攻撃ヘリコプターとは、対地攻撃用の兵器を搭載し、対地攻撃を主任務とした軍用ヘリコプターである。攻撃機のヘリコプター版。
戦闘ヘリ、対戦車攻撃ヘリコプターとも呼ばれる。
特に重装甲・重武装(対戦車兵器)をもって積極的に攻撃を行い、敵歩兵はもちろん、敵戦車を攻撃および撃破可能なものを指す。
上手く使えば一方的に敵部隊を蹂躙、装甲車輛を鉄くずに変えることも可能である。
※輸送・偵察ヘリに武装を取り付けた「武装ヘリコプター」も存在するが、本記事では基本的に扱わない。
その他、後述の「生存性」も参照。
…簡単にまとめると、こんな感じのヘリコプターが多い。
一部例外もあるが、同様の武装と装甲は必ず付属している。
攻撃特化なため、歩兵が乗って移動するのが目的ではない。(Mi-24を除く)
ただし装甲に覆われているといっても戦車のような重装甲では飛べなくなるため、若干軽装甲側。もちろん大口径の対空機関砲(自走式対空砲など)をバカスカ撃ち込まれ続ければ撃破されてしまう。防弾だからといって敵は何を持っているか分からないため、敵の真上をのんびり飛んでいる訳にはいかない。
※カタログ上は「大口径の機関砲弾を何発か食らってもOK」という場合もあるが、撃ち込まれ続けることは想定していない。
その他、携帯式の地対空ミサイルといった脅威はあり、撃ち込まれれば致命的。(後述)
朝鮮戦争の終結と相前後して北アフリカで発生したアルジェリア戦争において、フランスはヘリコプターを大規模に使用したヘリボーン作戦を初めて実施した。ヘリコプターで兵士を急速に輸送展開させるヘリボーン作戦は非常に効果的だったのだが、「ヘリコプターが着陸する場所の敵を掃討しなければならない」という課題が生じた。事前に固定翼機による攻撃を行ってもヘリコプター部隊が着陸するまでの間に敵が戻ってきて無防備なヘリコプターに攻撃をかけてしまうので、ヘリコプター部隊の侵入、着地、兵員展開の間に敵を上空から制圧する手段が必要だが、固定翼機は滞空時間が短い。ヘリコプターであればヘリボーン部隊に速度を合わせることができ、ヘリボーン部隊の護衛も兼ねることができる…ということで、フランス陸軍のヘリコプターに武装を装着する試みがなされた。10年後にベトナム戦争で米陸軍が経験する問題が、この時既に露呈していたのである。[3]この時点でキャビンのドアにフレキシブル・マウントを付けて機関銃を取り付ける(ドアガン)、胴体下に旋回機銃を付ける、胴体両側にロケット弾ポッドを装着する、対戦車ミサイルを搭載して敵陣地を攻撃する、といったことが試されている。
また、この時期はヘリコプター用のエンジンとして「タービン・エンジン」が登場した。従来のレシプロ・エンジンよりも小型軽量で大出力を得ることができ、振動も大幅に減少させることができるタービン・エンジンを使用することで、兵器プラットフォームとしてのヘリコプターの価値は大幅に上昇した(タービンエンジンを使用した米陸軍の汎用ヘリコプターであるUH-1Aは1958年に実用化されている)。
ベトナム戦争が始まるとアメリカはUH-1に武装を施した武装ヘリコプター部隊を編成し、ヘリボーン部隊の護衛を行った。※この時に武装型UH-1Bを「ガンシップ」と呼び、輸送型を「スリック」と呼ぶようになった。
しかし、輸送用ヘリコプターに武装を搭載するため重量が増大し、抵抗も大きくなるので輸送型に比べ性能が低下してしまうという問題は残った。ヘリボーン部隊に先行して対地制圧攻撃を行うどころか輸送ヘリコプターに同行できないのでは問題である。
そこで専用のヘリコプター、すなわち攻撃ヘリコプターを仕立てるという選択肢となる。武装以外の荷物の搭載量を削り、搭乗するのは操縦手(パイロット)と射撃手(ガンナー)だけにするなどして、機体をスリムにすることで空気抵抗も減り、軽量化できて、あまつさえ人員保護用の装甲を付加する余裕も生まれる。
これにより、ヘリボーン作戦のエスコートに必要な攻撃力、巡航性能、機動性、生残性を手に入れることができようになった。
しかしながら、攻撃ヘリコプター専用機が他の武装型ヘリコプターを駆逐したというわけではない。輸送用のヘリコプターに武装を搭載したものも依然として存在するし、機動性に優れた偵察・観測用の小型軽量ヘリコプターに武装させたものなども使用されている。
また、ヘリボーンの護衛などといった任務に止まらず、攻撃ヘリコプターを主軸に据えた戦車狩りといった攻撃的な作戦や、陸上部隊と連携した近接航空支援のような任務にも用いられるようになっている。ヘリによる空対地攻撃の大きなメリットは、攻撃ヘリは陸軍に所属しているため同じ軍隊とはいえ別の組織である空軍に所属する爆撃機や攻撃機よりも自由に使いやすいことが挙げられる。
また固定翼機にはできない空中でその場に留まる(ホバリング)という行為が可能なため、崖や稜線など地形や障害物に沿って超低空でレーダーや目線をかいくぐって飛行する匍匐飛行・地形追随飛行(NOE)により生存性の向上や待ち伏せを行うことができる。
また、野戦飛行場といえど滑走路などが必要な固定翼機よりも前線に近いところに、燃料や弾薬の再補給のためのヘリポートが設置可能であることも大きな利点。
しかし冷戦時代は戦車とのキルレシオが1対15とさえ言われた攻撃ヘリも、近年では陰りを見せ始めている。確かに固定翼機と異なり、ホバリングや超低空飛行など、ヘリならではの機動は強みであり、搭載している機関砲や対戦車ミサイル、暗視装置、電子装備の性能も年々向上してはいる。
そのうえでなぜ弱点が浮上したかといえば、やはり固定翼機に比較して鈍足であるからである。イラク戦争などでは旧ソ連製の旧式な14.5mm重機関銃、23mm機関砲を相手にしてさえ無視できない損害を出し、携帯式の地対空ミサイル(SAM)を持ちだされれば一方的な損害を被る状況さえ生じた。
この点はフォークランド紛争で亜音速のハリアーが、アルゼンチン側の対空砲火で少なからぬ損害を出し、超音速の垂直離着陸攻撃機が求められた経緯と類似してるが、攻撃ヘリはその構造上、現行以上の機動性は望めない。そしてその性能の割に攻撃ヘリは特に高価であり、費用対効果は特に悪化しつつある。
2022年に始まったロシア・ウクライナ戦争では、攻撃ヘリの活躍はほとんど見られない。たまにウクライナの武装ヘリコプターの映像がネットにアップロードされるが、敵の地対空ミサイルのレーダーに補足されないようにひたすら低高度を飛行しており、その行動は大きく制約されている。
ウクライナでの戦闘が影響したのか、陸上自衛隊が保有する攻撃ヘリコプターについては、2022年12月に発表された防衛力整備計画において、攻撃ヘリコプターと観測ヘリコプターは廃止され、無人機に置き換える方針が示されている。
無論、だからといって攻撃ヘリが各国の軍隊から急速に消え失せるわけではなく、新規配備が行われている国もあるが、今後の展望として新型機が開発される可能性は小さいと考えられる。この点はUAV(無人機)の発達により、人命のリスクを犯さない偵察と、その情報に基づく固定翼機や砲兵の攻撃が可能になった影響も大きい。
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最終更新:2025/12/16(火) 11:00
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