どうして私が美術科に!?とは、まんがタイムきららMAXで連載されていた相崎うたうによる4コマ漫画である。
略称は「どうびじゅ」
はじめに
この記事を開いた人は大きく分けて次の2種類に分かれるのではないだろうか。
①:『どうびじゅ』を読んだことがあり、ニコニコ大百科でどうびじゅがどのように紹介されているのか気になって開いた人。
②:『どうびじゅ』を読んだことが無く、どのような作品か調べようとして開いた人。
①の人はこの章を読み飛ばして、そのまま「概要」から読み進めていただきたい。
②の人に関してだが、まだ『どうびじゅ』を知らないあなたはこの記事を読む前にニコニコ漫画で公開されている1~6話に目を通して、どうびじゅがどのような作品なのか自分の肌で感じ取っていただきたい。
6話まで読んで続きが読みたい!と思ったのであれば、単行本を購入するには十分な動機である。まぁ、安い買い物ではないので無理にとは言わないが……
それでは『どうして私が美術科に!?』の記事の本題に入ろう。作品紹介の都合上、一部ネタバレを含んでいるので未読の方はご注意いただきたい。
概要
2016年3~5月号でゲスト掲載、同年6月号~2019年5月号まで連載。
担当さん曰く、タイトルは某学習塾のキャッチコピーのオマージュでつけられたとのこと。
願書の書き間違いから普通科と間違えて美術科に入学してしまった桃音。美術知識の無さから毎日のように「美術X室」で居残りをすることになるのだが、そこで黄奈子ら他の居残り組と出会う。美術が好きではなかったという黄奈子にやんちゃ娘の蒼、そしてどこかズレている紫苑と謎の留年生翠玉。美術科生として不完全な5人だが、進級&卒業を目標に力を合わせて楽しく頑張っていく様子を描いている。
登場人物は皆現実離れした性格や能力を持っておらず、完全に等身大の高校生として描かれている。等身大であるがゆえに、不完全なところも余すことなく描かれている。タイトルにあるように、各々が心の中にそれぞれの「どうして」を持っており、その悩みと向き合って乗り越えていく様子が本作のポイントとなっている。
また、作品を通して描かれる登場人物同士の関係性の深さの変化も本作の見どころとなっている。中でも「桃音×黄奈子」「蒼×紫苑」の2組は特に人気が高い。
そして、本作を特徴づける言葉として「尊い」がよく挙げられる。言語化するのが非常に難しい感情だが、本作を通じて「尊い」という思いを一片でも感じられたのであれば、それだけでも『どうびじゅ』を読んだ価値は十分にあると言えよう。
登場人物
主要人物の苗字は日本で有名な画家の名前が由来となっている(酒井抱一、竹内栖鳳、河鍋暁斎、浦上玉堂、菱川師宣)。
- 酒井桃音(さかいももね)
- 1年7組。美術科に入ったことに入学式まで気づかなかった主人公。
そのため美術の技術も知識もそれ相応。普通科へ異動する相談もアホすぎるのでできなかったが、居残り組の仲間達と出会い美術科でやっていくことを決意する。絵をメルヘンっぽく描いてしまう癖がある。花型の髪飾りがトレードマーク。
彼女の向き合う「どうして」はタイトル通り「どうして私が美術科に!?」。願書の間違いで入ってしまった美術科だが、仲間とともに美術科で進んでいくのか、それとも普通科に転入するのか。事あるごとに進路に悩み揺れ動いていく彼女の心情を描きながら本作は進んでいく。 - 竹内黄奈子(たけうちきなこ)
- 1年7組。いつも眠たそうにしている。
目つきが悪く怖そうに見えるが意外とノリがよく、たびたび桃音をいじって楽しんでいる。実は好きで美術科に入ったわけではないのだが、桃音と出会ったことで美術に対する向き合い方が変わりそうな気がしている。居残り組を「Xanadu」と名付けた張本人でもある。
