マグニフィコ王(King Magnifico)とは、ウォルト・ディズニー・カンパニーによるミュージカル・ファンタジー・アニメーション映画『ウィッシュ』(原題: Wish)に登場するキャラクターである。
本記事には、ネタバレが含まれます。 |
概要
マグニフィコ王
願いを支配する最恐のヴィラン
魔法の力でロサス王国の国民の願いを叶える偉大な王。だが、実は叶えるのは自分が良かれと思う願いだけで、“裏の顔”を持つ。国民からの願いの力を利用してさらなる魔力を得ていく。[1]
日本語吹き替え版での担当声優は福山雅治。英語版の担当声優はクリス・パイン(Chris Pine)。
テーマソングは『無礼者たちへ』(英語版では『This Is the Thanks I Get?!』)。日本語版では福山雅治が、英語版ではクリス・パインが歌っている。
本作の主人公「アーシャ」(Asha)が住む、イベリア半島沖合に位置する「ロサス王国」(The Kingdom of Rosas)を治める王。ハンサムでカリスマ性のある男性。名前の「Magnifico」はスペイン語やポルトガル語で「壮大な」「素晴らしい」を意味する。
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かつて幼い頃に家族全員を盗賊に殺害されたという悲しい過去を持つ。その経験から、人々が安全に暮らせる国、願いが目の前で打ち砕かれるのを見ることがないような国を作るために修行を重ねて強力な魔法を習得し、その力を持ってロサス王国を建国した。妻として、国民を愛する美しい女性アマヤ王妃(Queen Amaya)を娶っている。
ロサス王国では「国民は18歳になると、儀式の場でマグニフィコ王に自分の願いを捧げる」という決まりがある。そのほとんどは叶えられずその願いの記憶も失ってしまうが、月に一度マグニフィコ王が一つだけ願いを叶える(ただし『無礼者たちへ』の中で「去年は14の願いを叶えた」と歌っているので、厳密に「月に一度一つだけ」ではないらしい)。そのため、ロサス王国は願いが叶う魔法の王国と呼ばれ、国民が幸せに暮らす平和で繁栄した国となっている。
ヴィランとして
だが、実はマグニフィコ王は叶える願いを自分の価値観で選別しており、叶えるのは自分が良かれと思う願い(「国のためになる」と彼が確信した願い)のみである。そうでない願いについては「叶わない願いを抱き続けることで心を乱すべきではない」という彼の考えから、願った本人たちに返す(願いの記憶を戻す)こともなく城の中に保管している。
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いわゆる悪役(ヴィラン)であり、自らのやり方が最善であると思い込んで他人の提言を聞き入れない独善的な考え方、国民の願いを軽んじる面、自分以外が力を付け始めると自分や国が脅かされると恐怖し強権的な対策を取ろうとするという強迫観念の強いところ、などなど、作中で欠点は様々に描写される。
アーシャが願い星「スター」を味方につけたことを危惧するあまりに禁断の魔法に手を出した後から彼の狂気や暴虐は加速していき(禁断の魔法により精神が侵されている?)、ついには「人々にそんなことが起こらないように」と建国したはずなのに、「国民の願いを、その目の前で打ち砕く」行為まで行うようになってしまった。
最終的には妻であるアマヤ王妃からも離反され、人々の願いの力に敗北。魔法の杖に付いている鏡に閉じ込められて、アマヤ王妃の指示によって地下牢に収められることになり、物語から退場する。
彼を擁護する意見
本作の劇場公開中から、観客の間では割と彼に対する人気が出たという。[2]
また、彼について同情的、擁護的に見る声もあがった。いわゆる「悲しき過去」を持っている人気の悪役だから同情されている、というだけではなく「彼の方に正当性があったのでは?」という意見も挙がるのだ。
彼が独善的で、強迫観念をもち、内心で国民を軽んじていた独裁者であるのは作中の描写通りではある。だが同時に、彼が国民を幸せにする国を自らの力で建国し、それを維持できていたこともまた間違いはない。「願いの記憶を失うという代償」があったとはいえ、それ以外に国民が大きな不幸を背負っていた様子もない。
「儀式でマグニフィコ王に捧げた願いの記憶は、マグニフィコ王が叶えるまで失われる」ことは隠されているわけではないようであるため、「記憶を失いたくない程に大事な願いなら、捧げずに自分の力で叶えることにすればよいではないか」という意見も出る。これはマグニフィコ王が表明した「人々は、自分の力で願いを叶えることができないとわかっているからこそ私に願いを託すんだ」という意見への同意とも言える。
「誰かが彼の代わりになったとしても、結局はマグニフィコ王のように願いは選別せざるを得ないじゃないか」といった意見も。単純に、「この国で一番の○○になりたい」といった単純な願いでも、それを願った者が二名以上いたら両方叶えるのは困難であろう(「同率首位」にはできるかもしれないが)。「あの人に私を好きになってほしい」という可愛らしい恋の願いでも、そのままストレートに叶えてしまえば洗脳になってしまう。
また、彼が決定的に堕ちてしまうのは禁断の魔法に手を出したためであるが「その背中を押してしまったのは、主人公アーシャの行動に対する不安・危惧であった」と言えなくもない点も、彼への同情論の勢いを増しているかもしれない。
