しあわせウサギのオズワルド(Oswald the Lucky Rabbit)とは……
ウォルト・ディズニー・カンパニーがかつて生み出した、うさぎのキャラクターである。
ミッキーマウスの誕生、更にはディズニー社が著作権に厳しくなった経緯にも関係する。
「みんないつでも きみのことばかり
きみ きみ きみだ!ミッキー・マウス!
ミッキー・マウス!ミッキー・マウス!ミッキーミッキーマウス!!「そうさ!きみには帰る場所がある!ぼくにだってむかしはあったんだ!
たいしたものじゃないけど ぼくらの場所だった!
きみには…きみにはなんでもある!家族!友だち!ファン!
ファンはぼくをわすれた!でも きみのためには なんでもおしみなくつぎこんだ!
こんなガラクタまで よろこんで買ってさ!「しあわせそうに見えるかい?
ぼくはオズワルドの残りかすだ もっとはっきり言うなら…
きみが出てきたあとの残りかすだ「どうしてわかる必要がある?そんな必要ないさ
もう行け!冒険とかしてさ 世界中のアイドルになれよ!
スポットライトをあびてるときは ほかのことなんて気にする必要ないだろ?「こいつはぼくからファンも家も人生も取り上げたんだ!
ぼくにのこったのはウェイストランドのヒーローの座だけ!
こんどはそれさえ取る上げるつもりかっ!?
いやだ!ミッキーとぼくだなんて!
すぐにミッキーだけの手がらになっちゃうんだから!
概要
ウォルト・ディズニー(演出)とアブ・アイワークス(作画)によって生み出された。配給はユニバーサル・ピクチャーズ。
実写を織りまぜたアニメ作品「漫画の国のアリス(アリス・コメディーシリーズ)」を制作し好評を得たウォルト達。
が、フィリックスを模倣したキャラクターである「ジュリアス・ザ・キャット」を用いていたことが仇となってしまう。
フィリックス・ザ・キャットの作者パット・サリバンから抗議を受け、自社オリジナルのキャラを求められることになる。
こうして新たな自社独自のキャラクターとして生み出したのがこのオズワルドである。
1927年にデビュー作となる「トロリー・トラブルズ【Trolley troubles】」を発表。ただしこれは2作目で、1作目の「かわいそうなパパ【poor papa】」は放映されなかった。現在も真の1作目を見ることはかなり難しい。
ディズニーの巧みな演出とアイワークスの親しみやすい作画により、オズワルドはデビューから大きな人気を集め、一躍アニメキャラクターのスターとなった。
その後オズワルドは、ウォルト達の手によって合計26作品が制作されていたが、その間にもユニバーサル・ピクチャーズと取引金額や所有権について対立することになっていく。
業を煮やしたユニバーサル・ピクチャーズは秘密裏にディズニーの会社からスタッフの引き抜きを画策した。ウォルト達にとっては不幸なことに、その引き抜きに多くのスタッフが乗ってしまった。
最後に残ったのは、生涯の友人であるアイワークスと、わずかなスタッフだけだった。
ちなみにこのスタッフ引き抜き劇は、当時ディズニーとユニバーサル社の間を取り持っていたチャールズ・ミンツが、自社のアニメーターの質をあげたいという野望を持っていたことから生まれた策謀でもあった。
実際、引き抜かれたスタッフは皆、チャールズ・ミンツの傘下に入り、オズワルドもミンツの会社制作へと切り替わる。
自社キャラであるオズワルドと多くのスタッフを失った(ウォルトからすれば奪われた)会社はあわや倒産の危機に陥る。
おまけにウォルトは、当時残ったスタッフと契約上制作しなくてはいけなかった残る4作品を手がけないといけなかった。
版権を奪われておきながら新作を作らなくてはならなかったスタジオスタッフの心境は、察するに余りあるだろう。
そんな苦心の合間、ウォルトは夜中にこっそりと自社キャラクターの考案する作業にとりかかるようになる。この時誕生したのが、かの有名なミッキーマウスである。
オズワルドは、ミッキーにとっては同じ親から生み出された兄のような存在と言っても過言ではないだろう。
(ちなみにミッキーのデザインの原型は、オズワルドの作中にも度々登場していた、脇役の小さなネズミだったりもする)
もし、ユニバーサル社との揉め事がなくウォルト達がオズワルドを描き続けていたとすれば……。
今、世界的スターとなっていたのはミッキーマウスではなくオズワルドになっていた可能性もあった。
有名なミッキーマウス保護法などに見られる版権に関する強い意識は、こういった悲しい背景から来ている。
外見・特徴
黒い(あるいは青い)身体のウサギが、青いオーバーオールを着用しているという姿。
近年描かれる際はミッキーのようなパンツっぽくなっている。
オズワルドのDVDパッケージを見ればわかるように元々は赤いオーバーオールだった。
