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ノーザンテースト(Northern Taste)とは、1971年カナダ生まれの元競走馬・元種牡馬。
日本競馬の血統を大きく塗り替えた、日本競馬史上屈指の大種牡馬である。初期のダビスタを知っている人には「種牡馬ページの一番上にいるオールAの馬」として有名かもしれない。
競走馬として
血統
父Northern Dancer、母Lady Victoria、母父Victoria Parkという血統。
父ノーザンダンサーは当該記事参照。母レディヴィクトリアはノーザンダンサーの父ニアークティックの半妹で、このためノーザンテーストにはレディヴィクトリアの母レディアンジェラの3×2(37.5%)という強いクロスがある。
母父ヴィクトリアパークは1960年のカナダ年度代表馬・最優秀3歳牡馬で、種牡馬としても1977年の英愛ダービー馬ザミンストレルの母父となり、同年の英愛リーディングブルードメアサイアーとなっている。
落札と命名
ノーザンダンサーの生産所有者であったカナダの名馬産家・E.P.テイラーによって生産され、1歳時のセリで、日本の社台ファームからやってきた吉田照哉に10万ドル(約3080万円)で落札される。照哉氏は社長である父・善哉の「ノーザンダンサーの牡馬で一番良い馬を買ってこい」という指令を受けてアメリカを訪れていたのだった。
ちなみにノーザンダンサー産駒の1歳馬は後に100万ドル超えで取引されるのが当たり前になったが、この頃はまだ大人しい値段であった。ノーザンテーストの落札額もこの年の平均取引価格を超えていたのである。
購入後に父に電話した照哉氏は「お疲れ様、日本に帰ったらなにを食べたい？」と聞かれて「寿司が食べたい」と答えた。善哉氏はそこから「寿司→魚」という連想に、父ノーザンダンサーの名前も加えて「ノーザンテースト(北の味)」という馬名を考え付いたのである。
現役時代
デビューから2連敗したが、G3競走・エクリプス賞で初勝利を挙げるとトーマ・ブリョン賞(G3)も勝利し連勝した。3歳初戦を勝つとイギリスに遠征し、2000ギニーでは*ノノアルコ(ケイティーズ、ダイユウサクの父)の僅差4着に入ったが、ダービーでは離れた5着であった。フランスに帰国した後のユジェーヌ・アダム賞(G3・2000m)とコートノルマンディー賞(G3・2000m)でも3着・5着と連敗したことから、以後はマイルまでの距離を中心に使われることとなった。
しかしロンポワン賞(G3・1600m)ではまたも*ノノアルコの僅差4着に敗れ、ムーラン・ド・ロンシャン賞(G1・1600m)も3馬身差の2着に敗れた。続けて出走したフォレ賞(G1・1400m)こそ重馬場の中を駆け抜けてG1初制覇を挙げたが、その後は4歳暮れまで8戦してリステッド競走を1勝したのみに終わった。
次世代の大種牡馬・*サンデーサイレンスとは対照的に競走馬としての実績はあまり高くなく、競走成績は20戦5勝、G1レースの勝利はフォレ賞のみにとどまった。
種牡馬としての概要
上記のように競走馬としては一流と言い難い成績のノーザンテーストだったが、そもそも社台ファームは「ノーザンダンサーの血を日本に持ち込む」ことを目的としており、当初の予定通りに日本で種牡馬入りさせた。
しかし、5歳になったテーストがいざ来日すると、短い足に大きな顔という牛のような風貌が悪い意味で話題となった。「ノーザンダンサーの一番いいのを頼む」とだけ照哉氏に指示してあとは任せた善哉氏も、実馬を見て「照哉に任せたのは間違いだった」「こんな馬が成功するわけない」と嘆くことしきりだったという。商売敵である日高地方の生産者には「犬みたいな馬だなぁ」「アメリカからわざわざヤギを買ってきたのか」と揶揄する人も出てくる始末。決して順調なスタートが切れたわけではなかったのだ。
なお、照哉氏がテーストを選んだのは「骨格や筋肉の付き方が一番良かったから」という理由である。
そして、いざ産駒が走り始めるとテーストの評価は一変し、照哉氏も名誉を回復した。産駒達がとにかく堅調に走ったのである。
前時代の大種牡馬である*ヒンドスタンや*パーソロン・*テスコボーイ、後の大種牡馬である*サンデーサイレンスと違い、クラシック三冠を取ったり、八大競争やGIをいくつも勝ったりするような、時代を代表するような超大物こそ遂に出なかった。しかし「ノーザンテースト産駒は三度変わる(成長する)」と評される成長性に加えて、おおむね丈夫な体に恵まれた産駒たちは「自身の格に見合ったレースで堅実に着を拾う」馬主孝行な馬が多く、なんと勝ち馬率62.1％という抜群の安定性を見せつけたのだ。1982年には当時の王者であった*テスコボーイからリーディングサイアーの座を奪取し、以降リーディングサイアーに10回(中央競馬に限定すれば11年連続)輝くこととなる。
