コディーズウィッシュ(Cody's Wish)とは、2018年生まれのアメリカ合衆国の競走馬。
難病を患った1人の少年の『願い』を背負い、米国マイル王に輝いた優駿である。
主な勝ち鞍
2022年: フォアゴーステークス(GⅠ)、ブリーダーズカップ・ダートマイル(GⅠ)、ウエストチェスターステークス(GⅢ)、阪神ステークス(L)
2023年: チャーチルダウンズステークス(GⅠ)、メトロポリタンハンデキャップ(GⅠ)、ブリーダーズカップ・ダートマイル(GⅠ)、ヴォスバーグステークス(GⅡ)
概要
父Curlin、母Dance Card、母の父Tapitという血統。父はブリーダーズカップ・クラシックやドバイワールドカップなどGⅠ4勝を挙げた名馬。種牡馬としても多く活躍馬を輩出している。
母はGⅠガゼルステークスの優勝馬。母の父はGⅠウッドメモリアルステークスの優勝馬で、種牡馬として数々の名馬を輩出してアメリカリーディングサイアーを獲得するまでに至った。
2018年5月3日に誕生。生産者・馬主共にゴドルフィン(ゲインズボロファーム)。調教師はウィリアム・モットとなった。
馬名の由来は、ケンタッキー州に住んでいた当時12歳の男性、コディー・ドーマンに由来する。彼は「成人まで生きられるのは稀」と言われる遺伝性疾患、ウォルフ・ヒルシュホーン症候群(WHS)という難病を抱えていた。
馬が大好きだったコディー少年は、キーンランド協会とメイクアウィッシュ財団の『貴方の夢を叶えましょう』という企画に参加し、家族とともに訪問したゲインズボロファームで額に菱形の星を持つ生後6ヶ月の子馬……Dance Cardの2018と出会った。その仔馬はコディーの乗る車椅子に近寄ると、しばらく膝の上に頭をおいて離れなかったという。
そこから2年後、14歳となったコディーはWHSによる副次的な病の闘病と新型コロナウイルスによるパンデミックですっかり元気をなくしていた。そんな彼をどうにか励まそうと悩んだ両親は『あの仔馬』がいるゲインズボローファームに再び訪れることにした。
牧場に到着し、大好きな馬を眺め始めたコディーにガッシリとした体格の2歳馬が近づいてきた。
額に特徴的な菱形の星を持つその馬は、『あの仔馬』のように膝に鼻を擦り寄せてきたのだ。
見覚えのあるその顔を見たコディーは驚愕した。
間違いない…!『あの子』だ!!
覚えていてくれたんだ…!!
そう、その馬はあの時出会ったDance Cardの2018だったのだ。
馬の記憶力はかなり高いと言われるが、それは調教や馴致で鍛錬を積んでこそのもの。ましてや当歳時、しかも1度しかあったことのない人間を覚えているはずもない…コディーも両親もそう考えていたのだが、彼はしっかりとコディーのことを覚えていたのだ。
しかし、奇跡はこれだけに留まらない。闘病とコロナ禍ですっかり元気をなくしていたコディーが満面の笑顔を見せたのである。長年寄り添った家族でさえ、コディーのこんな笑顔を見るのは片手で数えるほどしかなかったという。
この事に感銘を受けたオーナーは、後にその仔馬に『コディーの願い(Cody’s Wish)』という馬名を与え、デビューさせる事となった。
『願い』と共に
3歳(2021年)
6月上旬のベルモントパーク競馬場の未勝利戦でジュニア・アルバラードを背にデビューして3着。続いてジョエル・ロザリオに乗り替わってサラトガ競馬場の未勝利戦に出走するも3着。その後9月のサラトガ競馬場の未勝利戦も3着。
3戦連続3着の悔しい競馬が続いたが、10月上旬のチャーチルダウンズ競馬場の未勝利戦にて待望の初勝利を挙げた。
その後は11月のチャーチルダウンズ競馬場の条件戦をマーティン・ガルシアを鞍上に勝利して連勝。再びロザリオ騎手に戻してチャーチルダウンズ競馬場の条件戦を勝利。これで3連勝である。
4歳(2022年)
3月下旬のチャレンジャーステークスにルイス・サエスを鞍上に迎えてグレード競走初制覇を狙うも2着に敗れた。
続いて5月上旬のウエストチェスターステークスに出走し、デビュー戦以来となるアルバラード騎手と組んで勝利してグループ競走初制覇を果たした。
その後は7月のリステッド競走・阪神ステークスに出走して勝利……ちょっとまて、阪神!?
