本記事では、UGC百科事典サイト (ニコニコ大百科やピクシブ百科事典、各種ファンwiki等) における引用元・参考文献の書き方について述べる。
むろん本記事が唯一無二の正解というわけでもなく、他にもいくつかの流儀があることには留意されたい。
なお本記事においては、ウェブサイトを引用元、参考文献として使用する前提で記述する。これはまえがきに挙げる理由の通りである。
UGC百科事典サイトというものは基本的に「百科事典」であるため、小説投稿サイトとはことなり、既に世にあるものを解説するのが主目的となる。このため当然ながら「事実と乖離した記事」というものは大問題となる。虚偽を信じて誤ったことをする者が現れたりすることもあるし、場合によっては名誉毀損にあたることさえもある。稀なケースではあるが、百科事典の記事ひとつがネット炎上の中心地になることさえある。
そのため「その記事のその記述が正しいことを確認する」「仮に間違っている場合、その記事の著者が間違っているのか、元のソースの執筆者が間違っているのかを突き止める」必要性が出てくる。
ここで厄介なことに、学術論文などであれば他者の書いた論文や書籍を参考に記事を組んでいくことで、かなり信頼度の高い参考文献を揃えることができる。
しかし――UGC百科事典サイトの扱う範囲はそれよりも広く、例えばインターネット上で流行ったものを取り上げることもしばしばある。そうすると、残念ながらウェブサイトを中心に記事を書く必要性が出てしまう。また、本来であれば学術論文や書籍が多い分野でも、すべての編集者がそれらにアクセスすることが可能な環境ではない。
そうなると、ウェブサイトを参考文献として使うためのアイディアを頭に入れておく必要がある。そのため、ウェブサイトを中心として記述を行っていく次第である。
ウェブサイトのソースとしての信頼性が低くなりやすい原因はさまざまなものがある。
学術論文の無料公開ならば査読は経ているだろうが、大概の「ネットで無料で手に入る情報」は査読なんか経ていない。つまり仮に本人が専門家であったとしてさえ、間違いが含まれる可能性が上がってくる。専門家でないならば当然誤りが産まれる可能性も多くなろう。
そもそも専門分野に査読なんてものがないこともある「トレーディングカードゲームやソーシャルゲームアプリのTier考察」などは有名プレイヤーであってさえ誤りを含みうる。
ニュースサイトやキュレーションメディア、あるいは同じUGC百科事典サイト同士であれば、当然時期によって記述が変化していく。ある時期の記述を引用したが、そのソースのほうが変わってしまうことがある。
例えば芸能人などの公式サイト・ブログはその芸能人が事務所を移籍したり、引退すると削除されることがある。また、ニュースメディアは古いニュースだと閲覧不可能になってしまうことがある。SNSの書き込みも、そのSNSのサービス停止や本人のアカウント削除で後追いしきれなくなる。
しかし一番厳しいことは、こうしたメディアを参考にしなければいけない、という分野が多いことである。
例えば、『米津玄師交通事故シリーズ』や『強虫モンブランシリーズ』『美味しいヤミー感謝感謝』を記事として書きたいとする。しかし「MADムービー」や「ネットミーム」について査読を経た学術論文なんてまず存在そのものを見込むことが出来ない。基本的に情報源は動画共有サービス (YouTube・ニコニコ動画) 、それにプラスアルファを加えるにしてもTwitter、ピクシブ百科事典、TikTokなどであろうか?書籍など当然ない分野である。しかしUGC百科事典サイト、それも特にニコニコ大百科のようなケースではこれを書かないという選択肢はない。インターネットの文化を記録蒐集しまとめる百科事典サイトであるからだ。
ということで、この特性を可能な限り回避しつつ (1は不可避だが) ウェブサイトを参考文献として使えるような方法を議論していきたい。
まずはとりあえず記法から考えていこう。
基本的に関連リンクを示す際には、 (これはHTMLで記述するニコニコ大百科の場合だが) このように書く。
たまに、URLだけをベタッと貼る編集者がUGC百科事典サイト群では多く見かけるが、基本的にはURLを見せるのではなく、ページ名を表記して「それはなんのサイトなのか」を記述することが望ましい。
――ここで、URLについてなのだが、『メリケンサック説』の項目を挙げよう。この「メリケンサック説」とは海外を中心に『ポケットモンスター』シリーズで最初にもらうことができる冒険のパートナーとなるポケモン (御三家) に裏モチーフがあるのではないか、という説である。これについて解説する際に、ピクシブ百科事典の以下の記述を参考にした。
そこで、このような関連リンクを書いたとする。
<a href="https://dic.pixiv.net/a/%E7%82%8E%E5%BE%A1%E4%B8%89%E5%AE%B6">炎御三家 (ほのおごさんけ)とは【ピクシブ百科事典】</a>
しかし、実際に該当のページ
を見に行ってほしい。そこにはこんな記述はないのである。ピクシブ百科事典はニコニコ大百科と同じくUGC百科事典サイトであり、故に多くの編集者が日々記事を改訂していく。現版ではこの記述は削除されてしまっているのだ。そしてピクシブ百科事典は過去のリビジョンの保持数が決まっており、この記述のあったリビジョンはとっくの昔に流れている。
この状態を見た読者はどう考えるだろうか?無論、「書いていないことを勝手に書いていることにした、虚偽を記載した」と判断する。
他のケースでは、「広域強盗事件」について書こうと考え、その中で産経ニュースを参考にしたとする。
