なら一体何を捧げれば、この世の全てを知れる――?
チ | 。 |
― 地 球 の 運 動 に つ い て ― |
概要
チ。 ―地球の運動について― |
|
基本情報 | |
---|---|
作者 | 魚豊 |
出版社 | 小学館 |
掲載 | ビッグコミックスピリッツ |
掲載期間 | 2020年42・43合併号 - 2022年20号 |
巻数 | 全8巻 |
漫画・アニメテンプレート |
『チ。―地球の運動について―』とは、日本の漫画作品である。『ビッグコミックスピリッツ』の2020年42・43合併号から2022年20号まで連載された。作者は『ひゃくえむ。』で連載デビューした魚豊。全8巻。
舞台は15世紀の中世ヨーロッパ。現在よりも宗教の影響力が絶大だった時代に、異端の思想とされた「地動説」を巡って、多くの人間の運命が揺れ動く様を描いている。物語は全部で3章に分かれており、メインキャラクターは章ごとに入れ替わるが、一部のキャラクターは章をまたいで登場する。
タイトルになっている「チ」には、大地の「地」、血液の「血」、知識の「知」の3つの意味がこめられている。「。」は文章の終わりや停止を意味し、そこに地動線が入ることで「止まっていたものが動き出す」、つまり「地球は動くのか、動かないのか」を表している。また、作者はあえてエゴサしづらいタイトルにしたかったとも語っている。
ちなみに、地動説が天動説に変わる革命的な思想だったのは間違いないが、実際にはそこまで迫害を受けていなかった。事実のように扱われているのは、ガリレオの宗教裁判によって、誤ったイメージが広がったものと思われる。作者の魚豊はこの勘違いも面白く感じたため、あえて作品に取り入れている。
なお、だからといってこの作品を「現実と違う!」と批判するのはお門違いである。その理由は最終巻まで読めば理解できるだろう。
あらすじ
舞台は15世紀のヨーロッパ。異端思想がガンガン火あぶりに処せられていた時代。
主人公の神童・ラファウは飛び級で入学する予定の大学において、当時一番重要とされていた神学の専攻を皆に期待されていた。
しかしある日、ラファウの元に現れた謎の男が研究していたのは異端思想ド真ン中のある「真理」だった———!!
登場人物
第1章
そして今から、地球を動かす。
第2話より
- ラファウ
- 「僕の直感は、地動説を信じたい!!」
- 合理的に生きることを信条としている少年。成績優秀で、12歳で大学に行くことが決まっていた。天体観測を趣味としており、六等星まで観測することができる。大学では神学を専攻するつもりだったが、フベルトの話す地動説にいつしか感化されていく。
- フベルト
- 「私は美しくない宇宙に生きたくない」
- ラファウの父・ポトツキの知人。禁じられた研究とされる「地動説」を研究しており、異端者として捕まっていた。目が弱ってしまったため、ラファウを脅迫して代わりに天体観測を行わせる。
- ノヴァク
- 「世界を今のままに保持する為に必要なものはなんだと思う?」「血、だ。」
- C教の異端審問官。呑気で何事もやる気がなさそうに見えるが、異端者の拷問では一切容赦しない。第2章と第3章にも登場する。もともとは傭兵で、司教に腕を買われ特例で任に当たっている。
- モチーフはナチスのアドルフ・アイヒマン。
第2章
一生快適な自己否定に留まるか、全てを捨てて自己肯定に賭けて出るか、どちらを選ぶも自由だ。
第7話より
- オクジー
- 「第三者による反論が許されないならそれは――――信仰だ。」
- 民間警備組合で働く代闘士。自己肯定感が低い。この世は汚いものだと考え、希望は天国にしかないと思っている。非常に目が良いため戦闘は得意。「夜空が綺麗なのは、汚れた底辺の地球から見上げているからだ」と神父に教わって以降、空を見上げるのが苦手になっていた。
- グラス
- 「二つ目は、一つ目全部無視して、この世界に期待することだ。」
- オクジーの同僚。オクジーとは対照的で、前向きな性格をしている。疫病で家族を全員亡くしてしまい、自殺を図った過去がある。それ以来ずっと塞ぎ込んでいたが、ある日規則的に動く火星の軌跡を見て感動する。それ以来、毎日のように詳細な記録を取り始めるが……
- バデーニ
- 「きっと、それが何かを知るということだ。」
- 田舎の村で働く修道士。並外れた頭脳を持つ天才だが、性格は傲慢で自分勝手。素行不良と思想上の禁忌に触れたことで目を焼かれ、左遷させられていた。自身の研究結果を友人に奪われた過去を持ち、顔の傷は友人との決闘の際に残ったもの。自分が歴史を動かし、偉大になる瞬間を待ち望んでいたが、オクジーと出会ったことで運命の歯車が回り始める。
- ヨレンタ
- 「この世は、最低と言うには魅力的すぎる。」
- 宇宙論の大家・ピャスト伯のもとで働いている博識な少女。天文部署で働くことを志しているが、女性であることを理由に満足な研究をさせてもらえず、図書館の雑用をさせられていた。バデーニが掲示板に貼った天文に関する難問を半日で解いたのがきっかけで、彼らに協力することになる。
- ピャスト
- 「それは…真理だ。」
- 宇宙論の大家。完璧な天動説を完成させることに人生を捧げている。誰よりも天動説を重んじている一方で、それよりも「真理」を追い求めている。かつての出来事をきっかけに、天動説に対する疑念を僅かながら抱き続けていた。
第3章
第46話より
- ドゥラカ
- 「私は「今日ここに運命を変えに」来てる。」
- 移動民族の村に住んでいる少女。物覚えが良いだけでなく、効率的に古布を商品に変える方法などを考え、村を発展させていた。父親が亡くなったのが朝であることから、朝日を見るのが苦手。両親を失って以降、常に死ぬ不安に苛まれている。そのため、ひたすらにお金を稼ぐことを信念とすることで、不安を拭おうとしている。
- シュミット
- 「死を忌避するんじゃなく肯いたい。それが俺の人生の命題だ。」
- C教の異端解放戦線の隊長。論理的な宗教や人工物を嫌い、神が創った自然そのものを崇拝している。活版印刷を用いることで、地動説について書かれた本を出版し、C教正統派の価値観を揺らがせようと画策する。流行り病による妹の死を経験しており、死を忌避するのではなく肯定することを人生の命題にしている。
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