これはかつて、アーリントンパーク競馬場(2021年廃止)と阪神競馬場が提携を結んでおり、交換競走としてGⅢ重賞「阪神カップ」が行われていたことに由来する。ちなみに交換競走ということは日本に対を成す競走が存在し、これが有名な春の3歳マイル重賞のGⅢアーリントンカップである。
チャーチルダウンズ競馬場に移った阪神カップは名称と格付け変更の上、継続されているわけである。
8月末。初GI挑戦となるスプリントGⅠ・フォアゴーステークスに出走。ここには今季GⅠ2勝を含む4連勝中、通算GⅠ5勝を挙げている名スプリンターJackie’s Warriorが出走していた。当然1番人気はJackie’s Warriorだが、コディーズウィッシュも2番人気を確保する。
レースはJackie’s Warriorが逃げてコディーズウィッシュは後方2番手で待機。大外と回りながら直線に入るとJackie’s Warriorは後続を引き剥がして押し切り態勢となるも、それをコディーズウィッシュが末脚炸裂させて並ぶ間もなく差し切り1馬身1/4差で優勝。3連勝で見事GⅠ初制覇を果たした。
この年の最終戦は11月の大一番ブリーダーズカップ・ダートマイル。ここでは勢いと前走の走りが評価されて1番人気に支持された。レースは前走と同様に後方で待機し、第3コーナーを迎えたあたりから一気に捲り始める。前にいたCyberknifeに照準を合わせて直線に入ると、残り1ハロン地点で馬体を並べて交わし去って優勝。Cyberknifeに1馬身3/4差を付けてGⅠ連勝を含む4連勝とした。また、この勝利は2022年のエクリプス賞にてNTRA Moment of the Yearに選出された。
5歳(2023年)
始動戦は5月上旬のチャーチルダウンズステークス。1番人気である。
最後方での追走から第3コーナーから進出を開始。捲り上げながら直線に入ると、楽々と突き抜けて2着に4馬身3/4差をつける圧勝を果たした。
一か月後、伝統のハンデ戦メトロポリタンハンデキャップに出走。トップハンデ57kgを背負いながらも単勝オッズ1.6倍という圧倒的な1番人気の支持を受けた。
発馬では一完歩目が遅かったこともあり序盤に最後方となる。中間点では8番手で通過。第3コーナーから進出を開始して大外を回りながら直線入口で先頭に立つと後続を突き放して3馬身1/4差で圧勝。GⅠ4連勝を含む6連勝を果たした。
およそ2か月の休養を挟んだ8月5日、距離延長を試みた陣営はホイットニーステークスを復帰戦に選ぶ。いつも通り最後方から競馬を進めるがいつものような伸びは見せず、White Abarrioの3着に敗れた。
陣営はこの結果を受けてBCクラシックを断念。BCダートマイル連覇を目標に据える。
10月1日。BCの前哨戦であるヴォズパークステークスに圧倒的な1番人気で出走。立ち遅れてしまうも直ぐに巻き返して2番手に押し上げると、最後は流す余裕も見せて1馬身半差で完勝。自己条件では強いことを証明した。
迎えた2度目のBCダートマイルでは、単勝オッズ1.8倍という圧倒的な支持を受ける。レースはプリークネスステークスの覇者National Treasureが逃げてペースを作るが、コディーズウィッシュは行き脚が付かず一時は最後方。隊列が決まったときも後ろから2番手であった。しかし第3コーナーから進出を開始すると、内埒沿いを通って一気に前の馬を交わし去り、直線手前のところで2番手まで押し上げる。直線では逃げ粘るNational Treasureとの叩き合いとなり、両者馬体をぶつけ合う場面のあるほどの激戦となるも、最終的にハナ差で先着。審議となるも着順変更はなし! 5度目のGⅠ制覇をBCダートマイル連覇で飾った。
試合結果を報じる中継カメラには、ウィナーズサークルにやってきた車椅子の青年が映されていた。他でもない、コディー・ドーマンその人である。馬は、ある意味で自分の名付け親になった青年に、最高の贈り物を届けたのだった。
