ベルナルド・シウバ(Bernardo Mota Veiga de Carvalho e Silva, 1994年8月10日 - )とは、ポルトガル出身のサッカー選手である。
イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティFC所属。サッカーポルトガル代表。
概要
ポルトガルのリスボン出身。攻撃的MF、ボランチ、左右のウイングと様々なポジションでプレーできるユーティリティプレイヤーであり、ケヴィン・デ・ブライネと共に世界最高のMFと呼ばれている。「小さな魔術師」の異名を持ち、高いテクニックは言うまでもなく、創造性、ドリブル、運動量、共有力とチームに様々なものをもたらせる万能型の選手である。
マンチェスター・シティではダビド・シルバやデ・ブライネと共にジョゼップ・グアルディオラの理想とするフットボールを体現する存在として活躍しており、2023年のトレブル達成をはじめ多くのタイトルをクラブにもたらしている。ポルトガル代表では2015年にデビューしており、UEFAネーションズリーグ2018-19では中心選手として優勝に貢献している。
経歴
生い立ち
ポルトガルの首都リスボンで誕生。サッカーが盛んな国ということもあり、幼い頃から地元の名門クラブであるベンフィカの熱心なファンだった。自身もサッカーに夢中となり、時間を忘れてボールを蹴っている彼のことを両親は応援していた。そんなベルナルド少年が描いていた夢は、いつか憧れのクラブであるベンフィカの選手としてピッチに立つことだった。
幼い頃から足元の技術が周囲の子どもたちと比べて頭ひとつ抜き出ており、8歳となった2002年に若手育成に優れるベンフィカのアカデミーに入団が叶う。ちなみに、後にポルトガル代表やマンチェスター・シティでチームメイトとなるジョアン・カンセロはこの頃からの付き合いで、ベンフィカの下部組織に在籍していた7年間を共に過ごした親友である。
もっとも最初からすべてが順風満帆というわけではなかった。体が小さかったベルナルドは、10代になっても身長が伸びず、そのことを問題視したコーチたちからプレー機会を与えられなくなってしまう。そんな苦難の日々を過ごすベルナルド少年に救いの手を差し伸べたのが当時ユースチームでコーチを務めていた元ポルトガル代表FWフェルナンド・シャラーナだった。現役時代164cmの小さな体ながらも天才的なプレーで活躍した彼は、「監督にフットボールを見る目がないだけで、君はここで1番の選手だ」と声をかけた。レジェンドから背中を押されたことで奮起し、失意の底から成長を遂げていき、幼少期のアイドルだったルイ・コスタと比較されるほどの有望株に成長する。
ベンフィカ
2013年にリザーブチームであるベンフィカBへと昇格。セグンダ・リーガ(2部リーグ)での活躍が認められ、10月19日のタッサ・デ・ポルトガルのシンファンイス戦で18歳にしてトップチームデビューを果たす。ベンフィカBでは38試合7得点という好成績を収め、セグンダ・リーガの年間最優秀選手に選ばれるが、当時国内三冠を獲得するほど強かったトップチームでは公式戦3試合でわずか31分の出番しか与えられなかった。そこで、出場機会を得るために18歳で母国を離れることを決断する。
モナコ
2014年8月7日、フランス・リーグ・アンの強豪ASモナコへ期限付きで移籍。モナコでは同郷のレオナルド・ジャルディムが監督を務めており、ハメス・ロドリゲスやラダメル・ファルカオといった主力を失ったチームの中心選手として期待以上の活躍を見せる。12月14日のオリンピック・マルセイユ戦では移籍後初ゴールを記録。2015年1月には完全移籍を勝ち取る。若手育成に舵を切ったチーム事情もあってベルナルドは輝きを放ち続け、デビューとなったUEFAチャンピオンズリーグでも7試合に出場し、モナコのベスト8躍進に貢献する。リーグ戦で9ゴール、公式戦全体では10ゴールをマーク。
2015-16シーズンはCLではプレーオフで敗退となり、UEFAヨーロッパリーグでもグループステージ敗退となる。それでもリーグ・アンではコンスタントに活躍し、モナコは3位でシーズンを終える。
