Ζプラス(Zplus)とは、1986年刊行のモデルグラフィックス別冊『PROJECT Ζ』を初出とするガンダムシリーズのMS。Ζプラスシリーズの総称である。
ΖプラスA1型
ZETA PLUS A1 TYPE ΖプラスA1型 |
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型番 | MSZ-006A1 MSK-006 |
頭頂高 | 19.86m |
重量 | 36.18t(本体) 77.4t(全備) |
出力 推力 |
2,070kw 101,000kg |
装甲 | ガンダリウムγコンポジット |
武器 |
エゥーゴの支援組織「カラバ」がΖガンダムの「ウェイブライダー形態」に目を付け、大気圏内巡航用に再設計した機体。
カラバ主導のもとアナハイム・エレクトロニクス社との共同開発で生まれたΖの仕様変更機ともいえる機種である。
大気圏内巡航用にウェイブライダー形態はVG翼となるウイングバインダーを装備し、シールドも各種センサー類を組み込んだものに変わっている。
Ζガンダムのコスト削減を目的として内部構造を単純化、ヒンジの兼用・アクチュエーターに規格品の導入など生産性の高い部品を利用している。
ゼータは構造が複雑なために高コストを招いていたが、Ζプラスではあくまで空力特性を重視しており、内部構造を簡略してもさほど問題にはならなかった。
結果、単なるコストダウンに留まらずこれがΖプラス自体の信頼性向上に繋がった。
『MISSION ΖΖ』では、ΖプラスA1型に採用されたフライングアーマーの改良型は、優れた揚抗比を得て亜音速から超音速飛行が可能とされる。この時点では問題は見当たらないが、後の『ガンダム・センチネル』にてA1型はウェイブライダー形態時の「空中戦」を想定していないと記載された。
正史ではこちらを公式設定として採用。A1型は単に重力下巡航用としての性質が強くなり、空中戦(ドッグファイト)の性能が低いことを受けて空戦仕様「ΖプラスD型」の開発に踏み切った。
大まかには大気圏内向けのA型、宇宙戦向けのC型に分類することが出来る。A型、C型から幾つかの形態に派生したが、殆どはスタンダードで量産に適した2種とは異なり限定生産機と言える。実際、Ζプラスの派生は試作色が強い機体も多く、中にはテストベッド機やトレーナー機として改修された物もあった。
Ζプラスと別に「ΖΖガンダムの合体変形と関連すると思しきカラバのガンダム」も噂されている。エゥーゴの技術支援を受けて生まれたAE社製の機体という設定のため、Ζ計画拡張背景にはΖプラスでとった相互関係も多少関係していると思われる。
また、Ζプラスを意識したリック・ディアスの開発チームによってηガンダムこと「ΖレイピアⅠ」が開発されるなど、アナハイム社におけるMS開発誌にもなくてはならない存在となっている。
『機動戦士ガンダムUC』でも、地球連邦地上軍の一部施設に本機が継続配備されている。
採用経緯
Ζガンダムの欠点
時代が生み出した名機と名高いMSZ-006「Ζガンダム」。
TMS(トランスフォーマブルモビルスーツ)として可変形機構を持ち、なおかつノンオプションで大気圏への再突入が可能な全領域支配対応(エリアドミナンス)の万能機である。
だがゼータは、後の時代から鑑みても複雑な可変機構を持つためコストが嵩み、アナハイム社が当初想定した量産には至らなかった事でよく知られる(複雑な機構による生産性の低さももちろん何より値が張るから買い手が見つからなかった)。
しかし、AE社が莫大な費用をかけたΖ計画の結晶をそう簡単に切り捨てるわけにはいかず、採用に持ち込むために様々なプランを模索していた。そこへ購入の話を持ちかけたのが、当時空戦機としても有用なTMSを欲していたエゥーゴの地上支援組織「カラバ」である。
如何に高価といえど、地上の全域を支援しているカラバにとってTMS/全領域支配対応のΖ計画機は其れほどまでに魅力的だったのである。
導入へ
このあたりの時期関係は不明な部分が多い。
AE社は採用評価試験のためにゼータの同型機を貸し出した。このときの機体が、カラバの謎の白いゼータ・タイプ「Ζガンダム3号機」とされている。
当時、カラバは「全地球NT戦力即応派遣構想」と呼ばれる少数のNT的素養を持つ者を編成した部隊を地球に短時間で派遣する構想を提示した。そこで注目されたのが評価試験中の3号機だった。この機体にブースターを装備し、弾道飛行によりその構想を実現に導く魂胆だったのである。
