フォアゴー(Forego)とは、1970年生まれのアメリカの元競走馬である。
長きにわたり一線級を走り続けたアメリカ競馬史上の名騸馬(セン馬。去勢された馬)の1頭で、人呼んで「史上最強のハンデキャップホース」。「20世紀のアメリカ名馬100選」では8位。
馬名は両親の名前の合成。
父Forli、母Lady Golconda、母父Hasty Roadという血統。
よくわからんが、父フォルリはアルゼンチンの名馬にして種牡馬としても活躍した一流馬で、日本でもわかりやすいところだとNureyevの母父である。またセイウンスカイが直系のひ孫だったりする。
母レディゴルコンダは近いところはいまいちパッとしないが、Rachel Alexandraが現れるまで85年間にわたって最後のプリークネスS優勝牝馬であったNellie Morseを高祖母に持つ。母父ヘイスティロードは1953年の最優秀2歳牡馬で、翌年のプリークネスSも勝っている。
とにかくでけえ馬で、体重が1225ポンド(約556kg)もあったという。どれくらい大きいかと言うとビッグレッドと言われたSecretariat(実は同期)が1175ポンド(約533kg)である。身体検査をした獣医師も「こんな立派な馬は見たことがない」と驚いたほどの馬体だった。なんでも草だろうが麦だろうが人の手だろうが関係なく食べようとするほど食欲旺盛だったらしい。しかし馬体がデカすぎて慢性的な脚部不安を抱えており、おまけに神経質で女好きというとんだ気性難を抱えていた。この気性はなかなか改善されず、業を煮やした馬主の指示で2歳にして早々と去勢されてしまった。しかしこの去勢の効果はてきめんで、えらく「シャイな馬」になったらしい。オカマになったのか?
デビュー2戦目を8馬身差で圧勝し、続く一般競走も勝ったが、ハッチソンS(GⅢ)では2着。次の一般競走を勝って迎えたフロリダダービー(GⅠ・9ハロン)で2着となったが、ブルーグラスS(GⅠ・9ハロン)では1番人気を裏切り5着に敗れた。その後ケンタッキーダービーに出走したが、道中でラチに衝突したこともありSecretariatとShamの遥か後方で4着に終わった。
その後はプリークネスSを回避してマイルのGⅡウィザーズSに進んだがここでも3着に敗れ、しばらく一般競走を中心に使うことになった。その手始めにベルモントパーク競馬場の8.5ハロン戦を9馬身差で圧勝したが、この日のメインレースのベルモントSをSecretariatが31馬身差で大勝したため、本馬の勝ち方ですら目立たなかった可能性は否めなかった。
夏の休養を挟み、休養明け初戦を3着とした後、4連勝を記録してジェロームH(GⅡ)に出走したがアタマ差2着。続く一般競走でも3着となった。
この時期に本馬を管理していたシェリル・ワード調教師が体調を崩し、彼を手伝っていたエディ・ヘイワード師が代理で本馬の管理を行うことになった。それが相当合っていたのか本馬はここから覚醒の兆しを見せ、ローマーH(GⅡ)を5馬身差で圧勝して重賞初制覇を挙げると、続くディスカヴァリーH(GⅢ)をレコード勝ちしてシーズンを終えた。
4歳になっても勢いは止まらず、ドンH(GⅢ)とガルフストリームパークH(GⅡ)を連勝。久々のGⅠ挑戦となったワイドナーH(GⅠ・10ハロン)もあっさり勝利し、瞬く間にGⅠ馬に上り詰めた。
カーターH(GⅡ)では重賞未勝利ながら快速の誉れ高かった後の大種牡馬Mr. Prospectorを鋭い差し脚で撃破。年度代表馬5年連続受賞など数々の記録を持つ13歳上の騸馬の大先輩・Kelsoに次ぐニューヨークハンデ三冠(メトロポリタンH、ブルックリンH、サバーバンH)に挑戦することになったが、134ポンド(約60.8kg)を背負った初戦のメトロポリタンHでいきなり2着に敗戦してしまった。その後ナッソーカウンティH(GⅢ)でも2着だったが、続くブルックリンH(GⅠ・9.5ハロン)を勝利しGⅠ2勝目とした。