2016-17シーズンは自身にとって大きな飛躍のシーズンとなった。モナコは神童と呼ばれたキリアン・エムバペがエースとして台頭。他にもファビーニョ、トマ・レマル、フェルラン・メンディといった数年後に欧州のトップシーンで活躍する若手を多く揃えていたこの年のモナコにあってベルナルドは10番を背負い、エムバペやレマルと共に攻撃の中心を担っていた。CLグループステージ アウェイのCSKAモスクワ戦では終了間際に同点ゴールを決め、敗北寸前だったチームを救う。2017年1月15日のマルセイユ戦では後半に2ゴールを決め、モナコを首位に浮上させる。1月29日の王者パリ・サンジェルマンとの大一番でもアディショナルタイムに同点ゴールを決め、引き分けに持ち込む。結局チームはその後最後まで首位を明け渡さず、17年ぶりのリーグ制覇を成し遂げる。リーグ戦8ゴール9アシストの活躍で優勝の立役者となった。また、CLでも卓越したボールコントロールと鋭いパス、細かいドリブル、広い視野を駆使してチームの攻撃を牽引。若きモナコは予選3回戦からの出場ながらも、決勝トーナメントではマンチェスター・シティ、ボルシア・ドルトムントといった強豪を次々と撃破し、ベスト4進出という快進撃を成し遂げる。
マンチェスター・シティ
2017年5月26日、CLで対戦した際に才能を高く評価したジョゼップ・グアルディオラ監督からのリクエストに応える形でイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティFCへの移籍が決定する。契約は5年で移籍金は4300万ポンド。背番号は「20」。
2017-18シーズン、加入当初こそ熾烈なレギュラー争いに苦しんだものの、ペップ・グアルディオラ監督の綿密なパスサッカーに次第に順応すると、ダビド・シルバ、ケヴィン・デ・ブライネと共に中盤を構成する重要なピースとして重用されるようになる。最終的には9ゴール11アシストという記録を残し、チームのプレミアリーグとカラバオカップ制覇に貢献する。
2年目となった2018-19シーズンはプレミアリーグにすっかり慣れたこともあり、前年を上回るハイパフォーマンスを披露。怪我で長期離脱となったデ・ブライネに代わってゲームメイクの中心を担い、個の力に頼りがちだったこれまでとは打って変わって、そこに周りとの連係も絡めた攻撃は幾度ものゴールチャンスをシティにもたらす。歴史的な優勝争いを繰り広げていたリヴァプールFCとの重要な首位攻防戦では、1アシストも含めた獅子奮迅の働きぶりでメディアやサポーター、そしてペップからも最大級の賛辞を贈られる。2019年4月28日のマンチェスター・ユナイテッドとのマンチェスター・ダービーでも重要なゴールをマーク。シティのリーグ連覇を含めた国内三冠達成に大きく貢献。公式戦51試合に出場し13得点を記録する活躍を見せ、PFAベストイレブンに選出された。さらに、クラブのシーズン最優秀選手に選出される。
2019-20シーズンはデ・ブライネの復調、イルカイ・ギュンドアンの加入もあり、二列目のポジション争いが激化。スタメンを外れる試合も多くなったが、途中出場でも腐らずにペップの求めるクオリティを実戦。偽の9番で起用されることもあれば、右ウイングとしての出場が多くなる。9月21日のプレミアリーグ第6節ワトフォードFC戦では、自身のプロキャリアでは初となるハットトリックを達成。
なお、2019年9月に同僚のバンジャマン・メンディとチョコレート菓子ブランドのキャラクターを合わせた写真を投稿したが、これが人種差別であると物議を醸すことに。11月に1試合の出場停止と5万ポンドの罰金を科されることに。
2020-21シーズンは長年チームを支えてきたダビド・シルバが退団した影響もあり、シーズン序盤はチームの不振に引っ張られる形でパフォーマンスが上がらずにいた。それでもデ・ブライネが偽の9番でプレーするようになり、本職のインサイドハーフで起用されるようになったことで復調。得点力が開花したギュンドアンをアシストする役割となる。CLではラウンド16のボルシアMG戦でゴールを決め、初めて決勝まで進むが、チェルシーFCに敗れ、悲願の初優勝は果たせなかった。
2021-22シーズンは移籍の噂が過熱化し、FCバルセロナへの移籍が報じられる。後にペップから夏にチームを去ることを希望していたことが明らかにされている。結局シティに残留すると、特にビッグ6相手のビッグマッチでことごとく印象的なパフォーマンスを披露し、9月、10月、11月の3ヶ月連続でシティのサポーターから月間最優秀選手賞を受賞。2022年2月15日のCLラウンド16アウェイのスポルティングCP戦では1stレグで2ゴール1アシストの大活躍を見せ、MOMを獲得。このシーズンでは、ウイング、アンカー、インサイドハーフ、偽の9番と様々なポジションでプレーし、究極のユーティリティプレイヤーへと進化。全コンペティションで13ゴール7アシストという成績を残す。