が、ミッキーマウスと差別化を図るためか現在は青色のタイプのほうが多い。
オズワルドは身体の各部を自由に取り外し、いろいろな場面で使うことが出来る。
が、ロボットとか特殊な設定は特にないので注意されたし。
特に耳は帽子のように取ってみせたり、足を取って神に願掛けしたり(ウサギの足は幸運のお守りであるが故)出来る。耳は特に器用に扱え、近年でもエピックミッキーでは耳を取ったかと思うと鍵の形にして箱を開けたりしている。
性格は白黒ミッキー同様、若干気性が荒い。
しかし近年のエピックミッキーにみられるようにヒーロー然とした思いやりのある面も備えている。
彼女にオルテンシアという猫に似たようなキャラクターがいる、いわゆるミニーポジションのキャラクター。ただし当初はミッキー同様、オズワルドの女性版(つまりミニーのような形)といった彼女キャラクターが存在した。
これがオルテンシアなのか、別の彼女的立ち位置のキャラクターなのかは判然としていない。
一説では、本来は最初に登場したオズワルドの女性版キャラクターがオルテンシアだったが、その後で登場した猫のキャラクターキティが、いつの間にかオズワルドの恋人役となり、オルテンシアに成り代わったとのこと。
このオズワルドと同型の彼女キャラクターが出演したのは、初期の数作品のみである。
やがて、「オルテンシア」という猫に似たキャラクターが、オズワルドの彼女の役として登場し、現在も定着している。
声
ユニバーサル・ピクチャーズがその後初期のディズニー制作作品に音楽をつけた際、鳴き声のようなものがついた。これは特に特定の言語を話しているわけではなく、本当に鳴き声そのものような感じだった。
その後ユニバーサル・ピクチャーズによって作られた作品におけるオズワルドの声は判然としていないが、ハイトーンなミッキーとは違ってローテンションな声であることが多いようだ。
エピックミッキーで出演した際は正式に声優が当てられ、名優フランク・ウェルカーが担当することとなった。こちらも上記の鳴き声とは違い声はちょっと低めである。
日本でもエピックミッキー2のローカライズにおいて、初めて日本の声優があてがわれているが、だが、キャストの個別のクレジットが存在しないため、実際のところ誰が声をあてているかは判然としない。
オズワルドのその後
ウィンクラー時代
ウォルト達が苦心の末生み出したミッキーマウスは、現在知られるような大きな人気を得た。
しかし、オズワルドはウォルトとアイワークスという二人の柱を失い、違う道を進むようになった。
作り手が違えば、ほぼ別の作風になってしまうのは当たり前のことで、そのことが鑑賞者の不満を呼ぶことになる。
当初こそディズニーから引きぬいたスタッフ中心(ジョージ・ウィンクラー主導)でやっていたので、ギャップはある程度軽減されていた。
が、それでも低下が隠せなかった人気に待ったをかけようと、ユニバーサルは製作スタッフを直営体制へと変更したのである。
ついでにミンツが管理していたオズワルドの版権も取り上げられ、この時点でユニバーサルからミンツは完全に切り落とされてしまった。
チャールズ・ミンツは、ディズニーから良質なスタッフを奪い取り、順風満帆な船出だったはずが、あっさり親玉に全てを奪われてしまったのである。
その後ミンツはスタジオを移し、コロムビア配給でアニメーションを制作し続けたがうまくいかず、1940年にミンツが没し、1948年にはスタジオ自体も閉鎖された。ざまぁ。
ちなみにこの間、ミンツの遺したスタジオは、当時ディズニーでストライキを起こしていた社員を一部引きぬいていたこともある。常々ディズニーとは縁のある会社であった。
ランツ時代
ミンツから制作を引き継いだウォルター・ランツのスタジオは、早速キャラデザの大改変を行った。しかし、これが余計多くの視聴者の失望を買ってしまう。
それでもオズワルドは何度かリニューアルされたが、後期のオズワルドはもはや元のキャラクターとは別物になってしまっており、これを突きつけられたファンの失望感は相当なものだったことだろう。どういったデザインかはググッてもなかなかお目にかかれないほど貴重なものになっているが。一応一言で伝えるならばただの白ウサギである。
当然、現在のディズニーにおいてもこのユニバーサル社製作期のオズワルドは、完全に黒歴史となってしまっており、版権が渡った今再度ソフト化される可能性はゼロに近い。
これらは物語としてもウケはとれず、オズワルドが主役でない作品のほうが高評価を得てしまうというエピソードもあるくらい、この時期はオズワルドにとってそれはそれは悲惨な日々であった。
その後、ミッキーマウスに取って代わられたオズワルドはみるみるうちに人気を失い、1943年を最後にユニバーサル社もシリーズを事実上の打ち切りとし、作品も途絶えてしまった。