彼女の向き合う「どうして」は「周囲の期待と自分の本音」。自分は美術がそこまで好きではないものの、美術好きな母親の押しに負けて美術科に進学した彼女。桃音とは違う理由で不本意ながら美術科にいる彼女だが、自分なりの美術科にいる意味を見出し、自分の気持ちと向き合った作品を作るようになっていく。 - 河鍋蒼(かわなべあおい)
- 1年8組。面白いことと食べることと動くことが大好き。
体力に自信があり、いつも全力で場をかき乱すムードメーカー。ことあるごとにボケてはいつも幼馴染である紫苑の手を焼いているが、何も考えていないわけではないらしい。美術の成績はXanaduの中では一番いいが、他の教科は壊滅的。
彼女の向き合う「どうして」は「美術と向き合い続ける目的」。実は彼女が美術科に通うのを決めたのは紫苑に振り向いてもらうためであって、そのために美術と向き合っていた。しかし紫苑と本音を打ち明け合うことによって、この思いに変化が生じる。 - 浦上紫苑(うらがみしおん)
- 1年8組。蒼とは幼馴染でいつも一緒におり、関西弁を話す。
美術に対する情熱は強く、特にキュビズムが好きで彼女の作風にも影響している。普段は蒼との夫婦漫才でツッコミ役をしていて常識人に見えるが、時々蒼以上に暴走してしまい「なんかズレている」言動をとってしまう一面もある。
彼女の向き合う「どうして」は「身近な相手に対する嫉妬」。年下や同い年で自分より絵が上手い人を見るとすごいと思うのと同時に嫉妬の念が浮かび、自身もそれに嫌気がさしていた。特に最も身近でかつ天性の才を持つ蒼に対してはその念が非常に大きく、彼女の心の底で大きな影響を与えている。 - 菱川翠玉(ひしかわすいぎょく)
- 1年7組。中学では黄奈子の1つ上の先輩だったが、留年したため同級生になっている。
普段は「美術X室の妖精すいにゃん」として美術X室のだるまの中に入って授業をサボりながら過ごしている。絵の技術は高いものの擬人化して描く癖があるため先生によく叱られる。親は学園の理事長で、家は高校のすぐ隣にある。語尾に「お」をつけるのが口癖なんだお。
彼女の向き合う「どうして」は「主人公になれない自分」。家族には内緒でこっそり漫画を描いては雑誌に投稿している彼女だが、一番の賞はもらえず苦杯をなめる経験をしてきた。自身をモデルにした主人公は描けるのに、自分自身は主人公になれない。一時は自暴自棄になり、文字通り殻にこもってしまうのだが…… - 鈴木朱花(すずきしゅか)
- 1年1組。普通科で美術部に所属。
桃音とは中学時代からの友人で、「しゅーちゃん」「もも」と呼び合う仲。しかし高校が同じだったことは体育祭まで気づかなかった。天然で女たらしな性格だが、桃音に対する思いやりの念は強い。
彼女の向き合う「どうして」は「間違えたくない気持ち」。両親の気持ちに応え、美術科を諦めて普通科に進学したという、桃音とは真逆の立場にいる存在。人生を間違えたくない思いで普通科に進み順風満帆な日々を過ごしている彼女だが、桃音たちは本心の扉を開けようとする。 - 岡本玄恵(おかもとくろえ)
- 1年7組担任。生徒達からは「くろえちゃん」と呼ばれているが、実は生徒のことを怖がっているので直そうとしている。
- 高村白雪(たかむらしらゆき)
- 1年8組担任。いつもお嬢様口調で話し、生徒達に授業開始時毎回「ごきげんよう」と言わせている。岡本玄恵とは性格が正反対だが、大学の同期からの親しい付き合い。
- 河鍋すず乃(かわなべすずの)
- 2, 3年生を担当する非常勤講師。蒼の母親。紫苑が高校を選んだのは彼女に憧れてのことだったが、「K. Suzuno」名義でしか知らなかったため蒼の母親とは思ってもみなかった。
どうびじゅの年表
2015年
