チベとは、アニメ「機動戦士ガンダム」およびそのシリーズに登場する架空の艦艇。改良型であるティベについても本稿で解説する。
概要
ジオン公国およびその後継国家であるジオン共和国で運用されていた。初登場は「機動戦士ガンダム」テレビシリーズ第33話。
艦種と艦名
作中では重巡洋艦、または高速重巡洋艦とされる。また、僚艦であるムサイ級が軽巡洋艦であり、グワジン級を戦艦とする分類がある。一説によると、チベは竣工時は戦艦とされていたが、本格的な戦艦であるグワジン、より小型軽量級のムサイの竣工に伴い、その中間的な性能を持つ本級は重巡洋艦に再分類された経緯があるとされる。
艦名の由来は不明。ムサイと違い、名前のある姉妹艦が数えるほどしか存在しないため、シリーズ的な命名傾向もよくわからないのが現状である。
建艦までの経緯
0058年の独立宣言と共に国防隊の建軍を宣言したサイド3(当時はジオン共和国)だったが、経済制裁による混乱や政権内の内紛もあり宇宙軍創設は困難を極めた。
本格的な宇宙艦の竣工はそれから約10年後の0069年10月の「パプア」であり、その翌年の0070年6月に竣工したのが戦艦「チベ」である。「パプア」はミサイルを大量に装備した艦艇であり、「チベ」は当初実体弾を主砲としていたことから、この二艦で役割を分担する戦術が推測される。
しかし、0069年に発見されたミノフスキー粒子と0070年に開発されたメガ粒子砲により、「パプア」は存在そのものが陳腐化し、「チベ」も装備については大幅な見直しを迫られた。
0075年、史上初のミノフスキー粒子下での戦闘を前提とした艦である「ムサイ」が完成。0076年には艦隊旗艦となる大型艦「グワジン」も竣工すると、本級の近代化も進められ、これが劇中での重巡洋艦「チベ」につながることとなる。
性能
全長は235メートル[1]。ムサイの234メートルとほぼ同サイズであり、仮想敵である連邦のサラミスの228メートルともそれ程変わらない。一方、戦艦時代としての仮想敵であるマゼランは327メートルであり、一回りほど小さいことになる。ただし、横幅は113.2メートルであり、これは前述の三艦のいずれよりも大きい(ジオン軍艦艇の特徴でもある)。
エンジンは当初は化学燃料とプラズマロケット併用であったが、一年戦争登場艦は全て熱核エンジン二基に換装されている。
武装は主砲が三連装メガ粒子砲二基。これも当初は実体弾であったものを改装したとされる。口径は不明だが、戦術描写や重巡洋艦と言う分類から、ムサイよりは大火力であった可能性がある。IGLOOに登場する艦は艦底にも三連装メガ粒子砲を装備し計三基九門となっている。
ミサイル発射管は12基。パプアが旧式化した理由がミサイル装備に頼っていたことだが、新型艦のムサイでもミサイル装備は認められたことから、軽視されるべき装備ではなく引き継がれていたようだ。
対空砲は連装が18基であり両舷に9基ずつ装備されている。ムサイ初期型が一基も装備されていなかったことを考えると非常に特徴的と言え、本級の長所の一つである。
主兵装は改装後にカタパルトが装備されており、こちらもムサイはおろかグワジンでも実現できなかったため画期的であった。一方、コムサイの搭載は確認できず、遠距離作戦ではコムサイによるモビルスーツ(MS)輸送を行うと言う当初の作戦前提は考慮されていない。このため、ムサイとの併用にはやや難儀した可能性はある。
MS搭載能力は諸説あり、8機から18機説までと様々である。いずれにせよ、MS搭載を前提にしていたムサイの4機よりも多くホワイトベースとほぼ同等であり、本級の元の設計の優秀さを示している。
船型はジオン軍艦艇の中では旧世紀の海上艦艇に近く、甲板らしきものも存在している。
実戦と評価
ドズル・ザビ旗下のコンスコン分遣艦隊の旗艦を務めていたことからも、小規模艦隊の旗艦としての使用が目立ったようだ。グワジン級戦艦も後半までは前線に出ることがなかったとされ、前半の作戦では指揮官が座上していた可能性もある。性能も単艦としてはムサイよりは確実に上であり、カタログスペック上はホワイトベースと同等である。
ただし、数的な意味ではムサイには劣っており、戦前設計のため戦時量産は進まなかったとも考えられる(後述する戦時生産型であるティベも数艘のみ)。もっとも、ムサイの戦時量産型は主砲の数が減らされるなどかなり粗悪なものであったらしく、丁寧な作りであることが弱点と言えるかどうかは判断が難しいのだが。なお、相当数がソロモンに配備された模様で、テレビシリーズでは10隻以上が確認できる。
また、砲術戦能力はジオンの中では強力であったが、連邦軍のマゼランには全く太刀打ちができず、バロム指揮下の艦隊が連邦軍のワッケイン艦隊のマゼランに一方的に打ち負かされる描写も存在する。
さらに、MS搭載能力は優れてはいたが、整備能力は専用艦ではないため満足行くものではなく、パイロットや整備兵の間では本級への配属を嫌う傾向があったとされる。
全般的には専用艦としての能力や使い勝手ではムサイに劣り、軍艦としてのポテンシャルではグワジンに及ばず、しかもグワジンが温存されてしまったために不利な戦場で使い潰された感は否めない。とは言え、裏を返せば改造艦としては最大限に生かされたとも言えるだろう。
基本色は赤だが、緑色の塗装がなされたチベも確認出来る。それぞれの塗装色の意味付けは不明。