このレースを最後に引退。通算成績16戦11勝、内GⅠ5勝。3着より下の入線は一度もなかった。
BC観戦を終え、ケンタッキーへの帰路に就いたコディー・ドーマンは、その道中で体調が悪化し、2023年11月5日にこの世を去る。享年17歳の若さであった。コディーズウィッシュが無事キャリアを終えたことを見届けられたのが、彼の魂の慰めとなったことを願いたいものである。
翌年1月に発表された2023年のエクリプス賞では、コディーズウィッシュが最優秀ダート古牡馬、NTRA Moment of the Year(対象はBCダートマイル連覇。2年連続選出)、そして年度代表馬に選出された。なおエクリプス賞発表セレモニーでの年度代表馬の発表は、コディーの妹であるカイリー・ドーマンが壇上に招かれ年度代表馬の名前が書かれた封筒の封切りと発表を任されるサプライズをもって行われた。
競走引退後
2024年よりジョベナルファームにて種牡馬として繋養。初年度の種付け料は7万5000ドルに設定された。
血統表
Curlin 2004 栗毛 |
Smart Strike 1992 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Classy 'n Smart | Smarten | ||
No Class | |||
Sherriff's Deputy 1994 鹿毛 |
Deputy Minister | Vice Regent | |
Mint Copy | |||
Barbarika | Bates Motel | ||
War Exchange | |||
Dance Card 2009 芦毛 FNo.1-s |
Tapit 2001 芦毛 |
Pulpit | A.P. Indy |
Preach | |||
Tap Your Heels | Unbridled | ||
Ruby Slippers | |||
Ruby Slippers 2001 栗毛 |
Editor's Note | *フォーティナイナー | |
Beware of the Cat | |||
Tempt | Devil's Bag | ||
Thinghatab |
クロス:Mr. Prospector 3×5×5(18.75%)
関連動画
コディーズウィッシュに関するニコニコ動画の動画を紹介してください。
関連コミュニティ・チャンネル
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- アイコンテーラー
- アカイトリノムスメ
- アリーヴォ
- イグナイター(競走馬)
- インペラトリス
- EST(競馬)
- フライトライン
- エフフォーリア
- カリフォルニアスパングル
- キャッスルトップ
- シャフリヤール
- シャマル(競走馬)
- ジャックドール
- ステラヴェローチェ
- スルーセブンシーズ
- ソウルラッシュ
- ソダシ
- ソングライン
- タイトルホルダー(競走馬)
- ダノンザキッド
- テンハッピーローズ
- テーオーロイヤル
- ディクテオン
- ディヴィーナ
- ドバイオナー
- ノースブリッジ(競走馬)
- バスラットレオン
- バーイード
- ピクシーナイト
- ファインルージュ
- ブレークアップ
- プログノーシス
- ペプチドナイル
- ホットロッドチャーリー
- ポエティックフレア
- マイネルグロン
- メイケイエール
- ユーバーレーベン
- リフレイム
- レベルスロマンス
- レモンポップ
- ロマンチックウォリアー
- ローレルリバー
- ヴォイッジバブル
▶もっと見る
- 8
- 0pt