ティンバーカントリー(Timber Country)は、1992年アメリカ生まれ・アメリカ調教の競走馬。後に日本に種牡馬として輸入され、芝・ダート・障害とオールマイティーに活躍馬を輩出した。
概要
父Woodman、母Fall Aspen、母父Pretenseという血統のケンタッキー州産馬。父ウッドマンは初年度産駒から2歳戦で活躍した*ヘクタープロテクターやプリークネスS・ベルモントSを制したハンセルを出して名声を築きつつあった期待の種牡馬であり、母フォールアスペンもメイトロンS(米GI)勝ちなど20戦8勝、本馬を産んだ時点で既に初仔ノーザンアスペンがGI勝ちを挙げているという良血である。
1歳7月のキーンランドセールに出品されて50万ドルで落札され、ウェイン・ルーカス調教師の管理馬となった。
2歳時
6月のデビュー戦では離れた3着に敗れ、続けて出走したバッシュフォードマナーS(GIII)でも見せ場なく13頭立ての6着止まりだった。その後出走した未勝利戦を半馬身差で勝ち上がった。続くバルボアS(GIII)では7頭立てでブービー6番人気だったがクビ差で勝利し、重賞勝ちを挙げた。
その後、デルマーフューチュリティ(GII)を勝ち馬から1馬身差の3着として、主戦騎手となるパット・デイ騎手との初コンビでシャンペンS(GI・8.5ハロン)に出走。これまで中団からの差しが定石だった本馬だが、ここではスタートから逃げを打つと、追い込んできたシエラディアブロを半馬身差の2着に抑えて勝利した。続くブリーダーズカップ・ジュヴェナイル(GI・8.5ハロン)では1番人気に支持されると、今度は中団から3~4コーナーで仕掛けて直線入り口で先頭に立ち、イギリスから遠征してきた2着エルティッシュに2馬身差を付けて勝利を収めた。これにより、この年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬を受賞した。
3歳時
3歳始動戦は3月のサンラファエルS(GII)だったが、勝った2番人気のラリーザレジェンドはおろか、最低人気のファンダレルダンサーにも逃げ粘られて5頭立ての3着に敗れるという不甲斐ない敗戦を喫した。2週間後のサンフェリペS(GII)でも、ハリウッドフューチュリティ(GI)の6馬身半差圧勝を含めデビュー4戦無敗のアフタヌーンディーライツを最後まで捉えきれず1馬身差の2着(4頭立て)に終わった。更にサンタアニタダービー(GI・9ハロン)でも、ラリーザレジェンドやアフタヌーンディーライツの後塵を拝して4着に敗退した。
3歳になってから3連敗を喫したティンバーカントリーだが、それでもケンタッキーダービーでは1番人気に支持された。これは2歳王者という肩書きもそうだが、同馬主のためカップリングされていた(馬券上は同じ扱いとなる)牝馬セレナズソングが既にGI4勝を挙げ、目下GI3勝を含む5連勝で臨んでいたのもあった。他に、サンタアニタダービーを勝ったアフタヌーンディーライツと3着だったジャムロン、BCジュヴェナイルで3着だったテハノラン、BCジュヴェナイルこそ10着だったが年が明けてGIIを連続で圧勝したトーキンマンが上位人気だった。
外目の15番枠(19頭立て)から発走した本馬は、ハイペースの中で後方からレースを進めた。3コーナーから徐々に押し上げ、直線入り口を10番手で向いた。そこから馬群の中を抜けて先頭をよく追ったものの、外枠(16番枠)とハイペースを厭わず好位に付けて先に抜け出した*サンダーガルチに追いつくことが出来ず、中団から上がったテハノランにもアタマ差で競り負けて2馬身1/4+アタマ差の3着に終わり、鞍上のデイ騎手は消極的な騎乗だったとして非難を受けた。
なお、*サンダーガルチもルーカス厩舎の馬ではあったが、馬主が違うためにカップリングはされておらず、単勝26倍の11番人気(オッズとしてはブービー人気)止まりという伏兵だった。また、本馬とセレナズソングがいずれも敗れたことから、1980年から続いていたケンタッキーダービーの1番人気馬の連敗はこれで「16」となった。
セレナズソングはこの後牝馬路線に行ったが、それでも続くプリークネスSでは、調教でよく動いていたこともあって本馬が単独で1番人気に推された。その他の上位人気もトーキンマン、*サンダーガルチ、テハノランとケンタッキーダービー組が占めた。
今回は好位に付けたティンバーカントリーは*サンダーガルチをマークしながらレースを進め、外から鋭く伸びて、直線入り口で*サンダーガルチに並びかけた。そのまま外から脚を伸ばし、馬群から抜け出したオリバーズツイストや*サンダーガルチを抑えて、オリバーズツイストに半馬身差、*サンダーガルチにクビ差を付けて勝利した。
BCジュヴェナイルの勝ち馬が翌年の三冠競走を制したのはこれが初めてだった。また、ルーカス師は*タバスコキャットで勝利した前年のプリークネスS・ベルモントSから数えて三冠競走4連勝という史上初の記録を打ち立てた。
ベルモントSでも前売り1番人気だったが、不運にもレース前日にウイルス性疾患に罹患して熱発してしまい、これを回避せざるを得なくなった[1]。更に秋シーズンの復帰に向けて調教中の8月に屈腱炎を発症し、獣医の診断を経て現役続行不可能と判断され引退となった。通算成績は12戦5勝(うちGI3勝)だった。
種牡馬として
