島風(駆逐艦2代目)とは、大日本帝国海軍の一等駆逐艦である。書類上は丙型駆逐艦と分類されている。1943年5月10日竣工。同名の艦として、峰風型駆逐艦4番艦の初代「島風」、海上自衛隊のはたかぜ型護衛艦2番艦の「しまかぜ」がある。
概要
水雷戦に求められる性能を可能な限り高めた高性能駆逐艦であり、特に速力に優れているのが特徴である。これはロンドン海軍軍縮条約の破棄により、アメリカ海軍の駆逐艦が速力向上を目指しているという情報があったため、日本が得意とする水雷戦において優位に立とうとした結果の高速化であった。
同型艦を16隻建造予定であったが、高性能を追求し過ぎたために機関等が量産に向かず、航空戦が主流となった戦場において水雷戦が重要視されなくなり、さらに日本の戦局の悪化も重なったことで、第四次軍備計画による試作艦1隻のみの建造となった。同型艦が存在しないため、水雷戦隊の編成においては難しい扱いをされていた。
陽炎型駆逐艦9番艦の「天津風」に試験的に搭載されていた高温高圧缶(ボイラー)と新型タービンを本艦は搭載しており、この新型機関によって75000馬力という大馬力を叩き出した。全力公試にて40.37ノット、過負荷全力公試では40.90ノットを達成。 公式記録では水雷艇を除いた日本最速の艦艇となった。ただ、非公式ながら軽巡大淀が実戦で45ノット以上を発揮した逸話がある。この公試の際の重量は、通常は燃料等の消費物が2/3で行われるところ、島風は1/2の状態で行われた。これは島風が1/2の消費物にて戦闘状態になることを想定したためである。他艦と同条件の2/3状態で行われた試験では39.9ノットであった。
兵装
速力だけでなく雷撃能力においても優れており、島風用に開発された零式5連装魚雷発射管を3基搭載。
九三式酸素魚雷15発が同時発射可能であり、駆逐艦としては最大級の重雷装となっている。これを上回る同時発射数は、海外の艦艇を含めても重雷装巡洋艦の北上・大井(片舷4連装5基20門)のみである。なお、魚雷発射管は7連装2基の初期案もあったが、人力での展開に支障が出るために廃案となっている。
その他の船体や兵装は基本的に夕雲型に準じており、主砲は高角の50口径三年式12.7センチ連装砲D型を搭載。夕雲型にない兵装として艦橋前部機銃台の13mm連装機銃がある(後に25mm連装機銃に換装)。
また、二二号電探と三式超短波受信機(逆探)を就役当時から搭載しており、キスカ島撤退作戦の警戒任務で特に役立っている。
艦歴
1939年度海軍軍備充実計画(通称マル四)にて、丙型一等駆逐艦第125号艦として建造が決定。1941年8月8日、舞鶴工廠にて起工。1942年5月15日に駆逐艦島風と命名され、7月18日進水。1943年4月7日の全力公試で40.9ノットの記録。先代島風が打ち立てた40.6ノットを23年ぶりに更新した。同年5月10日に竣工し、呉鎮守府籍に編入。訓練部隊の第11水雷戦隊所属となった。翌日舞鶴を出港、瀬戸内海西部に回航されて訓練に従事する。
訓練や輸送任務を経た後に、7月7日にキスカ島撤退作戦に参加。第二次作戦にて作戦目標を達成し帰投する。
第二水雷戦隊に配属されるも、同型艦がないことから戦隊での作戦の機会に恵まれなかった。
しばらくはトラック諸島やラバウルにおいて護衛任務をこなすこととなる。1944年からはパラオ、ダバオでのタンカー護衛もしており、4月21日には戦艦大和や重巡摩耶をリンガ泊地まで護衛している。ビアク島救出作戦において、大和を主軸とした攻撃部隊を護衛するも、戦局の変容により攻撃部隊はマリアナ沖海戦に参加する。
その後は護衛任務、輸送任務の後にレイテ沖海戦にて第一部隊に編入され作戦参加。戦艦武蔵が空襲によって戦闘不能になっていたところを援護し、武蔵に収容されていた摩耶の乗員を収容、部隊に復帰する。
海戦の後は多号作戦にて第二水雷戦隊旗艦となる。多号作戦の第三次輸送部隊にて護衛中、米軍の第38任務部隊からの空襲を受け、至近弾や機銃掃射により船体を損傷。ボイラー爆発によって戦没した。
諸元
排水量 | 基準:2567t 公試:3048t |
全長 | 120.5m |
全幅 | 11.2m |
吃水 | 4.14m |
機関 | ロ号艦本式缶3基 艦本式タービン2基2軸 75000馬力 |
速力 | 全力公試:40.37kt 過負荷全力公試:40.90kt |
航続距離 | 18ktで6000海里 |
燃料 | 重油:635t |
乗員 | 267名/294名 |
兵装 | 50口径三年式12.7センチ連装砲D型3基 九六式25ミリ連装機銃2基 九三式13ミリ連装機銃1基 零式5連装魚雷発射管3基 (九三式酸素魚雷15本) 九四式爆雷投射機1基 |
電探 | 二二号電探1基 |
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関連項目
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