3月19日発売のきららMAX2015年5月号にて相崎うたう先生の『つぼみアレンジメント』がゲストとして第1話掲載。扉絵のキャッチコピーは「新鋭・相崎うたうが心を込めて送る きららMAXデビュー作フレッシュゲスト第1話!」。華道部を舞台にした部活もの4コマ漫画である。
のちにねとらぼの記事(後述)で語ったところによると、中3の11月にきらら編集部に持ち込みをして、翌年の3月にゲスト掲載されたという事実が語られている。
つぼみアレンジメントは2015年5月号、6月号、7月号、9月号、12月号の5回にわたってゲスト掲載されたが、この時は連載化は成らなかった。
2016年
1月19日発売のきららMAX3月号にてゲスト1話をセンターカラーで掲載。ちなみにこのときのきららMAXは『ステラのまほう』が初めて表紙を飾った号でもある。思えば両作品の縁はこの頃からあったのかもしれない。
ゲスト掲載での好評を受けて、6月号(4月19日発売)から改めて連載開始。
夏コミ(C90)ではまんがタイムきららブースにて頒布された企画本『まんがタイムきらら異能力(フォース)』に参加している。
なお、きららMAX12月号(10月19日発売)にてどうびじゅの他に、『ステラのまほう』アニメ放映に際して『ステラのまほう アフレコレポート』を担当し掲載している。その翌月(11月26日)に発売された『ステラのまほう アンソロジーコミック』1巻にも漫画を寄稿している。
2017年
3月27日、待望の単行本1巻が発売。
発売と同時に「『どうして私が美術科に!?』第1巻発売記念フォロー&RTキャンペーン」が実施され、無事に目標の2,000RTを達成している。当該ツイートを今見たら2000を切っているが気にしない
なお、このキャンペーンで公開が決まった描き下ろし漫画「桃音のバースデー」は現在でもまんがタイムきららWebのトップページから見ることができる。
夏コミ(C92)では企画本『まんがタイムきららせんせぇ!』に参加している。余談だが、芳文社はこの年を最後にコミケへの企業参加をやめている。
年末の「4コマオブザイヤー2017」新刊部門では見事1位を獲得。これにより過去に受賞経験のある『NEW GAME!』『まちカドまぞく』『おちこぼれフルーツタルト』といった人気作品にどうびじゅが名実ともに肩を並べることとなった。
また、本作の大ファンであり『ステラのまほう』作者のくろば・U先生は冬コミ(C93)にて桃音×黄奈子本を頒布している。
2018年
4月26日に単行本2巻を発売。帯にはくろば・U先生による「こんな尊い4コマ見たことない……(感泣)」というコメントが寄せられた。
また、発売と同時にTwitterアイコン第2弾を配布している。
5月8日にはCOMIC ZIN主催のWebサイン会を開催。冊数は50冊で、予約は先着順で行われたものの予約開始わずか30秒で締め切られるという驚異の人気っぷりを見せつけた。
「次にくるマンガ大賞2018」ではノミネート40作品に選出(受賞には至らず)。
「4コマオブザイヤー2018」既刊部門ではまちカドまぞくに次いで2位を受賞。
そして冬コミ(C95)では有志による176ページにも及ぶ大ボリュームの合同誌が頒布され、即完売するという人気っぷりを見せつけた。
SNS上でもどうびじゅの話題は常に絶えることがなく、この人気は今後ますます大きくなっていくだろうとファンの誰もが信じていた。
2019年
2月19日、まんがタイムきららMAX4月号を読んだどうびじゅファンに激震が走る。
あまりにも突然かつ早すぎる終了に衝撃を受けたファンは少なくなかった。
そして迎えた3月19日。最終回が掲載されたきららMAX5月号を読んだファンの想いはそれぞれで、完結を祝う人もいれば、終了を惜しむ者、編集部に怒りを覚える者などもおり、さまざまな感情が渦巻いていた。また、くろば・U先生は最終回の公開直後に以下のような素晴らしすぎるファンアートを投稿している。