2022-23シーズンも相変わらず移籍話が浮上するが、変わらずチームの中心選手としてプレー。中盤での起用でも右ウイングでの起用でもペップ・シティにとって重要なピースとして高いチャンスクリエイト数を記録していた。CL準々決勝のバイエルン・ミュンヘン戦では、高度なボールコントロールを最大の拠りどころに、右サイドでタメを作りバイエルンの守備陣を翻弄。準決勝のレアル・マドリード戦の2ndレグでは前半に2ゴールを決め、勝利に貢献。決勝のインテル戦でもフル出場し、後半にロドリの決勝ゴールをアシスト。この年は公式戦55試合とフル稼働し、7ゴール6アシストでプレミアリーグ、CL、FAカップの三冠(トレブル)達成に貢献する。
2023-24シーズンの開幕直後、シティとの契約を2026年夏まで延長し、ここ数年続いた移籍話はいったん終息することに。デ・ブライネが負傷によって長期離脱を強いられるなか、自身も2023年9月21日のCL開幕戦で負傷し、数週間離脱する。復帰後はこれまで通り中盤とウイングで高い質のプレーを見せ、10月29日のマンチェスター・ユナイテッドとのマンチェスター・ダービーではアーリング・ハーランドのゴールをアシストするなどMVP級の活躍を見せ、11月4日のプレミアリーグ第11節ボーンマス戦では2ゴールを決める。
ポルトガル代表
2012年に初めてU-19代表に選出され、2013年にはUEFA U-19欧州選手権に出場。ポルトガルのベスト4進出に貢献し、UEFA公式が選定する大会のベストイレブンに選ばれている。
その後はU-21代表を主戦場とするが、2015年3月にポルトガル代表に初選出。3月31日のカーボベルデとの親善試合において20歳でフル代表デビューを飾る。2015年6月にチェコで開催されたUEFA U-21欧州選手権にU-21代表として出場。右ウイングのレギュラーとしてプレーし、準決勝のドイツ戦では先制ゴールを決め、5-0の大勝に貢献。決勝のスウェーデン戦で惜しくもPK戦の末に敗れたが、大会ベストイレブンに選出されている。
2015年後半からはフル代表に専念するようになるが、ポルトガルが初優勝した2016年6月のEURO2016は怪我によりメンバーを外れている。9月1日のジブラルタルとの親善試合で代表初ゴールを決めている。
2017年にはロシアで開催されたFIFAコンフェデレーションズカップ2017に出場。この頃には代表でも主力に定着しており、グループステージのニュージーランド戦ではゴールを決めている。
2018年6月には2018 FIFAワールドカップ ロシア大会のメンバーに選出。大会では右ウイングのレギュラーとしてプレー。4試合全てに出場し、第3戦のみ途中出場となった。しかし、大きなインパクトを残すようなプレーは見せられず、チーム同様不本意な大会となった。
2018-19シーズンのUEFAネーションズリーグでは、2018年10月11日のポーランド戦で1ゴール1アシストを記録し、3-2での勝利に貢献。2019年6月5日の準決勝スイス戦ではクリスティアーノ・ロナウドのハットトリックのうち2ゴールをアシスト。決勝のオランダ戦でもゴンサロ・ゲデスの決勝ゴールをアシストしており、ポルトガルの初代王者戴冠に貢献。大会の最優秀選手に選出される。
EURO2020の予選では絶好調そのものでリトアニア戦での2アシストを含む3ゴール6アシストのハイパフォーマンスで本大会出場をもたらす。迎えた2021年の本大会ではポルトガル代表の10番を背負って出場。4試合全てにスタメンで出場したが、CL決勝まで戦った疲労もあって本来のプレーを見せられず、ラウンド16で大会を去ることに。
2022年10月には2022 FIFAワールドカップ カタール大会に出場。大会ではトップ下やインサイドハーフなど中盤で起用され、ブルーノ・フェルナンデスと共に攻撃陣を牽引。しかし、準々決勝のモロッコ戦ではモロッコの組織的な守備の前に仕事をさせてもらえずに敗退。5試合全てに出場し、第3戦のみ途中出場となったが、前回大会同様に悔しい結果に終わる。
EURO2024予選では、新監督のロベルト・マルティネスからチームの大黒柱に指名され、通算3ゴール4アシストの活躍を見せる。
個人成績
シーズン | 国 | クラブ | リーグ | 試合 | 得点 |
---|---|---|---|---|---|