リーディングサイアー獲得回数の記録は*サンデーサイレンスに破られたが、18年連続重賞勝利・20世代連続重賞勝利馬輩出・28年連続の産駒勝利は未だに日本記録である。
この活躍により、テースト導入当時は中規模牧場の一つであった社台ファーム（社台グループ）は急成長を遂げる。その功績によって、テースト晩年には彼専用の馬房と自由に出入り可能な専用パドックが用意されたほどであった（因みにこの施設は後にハーツクライに受け継がれた）。
晩年のテーストは馬房に住み着いた野良猫と仲良くなり、共にフレームに収まった写真が何枚も残っている。
2004年、33歳という高齢で死亡。
自身が高齢まで現役種牡馬であったこと、当時の日本ではノーザンダンサーの血が飽和状態であったこと、内国産種牡馬の評価が低かったことなど複数の理由により、後継種牡馬の需要は必ずしも高いものではなかった。代表産駒の1頭であるアンバーシャダイがメジロライアン→メジロブライトと続く父系を伸ばす活躍を見せたが、メジロブライトの早逝、そして最後に残っていたマチカネタンホイザの種牡馬引退により日本の直系は全滅し、現在はアスワン産駒のメジロアルダンが中国に渡った後に出した同国の2015年最優秀種牡馬WuDi（漢字表記：无敌）の系統だけが細々と父系を繋いでいる。
他方で、ノーザンテーストの遺伝子自体は、ステイゴールドとその子供たち、サクラバクシンオー、ダイワメジャー、モーリス、アグネスゴールドなどの種牡馬たちにより、絶えることなく日本の競走馬に受け継がれ、世界へと広まりつつある。
現在、社台グループ系列の一つであるノーザンファームが運営する観光施設・ノーザンホースパークには、吉田善哉とノーザンテーストの偉業を称える両者の等身大ブロンズ像が設置されており、在りし日の姿を偲ぶことができる（テーストの再現度は高く、揶揄された「見栄えの悪さ」までこういう感じなのかと納得できる）。
血統表
| Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Nearctic 1954 黒鹿毛 |
Nearco | Pharos |
| Nogara | |||
| Lady Angela | Hyperion | ||
| Sister Sarah | |||
| Natalma 1957 鹿毛 |
Native Dancer | Polynesian | |
| Geisha | |||
| Almahmoud | Mahmoud | ||
| Arbitrator | |||
| Lady Victoria 1962 黒鹿毛 FNo.14-c |
Victoria Park 1957 鹿毛 |
Chop Chop | Flares |
| Sceptical | |||
| Victoriana | Windfields | ||
| Iribelle | |||
| Lady Angela 1944 栗毛 |
Hyperion | Gainsborough | |
| Selene | |||
| Sister Sarah | Abbots Trace | ||
| Sarita |
血統とは不思議なものでテーストの活躍を受けて、半弟の*タンゾアと全弟の*サドンソーも輸入されたがこの手の種牡馬は日本であまり成功したためしがないので、現在名前を聞かないのを見ればわかる通り微妙な産駒成績に終わっている。
*サドンソーは13戦2勝のスプリンターという貧弱な競争成績からすれば、多くはない産駒の中から重賞入着というコツコツした成績を出しつつ旧7歳時に七夕賞を勝ったシーキャリアーを出し、BMSとしてもナムラコクオーやアイディンサマーを出すなどスケールは小さいながらもテーストの片鱗は垣間見えるような産駒傾向があった。
*タンゾアは6戦1勝という普通なら種牡馬になりえない成績もさることながら、父ニジンスキーの重さをモロに受けたためか産駒は半弟の*サドンソー以上に走らなかった。一応擁護すれば*サドンソー以上に中央に出走した産駒が少なかった割には出走頭数に対する勝ち上がり率がそこまで極端に悪いわけではなかったので、牝馬を集められていればもうちょっと走った可能性もある。ニジンスキー系は既にマルゼンスキーやヤマニンスキーのような人気種牡馬がいたので、初年度がずっこけて活躍馬を出せなかったのも見向きもされなかった要因かもしれない。
