"遺伝子は自分の思想を多く残す事のみを考える"
──リチャード・ドーキンス
『パラサイト・イヴ』 (PARASITE EVE) とは、1998年3月29日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)より発売されたプレイステーション用アクションRPGである。2010年11月4日より、ゲームアーカイブスでも配信されている。
概要
原作は瀬名秀明の小説『パラサイト・イヴ』。詳細は個別記事参照。
舞台は小説の数年後、1997年のニューヨーク。
進化したミトコンドリアが人間の体を乗っ取り反乱を起こしはじめ、ニューヨーク市警察(NYPD)の刑事、アヤ・ブレアが立ち向かう。
後に本作品のコミカライズ・ノベライズ作品が発売。
その他にも、単行本化されていないが、発売当時は「ファミ通ブロス」にて天野シロによる短期集中連載のギャグマンガも掲載されていた。
システム
一枚絵の背景CG内を、ポリゴンキャラの主人公を動かして移動。戦闘や探索と言った様々な行動を行う。敵が出る場所でエンカウントすると、そのまま戦闘に移行。
アクティブタイムバトルが採用され、行動ゲージが貯まると攻撃、アイテム使用、逃走などの行動を選択できる。
戦闘行動中はキャラを十字キー及びアナログスティックで操作できる。これにより敵の攻撃を回避したり、攻撃しやすい位置に移動するなど、比較的自由な戦いをすることが可能。
ムービーは当時最先端のCGが使用され、訪れる場所は実在するマンハッタンの名所が多い。
あらすじ
1997年のクリスマス・イヴ。
ニューヨーク・マンハッタン島の中ほどに位置するカーネギー・ホールでは、オペラが上演されていた。NYPD17分署の刑事、アヤ・ブレアは、ある男からデートに誘われ、観劇に訪れる。まるで何かに導かれるような感覚に彼女が戸惑う中、舞台の幕は上がった。
劇中では、「魔女」と噂された美女を巡る愛と葛藤が描かれる。火あぶりにせよと声を荒げる父に対し、王子は必死に彼女を庇うが、そんな中で美女は歌を歌い始める。
その時突如として、舞台上の俳優が炎に包まれる。その炎は舞台ばかりか観客席からも上がり始め、ホールは逃げ惑う人々で阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
咄嗟に銃を抜き、連れの男を逃がすアヤ。
舞台へと駆け上がり、原因と思われる女優、メリッサ・ピアスに対峙する。
アヤはメリッサに銃口を向けて牽制しつつ逮捕しようとするが、相手は「やはりお前だけは発火しないようだ」「お前の細胞の奥から聞こえるはずだ」と、意味不明の言葉を発する。
アヤが怪訝に思っていると、メリッサはレーザーのようなものを体から発し、攻撃してきた。アヤは応戦するが、メリッサは楽屋裏へと姿を消す。
追撃したアヤは、そこでさらに奇怪な状況に遭遇する。異形な姿へと変化、巨大化して獰猛な牙をむくネズミ。観客と同様に焼死した人々。メリッサの楽屋を捜索すると、そこにあった日記には体調が思わしくないこと、何らかの薬を服用していたことが記されていた。
レッスン室へ踏み込むと、メリッサはピアノを弾いているところだった。
「私は……メリッサ……私は……Eve……」とうそぶく彼女は見る間に異様な姿へと変化、巨大化した爪をピアノに叩きつけると、アヤに再び襲いかかる。
その後下水道方面へ逃走したメリッサを追うアヤの前に、変異したワニのような猛獣が立ちはだかる。アヤはからくもこれを制圧したものの、被疑者の逮捕には失敗した。
……このクリスマス・イヴから続く6日間、マンハッタンには地獄のような時間が流れた。
それは主犯とされたメリッサ個人の意思によって起こされた事案であったのか。
あるいは、彼女自身にも解らない何者かの意思が働いたのか。
一つ言えるのは、それが911のテロと共に、ニューヨーク、ひいては合衆国の歴史に残る異常事態であったということだろう。
登場人物
ニューヨーク市警察
- アヤ・ブレア
- 17分署刑事分隊に所属する刑事。25歳。
清楚な外見に反して行動力があり、異常事態にも毅然と立ち向かう強さを持つ。
様々な銃器の扱いに習熟しており、また人体発火現象が起きないことから、事件の捜査において中心的な役割を果たした。その過去には秘密があり……
ちなみに漫画版では同性の恋人がいる。 - ダニエル・”Bo”・ドリス
- アヤの相棒。大柄なアフリカ系男性。42歳。
勤続20年のベテラン刑事で、アヤから見れば父親ほども年が離れている。ともすれば突っ走るアヤのブレーキ役でもある。
出世意欲を持たない現場第一主義。しかし仕事一筋だったのが災いし、1年前に妻ロレーンと離婚する。「息子が成長するには父親が必要だ」と主張し、息子のベンを引き取っているが、仕事の忙しさを理由に結局ロレーンに預けるなど、私生活ではそれなりの問題を抱えている。 - ダグラス・ベイカー