姉妹艦と派生型
- チベ
- コンスコン艦隊の旗艦。諸説あるのだが、ここではホワイトベースの会話からこの艦をネームシップであるチベと扱う。
キシリア旗下のシャアに対抗意識を抱いたドズル・ザビ中将の命令でホワイトベース追撃に当たる。サイド6近辺にてホワイトベースと交戦するが、僚艦であるムサイ級軽巡洋艦クワメルを撃沈され搭載機であった12機のリック・ドムを三分もたたずに全滅させられてしまう。
補給を受けた後の二回目の戦いでもブライトの巧みな指揮もあり、一方的にやられてしまい最期は特攻を命じるもガンダムのビームサーベル攻撃を受け撃沈。コンスコンも戦死した。 - ダルシア首相座乗艦(艦名不明)
- 「宇宙、閃光の果てに…」で登場した、ダルシア・バハロ首相が乗ったチベ級。月面で結ばれる停戦協定に参加するため、第16独立機動群の護衛を受けてグラナダに向かう。艦にはゲルググが搭載してあったらしく、このゲルググも護衛として出撃している。ジオン軍の攻撃を掻い潜って月面に到達し、停戦協定を結んだ事が正史とされているが、ゲームによっては撃沈される結末もある。
チベ級ティベ型
チベ級の改良型(戦時量産型)で、一年戦争後期にロールアウト。グラナダに配備されルビコン計画に参加したグラーフ・ツェッペリンがこのタイプである。
ミサイル発射管が減らされ、対空砲は外見からは確認できない。[2]。その代わりにMS搭載能力を拡充したタイプ[3]で、後期型ムサイにも採用されている本体固定式MS射出用カタパルトを搭載している。
外観も甲板状になっていた上部面積が縮小し、エンジンが大型化するなどの変更が見られる。
- ティベ
- 一番艦とも言われるが詳細不明。
- グラーフ・ツェッペリン
- 「機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争」で登場した、ティベ型2番艦。艦長はフォン・ヘルシング大佐。グラナダに配備されており、後期型ムサイと共に編隊を組みルビコン計画に参加した。大戦後期にロールアウトした機体だったためか、ザクⅡ改など統合整備計画に準じた後期型のMSを多数搭載していた。エース級のパイロットもいたようで、同艦から発進したゲルググイェーガーは劇中でもかなり目立った戦果を挙げていた。
第2話で初登場。バーナード・ワイズマン伍長が搭乗するMSを積載した偽装民間貨物船をサイド6に入港させる為、コロニー近海でモビルスーツ部隊を展開。戦闘の混乱に乗じて潜入させることに成功する。
第5話ではグラナダの司令官が殺害されキリング中佐に掌握され、同艦は彼の駒としてサイド6に核攻撃を仕掛けることになり、宙域でパゾクから核弾頭を受領しプチモビを使って搬入するシーンが描かれている。しかしサイド6へ向かう途中偶然連邦軍に発見されたため投降。作戦は失敗した。ただし艦長のヘルシング大佐はこの核攻撃に反対しており、発見されたことを奇貨とした自発的降伏であることが示唆されている。
後継艦
残存艦はその後もジオン共和国で近代化改修が進められ、チベ改などの改修艦が確認される。一方、それに反発したアクシズやデラーズ・フリートを中心としたいわゆる「ジオン残党」には目立った配備艦はない[4]。推測だが、残存艦の多くはグラナダ配備であったためであり、数そのものも多くはなかったことが遠因なのではないのだろうか。
また、長らく連邦の建艦思想にも影響を与えたムサイとは対照的に、チベの影響はその後の建艦史にも見られない。もともと旧式艦であった影響もあるのだろうが、実戦での扱われ方と同様にやや不遇な立ち位置であったことがうかがえる。
旗艦としての機能やカタパルトや対空砲など近代的な装備はムサイより充実していたこともあり、練習艦としては優秀で0096年のガンダムUCでも練習艦隊に参加している描写が存在する。
その他よもやま
- デザインは富野喜幸。クリーンアップは大河原邦男。
- 性能やデザインの過程からガンダムのライバルがゲルググであるように、当初はホワイトベースのライバル艦として企画されていたことがうかがえる。
- 旧式艦とされたのはアニメ誌などで「砲塔の形状が旧式」などの解説が現れ、ガンダムセンチュリーでこれが採用されたと言う経緯があるためである。
- このアンチテーゼとしてか、安彦良和の漫画「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」では最新鋭艦として登場し、ホワイトベースのライバルであることが強調されている。
- 早い段階で模型化されたムサイとは対照的に、チベは長い間模型には恵まれていない。2006年、Bシップコレクションシリーズからガレージキットとして発売されガンダムファンの話題となった。
関連動画
関連項目
脚注
- *全長などのサイズについては明言されておらず、諸説存在する。
- *ホワイトベースのように格納式の機銃になっているという可能性もあるが、ギレンの野望などのゲームでは装備されていないものとされている。
- *チベ級のMS搭載能力を18機とする資料が見受けられるが、これはティベ型のことを指すとする解釈も存在する。
- *0083のドラマCDに登場するチベ級など、ジオン残党の所属艦は無いことはないのだが、数は非常に少ない。
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