍機による護衛を必要としていた。
また、70年代中期から、順次F-15やF-16に更新されているとは言え、相当数を保有していたF-4は、機体こそ空対空戦闘と対地攻撃の双方に対応していたが、部隊ごとに空対空戦闘か対地攻撃のどちらかを専門としている状態であった。
その一方、ヨーロッパでNATOと対峙するワルシャワ条約機構軍は、従来の質より量を重視した航空戦力から、MiG-29やMiG-31、Su-27等を筆頭とする新世代の航空機を導入や近接航空支援を攻撃ヘリに分担させる等して、航空戦力の量の優位を維持したまま、質の向上を図ろうとしてた。
1981年に縦深阻止攻撃の効率化(同一ミッションに置ける、投入機数削減)を目的とした、ETF(Enhanced Tactical Fighter/強化型戦術戦闘機)プログラムを発表し、マクドネル・ダグラスがベンチャープロジェクトとして開発し、1980年のファーンボローで公開した、F-15B試作機をベースとした、ストライクイーグルが提案され、GD社が自費開発していた、F-16 SCAMP (Supersonic Cruise and Maneuver Prototype/超音速巡航改造機)を転用する形で提案された、F-16XLとの比較を行なった結果、開発コストでは同レベルであったが、機体性能と任務適合性が優れて居た事、F-16は低価格であるが故に、米空軍は無論、海外への輸出も順調であるが、当時の予定では、84年度会計で、在来型F-15の生産が終了し、マクドネル・ダグラスと空軍の大口の取引が無くなる事も考慮された結果、マクドネル・ダグラス案がF-15Eとして採用されたが、この年に大統領に就任した、ロナルド・レーガン政権下での軍拡により、在来型F-15の生産もしばらく継続される事になった。
この機体の原型機は、F-15の複座型試作機である71-0291(2機目の訓練型試作機の略称であるT2もしくは、試作の通しナンバーで12号機と呼ばれる事もある)をベースに、コンフォーマルタンク(後述)の装備とMER-200を介して爆装を施し、コクピットのグラスコクピット化やレーダーの機能拡張等と言った、装備品を変更し、原型機の機体構造には手を加えない物であった。
また、採用決定時の計画では、F-4を装備する部隊をF-15Eへと機種転換し、F-15Eの転換作業の終わる90年代中期から、F-111をATA(発達型戦術機)で採用されたA-12に転換すると言う計画を立てていたが、冷戦終結による軍縮と開発費高騰でA-12の開発が放棄されたため、なし崩し的にF-111の後継機となった。
外見はF-15Dに似ているが、構造は約60%が再設計されている。疲労寿命は16000時間に延長され、9Gの機動に耐えられる他、バードストライクを想定して、風防ガラスも特別に強化された。最大離陸重量は30845kgから36741kgに増大し、最大11100kgの武器を搭載する。乗員は前席のパイロットと後席のWSO(兵装システム士官。「ウィッゾー」と発音する)で、WSOはパイロットの訓練は受けていないが、兵装の正確な投下と機体を守る各種防御手段(電子妨害・チャフ・フレア)に専念するので、パイロットは機体を飛ばすことに集中できる。[2]
コクピットや計器類も一新されており、ブラウン管ディスプレイ3つと、中央に航空機で言うCDU(コントロール・ディスプレイ・ユニット:入力装置)を装備し、後部座席には4つのモニターが配置される等、アナログ計器が多かった従来型よりデジタル化された。
アップデートの容易性も健在であり、米軍所属機はAESAレーダー(アクティブ電子走査アレイ)に換装される予定。赤外線画像に取る識別と夜間でもレーザーによる目標が行えるLANTIRNやスナイパーXRも搭載可能。レーダーもC型までのAN/APG-63レーダーの発展型で、合成開口モードも使用できるAN/APG-70レーダー(後にAN/APG-63(V)1に変更)を装備しており、全天候での極めて高い精密攻撃能力を有する(のちにC/D型の一部やA/B型MSIP I改修機も同一のレーダーに換装、接続した計器パネルによりC/D型やMSIP I改修機のレーダーかE型のレーダーとして作動するかを選択する)。
また、F-15EはF-15とは違い、主に爆撃任務に投入される故にドロップタンクより燃料を搭載できるコンフォーマルタンクを標準装備している(外すこと自体は可能。またC型およびD型も装備可能)。その為、従来型と違いサイドが丸くなっている。このタンクには武装を搭載できるハードポイントもある為、武装搭載可能数も19箇所と多い。
F100とF110の双方に対応可能な、F-16C/Dと共通のエンジンベイを持つが、初期生産型は、F-15Cと同じF100-PW220エンジンを装備し、間もなく推力強化型のF100-PW229エンジンに換装された。イスラエルやサウジアラビアも米空軍形に準じる形で、F100を搭載するが、K型とSG型はF110-GE129を装備する。なお、現在アメリカの戦闘機で地中貫通爆弾であるGBU-28ディープスロート(5000ポンド(=2,273kg)爆弾)を搭載できる戦闘機はこのF-15Eのみである。