引退後は社台グループに購入されて来日し、1996年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りした。当初から100頭以上の牝馬を集め、1998年からはオーストラリアにシャトルされ、2001年にはモハメド殿下の希望でドバイにリースされるなど期待を寄せられた。
当初はGI級の活躍はあまり収められなかったが、リースされた2001年にムガムチュウがダービーグランプリを、アドマイヤドンが朝日杯FSを勝利。帰国してレックススタッドに移動した翌2002年にはアドマイヤドンがダートに転向してJBCクラシックを勝ち、初年度産駒のギルデッドエージが中山大障害を制して重賞初制覇を挙げたことから、2003年には237頭もの牝馬を集めた。
その後も高水準を維持していたものの、2008年頃から年齢のためか種付け頭数が漸減し、2014年には3頭にまで減少。この3頭が全て不受胎だったのを最後に種牡馬を引退した。
産駒はダート馬を中心に、トウショウナイトのような芝の中長距離馬、ギルデッドエージのような障害馬もいてかなりバラエティに富んでいる。母父としてもコパノリッキーやララベルといったダート馬からプレイアンドリアルのような芝重賞馬、更にはリース時代の産駒マジックツリーが産んだイギリス産のエクリプスS勝ち馬ムカドラムといった様々なタイプの馬を送り出している。アドマイヤドンがフェブラリーSを勝ってから16年にわたって「JRAの芝・ダート・障害の3カテゴリー全てでGI馬を輩出した唯一の種牡馬」[2]であったことからも、その引き出しの多さは窺い知れよう。
ただ日本で種牡馬入りした産駒はアドマイヤドンとムガムチュウのみで、前者は韓国に輸出、後者はまともに産駒を残せず種牡馬引退とあまり振るわない。どうやらサイアーラインの行く先は2021年から種牡馬入りするアドマイヤドン産駒の名マラソンランナー・アルバートが握りそうである。
ティンバーカントリーは種牡馬引退後もレックススタッドで引き続き功労馬として余生を送っていたが、2016年2月23日に心不全のため死亡した。24歳だった。
血統表
Woodman 1983 栗毛 |
Mr. Prospector 1970 鹿毛 |
Raise a Native | Native Dancer |
Raise You | |||
Gold Digger | Nashua | ||
Sequence | |||
*プレイメイト Playmate 1975 栗毛 |
Buckpasser | Tom Fool | |
Busanda | |||
Intriguing | Swaps | ||
Glamour | |||
Fall Aspen 1976 栗毛 FNo.4-m |
Pretense 1963 黒鹿毛 |
Endeavour | British Empire |
Himalaya | |||
Imitation | Hyperion | ||
Flattery | |||
Change Water 1969 栗毛 |
Swaps | Khaled | |
Iron Reward | |||
Portage | War Admiral | ||
Carillon | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Swaps 3×4(18.75%)、Hyperion 4×5(9.38%)、War Admiral 4×5(9.38%)、Case Ace 5×5(6.25%)、Nasrullah 5×5(6.25%)
- 母フォールアスペンは最終的に本馬を含めて14頭の仔を産み、不出走で繁殖入りした6番仔ダンスオブリーヴズを除く13頭のうち、勝ち上がり12頭・ステークスウィナー9頭・重賞勝ち馬8頭・GI勝ち馬4頭という大成功を収めた。牝系子孫にドバイミレニアムや桜花賞馬レジネッタ、欧州でマイルGIを4勝したリブチェスターなどがいる。
- 母父プリテンスは現在GIとして施行されているサンタアニタハンデキャップ優勝など31戦13勝。種牡馬としての代表産駒にシャムがいる。
代表産駒
- ギルデッドエージ(1997年産 牡 母モントタヤーラ 母父*ノーザンテースト)
- ムガムチュウ(1998年産 牡 母チョコレートケーキ 母父マルゼンスキー)
- アドマイヤドン(1999年産 牡 母ベガ 母父*トニービン)
- Eremein (2001年産 騸 母Marrego 母父Marscay)
- Balletto (2002年産 牝 母Destiny Dance 母父Nijinsky)
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *ベルモントSは*サンダーガルチが1番人気に応えて勝利した。ルーカス師は翌年のケンタッキーダービーもグラインドストーンで勝利し、最終的に三冠競走6連勝を達成した(この記録は2020年時点でも破られていない)。
- *2020年にスズカマンボが2頭目の達成馬となった。なお、2018年に京都で開催されたJBCを中央GIに計上する場合はディープインパクトもこれに含まれる(同年のJBCレディスクラシックを勝ったアンジュデジールはディープインパクト産駒)。
- 0
- 0pt