「国をひとまず無事に統治していた彼を失って、ロサス王国はやっていけるのか」という危惧を感じる観客が居ることがそれに拍車をかける。彼の幼い頃のエピソードを見てもわかる通り、作中の世界は平和で争いのない場所、というわけではない。
本記事上部で引用した通り、公式にて彼は「願いを支配する最恐のヴィラン」と銘打たれている。「観客からの支持を集めてしまう」「主人公側の正当性を疑わせてしまう」という意味では、確かに彼は最恐のヴィランと言えなくもないかもしれない。
制作サイドからのコメント
- 『ウィッシュ』の監督の一人クリス・バック氏のコメント
- 「クリス・パインは、どの作品でもチャーミングですが、この映画でもマグニフィコ王のチャーミングさを見事に表現してくれました。それと同時に、闇落ちしていく様子も見事でした。」[3]
- 「ヴィランらしいヴィランはディズニー・アニメーションでも久しぶりだったので、キャラクター作りの面白さややりがいを感じました。ただ最初は邪悪さが全面に出ているという設定だったんですけど、チャーミングなところや彼の傷、どんな行動を取るのかを少し見せるような形に変わり、結果的に闇落ちする彼の姿を見るような流れとなりました。」[4]
- 「確かに君の言うように、彼は今までのヴィランと彼はちょっと違うね。これまでヴィランは割と最初からヴィランとして登場することが多かったと思うんだ。ウィッシュでは、だんだんと彼がダークサイドに落ちていく起源(オリジン)まで描かれている。だからこそ、この作品はマグニフィコのヴィランとしてのオリジンストーリーでもある、という風に僕は思っているよ。そこが今までと違うかな。」[5]
- 『ウィッシュ』の監督の一人ファウン・ヴィーラスンソーン氏のコメント
- 「夢を追い求めるにはものすごい労力が必要だ、と彼は信じています。夜も眠れなくなりかねない。自制心や献身もたくさん必要になるし、願いが叶わなかった場合には苦痛がともないます。彼はそういう心配をすべて取り除いてやりたいと思っています」[6]
- 「彼はナルシストなので周りから敬愛されることが喜びだと思います。その一部としてショーマンシップのような部分が出てくるんですけど、同時に楽しいキャラクターでもあって、それはクリス・パインがもたらしてくれたものだと感じています。彼が演じたおかげで、ヴィランが真面目でつまらない役じゃなくてもいいんだと思えました。」[7]
- 「まず最初の設定として、(舞台となる)ロサス王国の人々は王国と王を信じているわけですよね。観客の方にも信じてもらわなければいけない。で、マグニフィコ王が言ってることって実は結構正しいじゃないですか。人生はカオスがあって、いろいろ辛いことも私たちにはありますよね。その「自分が一番大事なもの」を他の人に委ねてしまい、いっそ忘れてしまったら楽になるかもしれない。これ、多分みんな感じたことがあるんじゃないかしら……。で、アーシャも最初はそれを信じていたんですが、委ねるのではなく「守りたい」っていう気持ちが起きた時に、マグニフィコとアーシャでは違った解釈をするんですね。マグニフィコはコントロールすることで守ろうとする。アーシャは主体性を持って行動することで変えようとする。だから2人がもともと同じ考え方を持ってたっていう部分が、私たちのこだわりでもあるんです。けれど、違った方向にそれが向いてしまう。マグニフィコは間違った選択をしっぱなしなんですけれどもね。」[8]
- 日本語吹き替え版で彼を演じた福山雅治氏のコメント
- 「とても正しく正義感に溢れているキャラクター」
- 「その行き過ぎた正義感に故に悲しい存在となってしまった、悲劇の王様だと思う」
- 「マグニフィコ王のことがよく分かると言うと、福山は暴君なんだなって思われそうですけど。マグニフィコ王に対して甘すぎるのかもしれませんが、複雑みをどうやって入れ込めば、その悲しみが可笑しみにまで昇華できるのか、というアプローチをしたつもりです」[9]
関連動画
以下はどちらもディズニー公式によりアップロードされた、彼のテーマソング。日本語版と英語版。
- 福山雅治 - 無礼者たちへ (From 『ウィッシュ』/日本語版) - YouTube
- Chris Pine - This Is The Thanks I Get?! (From "Wish"/Lyric Video) - YouTube
日本語版は静止画だが、英語版はマグニフィコ王の姿とともに歌詞を表示するミュージックビデオとなっている。
関連項目
脚注
- *映画公式サイトのキャラクター紹介文より引用
- *ディズニー映画『ウィッシュ』ヴィランのマグニフィコ王が「マグぴ」「フィコ王」と人気 ソロ楽曲「無礼者たちへ」特別映像も解禁 | ORICON NEWS
- *「ディズニーファンである私たちが、ディズニーファンである観客向けたラブレター」クリス・バック監督、ファウン・ヴィーラスンソーン監督『ウィッシュ』【インタビュー】 | エンタメOVO(オーヴォ) | ページ 2
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- *『アナ雪』も手掛けた『ウィッシュ』監督に再会!「ウォルト・ディズニー氏やディズニーそのものに対して絶大なリスペクトを示した作品」→喜びの展開 | ガジェット通信 GetNews
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