サバーバンH(GⅠ・10ハロン)では3着、ガヴァナーS(GⅠ・9ハロン)では4着、マールボロカップHでは3着と連敗したが、続くウッドワードS(GⅠ・12ハロン)を勝ち、ヴォスバーグH(GⅡ・7ハロン)も勝つと、次走はジョッキークラブゴールドカップとなった。このレースは16ハロン戦(当時)なのでよく見るとタケシバオーかお前はと思うようなローテになるのだが、フォアゴーは倍以上の距離延長をあっさりクリアし勝利を収めた。
ヴォスバーグH(現在の名称はヴォスバーグS)とジョッキークラブゴールドカップを両方勝ったのはジョッキークラブゴールドカップが10ハロン戦になった現在に至るまで本馬だけであり、ヴォスバーグSが2004年に6ハロンになったので達成馬はほぼ出そうにない。強いて言えばヴォスバーグSとBCクラシックを勝ったGhostzapperくらいはチャンスがあった感じがしないでもないが。
閑話休題、この年は13戦8勝。エクリプス賞年度代表馬、最優秀古馬牡・騸馬、最優秀短距離馬となった。16ハロンのGⅠを勝って最優秀短距離馬に選ばれたというのがこの馬の恐ろしさを端的に体現していると言えよう。
5歳時はセミノールH(GⅡ)・ワイドナーH・カーターHを連勝し、前年に続いてメトロポリタンHからニューヨークハンデ三冠に挑んだが、136ポンド(約61.7kg)が祟ったか3着に敗れ、またしても初戦で三冠を逸した。しかし、続くブルックリンH(この年から10ハロン)では132ポンド(約59.9kg)を背負い、レコードを0.2秒更新する1分59秒8の時計で勝利した。このレコードは、1913年に史上初のニューヨークハンデ三冠馬Whisk Broomが139ポンド(約63kg)を背負って記録したことから長年議論の的になっていた曰く付きの記録であった。
続くサバーバンH(この年から12ハロン)では134ポンドで勝利したが、ガヴァナーSではGⅠ連勝中の3歳馬Wajimaが本馬より19ポンド(約8.6kg)も軽い115ポンドで出走してきて、同馬の4着に敗退。GⅠに昇格したマールボロカップ招待HでもWajimaのアタマ差2着だったが、定量戦のウッドワードSでは実力を見せてWajima以下を破り連覇を遂げた。
その後ジョッキークラブゴールドカップを負傷で回避したため、5歳時は9戦6勝となった。2年連続でエクリプス賞年度代表馬と最優秀古馬牡・騸馬を受賞した。
なお、療養中だったシェリル・ワード師がそのまま引退したため、シーズンオフにフランク・ホワイトリー・ジュニア師の元に移った。
6歳時はこれまでと異なり5月に入ってからベルモントパーク競馬場の一般競走で始動し、ここを勝ってメトロポリタンHに挑むと三度目の正直で勝利を収めた。しかし、ナッソーカウンティSを勝って挑んだサバーバンHでは前年のケンタッキーダービー馬Foolish Pleasureにハナ差で敗れ、またも三冠を逃した。続くブルックリンHではFoolish Pleasureに雪辱し勝利したものの、エイモリー・L.ハスケルHでは3着に終わった。
続くウッドワードSでは、これまで多くのレースで騎乗したエリオドロ・ガスティネス騎手からウィリアム・シューメーカー騎手に乗り替わった。
このレースは多くの年は定量戦だが時折ハンデ戦になることがあり、この年もそうであった。対抗馬筆頭は2歳~3歳春にGⅠ6勝を含む9連勝を挙げてケンタッキーダービーでは単勝1.4倍となり(2着)、夏にトラヴァーズSを勝利した3歳トップホースの1頭Honest Pleasureであったが、定量戦であれば6ポンド(約3kg)差となるところ、フォアゴーが135ポンド(約61.2kg)に対してHonest Pleasureが121ポンド(約55kg)という対戦となった。しかし最終的にフォアゴーが勝ってKelso以来2頭目の3連覇を達成し、Honest Pleasureは1馬身1/4+4馬身差の3着であった。