2013-14 | ベンフィカB | セグンダ・リーガ | 38 | 7 | |
ベンフィカ | プリメイラ・リーガ | 1 | 0 | ||
2014-15 | ASモナコ(loan) | リーグ・アン | 32 | 9 | |
2015-16 | ASモナコ | リーグ・アン | 32 | 7 | |
2016-17 | ASモナコ | リーグ・アン | 37 | 8 | |
2017-18 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 35 | 6 | |
2018-19 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 36 | 7 | |
2019-20 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 34 | 6 | |
2020-21 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 26 | 2 | |
2021-22 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 35 | 8 | |
2022-23 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ | 34 | 4 | |
2023-24 | マンチェスター・シティ | プレミアリーグ |
個人タイトル
プレースタイル
173cmと小柄ながらも、本職である攻撃的MF以外にも左右のウイング、センターハーフ、偽の9番と様々なポジションを高いレベルでプレーできるユーティリティプレイヤー。ウイングバックさえも高いレベルでこなすこともできる。というか、1試合の中で一人三役もしくは四役をこなせる選手である。
最大の特徴は優れた足元の技術と圧倒的な運動量でピッチを縦横無尽に駆け回り、試合を支配できることにある。チャンスメーカーとして攻撃に深みを加えることができ、それでいてバランス感覚に秀でている。パスレベルも高く、スルーパスやクロスボールの精度も高い。
柔らかいボールタッチからのドリブルも得意としており、スピードもあり、無駄なフェイントをかけずに効率よく相手を抜き去っていく。ドリブル時には左足のみを使用し、縦への突破だけではなくボールキープも得意。そのドリブル姿から「風船ガム」というあだ名も付けられている。ピッチ上の位置にかかわらずボールを前に運ぶことができ、優れた視野と技術で局面を打開する。
天才的なテクニックの持ち主でありながら、チームのために労を惜しまない献身性も持ち合わせており、豊富な運動量と読み、判断力を活かした粘り強い守備での貢献度も高い。ボール奪取後はそのまま攻撃のタクトを振るう。ちなみに毎試合、彼の走行距離はエグい数値を叩き出している。
得点力の高さも魅力で、相手が隙を見せればミドルシュートを積極的に狙う。
体格面のハンディからフィジカルバトルでは劣勢になることは否めないが、本人いわく接触しなくてもボールを奪う方法、当たられずに抜く方法を試合中だけでなくプライベートも常に考えており、卓越したサッカーIQが体格面のハンディを補っている。
人物・エピソード・評価
- マンチェスター・シティで監督として関わるジョゼップ・グアルディオラは「私がこれまで見た中で最高の選手の一人」と評している。
- 久保建英が目標としている選手として名前を挙げており、相手に体をぶつけられることなく永遠にボールをキープできる技術を「ベルナルド・シウバ理論」と呼んでいる。この本質は相手を抜くことよりも、味方に時間とスペースを与えることになる。
- プレミアリーグで宿敵のリヴァプールFCのサポーターと何度かSNS上でやり合っている。
- 6歳のときに両親が彼をリスボンの英語を話す学校に通わせていたこともあって英語を流暢に話すことができる。母国語の他にスペイン語とフランス語を話せる。
- いとこであるマチルデ・フィダルゴも1994年生まれの女子サッカー選手で、ポルトガル女子代表とマンチェスター・シティの女子チームで活躍した。
- チームメイトの名前にちなんで名付けられたジョン・ストーンズという名前のフレンチ・ブルドッグを飼っている。
- 2023年7月1日、婚約者のイネス・トマズと結婚。
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