しかし出資者であるAE社は意欲的ではなく、廉価なゼータタイプを企図していた。アウドムラ隊に所属する一年戦争の英雄的存在の要望もあって3号機はカラバが受領・テストしたが、ゼータの操縦性の難が発覚し、それを扱えるNT的素養を持つ者を編成することが障害となって構想は自然に消滅。カラバ側は現実的に配備可能なゼータ系の量産機の導入を決断した(この量産機が何を指すのかは不明)。
AE社側はカラバの要請を受けて不要な宙域戦装備を外し、大気圏内用としての装備を開発。装備は「フライングアーマー」の派生型にあたる「ウェイブシューター」という名のVG翼であり、再度改良を重ねた発展型(ストライク・ユニット)がカラバにおいて採用評価試験中のΖガンダム3号機に装備されていた。
3号機系列との関係は不明だが、この系統に連なる大型VG翼を採用し、主武装であるビーム・カノンを装備させた「ΖプラスA1型」がアナハイム社のカリフォルニア工場にてロールアウトした。
ΖプラスA1型試作機(アムロ・レイ専用機)
膠着状態の戦況を打破するために、カラバはA1型のロールアウト前から、Ζプラスだけで構成されるエースパイロット特殊部隊の編成を計画していた。
まず最初にアウドムラから1名が、他の航空師団から2名がアナハイム社のカリフォルニア工場に派遣された。3名に続いて次々とパイロット達がカリフォルニア工場に送られた(いずれも撃墜数20機を超えるエースパイロット達である)。そしてファーストロットで製造された20機あまりのA1型も完成を迎え、エース部隊「18TFAS」が結成された。
その18TFASの初代飛行隊長を務めていたのは、一年戦争の伝説的エースで、後のロンド・ベル隊の隊長として知られるアムロ・レイ大尉(二階級特進のため中佐)であった(その後の搭乗期間は不明で、他と照合すると影武者説も浮上してくる)。
アムロ機を含む3機は幾度もリペイントを行い、最終的にデモンストレーション用のテスト機カラーに落ち着いた。アムロ機のロング・テール・スタビレーターにはアウドムラ所属を示す“AE”、左肩部に大尉のパーソナルマークが入っている。また右肩部には部隊番号である“018”が入るが、これは通常左肩に入れられる文字であり、部隊長機のみ特例として扱われているらしい。赤と白の機体色は3度目のペイントによるもの。
ΖプラスC1型
ZETA PLUS C1 TYPE ΖプラスC1型 |
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型番 | MSZ-006C1 |
頭頂高 | 21.11m |
全長 | 24.9m(WR形態) 36m(WR/スマートガン装備) |
重量 | 36.18t(本体) 77.4t(全備) |
出力 推力 |
2,070kw 101,000kg |
搭乗者 | テックス・ウェスト シグマン・シェイド チュン・ユン 他 |
装甲 | ガンダリウムγコンポジット |
武器 |
地球連邦軍がA1型の性能に目を付け、AE社に宇宙用に調整した機種を要請し、再々設計した機体。
真空中での冷却・生命維持装置を追加し、主機も熱核ロケットエンジンに変更。プロペラント容量も大幅に改善され、VG翼とテールスタビレーター間に熱核ロケットを4基格納したバックパックを装備する。
ペズンの反乱の際には、地球連邦軍の「α任務部隊」に配備されていた。
- 「ビームスマートガン」
左右太股部のビームカノンに加えて装備された武装。
携行したままWRモードに変形可能で、MS形態時は腕のラッチに結合させてコントロールし、一方の腕で収納式グリップを保持する。
大気圏外専用のディスクレドームを設置でき、アウトレンジからの狙撃用としても優れる。WRモード時はスマートガンが前方に突き出る形となり、全長もスマートガン未装備の通常Ζプラスよりかなり長い。
バリエーション
- MSZ-006A1B ZプラスA1B型
- D型と同時期に改良プランが挙がったA1型の攻撃改造機。 機首に6門のガトリングを装備。またVG翼下にはハードポイントが設置されており、武装などを取り付けられる。予算の問題で量産化には至らず数機の生産に留まる。
- MSZ-006A2 ZプラスA2型
- A1型から派生したデータ収集用のテストベッド。開発はプロトタイプΖΖガンダムと並行し、頭部に試作型ハイ・メガ・カノンを装備している(ただしΖΖよりも低出力)。 A1型から6機改造され、その内3機が実戦配備。他はパーツ交換用に分解されたらしい。