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/cloba_____U/status/1107663241197477888
しかし、どうびじゅの勢いは連載終了と同時に消滅するほどヤワなものではなかった。
4月25日に最終巻となる第3巻が発売。同日にTwitterアイコン第3弾が配布され、くろば・U先生との対談インタビュー記事も公開された(なお、くろば先生はこの対談に「どうびじゅトークと打ち切りに対する怨嗟を語るために赴いた」と語っている)。
「百合漫画大賞2019」では143作品中21位にランクイン。講評では「非常に熱いコメントが特に多い」と評されており、ファンの熱意の高さを物語っている。
「4コマオブザイヤー2019」既刊部門では昨年同様まちカドまぞくに次ぐ2位を受賞した。
冬コミ(C97)ではくろば・U先生による蒼×紫苑本が頒布された。
なお相崎うたう先生はどうびじゅの連載終了後、年内にコミックキューンおよびまんがタイムきららMAXにゲスト作品を掲載しているが、どちらも連載には至っていない。
2020年
6月9日発売のまんがタイムきらら200号記念小冊子を飾る作品にどうびじゅが大抜擢される。掲載された一枚絵はXanaduの6人が美術X室でパーティを開いている様子で、黒板には「みんなで合格!めざせ卒業!!!!!!」の文字が。連載が終わっても、物語が続いていることが示された瞬間であった。
7月半ばには芳文社の対象の電子書籍が1冊77円という頭おかしいセールが実施され、どうびじゅもラインナップに選ばれた。このセール中、どうびじゅはアニメ化作品を押しのけCOMIC FUZの売り上げランキングで10位を記録するという快挙を成し遂げた。
そして、11月には相崎うたう先生の待望の新作である『瑠東さんには敵いません!』がまんがタイムきららMAXで連載スタート。しかし、ファンの中には新作にシフトすることで『どうびじゅ』が完全に過去の作品になってしまったのではないかと危惧する人もいたのだが――
2021年
3月19日、相崎うたう先生のTwitterに「おめでとう!!!!!!」の文と共にXanaduの6人が卒業証書を掲げるイラストが投稿される。この日はきららMAXでどうびじゅの最終回が掲載されてからちょうど2年が経った日で、最終回を読んだ人ならこの日付が何を意味しているのか分かるだろう。
Xanadu6人の卒業。これは紛れもなく『どうびじゅ』が真の意味で完結した瞬間であった。
初登場から5年と2ヶ月。連載中も、連載終了後も、『どうびじゅ』は多くの読者に愛され、そして希望・夢・勇気・ときめきを与え続けてくれた。
関連動画
関連静画
関連商品
関連項目
- まんがタイムきららMAX
- 芳文社
- 相崎うたう
- 4コマ漫画
- 漫画作品一覧
- ステラのまほう(作者くろば・Uが早くから本作を評価しているなど色々と縁がある)
- こみっくがーるず(相崎うたうは公式Twitter企画「日刊こみっくがーるず」土曜日担当で、本アカウントから「リアルこみっくがーるずまんが家」と紹介されている)
- 次にくるマンガ大賞(2018年ノミネート作品)
- つぼみアレンジメント
- 瑠東さんには敵いません!
外部リンク
- 相崎うたう(pixivのサイト)
相崎うたう(Twitterのアカウント)※2022年10月に謎の理由で凍結- 「どうして私が美術科に!?」フォロー&RTキャンペーンサイト
- どうして私が美術科に!?第2巻発売記念Twitterアイコン配布ページ
- どうして私が美術科に!?第3巻発売記念Twitterアイコン配布ページ
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