2週間後のマールボロカップ招待Hは不良馬場となった上、斤量はフォアゴーが過去最高の137ポンド(約62kg)、Honest Pleasureが119ポンド(約54kg)と更に差が広がった。軽量を活かして逃げるHonest Pleasureの脚は中々止まらなかったが、シューメーカー騎手が負けを覚悟した直線入り口から鋭く伸び、残り1ハロン地点から猛然と追い込んでHonest Pleasureに迫ると最後はアタマ差交わして勝利した。
5歳時は8戦6勝で、年度代表馬と最優秀古馬牡・騸馬を3年連続で受賞した。また、デイリーレーシングフォーム社のレーティングで前年のタイ記録の136ポンドを上回る単独最高記録の140ポンドを記録した。
7歳時も前年と同じく5月のベルモントパーク競馬場の一般競走で始動し、メトロポリタンHとナッソーカウンティHを勝ったが、サバーバンHでは138ポンド(約62.6kg)という酷量が流石に辛くクビ差の2着に敗れ、結局ニューヨークハンデ三冠とは無縁に終わった。
続くブルックリンHも137ポンドで前年のジョッキークラブゴールドカップ勝ち馬Great Contractorの11馬身差2着に完敗し、ホイットニーHでは不良馬場もあって7頭立ての7着と久々に大敗した。
ウッドワードSは前年に続いてハンデ戦となった。本馬は133ポンド(約60.3kg)だったが、ブルックリンHで本馬に11馬身差を付けたGreat Contractorは115ポンド(約52.2kg)という軽量だった。しかも不良馬場ということで、本馬にとってはかなりタフなレースとなった。
レースは前走スワップスSで快速を武器に三冠馬Seattle Slewのハナを叩いて逃げ切っていたJ.O. Tobinが逃げたが、そのスワップスSで同馬に騎乗していたシューメーカー騎手が上手く仕掛けて3角から直線にかけて全馬を抜き去り、そのまま先頭でゴールまで駆け抜け現在でも史上唯一の4連覇を達成。この年7戦4勝でシーズンを終え、年度代表馬こそSeattle Slewに譲ったものの、最優秀古馬牡・騸馬は4年連続で受賞した。
8歳時も現役を続行したが、初戦の一般競走を勝った後のサバーバンHで6頭立て5着に敗れ、レース後脚に骨片が見つかり引退となった。Seattle SlewとAffirmedの三冠馬対決となったマールボロカップ招待Hの当日に引退式が行われた。
通算成績は57戦34勝、2着9回3着7回。3歳1月のデビューから8歳の引退まで、脚部不安と戦いながらも頑健に走り続けた。最後の勝利は8歳初戦なのでどこかで衰えたわけでもない。巨漢馬だけに仕上がりにはやや時間を要したが、本格化した4歳以降は常に一線に立ち続けた。GⅠ競走も14勝しているから超一流である。人気も絶大で、「Forego Forever」とプリントされたTシャツが流行したらしい。
実績馬の宿命として、酷な斤量を課されてしまう点が挙げられる。今でこそかなり緩和されているが、昔はそりゃもうひどいものだった。フォアゴーの生産所有者も「強い馬はハンデを覚悟して挑戦を受けなければいけない。それがハンデ戦というものです」という発言を残している。
この馬も御多分に漏れず、130ポンド(約59kg)以上の斤量を24回も背負わされている。しかしこの馬はデカかったこともあってか斤量を苦にせず、13勝2着6回、入着率87.5%を記録した。生涯の入着率が87.7%なので、この馬に斤量は関係なかったようである。記事の冒頭で「史上最強のハンデキャップホース」と書いたゆえんである。ただ巨漢馬の宿命か、重馬場は非常に苦手だった。
本馬の脚部不安は生涯つきまとった。調教師のケアもあって大きなケガはせずに済んだが、特に引退直前には骨の石灰変性が進んでおりいつ粉砕してもおかしくない状況だったという。「(比較的健康だった)左後脚1本だけで走っていた」とか「最も健康に問題を抱えた馬の1頭」とか言われるほど脚に問題を抱えていた。そんな状況で最大138ポンドも背負わされて、よくぶっ壊れなかったものだ……。