- MSZ-006A3 ZプラスA3型
- A1型の純粋な発展型であり、性能強化を目的とした機体。しかしD型の建造によりペーパープランで終わっている。文字設定だけで設定画も模型も無い。
- MSZ-006B ZプラスB型
- A1型から派生した機種転換用の訓練機。A1型の中から数機改造に使用したのだという。複座機であり、奇抜なフォルムとなっている。MS形態時の頭部は複座機用に換装している。
- MSZ-006BN ZプラスBN型
- A1型に対地・対艦攻撃任務に適した改良を加えた実験機種。 全体的に目標への低空浸入に優れる機体へとリファインされている。 VG翼と垂直安定板を大型化し、機種センサーを対地・対艦攻撃任務に適した物に交換。 さらに、サブユニットには熱核ファンジェットエンジンを2基搭載する。
- MSZ-006CX ZプラスCX型
- モデルグラフィックス2002年3月号掲載のオリジナル機体。C1型の試作機で宇宙用実験機という設定で作られた。モデルグラフィックス掲載とはいえガンダム・センチネルとは無関係。
- MSZ-006C1/2 ZプラスC1/2型
- C1型にA2型の頭部パーツ(ハイ・メガ・カノン)をセットした機体。名称がC2型ではないのは本体に変更が無いからだろうか。
- MSZ-006C1[Bst] ΖプラスC1Bst型“ハミングバード”
- ディープストライカーの護衛随伴機。Sガンダムの大型ブースター・ユニットを4基装備した超高速爆撃機。ディープストライカーの廃案と共に本機もお蔵入りとなる。センチネルではMS形態への変形は不可能だったが、後のキャラクターモデルでMS形態が設定された。 ゲーム『Gジェネレーションジェネシス』に参戦している。
- MSZ-006C4 ZプラスC4型
- Ζプラスを全領域支配仕様として発展させたバリエーション。
これまでのΖプラスシリーズのVG翼は、低空から高々度まで優れた揚抗比を保つが、大気圏上層部での機動力ではプロトタイプに劣っていた。Ζプラスが極超音速で大気層を飛行するには、地上用に設計されたA1型の翼にかなりの抗力がかかってしまうのである。 - この問題をクリアするためにプロト機の改良型のフライングアーマーを装着、腰のフロントスカートをより整流効果の高い大型のものに変更し、さらに太股にはフェアリングが付けられた。この改良を受けてWR時の飛行性能が強化され、Ζガンダムの様にショックウェイブを形成する事も可能となる。Ζプラス通常モデルのウェイブライダーが名称を受け継いだだけなのに対し、C4型は機能面でもΖに近付いた。
- MSZ-006D ZプラスD型
- A型の空戦能力を高めた空戦形態。E型を除くΖプラスシリーズで最高級の機体。
機首部はピッチング・ヨーイングコントロール性の向上のためにフィンを4枚に追加変更。ロング・テール・スタビレーターにはバーチカルフィンを追加し、付け根付近はA型のボーテックスジェネレーター相当の物を装備。
C型で追加したバックパックに、大気圏内仕様の熱核ファンジェットエンジンを積み変え、変形用サブユニットにもサブ・ジェットエンジンを搭載している。 - 後にD型を空間戦仕様に変更する計画で、C型の熱核ロケットエンジンに積み換えた改良型も生産された。
- MSZ-006E ZプラスE型
- EWAC装備の機体。設定のみの存在であり、D型を含めた数あるΖプラスの中で最大コストの機体ということが判明している。大気圏内仕様とされるが空間戦闘用説もある。
- MSZ-006R ZプラスR型
- C1型をベースにしたバック・ウェポン・システムの試験機。「プロトタイプ リ・ガズィ」ともいえる機体。MGリ・ガズィの説明書でも一応触れられている。
- Ζ>(ゼータプロンプト)
- 漫画『ムーンクライシス』に登場するΖプラスパーツの流用品。ベクトラに配備された機種の中で予算が足らなかった事からパーツを流用しており、機構も脆弱とのこと。
- 作中での搭乗者はタクナ・S・アンダースン、メイファ・ギルボード(ミネバ・ラオ・ザビ)。
- MSZ-006PL1 Ζプルトニウス
- 該当記事を参照。漫画『ムーンクライシス』に登場する新型ゼータプラス。
- Zガンダム(レストア機)
- ムック『マスターピース ゼータガンダム』に登場。リ・ガズィの展示式典で横に並んでいたΖ。大破したルー・ルカ機にΖプラスのパーツを使って修復した機体。
- ZプラスS2型