種牡馬としての代表産駒
- アンバーシャダイ（1981有馬記念、1983天皇賞（春）他、メジロライアンの父）
- ダイナガリバー（1986日本ダービー、1986有馬記念他）
- ギャロップダイナ（1985天皇賞（秋）、1986安田記念他）
- シャダイアイバー（1982優駿牝馬）
- シャダイソフィア（1983桜花賞他）
- ダイナカール（1983優駿牝馬、エアグルーヴの母)
- アドラーブル（1992優駿牝馬）
- マチカネタンホイザ（1993有馬記念4着、1993目黒記念他）
- ビッグテースト（2003中山グランドジャンプ）
ブルードメアサイアーとしての概要
ノーザンテーストは種牡馬としてだけでなくブルードメアサイアー（母の父）としても優秀であった。リーディングブルードメアサイアーには17年連続で輝いている。
1990年代の日本種牡馬三傑では、特にトニービンとの相性がよかった。サンデーサイレンスとは当初は相性が悪かったものの、サンデーの晩年にGⅠウィナーが複数誕生した。一方、ブライアンズタイムとはGIウィナーがレインボーダリア一頭のみに留まっている。
ブルードメアサイアーとしての代表産駒
- ダイナコスモス 父ハンターコム（皐月賞）
- サッカーボーイ 父ディクタス（阪神3歳ステークス、マイルチャンピオンシップ他）
※ちなみにサッカーボーイの全妹ゴールデンサッシュ（未勝利）がステイゴールドの母である。 - バンブービギン 父バンブーアトラス（菊花賞他）
- イブキマイカグラ 父リアルシャダイ（阪神3歳ステークス他）
- レッツゴーターキン 父ターゴワイス（天皇賞（秋））
- サクラバクシンオー 父サクラユタカオー（スプリンターズステークス×2他）
- サクラチトセオー 父トニービン（天皇賞（秋）他）
- サクラキャンドル 父サクラユタカオー（エリザベス女王杯）
- フラワーパーク 父ニホンピロウイナー（高松宮杯、スプリンターズステークス他）
- エアグルーヴ 父トニービン（優駿牝馬、天皇賞（秋）他）
- ファストフレンド 父アイネスフウジン（帝王賞、東京大賞典他）
- アドマイヤコジーン 父コジーン（朝日杯3歳ステークス、安田記念他）
- テレグノシス 父トニービン（NHKマイルカップ他）
- ギルデッドエージ 父ティンバーカントリー（中山大障害他）
- ユートピア 父フォーティナイナー（全日本2歳優駿、ダービーグランプリ、マイルチャンピオンシップ南部杯×2他）
- デュランダル 父サンデーサイレンス（マイルチャンピオンシップ×2、スプリンターズステークス他）
- ダイワメジャー 父サンデーサイレンス（皐月賞、天皇賞（秋）、マイルチャンピオンシップ×2、安田記念他）
- アドマイヤマックス 父サンデーサイレンス（高松宮記念他）
- エアメサイア 父サンデーサイレンス（秋華賞他）
- グレイスティアラ 父フジキセキ（全日本2歳優駿）
- キストゥヘヴン 父アドマイヤベガ（桜花賞）
- ダイワスカーレット 父アグネスタキオン（桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯、有馬記念）
- カンパニー 父ミラクルアドマイヤ（天皇賞（秋）、マイルチャンピオンシップ）
- トーセンジョーダン 父ジャングルポケット（天皇賞（秋））
- レインボーダリア 父ブライアンズタイム（エリザベス女王杯）
関連動画
関連項目
*ノーザンテースト 1971
｜アンバーシャダイ 1977
｜｜レインボーアンバー 1986
｜｜カミノクレッセ 1987
｜｜メジロライアン 1987
｜｜｜メジロドーベル 1994
｜｜｜メジロブライト 1994
｜｜｜トーホウドリーム 1997
｜アスワン 1979
｜｜メジロアルダン 1985
｜｜｜无敌 2002
｜ギャロップダイナ 1980
｜シャダイソフィア 1980
｜ダイナカール 1980
｜ダイナアクトレス 1983
｜ダイナガリバー 1983
｜｜ファイトガリバー 1993
｜ダイナフェアリー 1983
｜レジェンドテイオー 1983
｜ダイナサンキュー 1984
｜｜サンエイサンキュー 1989
｜スカーレットブーケ 1988
｜アドラーブル 1989
｜マチカネタンホイザ 1989
｜ビッグテースト 1998
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