アメリカの騸馬の中でもKelsoと双璧をなす存在であり、比較されることも多い。まあKelsoはこの馬以上に現役が長く、5年連続年度代表馬というわけわからん記録を打ち立てた、人によっては米国史上最強馬に推す人もいるほどの名馬なのであんまり勝てる気はしないけど。
ちなみにKelsoはフォアゴーの13歳年上であるが、1983年のジョッキークラブゴールドカップ(Kelsoは5連覇、フォアゴーは1勝)で顔を合わせ、レース前に共に行進している。このレースに出走予定だった、80年代最強騸馬John Henryもこの行進に参加したらしい。最強騸馬3世代揃い踏みだなんて、ファン垂涎の光景だっただろう。Kelsoがこの翌日に他界してしまったため、彼との邂逅は一度きりだった。
引退後はケンタッキーホースパークで余生を送った。1984年には上記のJohn Henryも引退して当地に移り住み、2頭を見に多くのファンがやってきたという。パークではバナナを好物として食べていたそうである。
1997年、骨折のために27歳で安楽死の措置が取られた。今もその名はGⅠフォアゴーステークスとして残っている。ちなみにフォアゴーSはダート7ハロンで、中距離GⅠが中心のフォアゴーとは合わないように思えるが、単に当時は競走体系として短距離GⅠがなかっただけで、Mr.Prospectorを打ち破ったカーターH(1988年にGⅠ昇格)を始めとしてダート7ハロンは7勝と、地味にフォアゴーの得意分野だったりする。
| Forli 1963 栗毛 |
Aristophanes 1948 栗毛 |
Hyperion | Gainsborough |
| Selene | |||
| Commotion | Mieuxce | ||
| Riot | |||
| Trevisa 1951 栗毛 |
Advocate | Fair Trial | |
| Guiding Star | |||
| Veneta | Foxglove | ||
| Dogaresa | |||
| Lady Golconda 1958 黒鹿毛 FNo.9-f |
Hasty Road 1951 鹿毛 |
Roman | Sir Gallahad III |
| Buckup | |||
| Traffic Court | Discovery | ||
| Traffic | |||
| Girlea 1951 鹿毛 |
Bull Lea | Bull Dog | |
| Rose Leaves | |||
| Whirling Girl | Whirlaway | ||
| Nellie Flag | |||
| 競走馬の4代血統表 | |||
クロス:Sir Gallahad III=Bull Dog 4×4(12.5%)、Lady Juror 5×5(6.25%)
掲示板
1 ななしのよっしん
2017/07/05(水) 17:15:36 ID: 35V9iR1VxB
2 ななしのよっしん
2019/08/02(金) 05:01:17 ID: dJsX4suQLK
フォアゴーとケルソは両方共ハイペリオン系この2頭がセン馬じゃなく種牡馬になってればハイペリオン系は絶滅寸前にならなかったかもしれない…
3 ななしのよっしん
2024/11/27(水) 16:44:56 ID: sqgpDQhl11
キングケリーは血統が種牡馬として振り向かれやすくないし
フォアゴーは馬っけ強いからちょん切られたんで、付いたままなら集中欠いてレースに勝てなくなったんじゃなかろうかw
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/30(火) 02:00
最終更新:2025/12/30(火) 01:00
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