- 電撃ホビーマガジン2000年4月号掲載の『ソロモンエクスプレス2』に登場する無人機。軽量化が図られ、ジェネレーターを大容量のタイプに変更、頭部はA2型と同型のハイ・メガ・カノンを装備している。
- ZZ-00の起動実験の際には数機が有人で飛行していたが、暴走したZZ-00の前に全機撃破されている。
WAVE RIDER FLEET
正式名称:Ζプラス戦爆連合~WAVE RIDER FLEET
AECD(アナハイムエレクトロニクス・キャリフォルニア事業部)が提唱したゼータプラス部隊案。
行動範囲に劣るモビルスーツ部隊を万能の可変型MS「TMS」に置き換え、それらに別個に機能を割り振り、隊での役割を分担させるゼータプラス混成部隊の構想である。
AECDのプレゼンでは砲兵仕様4機、爆撃仕様4機、制圧仕様3機、白兵仕様3機、空中指揮官機1機が紹介されており、これら1パッケージ分の制圧力は、SFS込みGM級MS27機分+支援機10機分に相当すると言われている。
AECDは自社出費でのプライベートベンチャーを立ち上げて各組織に売り込みをかけているが、当時の地球圏は度重なる戦争のせいで財政状況は厳しく、ペーパープランに終わる可能性もあった。
なお掲載誌が『ガンダム・センチネル』のモデルグラフィックスで扱う機体もゼータプラスだが、センチネルとは設定が連続しているだけでガンダムシリーズ的には非公式企画である。
Ζプラス・ドミナンス
空戦特化仕様であるΖプラスD型のコンセプトを継承した制圧仕様。
ドミナンスとは支配を意味し、TMSが目指した全領域支配仕様(エリアドミナンス)ではないものの、空戦能力は宇宙世紀の戦闘機すら凌駕したものとなった。
設計ベースとなったのはΖプラスD型でフレームもその殆どを流用し、エンジン、コックピット、電子装備などは当時の最新バージョンに刷新されている(コックピットはアームレイカー式)。頭部はイオタガンダム(Sガンダム)の意匠を思わせるデザインだが、これはイメージアップを狙った広告戦略だという説が強い。AE社側は「固定武装のバルカン発射時の排出ガスの影響を、エアダクトの取り回しを変更することにより低減するため」と説明している。
舗装や荷重の低い場所の運用も考慮し着陸脚を大径・低圧に変更、これに伴いサブユニットのベクタードノズルは人型形態時のフロントアーマーに移設している。
WAVE RIDER FLEETの中では変更点が少なく、既存のD型からアップデートした改修案も提示された。超音速二重反転プロップファンを装備するプランもあったようだ。
Ζプラス・ハウザー
WAVE RIDER FLEETにおける要となる砲兵仕様。隊ではアタッカーとガンナーを担当。
ロングレンジからの大火力で敵に先制ダメージを与え、サベイランスの護衛を目的とする。敵地制圧を目的としたドミナンスとの連携が考慮されており、制圧後にハウザーの火力をもって敵を殲滅する。
兵装はウイングバインダーにミサイル、頭部にΖプラスA2型のハイ・メガ・キャノンを装備、さらにハイパー・メガ・ランチャーを携行。しかしこの型はあくまでΖプラスA1型を改装したデモンストレーション用である。プランに沿うなら頭部は増加照準用の光学センサーユニットを追加、ハイパーメガランチャーもフェアリングを整形し、トリム調整用カナードとランディング・ギアを装備した改良型になる予定とされる。
Ζプラス・ペネトレイター
格闘戦に特化したバリエーション。名称は貫通を意味している。
モビルスーツの機能を重視した機種であり、Sガンダムに積まれた人工知能「ALICE」で得た技術を基にして作られた制御システムを採用予定だったらしい。
MS形態時用に内部フレーム、センサー、装甲、出力の向上・強化が図られており、ウェイブライダーの能力を特化させたバリエーション群のなかでも異色と言える。
主武装はシータガンダムの武装を改良した長尺のビーム・バスタードソード。
Ζプラス・サベイランス
センサーに特化したE型の延長線上にある早期警戒用の複座機。部隊の指揮管制機として部隊中枢を担う。
ベースのE型は単独行動を想定した機体だが、本形態はエスコート・ジャマーを想定している。
この機体は唯一実機が製造されていない。それどころかこの企画のなかで唯一立体模型が存在しないため、MS形態が謎に包まれている。一応、WR形態の絵は掲載されているのでそこからある程度想像はできるが…。
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