ダンピールといえば、通常は下記1か2のどちらかを指す。
- ダンピール・ダムピール (Dhampir) - 東欧・ロシア系の吸血鬼伝承に登場する、吸血鬼と人間の混血。本項で解説する。
- ダンピア (Dampier)を含む地名(オーストラリア近辺に多い)の別表記。特にダンピア海峡の古い呼び名であるダンピール海峡が有名(第二次世界大戦中に、この海峡及び北のビスマルク海で印象的な海戦
が起きたため)。イギリスの海賊兼航海者兼探検家であるウィリアム・ダンピアに由来する。ちなみにダンピア氏はアマチュア博物学者としても重要な記録を多く残しており、とんでもない所に影響を与えていたりする。Wikipediaの本人項目で「影響」
の欄を見てみよう。
- ペンギンワークスが2001年に発売したアダルトゲーム。タイトルは1に由来
概要
ダンピールとは放浪民族ジプシーに伝わる、吸血鬼と人間のハーフであり、また吸血鬼を唯一退治出来ると思われていた吸血鬼ハンターである。
だが流浪民族ジプシーの伝承の為、名称や外見は各地域・伝承により様々である。
ダンピールの他の名称
- ヴァンピール(vampir)・・・女性の場合はヴァンピーラ(vampuiera)。このvampirはジプシーは吸血鬼ハンターを意味していたが、セルビアでは吸血鬼を意味しており、英語vampireの語源にもなった。
- ヴァムピローヴィッチ(vampirovici)・・・セルビアでの呼び方。常に悪臭を放つ。
- ラムピエロヴィッチ(lampijerovic)
- グロッグ(glog)・・・ブルガリアでの呼び方。glogoveという別名もある。
- ビリ・ルガト(bir i lugat)・・・アルバニアでの呼び方。吸血鬼の息子という意味があり、タンバリンで吸血鬼と戦う。
- アブラシ(abrasi)・・・バルカン半島の遊牧民アムロン族での呼び名。金髪という意味があり、肌と髪が黄色いことからきている。
ダンピールの外見・特徴
外見・特徴は地域によって様々である。
以上の特徴とは別に、ギリシア正教やイスラム教の聖職者の家からは生まれない、やはりただの人間でしかないという説もあり、諸説入り乱れている。
他の特徴としてはダンピールとして生まれたものは、死後吸血鬼になると考えられており、彼らの死後は吸血鬼予防策を念入りに行ってから埋葬していたようだ。
ダンピールによる吸血鬼の退治方法
セルビアのジプシーの伝承によると、吸血鬼の姿は普通の人間には見ることができず、ダンピールだけがその姿を見ることができ、退治出来ると考えられていた。
この為、ダンピールが戦う姿は、現代ならば変な儀式、パントマイムにしか見えないものだという。
その退治方法は、ニンニクや十字架などよく知られたものから、笛(地域によってはタンバリン)で吸血鬼を呼び寄せる。そして一人で走ったり、服を脱いだり、シャツを丸めて望遠鏡のように使うなどの行動を行う。そうしているうちに吸血鬼は退治できたと宣言する。
このようにしてダンピールは村人から多額の報酬をもらい、かなり裕福な暮らしをしていた。中世のセルビアやバルカン半島の人々にとっては吸血鬼とは脅威そのものであったため、多額の報酬を支払っていたようだ。
もちろん現在の視点から見れば胡散臭い霊感商法そのものである。実際、かなり胡散臭い人物が闊歩してようだ。しかし当時の人々にとっては、「ダンピールが怪しいのは吸血鬼の息子だから当然だろう」と解釈していたようで、疑う者は非常に少なかったようだ。
近代のダンピール
このダンピールの儀式は近代まで残っていたことが確認されている。1959年に現在のコソボ共和国で行われた儀式が最後に確認されたダンピールの儀式であり、これ以降活動記録はない。
他に2007年、ヴァンパイアハンターを名乗るカメラマンが、旧ユーゴスラビア大統領、故スロボダン・ミロシェビヴィッチ大統領の墓を暴き、心臓に杭を打つ事件を起こした。
ミロシェビヴィッチ大統領は生前、コソボで大虐殺を引き起こし、国際戦犯法廷で起訴された人物である。裁判が長引き、2006年に独房で心臓発作で亡くなった。
カメラマンは「悪人であるので、滅ぼさないと吸血鬼になる」との犯行声明を発表した。ちなみに犯行後警察に自首したが、とくに法的措置はとられなかった。
このようにダンピール(ヴァンパイアハンター)の伝承は東欧ではまだ根付いているのかもしれない。
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