<a href="https://www.sankei.com/article/20230207-LS5JPAEDA5MR3BYOVMLASYFBLM/">京都腕時計強盗事件の「金庫番」を逮捕 実行役に報酬提供 - 産経ニュース</a>
しかし、産経ニュースの当該ページ
を見てほしいのだが、もうアクセスできなくなっているのである。これでは、参考文献としての価値はない。ニュースサイト以外では芸能人のプロフィールページや公式サイト・ブログも同様である。
このことから基本的に、関連リンクを示す際には「その記述が変わるかもしれない」「そのページが消えてしまうかもしれない」という前提で書かれるべきである。ではどうするか?ウェブアーカイブを使うのである。
<a href="http://web.archive.org/web/20200526153848/https://dic.pixiv.net/a/%E7%82%8E%E5%BE%A1%E4%B8%89%E5%AE%B6">炎御三家 (ほのおごさんけ)とは【ピクシブ百科事典】</a>
<a href="https://web.archive.org/web/20230209172556/https://www.sankei.com/article/20230207-LS5JPAEDA5MR3BYOVMLASYFBLM/">京都腕時計強盗事件の「金庫番」を逮捕 実行役に報酬提供 - 産経ニュース</a>
こうすれば、元のページが変わろうが消えようが、安心して関連リンクとして示せよう。
ただし、これはすべてのリンクに使える手ではないことにも留意したい。YouTubeやニコニコ動画といった動画SNSではアーカイブを使った所で、肝心の動画が再生できないので、こればかりは普通に元ページのURLを記載せざるを得ない。
先程はウェブアーカイブを使って「残す」ことで関連リンクの信頼性を担保することを述べたが、逆に記事の情報を強化したり、説得力を高めるためにソースを探していたら、アドレスはわかったがそのアドレスが切れていた……ということも往々にしてぶつかる。しかし、「アドレスがわかっている」ならまだ諦める時間ではない。
例えば『有用微生物群』の記事を見ていきたい。有用微生物群 / EMは琉球大学名誉教授の比嘉照夫が開発した微生物資材であるのだが、有効性が証明されていない (というか有用微生物群 / EMとはなんぞやという部分が証明し得ない) 。にもかかわらず教育分野において有用微生物群 / EMは浸透してしまっている。これを示すインパクトのある話として、「小学生が実際にEM発酵液を飲んだ」というものがある。
しかし、これを示すウェブページはリンク切れ
を起こしてしまっている。このアドレス自体はTogetterまとめ
に掲載されているため見つけることが出来たが、ぜひとも元のページを説得力を高めるために使用したいと考える。
そこで『Wayback Machine
』に調べたURLを投入してみる。すると、なんと過去のページが出てくるのである。これを関連リンクに記述しておけば、実際にあった事例として説得力が増すというものである。
同様のケースとして、芸能人などのプロフィールを調べようと思ったが、過去の記述が削除されてしまっている、という場合が挙げられよう。そういった場合、所属事務所がわかっていれば活動時期と突き合わせて事務所のウェブサイトの該当時期のアーカイブを参照すれば出てくるケースがある。
そんなことふつうするわけないだろうと思うだろうが、決してふざけているわけではない。虚偽記載とわからなかった場合ではなく、虚偽記載を虚偽記載と理解した上で、参考文献にするケースは実際存在する。ここに例を挙げよう。
『マクドナルドに関する都市伝説』という記事を書こうと考える。都市伝説、といえばちょっとかっこいいが、言ってしまえば事実誤認やデマゴギーが多く含まれる。例えば、「マクドナルドの肉は人肉を使っている」というQアノン支持者が流している話があるが、これについて述べているのは当たり前だがQアノン支持者のブログである (参考
)。当然ながら虚偽記載の塊のようなブログである (当の本人達は真実だと信じているのかもしれないが……)。だが、「こういう信憑性に欠けた噂を彼らは共有しているのですよ」という事実を示すためには、逆に「虚偽を掲載しているサイト」をこそ参考文献として掲げなければ記事の信頼性がなくなってしまう。
参考文献は基本的には書名と著者、出版社、出版年を記載する。引用元にしていないならばページは省略可能である。人によっては版を書くこともある (版によって内容が訂正されている場合があるため)。
UGC百科事典サイトは学術論文ではないので、参考文献に関して特にこれといった流儀はない。元の参考文献がしっかり追えるならばいかように書いてもいいだろう。ただし、「見たものは可能な限り」書くことを推奨する。ソースそのものがデマにまみれているというケースも0ではないので、「これを見て書きました」とかいて置いたほうが何か言われたときの保険としても役立とう。あなたの書いた文章が偏向しているのか、元のソースがそもそも間違っているのかがわかれば指摘もしやすい。
最後になるが、ソースを書いたということは、そのソースが間違っているなどの指摘を受けることもあるだろう。その場合は、正しいと主張する者にそのソースを尋ねてみると良い。そうすることで、より記事の正確性を上げることができよう。UGC百科事典サイト群は新たな編集者を待っている。
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最終更新:2025/12/13(土) 06:00
最終更新:2025/12/13(土) 06:00
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