ちなみに補足するとランツは決して実力のない人物ではない。彼のスタジオからはアンディ・パンダやウッディー・ウッドペッカー、チリー・ウィリーなどスターが数多く輩出されている。
たまたま彼のスタジオとオズワルドが噛み合わなかっただけなのだろう。
なお、ウォルターのスタジオはウッドペッカーが成功を収めたのをキッカケに、オズワルドの製作を打ち止めにしている。
ユニバーサルにおける終末期
オズワルドのアニメはその後ユニバーサル社で製作されることはなかったが、ユニバーサル・スタジオなどテーマパークが出来ると、ひっそりウォルト・ディズニー製作期のオズワルドグッズを商品化し、販売していた。
しかし、事情が事情だけにそれ以上の展開は一切しなかった。
テーマパークには、偉大なクリエイター2人(ウォルトとアイワークスのこと)が生み出したキャラクターとして一応説明されていたが、明確に名前は出していなかった。
ユニバーサル社も、このウサギのキャラクターで商売をすることには相当苦心していたようである。
近年
長い間生みの親の古巣から引き離されていたオズワルドだったが、2006年にユニバーサル・ピクチャーズとの取引によってついにディズニーの手元に版権が返還された。
(勿論、ウォルト達が作った26作品のみ)
ユニバーサル社からすれば、ほとんど商売にならないオズワルドというキャラクターを還すことが出来るというのは、ある意味清々することだったかもしれない。それに今更ディズニーに戻ったところで、オズワルドで商売を行なうなど、到底不可能だと思っていたことだろう。
しかしこれによって、ディズニーはオズワルドをディズニーキャラクターとして堂々と取り扱えるようになった。その後はDVDの発売やパレードへの参加など、新しい展開が次々と行われるようになる。
それはまさに、親元から引き離された子供が、長い年月を経て親の懐に帰ってきた瞬間であった。
近年は『エピックミッキー~ミッキーマウスと魔法の筆~』に出演、なんと80年というブランクを経て新作出演を果たす。
ちなみにこの80年とはウォルト製のものを指し、ユニバーサル時代のものは含まれていない。仮にユニバーサル時代のものを含めるとしても50年以上の歳月がかかっている。
その作品では、自身の人気を奪ったミッキーマウスを敵視するという、過去の悲劇を踏まえた展開になっている。また、恋人のオルテンシアも登場する。
ディズニーの手に戻ったオズワルドは、ユニバーサル社時代と比べて目覚ましい活躍を見せていることは火を見るより明らかである。版権を返したユニバーサル社も、きっと驚いているに違いない。
また、2014年にはミッキーシリーズの新作『ミッキーのミニー救出大作戦』にゲスト出演を果たす。ディズニーが製作した正式なアニメーション作品にオズワルドが登場するのは返還後初めてであり、アニメーションでもオズワルドはミッキーとの共演を果たすこととなった。
さらに2014年4月、東京ディズニーシーにてオズワルドのグリーディングがスタートした。ちなみにこれ、アメリカ本国よりも先に行われたというまさかの快挙である(恐らく版権騒動の過去がアメリカよりも浸透していないため)。
ディズニーシーにお越しの際は、是非ご覧になってはいかがだろうか?
ちなみに、エピックミッキーのゲーム中にはウォルトと手をつなぐミッキーの像をオマージュした、ウォルトと手を繋ぐオズワルドの像が登場する。
これを見たミッキーは、まるで親を取られたように悲しげな顔をあらわにしている。
この像は、見る人によっては掴めなかった栄光を夢見た滑稽なシーンに見えるかもしれない。
しかし、ウォルトと手を繋ぐオズワルド像は、とても幸せそうな顔をしているのである。
これを別の視点から見れば、あるいは感慨深いものになるのではないだろうか?
ファンの中での扱い
上記の経緯から、本来なら自分が得るはずだった人気を奪った弟であるミッキーマウスに対して非常に鬱屈した思いを募らせている…という設定がいつの間にかファンの間で定着し始めており、上記のエピックミッキーではこのネタが半公式化している様だ。
一部からは「おのウサ」(「おのれミッキー!」と叫ぶウサギ)の愛称で親しまれている。
このあたりは、マリオに対するルイージの設定付けの経緯とよく似たものがある。
キングダムハーツ出演を妄想したイラストなども投稿されているなど、着々と日本のディズニーファンの間でも人気を集めている。
関連動画
ウォルト・ディズニーが制作したデビュー作。
ウォルター・ランツ作品。下記はまだオズワルドの面影が見える時代。しかし作風は言うまでもなく大きく変わっている。
1936年当時のオズワルド・・・誰だよ!? 通称「オチワルド」
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