F-15Eをベースにステルス性を向上させる改修を施したもので、「F-15サイレントイーグル」として2009年にボーイング社から発表された。
ロッキード・マーティン社のF-35が米国内だけでなく海外からも受注を増やしていることに危機感を覚えたボーイング社が独自に試作したもので、レーダー反射の主な原因である外部搭載兵器はコンフォーマルタンク内に設けたウェポンベイに移動し、電波発振源となるレーダーを使わずに済むパッシブ式の赤外線センサーを追加、機体の前面部にレーダー吸収剤をコーティングした。ボーイングは当初、この機体の前面RCSはF-35と同程度になった、と主張していた。[5]
さらにF/A-18E/Fのように、二枚の垂直尾翼を15°傾けることでステルス性向上を図ったとされる。他にはAESAレーダー(米軍のF-15Eで搭載中の奴と同等)、TEWS、デジタルフライバイワイヤを採用した。
主なマーケットはアメリカ以外のF-15運用国で、特に韓国に売り込んでいた。日本のF-Xにも売り込んだが、日本はF/A-18Eの方に興味があったらしく、選考の結果、最終候補はF-35、F/A-18E、EF-2000の三機種に絞られ、候補機から外れた。
1991年の湾岸戦争が初陣。主に航空阻止任務を行っていたが、F-16にかわる形で、タンクプリンキング戦術やスカッド狩りにも投入された。
これは、A-10やF-16と言った戦術機も、演習場ごとの気象条件を始めとする、ノウハウを蓄積しているアメリカ本土での演習データを基準に、高高度から投下された無誘導爆弾でも効果的な攻撃が可能と判断し、地対空兵器による損害をさけるためのROE(Rules of Engagemen/交戦規定)が定められたが、90年の終わりから91年の戦争終結までを通じて、ペルシャ湾湾岸地域は、数十年に一度のレベルでの悪天候とそれに伴う強風に阻まれる形で、CAS(Close Air Support/近接航空支援)やBAI(Battlefield Air Interdiction/戦場航空阻止)は困難を極めていた。
戦術機として鈍足の部類で、高度な電子機器を搭載していなかったA-10は、高い稼働率やイラク側前線部隊の対空火器が貧弱であった事から、CASでは活躍できたが、イラク側の対空兵器が比較的充実しているBAIでは、被弾による損傷や被撃墜の多さによって、この分野の任務から外される事となった。
一方F-16は、A-10がBAIから抜けた分を分担する事となったが、湾岸戦争当時のF-16の多くは、単独でレーザー誘導爆弾を使用した爆撃を行なう事が出来きず、一部の機体がLANTIRNを使用したレーザー誘導爆弾の自力運用能力を保有していたが、AN/AAQ-14が生産の遅れから、F-15Eに優先的に供給されていた為、通常の爆弾を使用する事になり、爆撃の成果は芳しい物ではなかった。
この為、F-111と共に戦線後方の重要施設に加え、BAIにも投入さたが、夜間に赤外線画像を使用した目標識別が容易な事が発見された為、夜間に集中投入され、レーザー誘導爆弾を使用した爆撃で、大きな戦果をあげた。
変わりどころではホバリング中のヘリコプター2機を低空からレーザー誘導爆弾を投下することによって「撃墜」という珍しい事件もおこった。
一方被撃墜は2機。1機はAAA(対空砲火)の餌食になり、もう1機はSA-2ガイドライン地対空ミサイルによって撃ち落とされた。両機のパイロットとWSOはベイルアウトして無事であったが、SA-2に撃墜された方の2人は捕虜となった(停戦後に無事解放された)。
2003年のイラク戦争にも投入され、対地攻撃で活躍したがここでも1機AAAによって撃墜されている。
ニコニコでは、特にエースコンバット6の主人公であるタリズマンの機としてパッケージ機体となっている事から知名度は高い(なお、パッケージに同じような機体が描かれている「エースコンバットZERO」はF-15C)。 また、アイドルマスターの如月千早の痛戦闘機がこの機種であるため、こちらも名が通っている(通称「ストライくっイーグル」)。
掲示板
60 ななしのよっしん
2019/08/19(月) 12:11:29 ID: n+VdaCbXuS
照準ポッドと航法ポッド、それにCFTのハードポイントを埋め尽くす量の爆装吊り下げてる姿が好き
レーダー反射や空気抵抗を抑える為に爆弾庫に収めるのが有利だし最近の流行りだけど、敢えてステルス全盛の時代に搭載量で挑んでいくアメリカ的マッチョイズムを感じる
61 ななしのよっしん
2019/11/05(火) 14:55:10 ID: ubXlbt1/bS
62 ななしのよっしん
2020/12/15(火) 19:23:49 ID: LcQntv5PZt
実際よくあんなに積んで翼が捥げないなと思いますわ
そりゃ、実際ちょっとやそっとじゃ折れないようにしてあるのはわかってはいるし、F-15は翼がクソでかいのは知識としてしってはいるんだが…
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最終更新:2023/09/23(土) 11:00
最終更新:2023/09/23(土) 11:00
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