- 17分署部長。アヤ達の上司。
ダニエルとは同期にして親友。現場をよく理解しており、部下達に気を配る細やかさを持つ。17分署襲撃に際してはベンをかばい、負傷してしまう。 - トーレス・オーエンズ
- 17分署武器管理部主任。ウェインの上司。許可証と引き換えに武器の改造をしてくれる。
射撃の名手だったが、娘を銃の暴発事故で失っている。この為、銃の使用を過剰に忌避する傾向も見受けられ、納得がいかないウェインと再三衝突している。
17分署襲撃において自ら銃を取るが、トラウマからトリガーを引けずにクリーチャーに襲われる。今際の際に「銃が悪いのではなく、使う人間が正しいかどうか」を知り、アヤに銃を託すと、後をウェインに任せて死亡した。 - ウェイン・ガルシア
- 17分署武器管理部係員。トーレスの部下。
イマドキの若者で、よく言って無邪気、悪く言って無神経。トーレスの死後は彼の役目を引き継ぎ、趣味のトレーディングカードを持ち込むと改造してくれるようになる。
被疑者
- メリッサ・ピアス
- 新進気鋭のオペラ女優。32歳。
幼少時は虚弱で難病を患っていた。1977年12月23日に腎不全で聖フランシス病院に緊急入院し、臓器移植手術を受ける。
その後もたびたび通院を余儀なくされていたが、自らの晴れの舞台となる公演に備え、事件直前に大量の薬(免疫抑制剤)を内服。その結果ミトコンドリアに乗っ取られてしまい、「Eve」へと変貌してしまう。
民間人
- 前田邦彦
- 冴えない風貌の日本人男性。35歳。
某大学薬学部の研究員で、数年前に日本で発生した「人体発火事件」をきっかけにミトコンドリアの研究を行っていた。カーネギーホールの事件を知って来日、アヤ達の協力者となる。
学者にしては縁起を担ぐ方で、折々にアヤにお守りや破魔矢を渡す。なお特に効果はない。 - ハンス・クランプ
- アメリカ自然史博物館の研究員。37歳。
冷静を通り越して冷徹、常に無表情で動じる気配を見せない。遺伝子に関連してミトコンドリアの研究を行っており、近年は斬新なレポートを発表した事で注目を集めている。かつてはある病院に勤務していた。 - ベン・ドリス
- ダニエルの息子。8歳。
難しいお年頃という事もあり、多忙を理由に放置気味なのに反発し、両親の仲を取り持とうとしているがうまくいっていない。
セントラルパークにEveが出現した時には母に連れられて現場に行っていたが、異変を察知して逃げ出した為に無事だった。しかし母はEVEに支配されて犠牲になってしまう。
分署に保護され、ベイカーの元相棒の警察犬シーバと仲良くなるが……
アメリカ海軍 CVN-68 USS「ニミッツ」
ロケーション
- カーネギーホール
- 鉄鋼王カーネギーが建築した、主にクラシックが上演されるコンサートホール。
人体発火現象が最初に確認された場所。この場所から押収したメリッサの日記には、体調が変調したことと薬物の使用が記されていた。 - セントラルパーク
- マンハッタンの中央部に位置する広大な公園。内部には散策路がある他、メトロポリタン美術館なども存在する。
- ソーホー
- マンハッタン南部に位置する市街地。かつては芸術家志望の人々が集まる町として知られた。
- 17分署
- 東51丁目に所在するNYPDの分署。管轄には国連本部ビルなど重要施設もある。
- チャイナタウン
- マンハッタン南部に位置する中国人街。移民文化を象徴する重要な場所ではあるが、裏では中国系犯罪組織がここを拠点に人身売買や管理売春を行うなど、治安上の注意を要する場所である。
- 聖フランシス病院
- マンハッタン南部に位置する病院。かつてここで臓器移植手術が行われたことがあり、メリッサ・ピアスやハンス・クランプがそれに関わっていた。現在は精子バンクが置かれ、液体窒素で精子を保管する設備が設置されている。
- 地下鉄
- ニューヨーク市都市交通局が運営する地下鉄道。マンハッタン島、ブロンクス、クィーンズ、ブルックリンを結んでおり、市民やニューヨーク都市圏住民及び来訪者にとって、重要な交通手段となっている。1980年代は危険な場所として知られていたが、環境の改善や警ら活動の充実、さらに全市における治安改善もあって以前と比べればかなり治安は良くなった。
- リバティ島
- ご存じ、自由の女神が設置されている島。毎日多くの観光客が訪れる。
- クライスラービル
- アメリカ自動車産業の三大企業「BIG3」の一つ、「クライスラー」が建設した超高層ビル。
関連動画
関連商品
関連項目
外部リンク
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